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泡だとかぽこだとか。時折ルージュとか。初めての方は「各カテゴリ説明」をお読みください。
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4回戦
「王様はどなたですか?」
「わたしだな」
アーチーが棒を見せる。
「いつの間にかちゃんと参加してるにゅ」
「そういう素直じゃないところがアーチーの可愛いところじゃない」
「可愛いなどというな! さて、何を言っても良いのだったな。ではそうだな、1番。隠し事をキリキリ吐け!」
「……」
スイフリーが棒をテーブルに投げる。そこには1番と書かれていた。
「なんかわたしが当たる回数高くないか?」
「きのせいですよ。もしくは運がないのです」
「日ごろの行いが悪いからにゅ」
「やかましい。そうだなあ、隠し事……」
スイフリーは暫らく考えてから、おもむろに口を開く。
「昨日、テーブルにおいてあったクッキー食べたの、わたしだ」
「お前かー!!!」
アーチーが思わず勢い良く立ち上がる。
「アレはわたしのだったんだぞ!」
「おきっぱなしにするからいけないんだ」
「わたしがお前に聞いたとき、全然知らないと答えたではないか」
「あんなに鬼気迫って聞かれたらそう答えるしかないじゃないか。クッキー数枚で大げさな」
「アレは! オランからわざわざ取り寄せたわたしのお気に入りのクッキーで最後の数枚だったんだぞ!」
「ますますおきっぱなしにするなよ、そんなの」
叫ぶアーチー、返事をするのも疲れ始めたスイフリー。
「勝手に食べるのは良くないよ」
「しかも嘘をついたのですね?」
レジィナとクレアがそれぞれ冷たい目でスイフリーを見る。
「クッキーでここまで怒るあたりも可愛いわよね」
「フィリス姉ちゃん、今ならクッキーでアーチーが競り落とせるかもしんないにゅ」
「そうねー、クッキー焼こうかしら」
「アレは特別だと言っているだろうが!」
「しゃあないなあ」
スイフリーは大げさにため息をつく。
「今度取り寄せてやるから、泣くな」
「泣いてない!」
「どっちが王様かわかんないですよ、さっきから。次行きましょう、次」


5回戦
「王様私ー。漸く回ってきたって感じ」
レジィナが手を挙げた。
「さっきのでぎくしゃくしたから、ちょっと和めそうなお題にしよう」
レジィナはそういうと、全員の顔をぐるりと見回した。アーチーはまだ不機嫌そうだし、原因であるスイフリーはどこ吹く風だ。いつもどおりといえばいつもどおりかもしれない。
「じゃ、2番は歌を歌って」
スイフリーがテーブルに突っ伏した。
「もしかして、またはとこ?」
「皆わたしの番号を知っていて集中攻撃でもしてるんじゃないか?」
「全然番号なんて知らないって。分かってたらスイフリーを指名しないよ。歌なのに。……歌える?」
「バード技能なんてないぞ」
「なくても、歌くらい歌えるっしょ」
「お前は誰の味方なんだ」
パラサにスイフリーは不機嫌な声を飛ばす。「ん? 俺は俺とクレア姉ちゃんの味方―」などとパラサは能天気な返事をした。
仕方なく、スイフリーはぼそぼそと歌を歌う。あまり歌うのは好きではなかったから、ともかく小声だ。
「何歌ってんのかわかんない」
「エルフの言葉ですねー。節回しが独特です」
グイズノーが感心したように頷きながら聞く。
「どうせならもっと楽しそうに歌ってよ」
「無茶いうな! これで精一杯だ!」
歌い終わったレジィナに、スイフリーが反論する。顔どころか、尖った耳の先まで赤い。
「何歌ってたのかさっぱりわかんなかった」
フィリスの言葉に、クレアやアーチーが頷く。
「それが驚きの恋の歌ですよ」
「嘘教えるな! 嘘を! 収穫祭の歌だ!」
「いやあ、実りだとか豊穣だとかいう言葉が出てきたので、すごい比喩なのかと」
「お前なんかラーダから破門されてしまえ」


