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先日、友人に送っている本放送(笑)が、クライマックスフェイズ(←ゲーム違う)を迎えまして。
ボス戦だー!
ということで、本日友人の家で夕食会の後、さいころを振ったのですよ。
1時間以上かけて参謀が作ってくれたボスデータ。
今回、プレイヤーとして参加。
私の使用キャラはパラサとアーチー。
二人とも、さいころ振るのが嫌になるよ、とみんなに言われていたのです。
……イリーナの馬鹿ぁ……。
パラサに順番は回ってきたさ、2番目だからな。でも1ターン目はコモンルーン使うだけじゃん。
1ゾロじゃないかの判定だけじゃん(しかも無駄に出目は11)
アーチーまで回ってこなかったよ、順番。
アーチーが本当に強いんか、結局私は分からないままで終わったよ。
……えー、泡ぽこを楽しみにしてもらっている友人ならびに読者の方々。
ボス戦は全くもって盛り上がらないまま終わることを先にお伝え申し上げます。
……部屋の隅でさめざめ泣いてきます。
■泡ぽこ その2
ノリス、レベル的にトンネル使えない、とWEB拍手で指摘してもらいました。
……。
そっちの突っ込みは友人たちから入ってなかったから、使えるものだとふつーに描写しちゃってあるなあ。
手直し効かないくらいのレベルで。
スルー希望していいですか。直せといわれても正直無理……(諦めが異様に早い管理人)
きっとレベルが上がったんだ、というくらいのおおらかな気持ちで見てもらえると嬉しいです。
というか、多分ルールを厳密に見ていくと、色々破綻してると思います、あれ。
基本友人を楽しませるためだけに書いてたので。
楽しませるつもりが、ボス戦もりあがらないんですけどね。(根に持つ)
■つぶやきおわり。
壁前で眉をよせ、不機嫌そうな声でスイフリーは呟く。
「壁にゅ」
「見て分かることをわざわざ言わんでいい」
「ノリスが作ったとか?」
「まあ、ノリスがノームを連れてくれているのは事実だが」
右側一行は壁前に集まっていた。一応、壁向こうに向かって一通り叫んでみたりしたのだが、返答は無かった。
「……トンネルで穴あけてこっちくればいいのに」
ノームをつれていないのはマウナも同じ。精霊使いは二人とも壁前でため息をつくしかない。
「シースルーで向こうを見てみようか」
フィリスの提案に彼らは頷く。結果、見えたのは寝る前に見たのと同じ左側の建物。向こうに居るはずの仲間は見えなかった。
「はとこ、はとこ」
「何だ」
「窓から外でて、向こう回ろうか」
「いい提案ではあるが、単独行動は危なくないか?」
「1階から出ればみんなでいけるにゅ」
「そうだな。が、もう少し待て」
「?」
スイフリーがパラサに手をパーの形で見せる。パラサは首をかしげた。
「不用意に外に出るのは危険だといっているのだ」
そう言ってから、全員を見る。
「何か、良くない事が起こったと考えて間違いないだろう。なるべく単独行動は控えたほうがいい。……しかし、こう見てみると偏った面子になったな。こっちにソーサラーが固まって、向こうに神官が固まった」
「……あの、私も神官なのですが」
イリーナが遠慮気味に手を挙げる。スイフリーは暫く珍しいものでも見るような目つきでイリーナを見ていて、それから手をぽん、とならした。
「そうだったそうだった、イリーナは神官だったな」