6回戦
「漸く王様だわ。ほほほ、前から何を言うか決めていたのよ」
フィリスが勝ち誇ったような顔で棒をびしっとアーチーに見せる。
「なぜわたしにわざわざ見せるのだ」
アーチーは疲れたような声で言うと、大げさにため息をつく。
「そりゃ、アンタに関係あるからよ!」
フィリスは胸を張ると、ふふん、と笑う。
「じゃ、王様、命令をどうぞ、にゅ」
「アーチーは王様にキスすること!」
「ちょっと待てー!!!」
アーチーは再び勢い良く立ち上がる。さっきよりも更に勢いが良かったらしく、椅子がガタンと大きな音を立てて倒れた。
「番号だろう? 番号だったはずだろう!? 命令は番号で指定だろう!?」
「あー、言い忘れてましたけど、このゲーム、名指しもオッケーです。今決めました」
「貴様―!!」
けろりと答えるグイズノーに、アーチーが叫ぶ。
「いいじゃないかアーチー、減るもんじゃないし。挨拶みたいなものだ」
「スイフリー、貴様他人事だと思って」
「ばっちり他人事にゅ」
パラサの絶妙なタイミングの言葉に、アーチーは「ぐ」と声を詰まらせる。
コレまでで一番周りが盛り上がっているのを肌で感じながら、アーチーはなんとか、どうにかこの場面を切り抜ける方法を考えた。
そして、ふとひらめく。
「フィリス」
何とか落ち着いた声が出せた。
「なぁに?」
余裕綽々の声が返ってくるのが非常に癪に障るが、しかしこの女はいつだってそうだ。
だからこそ、なるべく自分のペースを崩さないために、話をあわさず聞かないようにしているのだから。
「手を出せ」
「え? 何?」
手のひらを上にして出したその手をとり、裏返す。
爪先まで丁寧に手入れをしているその手はしっとりと美しい。
息を吸い込む。
一瞬だ。
一瞬だ。
心の中で「冷静冷静」と呟き、頭の中では「一瞬一瞬」と言い聞かせ、その甲に軽く唇を寄せる。
そしてすぐに手ごとはなした。
「えーーーーー」
不満そうな声がフィリス本人だけでなく、周りからも漏れる。
「どこへ、といわなかったのが敗因だな」
頬杖をついてその様子を見守っていたスイフリーがぼそりと呟いた。
「ありがとうスイフリー、君が挨拶だと言ってくれなかったらわたしは切り抜けられなかっただろう」
はっはっは、と柄にもなく朗らかな声でアーチーがいい、その言葉を聞いてフィリスが「ギ」とスイフリーとアーチーを交互ににらみつける。
すぐさまスイフリーもアーチーも目をそらしたが。
「さて、アーチーのへたれ弱虫っぷりを堪能したところで次に行きますか」
「待てこら、誰が弱虫へたれだ」
ふー、と息を吐きながら棒を回収するグイズノーにアーチーが低い声を上げるが、彼は気にしたことなくずずい、と全員の前に手を出した。
「7回戦ですよ」