「……」
ジト目でイリーナはスイフリーを見たが、彼は気にした風も無い。
「気にしちゃ駄目よイリーナ。そこの賢いエルフは時々とんでもないポカをするの」
フィリスが援護に回り、スイフリーはため息をついてみせた。
「そんなに不満なら言い直すぞ。高レベルの神官は全員向こうに行ってしまった」
「……」
「返す言葉もないなあ、イリーナ」
黙るイリーナをからかったヒースは裏拳をうけて床に倒れこむ。誰ももう見慣れたものだからフォローはしない。
「とはいえ、異変があるのは屋敷だ。怪我をすることはそうあるまい」
アーチボルトは言うとあたりを見回す。
「とりあえず、屋敷に他の異変が無いか見てみよう。シースルーで向こうの面子が見えないのも気味が悪い。何があったのか調べつつ、最後にはパラサの案を採用して外回りで向こうと合流だな」
「コレは予想外だろう」
1階のエントランスで彼らはため息をついた。屋敷左側の、2階の全ての部屋と1階の全ての部屋を回って分かったことといえば、いつの間にか窓が全て中央と同じ壁で覆われており脱出不可能。玄関も同じく壁に埋もれており外には出られなくなっていた。窓の異変以外には部屋には異変が無い。中に入るのも廊下に出るのも自在だ。その分たちが悪い。
「外の様子も分からない。向こうの様子も分からない。何があって屋敷が半分になったのかも分からない。これでは手の打ちようがないぞ」
アーチボルトが壁を見ながら言う。
「なんでノリスはトンネルを使ってこないのよ」
マウナも壁を見てため息をつく。
「姉ちゃん、無事かなあ?」
「クレアは向こうの面子の中でも有能なほうだ、心配あるまい。……せめて書斎に手がかりの一つもあればよかったのだが」
「もっかい探してみる?」
「そうするか」
■この話を書いたとき、ルール面をサポートしてくれてる参謀から突込みが入りました。
というわけで、そのうちそのフォロー話がはいります(苦笑)
先に言っておきます(苦笑)
だってー、SWでシャーマンやった記憶ないんだもんー……。(言い訳にならん……)
一番遊んだのはシーフ。次点ファイター。
「あら、じゃあ、わたしアンタのこと、好きよ」
窓の外から唐突に聞こえた声に、彼は足を止める。彼女の声はどこまでも楽しそうで、イキイキとしていた。
『好き』
その言葉を、どれだけ彼女から聞かされただろう。時に真面目に、時にふざけて。あまりにも言われすぎて、その重みも嬉しさも当の昔に吹き飛んでしまったけれど。
いつも彼女がそういう相手は自分で、邪険に扱ってきたのは確かだが、それでも、その言葉を他人に向けられ、彼は何となく息苦しいものを感じた。
彼女の興味が他人に移ったのであれば、それは好ましい事ではないか。
彼はそう考え、しかし足は動かない。
相手は誰なのだ。
何を自分はこんなに焦っているのだろう。
彼女の話し相手が男性と決まったわけではないではないか。彼女なら、女友達にだって軽く『好きよ』なんていうに決まっている。
何を。
こんなに。
「では、わたしもお前のことが好きということになるな、フィリス」
色々な予測、というより願望は見事に打ち砕かれる。
返事をしたのは仲間のエルフだった。すこし面倒くさそうな返事ではあるが、きちんと相手をしている。彼は少なからず衝撃を受けた。あのエルフが、茶化さず好きだという言葉を相手に贈るとは思っても居なかった。
すこし混乱する。
誰が誰になんだって?