7回戦
「あ、王様でした」
クレアが棒を全員に見せる。
「じゃあ、クレア姉ちゃん、命令をどうぞ、にゅ」
パラサがわくわくしたまなざしをクレアに向ける。クレアは棒を握り締めた手を見つめたまま、動かない。
「困りました、何も思いつきません」
「こんなの、罪のない遊びなんだから、適当でいいのよぅ」
フィリスが猫なで声を上げる。
「本当に罪のない遊びか?」
アーチーはいまだ非難めいた声を上げるが、フィリスは完全にその声を聞こえないふりをする。
「ええ、それは……わかっているのですが」
なるべく罪のない、笑って済ますことができる軽い命令にしたい。
とはいえ、もう大体の命令は出てしまって、なかなか言うことが思いつかない。
「あ、スイフリーにちゅーでもしてもらう?」
「お前は何を言ってるのだ」
「何を言うかスイフリー、挨拶みたいなものではないか」
「そんなこと、俺の目の黒いうちはさせないにゅ」
「あなたの目は茶色でしょう」
フィリスの提案に、スイフリーが半眼になって呆れた声をだし、アーチーは先ほどの恨みを込めてその言葉に突っ込みをいれ、パラサが低い声を上げるとその内容にグイズノーが反応する。
言われた当のクレアは耳まで赤くなってうつむくばかりだ。
「ええ、と」
何か言わなければ、どんどん流されて変な命令をする羽目になる。
長く彼らと付き合ってきたのだ、そのくらいの危機感くらいはさすがに持ち合わせるようになった。
しかし何も考え付かないのもまた事実。
「あ、今日、夜寝るとき、ファリス様に感謝をしてから寝てください、というのは」
「無理」
あっさりと神を信じることのない種族であるパラサとスイフリー、それから異教徒であるグイズノーから却下され、クレアはまた黙り込む。
「何でだろう、王様なのにクレアさんがかわいそう」
レジィナから同情の声が寄せられる。
クレアががくり、と疲れたようにうつむいた。
「もう、これでこのゲームはおしまい、ということで」
「え?」
「ですから、王の命令として、このゲームはこの瞬間を持っておしまい、ということにします」
「えーー、クレア、何も命令しないの?」
「ですから、ゲームの終わりを命じます」
「何にも思いつかなかったのね」
フィリスの言葉に、クレアがこくりとうなずく。
「欲がないわねー」
「お前が欲望まみれすぎるだけだ」
しみじみというフィリスに、アーチーが呆れた声を出す。
「そうかな? 私たち全員、欲は似たり寄ったりだと思うけど」
フィリスは口を尖らせるが、誰からも賛同は得られなかった。

「では、王様が命じられましたので、今回のゲームは終了、ということで」
おひらき、という口ぶりでグイズノーが宣言すると、アーチーはすかさず、「もう二度とやらんぞ、こんなの」などと言う。
「えー、面白かったにゅ、またやろう」
「そうだよ、実は私とグイズノー、ぜんぜん命令されてないし」
パラサの言葉にレジィナがうなずく。
「おや、命令されたかったですか?」
「どうせなら参加したほうが面白いもん」
「ぜんぜん面白くないぞ」
「それはへそ曲がりのアーチーだけにゅ」
「貴様」
「じゃあ、おやすみー」
本気で怒り始めたアーチーを尻目に、パラサはぶんぶんと手を振ると、ダッシュで部屋の方面へ逃げていく。
それを皮切りに、全員がぞろぞろと大広間から出て行く。
「ねえ」
残ったクレアに、フィリスが声をかける。
「ほんとに何も命令しなくてよかったの? スイフリーになんかしてもらえばよかったのに。私はうまくかわされちゃったけどさ」
にやにや笑うフィリスに、クレアは首を横に振る。
「いえ、別に……わざわざ命令形をとる必要もないですし」
息を吐くような声でクレアは言うと歩き出す。
「へ? え? どういう意味それ!?」




■クレアさんの意味深発言はどういう意味かは各自好き好きに予想してもらうとして(苦笑)
スイフリーが当りまくってるのは、全然操作してません。
コレ、ちゃんと「誰が王様で、誰が何番のくじを引く」という一覧を「さいころ様」を使って作ってから書いてます。

コレが一覧表

      A  F  R  G  S  P  C  命令
1回目  4  2  3   6  5  王  1  1と4、見詰め合う
2回目  3  4  1  王  2  5  6   2が5をおんぶして歩く
3回目  1  6  2  5  王  3  4  4番は飲み物もってこい
4回目  王  6  5  2  1   3  4  1番は隠し事をきりきりはけ
5回目  6  1  王  5  2  4  3  2番、歌を歌え 
6回目  5  王  4  2  1  3  6  アーチーは王様にキスをすること
7回目  3  5  4  1  2  6  王  命令なし