「そうでなかったら、一緒にいたりしない」
続くエルフの言葉に、彼女がくすくす笑っているのが聞こえる。
「あらあら、愛されててよかったわぁ」
鼻にかかったような甘えた声で、彼女は笑いながら言う。
「好ましい、というだけだぞ」
「充分よ」
エルフの苦い声にも、彼女はめげずに続けた。自分と彼女の会話は、他人から見たらこういう感じなのだろうか。もっとつれないのだろうか。
「でもねえ」
彼女の声がすこし曇る。
「いつまでつづくのかしら」
「さあな」
「いつまでつづけるの?」
「さあな」
聞いているのかいないのか、それでもエルフは一応返事をする。
無視しないだけ、自分より良心的かもしれない、と彼は思う。
「ねえ」
「何だ」
「何が足りないのかな?」
問いかけに、暫らくエルフは返事をしない。多分返答を考えているところなのだろう。困った顔をしているのか、真顔で考えているのか見てみたい気がするが、それをしたら立ち聞きをしているのがばれてしまう。
「わたしはヤツではないから明確に返答できない」
「そんなのわかってるわよぅ」
彼女は口でも尖らせているのだろう、と顔も見ていないのに表情を思い浮かべる。
「でも、似たような立場でしょ」
「全然違う」
「一緒じゃない、答えを出してないってところでは」
「一緒にするな」
返答に、彼女が納得の行っていないような低いうなり声を出す。
「お前たちほど、単純じゃない」
エルフはぼそりと言う。
「単純とは言ってくれるじゃないのよ」
幾分低い声で彼女が言うと、エルフがため息をついたのが聞こえた。
「アーチーは単に、認めたくないだけというか、意地を張っているだけだろう?」
何を言うか。
好いたことなど一度もない。
反論したいができるわけもなく、彼は歯軋りする。まさかそういう風に理解されているとは考えもしなかった。
「そうかしら。単純かしら。だって自分の気持ちすら認めないやつに、認められなきゃいけないのよ? 結構こんがらがってない?」
「同じ人間同士じゃないか。まとまるまとまらないはアーチーの腹積もりひとつだろう?」
「わたしには決定権がないわけ?」
「お前はアーチーが好きで決定してるんだろう? だったら、あとは相手だけじゃないか」
エルフが疲れたような声を出す。それに対して、彼女はまだ食い下がった。
「アンタは異種族だからダメって?」
「困難が多い、といっている」
「好きになっちゃったら、そういうのは関係ないのよ?」
「わたしはお前ほどパッショネイトじゃないんだ」
呆れにも諦めにも似たような声でエルフが答える。
「あの子があんなに一途に好いてくれてるのに、何が不満なの? わたしだってこんなに一途なのに、アーチーは何が不満なの?」
「アーチーのことはわたしにわかるわけないだろう」
「じゃあアンタはなんなのよ」
「エルフと人では幸せになれない」
「それって、誰が決めたの?」
「誰って」
エルフはそこで言葉をとめる。随分長い間、どちらも声をあげない。
エルフが考え込んでいるのか、それとも回答を放棄したのか。
「誰が決めたの」
彼女の声。
「昔からそう相場は決まってる」
返答になっていないことを、エルフはぼそぼそと呟くように答える。
「昔っていつよ」
「少なくとも、わたしはエルフと人とで幸せになっているのを見たことがない」
「たった140年でしょ」
「お前よりは長生きだ」
「その大半森の中じゃない。あんたどれだけ人とエルフのカップル見たのよ」
「うちの集落にはいなかったが、隣の集落にはいたんだ。ハーフエルフが。エルフの母親と。はっきりいって幸せそうには見えなかった」
「一組じゃない」
「充分だろう」
「旦那が生きてる間は幸せだったかもしれないじゃない」
「その後ずっと不幸せそうだったというのだ」
少しずつ二人とも早口に、そして言葉に力がこもっていく。
ケンカ腰の言葉に、彼はやれやれ、とため息をつく。
恋愛の話など、だからするものじゃない。
「アンタが怖いのは、結局自分の不幸でしょ!? 相手のことなんて何にも考えてないんじゃない!」
ばん、と何かをたたく音がして、それとともに、ばたばたと走り去る足音。
多分激昂した彼女が、机でも叩いて走り去ったのだろう、と彼は予測した。
「自分を優先して何が悪いんだ」
エルフの独り言が聞こえる。
「死なれてからのほうが、ずっと長いんだぞ」
■なんか、これ、スイフリーとクレアの話、というよりは、その二人にかこつけたアーチーとフィリスの話な気がしてきました。
んー、どっちも好きだから、まあ、いいや。
わりと適当に進んでいきます。
「地震?」
ノリスとアーチボルトは口々に言いながら辺りを見る。ノリスはさっきまで階段に座っていたのにもう立ち上がっているあたり、実はかなり実力があるのかもしれない、とアーチボルトは内心思う。もちろん口にはしない。
揺れはすぐ収まった。あたりは静まり返っていて、何の変化も無い。
「しかし……誰もおきてこないというのはどういうことだ?」
アーチボルトは首をかしげる。
「すぐに収まったから寝なおしたんじゃない?」
ノリスは能天気に言うと、再び階段に座ろうとする。アーチボルトはソレを阻止し、ノリスを立たせる。
「どうも納得がいかない。ノリスは右側を見てきたまえ。私は左側を見てこよう」
「何を?」
きょとんとするノリスに、アーチボルトは呆れたような視線を送ってから
「とりあえず二階の、右側だ。異変が無いか見てきたまえ。私は左側を見てこよう。仲間がおきてきていたら、何か無かったか聞きたまえ。1階は2階の確認後、一緒に見に行くぞ」
「じゃあ2階も一緒でいいんじゃないの?」
「2階は仲間が沢山居る。単独行動でも問題あるまい。今は迅速に仲間に被害が無いか確かめるのが先決だ」
「ふーん」
分かっているのか居ないのかよくわからない返答とともにノリス頷く。
「わかった、じゃあ、右側見てくるね」
階段前のスペースでノリスと別れ、アーチボルトは屋敷の左側を見て回る。扉はどれも閉まったままで、変化は無い。こういう騒ぎであれば真っ先にパラサが飛び出してきそうなものだが、それもない。警戒心の強いスイフリーも現状把握に来ない。
(妙だ)
思いながら、廊下の分かれ道まで来る。左側にはパラサの部屋とスイフリーの部屋だ。見える範囲に変化は無い。右手側は暫く長く廊下が続く。行き止まりには窓がある。自分の部屋はこの突き当たりから数歩右側にドアがある。部屋の中を覗いたが、荷物など崩れた様子は無かった。
ココから突き当りまで、向かい合うように部屋は配置されている。左手側、つまり屋敷の外側にはフィリス、ヒースクリフがそれぞれ部屋をとった。右側、つまり内側にはマウナとイリーナ。イリーナが階段側の部屋だ。見える範囲には、そのどれも変化は無い。
一応、念のため廊下の突き当たりまで歩いてみた。窓の外は暗視ができない自分にはよくわからないが、まだ雨は降っているようで窓を雨粒が叩く音がする。
(考えすぎか)
彼は皮肉げに口を吊り上げると、来た道を戻り始めた。相変わらず、仲間が廊下に出てくる感じはなく、辺りは静かなものである。
廊下の曲がり角を曲がる。
とりあえず階段前のスペースでノリスと落ち合ったら、1階の探索だ。
「!?」
彼は屋敷の変化に思わず息を呑む。そしてそのスペースに走った。
「なんだ、コレは!」
思わず叫ぶ。
屋敷は様変わりしていた。
自分とノリスが警戒に当たっていた階段前のスペースの、丁度中央に壁ができていた。ソレはご丁寧にも天井まで達していて、屋敷の右半分と左半分を分断している。階段も、吹き抜けスペースも、二階から見えていた一階のエントランスも、すべてが壁で半分にされている。
「ノリス!」
叫んでみたが、壁の向こうから返事は無い。
振り返って手近なパラサのドアを蹴り飛ばす。返事があってもなくても気にせず、次にスイフリーの部屋のドアを蹴っ飛ばし、そのまま走って廊下の突き当りまで行くと、ヒースの部屋から順番にドアを叩いて回った。
戻った頃には、部屋から出てきたらしいパラサとスイフリーがそれぞれ新たに増えた壁を見て呆然としていた。
■漸くパーティー正式分断!
ちなみに左側パーティーは「アーチー、フィリス、スイフリー、パラサ、イリーナ、ヒース、マウナ」の7人。
厳正なる投票の結果。見事に偏ったパーティーだ。
■友人たちに、好きなキャラを7人挙げてもらって、得票でパーティーわけをしました。
左側パーティーは通称Aチーム。
残りの右側はBチーム。彼らは「1票だけ取った人」で構成されてます。
え?
Aチーム?