ちゃんとさいころ様に聞いたモン。
そしたら全然グイズノーとレジィナがでなかったんだもん。
……本当だよ。

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外は雨。
時刻は夜。
久しぶりに城に戻って、しかも全員がそろってくつろげるというのは珍しい。
室内を照らすのはろうそくの黄色く揺れる光。
幻想的な夜。
……なのに。
そこでフィリスはため息をつく。
何もなさ過ぎてつまらない。
アーチーはずっとテーブルで本を読んでいるし(つまり誰の相手もするつもりはない)、スイフリーは窓際に置かれたソファで居眠りの真っ最中(起きる気配はほとんどない)、パラサはずっとクレアにまとわりつき話を続け、クレアもそれを真面目に聞いている(適当にしておけばいいのに、真面目に聞いてしまうあたりが彼女らしい)、レジィナは色気のないことに大剣の手入れに熱中してるし(話しかけても聞こえてないのか返事もない)、グイズノーはさっきからずっと棒を使って何かを作っているらしく、こちらも熱中していて話もできなさそうだ。
「ああ! もう! つまんない!」
叫んだところで、グイズノーが顔を上げた。
「ええ、つまりませんね。ということで、わたくしが皆様に遊びを提供いたしましょう」
などと福々しいが全く誠意のない、不思議な笑顔をフィリスに向けた。
「遊び?」
胡散臭そうなフィリスの目つきもどこ吹く風、グイズノーは棒をテーブルに置くと全員を見回した。
「どうです? 皆さんも遊びませんか? レジィナの剣の手入れも終わりでしょう?」
「うん、もう終わる」
レジィナは答えると、きちんと剣をしまってから立ち上がってテーブルにやってきた。
「何するの?」
「俺も遊ぶー! 姉ちゃんも遊ぶ?」
パラサはすぐに立ち上がり、隣にいたクレアに尋ねた。
「そうですね、たまには良いかもしれません」
クレアはふわりと微笑むと、パラサに続いて立ち上がった。
「はとこ、起きるにゅ!」
ぺしん、と容赦なくパラサはスイフリーの頬を張る。かなりいい音がした。
「なにをするんだ、はとこの子の子」
「みんなで遊ぶから、はとこも起きて参加するにゅ」
寝起きなのと叩かれたのと、そのわりにたいした用事でもなかったことで、スイフリーはかなり不機嫌な目をパラサに向けたが、そもそもその程度のことは気にされない。
「これでつまらなかったら蹴倒すぞ、はとこの子の子」
ふらふらした足取りでスイフリーはテーブルに向かう。
「なぜテーブルに集まる!」
最初からそこで読書をしていたアーチーが遂に顔を上げた。そこをすかさずパラサが本を奪い取る。
「これで全員そろったにゅ」
「あ、きさま、何をする」
「皆で遊ぶにゅ」
「どうせ一人取り残されたらそれはそれでへそを曲げるでしょ」
パラサに続いて、フィリスがぴしゃりと言うと、アーチーは黙った。
「ではルールの説明です」
グイズノーは笑うと、棒を全員の見える場所に並べて見せた。
棒は端っこに「王」という文字が書かれたものと、数字が振られたものの二種類があった。数字は1~6が書かれている。
「この棒を、文字が見えないように隠し持ちます。そして、全員でいっせいに引きます。すると、王の人と、数字の人にわかれますよね? 数字は見せてはいけません。王様は、好きなことを数字の人に命令することができるわけです。例えば、今すぐここへワインを持ってきなさい、とか」
「おもしろいのか、それ」
不機嫌そうな声でスイフリーが言う。
「ハプニング性がおもしろいんですよ」
「できそうにないことは命令しないというルールを付け足してくれ」
「そんな保守的なゲームはおもしろくないですよ。何でも有りだからいいんじゃないですか」
「ではお前、ドラゴンを一人で退治に行けといわれても行くのか」
「行きませんよ。そんなあからさまに無理な話はしないのが前提なんです」
スイフリーとグイズノーの平行線の会話に、フィリスは笑顔を向ける。
「まあ、ともかくやってみましょうよ。私はもう何を言うか決めたわ」