……マウナさんが0票だったなんて、口が裂けてもいえません(笑
部屋に居るのは彼と彼女の二人だけで、とても静かだった。
彼はずっと執務机に座って書類を睨んでいたし、彼女はその前に配置された、少々趣味の悪い応接セットのソファに身を沈め本を読み、時折仕事をしている彼を見たりしているだけだったからだ。
会話はない。
彼女は別にそれで構わなかった。彼に追い出されないだけマシだということだ。
とはいえ、流石にその静けさにも飽きてくる。もう随分長い時間こうしていたからだ。
彼女は立ち上がると彼の傍まで歩いていき、近くの窓から外を見た。単純に、窓がその方向にしかないからで、流石に「近寄るな」とまで彼は言わなかった。
窓の外は美しい景色が広がっている。
この窓からは広い庭が一望でき、城を任せている名代が、小さな女の子と喋っているのが見えた。女の子は、仲間の一人が昔世話になった一家の娘で、純真な受け答えをするかわいらしい子どもだ、というのが彼女の認識だった。
「ねえ」
彼女は彼に声をかけるが、彼は返事をしない。
「ねえ」
再び声は宙に浮くだけの結果となる。
「ねえってば」
彼女の声が聞こえているのか居ないのか、彼は未だに反応しない。
「アーチー」
「……なんだ」
低い声で名を呼ばれ、彼は遂に返事をする。相手をするつもりになった、というよりはその低い声に彼女の怒りを感じたからだ。不機嫌になりへそを曲げた彼女から、魔法を使われないとも限らない。今までそういうことはなかったが、これからもない、とは言い切れないのだ。
「クレアのことなんだけど」
彼女は窓の外で女の子に何かを教えているらしい金髪の女性を見たまま話を続ける。彼のほうは見ない。どうせ彼も自分を見ていないだろう、というのが彼女の予想だった。
「クレアがどうした」
「というか、スイフリーのことかな?」
「どっちなんだ」
「じゃあ、スイフリーのこと」
彼女はクレアから目を離さず、仲間の一人であるエルフの名を挙げる。
「スイフリーって、クレアのこと嫌いなのかな? 好きなのかな?」
彼は深々とため息をつく。
彼女は自分のことも他人のことも関係なく、恋愛の話が好きだ。今回は自分に矛先が向かなかったことを喜ぶべきかもしれないが、それでも彼はあまりそういう話をするのが好きではない。苦手分野の話をするのは苦痛なのだが、彼女は言ったって関係なく話を続けるだろう。
「苦手だ、とは公言してたけど」
「そうだな」
彼はぼそりと返事をする。スイフリーとクレアは、かなり特殊な出会い方をした。まあ、自分たちもそういう意味ではクレアと特殊な出会い方だったし、決して幸せで円満な出会いではなかったが。
彼は書類を机に置くと、初めて視線を上げ彼女を見る。予想外にも彼女は窓の外を見たままで、自分を見ては居なかった。まあ、それで全くかまわないのだが。
「わたしね、クレアには幸せになってほしいの」
「ほう」
「ある意味不幸せにしたのはわたしたちだから、っていうのもあるんだけど」
彼女は窓の外に視線を固定したまま、ぽつりという。光を浴びる彼女は綺麗だとは思うが、絶対に口にしない。
「苦手は苦手だろう。スイフリーは柔軟というか屁理屈を体現したような男だし、クレアは理屈というか理想というか、ともかくあまり柔軟ではないタイプだからな。話は合いにくい」
彼は自分のことを棚に上げ、仲間のことを評する。彼のそういうところが不用意で可愛いと彼女は思うが、とりあえず口にしない。折角会話が成り立ったのだ、自分から終わりにする必要はない。
「けど、嫌いでもないわよね?」
彼女の質問に、彼はしばらく考えてから、「だろうな」と返事をした。
「嫌っていたら、そもそもここを任せようなんていわないだろう」
「単に使えると思った、打算だ、とかは言わないんだ」
彼女は彼を見る。彼はふい、と視線をはずした。
「それもあるかもしれないが、そこまで冷徹でもないさ。嫌いかどうかの話だが、スイフリーは二度、人間に殺されかけてる。一度目はアーリア、二度目はクレアだ」
彼女は嫌そうな顔をしてから、それでも頷いた。
「未だにアーリアの評価は地を這ったままだが、クレアのことはそれなりに評価していると見て問題ないだろう。殺そうと考えられたという点では同じだが、評価の相違はどこから来たのか。アーリアは考えを改めなかったが、クレアは自らの断定を疑って、訂正した。そこが大きいだろうな。話が通じない相手は嫌いらしいが、クレアはそうでもない。が、こういう話は当人同士がするべきであって、部外者がするべきではない」
「それは分かってるけど」
彼女は再び庭のクレアに視線を戻す。どうやら剣を教えているらしい、素振りが始まった。
「幸せになってもらいたいのよ」
「そもそも、クレアはスイフリーをそういう対象として考えているかどうかわからないじゃないか」
彼女は呆れた顔で彼を見る。
「だからアーチーはダメなのよ」
「なにがだ」
いきなりダメだといわれ、流石に彼はむっとする。
「あのね、あの子は出世街道から外れたわ。知ってるわよね?」
「まあ」
理由が自分たち、というかスイフリーにあるのだ、流石に知らないとは言わない。
「その出世街道から外れた人が、救国の英雄であるアーチーの名代。お城に住んで領地経営の代行をしてる。……世間的に見れば、あるいみ元々のエリート神官より出世してるわよね? でも、そういう計算をあの子がすると思う?」
「しないだろうな」
コレは断言できる。彼女の性格上、そういう計算はしないだろう。いや、考え付きもしないだろう。ただただ真っ直ぐに、自分の信じる道を進むしかしらない、といっても過言ではないくらい、彼女は正直でまっすぐだ。
「あの子は頼まれたから、ここに居るの。他でもない、スイフリーに頼まれたから、よ」
「だが、クレアはそもそもスイフリーを監視したかったわけだろう? 自分が助けたことは本当に間違いではなかったかどうか」
「そんなの最初だけよ。口実って言っても過言じゃないわ」
「お前がそう思いたいだけだろう」
「そりゃ、宗教的理由から、理由の何割かにはその理由も含まれてるかもしれないけど、もしそういうなら、それはクレアの表向きの理由」
「お前な」
あまり決め付けるな、と付け加える前に彼女はまくし立てる。
「だって、監視したいならここにいちゃダメじゃない。スイフリーは『ココでわたしの帰りを待っていてもらおう』なんていったけど、本当に帰ってくるなんて保障はどこにもなかったのよ? 本当に監視していたいなら、ここで待ってちゃできないじゃない。あの子はね、信じたいの。待ちたいの。本当にスイフリーが戻ってくるのを。宗教上も、心情上も。戻ってくるっていうのは、約束を守ったってことよ。ファリス的にはそれは重要なことだし、それに」
彼女はそこで漸く息をつき、彼を見た。
「例えばアーチーが、とっても好きな人がいたとして」
「居ない」
「その即答はわたしとしてはとっても悔しいけど、想像して。想像力くらいあるでしょ」
「で?」
「そのとっても好きな人が、『ここで1年待っていて。絶対に戻るから』って言って何処かに旅立ったとするでしょ? アーチー、どうする?」
「とても好きな相手なのだろう? なら、待つ」
「1年以上来なくても?」
「待つ可能性は高い」
「わかってるじゃない」
彼女は指をびし、と彼に突きつけると続ける。
「言っとくけど、多分アーチーが名代を頼んでも、あの子来なかったわよ。スイフリーが言ったことに意義があるんだからね」
「スイフリーのほうはただ使い勝手がいいっていう理由だけかも知れんぞ」
「他人の幸せを祈れない人は、自分も幸せになれないわよ」
彼女は言うと、再び窓の外を見る。
「頼られるだけでどれだけ嬉しいか、知らないでしょ」
「しかしなあ」
彼はまだ難色を示す。
「もし、本当にクレアがスイフリーを好きだったとして、でも望むような未来は手に入らないのではないかな」
彼の言葉に、彼女は首をかしげる。
「望む未来って、アーチーはどういうのを想定しているの?」