1回戦。
「ではスタートです」
全員がグイズノーの手から棒を引く。が、一本あまった。
「ちゃんとアーチーも引くにゅ」
「ばかばかしい」
「ほら、コレがあまりですよ」
グイズノーはあまりの棒をアーチーに渡した。
「王様誰ですか?」
「俺! 俺王様!」
レジィナの質問に、パラサは棒をびしっと見せた。棒の端には「王」が刻まれている。
「じゃあじゃあ、命令にゅ。どうしよっかなー」
パラサは数字を予想しているかのようにじっくりと全員の顔を見た。
「じゃあ、1番と4番は5分間見詰め合う! 笑ったらやり直しにゅ」
「それは本当におもしろいのか?」
未だに半信半疑なスイフリーから声が飛ぶが、パラサは気にせず続けた。
「1番誰にゅ」
「あ、私ですね」
クレアが小さく手を挙げた。
「えええええー! じゃあ姉ちゃんと見詰め合えるうらやましい人は誰!? 4番!」
暫らく返事はない。
「誰も返事をしないってことは」
レジィナは目の前のアーチーの棒を見る。
「やっぱり! 返事くらいしなよ!」
「ちょっとー! パラサの馬鹿―! アーチーとクレアが見詰め合って、恋が芽生えたらどうしてくれるのよ!!!」
「俺だって泣きたいにゅ……」
「クレア、こんな馬鹿げたことはしなくても良いぞ」
アーチーは最後の抵抗とばかりに、クレアに言う。
「ルールですから」
規律を旨とするファリスの神官は、あっさりと答えるとアーチーの前に移動する。
「では、時間を計ってくださいね」
「姉ちゃん、俺のこともあとで見つめたってね」
パラサは泣きそうな声とともにため息をついた。
アーチーとクレアは無言で見つめあう。
クレアのほうは淡々としたものだが、アーチーのほうは途中から息苦しいものを感じ始めていた。理由はフィリスとパラサからの重圧と、クレアの目のせいだろう。ファリス神官の、不正は一切許しませんという目が自分を見据えているというのは、なかなか恐ろしいものかもしれない。いくら後ろ暗いことがほとんどなくても、だ。
内心少々スイフリーに同情する。もしかしたら彼らの間には恋とか愛とかあるのかもしれないが(本当のところは全然分からないが)、あったとしてもこの目はかなりきついのではないだろうか。特にスイフリーには。
「はい、5分」
不機嫌なパラサの声で、解放される。
「ね、おもしろいでしょう?」
「どこが」
グイズノーの言葉に、フィリスとパラサ、アーチーの声が一斉に反論したが、彼はその全てを黙殺した。
「はい、二回戦二回戦」


2回戦
「おや、王様はわたくしでした」
グイズノーが棒を見せて笑う。
「では、2番は5番をおぶって、部屋を一周してください」
「それっておもしろいの?」
「パラサが下になったらどうするのだ」
レジィナとアーチーが一斉に口を出す。
「パラサが下だったら、番号を変更します」
「それって、パラサは絶対に下にならなくてお得じゃない」
返答に今度はフィリスが突っ込みを入れたが、彼は取り合わず全員を見た。
「で? 2番と5番は誰です?」
パラサとスイフリーが手を挙げた。
「わたしが5番だ、何が悲しゅうてはとこの子の子をおぶって部屋を一周せにゃならんのだ。しかもこの部屋、城で一番広いじゃないか」
「はとこ、ゲームゲーム」
おんぶ、と言いながら手を広げるパラサの額に、一度チョップを入れてから、スイフリーはパラサを背負う。
「うひょー、いつもより視点が高いにゅ。はとこ、右、右。右からー」
「あとで覚えとけよ」
足をぶらつかせ、ご機嫌な声で方向を指示するパラサに、低い声でスイフリーは返事をすると、それでも歩き出す。非力なエルフといえ、背負っているのは更に非力かつ小さなグラスランナー。それといってハプニングも起こらず無事に部屋を一周してテーブルに戻ってくる。
「これはちょっとおもしろかった」
「ね、ハプニング性でしょ?」
にやにやするフィリスに、同じくにやりと笑ってグイズノーが答える。テーブルの下でスイフリーはグイズノーのスネを蹴ろうとしたが、ちょっと遠かったから断念した。