「愛し合うだとか、結婚するだとか、子を産むだとか、そういうのだ」
「まあ、好きな人とそうなれたら幸せこの上ないけど」
彼女は彼を見る。自分も彼とそういう未来を望んでるつもりなのだが、一向に一方通行なのだ。もしかしたら考えの一端が分かるかもしれないと、彼女はふとそう思う。
「スイフリーはダークエルフにあこがれるだのなんだの口では言うが、あれでエルフであることに対しかなり誇りをもっているようだからだ。レジィナあたりをからかうときに、『人間の少女』ということからもよく分かる。彼は種族間の断絶に、随分敏感だ。クレアは人間だ。生まれてくるのはハーフエルフということになる。彼らは人間社会からもエルフ社会からも歓迎されない存在だろう?」
「好きになっちゃったらそういうのって関係ないわよ」
「あの『理性理論理屈万歳』なエルフでもか? 感情で動くか?」
「……ちょっと自信ない」
彼女の即答に彼は少しだけ笑って、はっとして顔を引き締める。
「ところで、……そもそも『苦手なのに好き』という感覚があるのか?」
「あるわよ。わたし学院にいたころ、真面目で堅物でいつも不機嫌そうですごく苦手で怖いんだけど、すっごく好きで何とかして話をしたい、笑ってほしいなって思う人がいたもん。スイフリーに同じ感覚があるかどうかは別として、苦手だけど好きっていう感覚はあるの」
「そんなものか」
「そうよ」
「経験が裏打ちしてるなら、真実だろうな」
「気になる?」
「いや、全く」
「だからアーチーはダメなのよ」
彼女は笑うと一度大きく伸びをして、ドアのほうへ歩き出す。
「クレアとお茶でも飲んでくるわ。今の話、スイフリーにもクレアにもしちゃだめだからね!」
彼女は彼に言うと、軽やかな足取りで部屋を出て行った。
静かになった部屋で、彼は再び書類に目を落とす。
すこし神経質にも思える綺麗な文字で書かれた書類を見て、クレアらしいと彼は評価する。彼女がスイフリーをどう思っているのか、それは分からないが、幸せになってもらいたい、というフィリスの主張には頷いてもいいと思う。
その思考はノックの音で解除された。
入ってきたのは、さっきまでの話のネタだったスイフリー。手に本を持っていることから、貸した本を返しに来たのだろう。
「さっき廊下でフィリスとすれ違った。妙にご機嫌だったぞ。遂にお前、首を縦にでも振ったのか?」
「振るか」
お前の話だったとは言えず、アーチーは否定するだけにとどめる。
「が、例えばわたしが首を縦に振っていたとして、だったらどうする?」
客は次の本、といいながら本棚をじっと見つめながら返答した。
「驚く」
「で?」
「観念したんやなー、という。あ、あとおめでとう?」
「そこで疑問形か」
苦笑して彼は客を見る。客は続けた。
「が、まあ、首を縦にふるにせよ、横に振るにせよ、そろそろ決着つけてもいいんじゃないか? あ、一度はついたのか。お前が見捨てられて。よかったな、拾いなおしてもらって」
意外な言葉に、彼は呆然と客を見る。
「なんだ、その目」
あまりの沈黙の長さに振り返ったスイフリーは憮然とした顔で彼を見た。
「驚いた」
正直に答える。
「さよか」
短い返答。
「悪い気はしてないくせに」
そういって、口を吊り上げるようにしてスイフリーは笑うと、本を一冊抜き取って彼のほうへやってくる。
「コレ、貸してくれ」
「お前はどうなんだ?」
思わず口から出る。口止めされていたのに、だ。
「何が」
「クレア」
「物好きだと思う」
「で?」
「やめとけばいいのにな、わたしなんか。変な女だ」
自嘲めいた声に、彼はまじまじと客を見た。
予想外の返事。
よほど呆気にとられた顔をしたのだろう、客は「エルフと人では幸せにはなれんよ」
と、そう続けると部屋からでていった。
■一応、すごーくぼんやりとした形で連作をもくろんでます。
本当にそうなるかどうかは、別の話。
到達点は両思いなスイフリーとクレア。周りは茶々を入れまくり。
……本当にそうなるかどうかは、書いてみないと分からない(笑)