3回戦。
「では三回目ですよ。王様はどなたですか?」
「わたしだ」
スイフリーが棒をテーブルに放り投げた。
「言うことは決めてある。寝起きでノドが乾いてるんだ。さっき無駄に部屋も歩かされたしな」
舌打ちするとスイフリーは全員を見る。
「4番、水持ってきてくれ。飲む」
返事もなく、すくっとクレアが立ち上がる。
「姉ちゃん、どうした?」
「4番なので」
「ついでに菓子かなんかもほしい」
「夜遅いですから、食べないほうがいいですよ」
追加注文したスイフリーに、クレアは答えると部屋を出て行く。暫らくして戻ってくると、それでもトレイの上には飲み物のほかにラスクが数枚載せられていた。
テーブルに戻ってくると、飲み物をスイフリーの前に置く。
「コレでよかったですか?」
「ああ」
渡された水を飲み、スイフリーは椅子にだらしなくもたれかかる。
「何かすごーく詰まんないにゅ」
「そうね、コレは詰まんなかったわね。もっとドラマチックなことしなさいよ、二人とも」
「そうは言われましても」
困惑しながら、クレアは席に戻る。
「他に何も言われてませんし」
「あーん、詰まんない! 次行こう次!」



■そもそもは、自分の絵板http://www10.oekakibbs.com/bbs/magumagu/oekakibbs.cgiに落書きした、パラサをおんぶするスイフリー、というのものに端を発するしょーもない話です。
友人が「王様ゲーム?」と言うてくれて、それが面白そうだったから採用しただけです。
したらば、思わぬ長さに。
というわけで、後半に続く。

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「クレア、貴女に会いたいという人が来ていますよ」

そう声をかけられ、慌てて言われた場所へ行くとそこにいたのはパラサさんだった。
神殿に、神を信じないものは来ない。
ゆえに、グラスランナーを間近で見る機会は少ない。そもそもアノスで彼らを見ること自体がほとんどないためか、同僚たちも少々遠巻きに彼のことを見ている。が、当の本人はそんなことを全く気にしていないようで、私の姿を見つけるとにっこり笑って大きく手を振った。
「ねーちゃーん!」
ついでに飛び跳ねてまで居る。元気なことだ。私は苦笑して彼に歩み寄る。同僚たちはますます不可解、という顔をした。
「姉ちゃん!」
「どうしたのですか? 今日は何の御用でしょうか?」
首をかしげると、パラサさんはにぱ、と笑う。
「この前はお疲れ様でした、にゅ」
「この前?」
私は首をかしげる。何かあっただろうか。
パラサさんはジェスチャーで私にしゃがむように指示しながら、「耳かしてー」と言う。言われたとおりにすると、彼は耳元で楽しそうに言った。
「海、一緒に行ったっしょ?」
「ああ」
私は頷く。少し前、彼らと共に海まで確かに出向いた。カルプラス伯の船の積荷を回収しに行くという彼らの仕事に無理やりついていっただけなのだが。
「それでね?」
パラサさんはごそごそとカバンの中を探りながら話を続ける。
「手ぇ、出して欲しいにゅ」
「こうですか?」
握手をするように手を出すと、彼は「手のひら上ー」と言って私の手を上に向けさせた。
「これ、あげるにゅう」
そういって、私の手の中に細長くて薄い箱を載せた。あまり重くはない、何の変哲も装飾もない紙の箱だった。ただ、紙自体は硬く、白と桃色でかなり綺麗な箱。
「なんですか?」
「あけてー」
言われるがままにあけると、そこには1本のネックレスが入っていた。ネックレスには彼らが海で回収したときに見せてもらったフレアストーンで作られた小さな花がついていてなかなか可愛い。かなりシンプルなデザインだが、フレアストーン自体が発光するせいか、少々派手でもある。
「これは?」
「ん? これは姉ちゃんの取り分。一緒に海にもぐってもらったし、何回か治癒の魔法使ってもらったっしょ?」
パラサさんは首を傾げて見せた。
「こんな、受け取れませんよ。私は無理やりついていっただけですし、目の前の悪を殲滅するために戦ったのですから。これはあなた方のものでしょう?」
「いいんだにゅ、気にしないで受け取って欲しいにゅ。大して高いものでもないから申し訳ないくらいにゅ」
「しかし」
私は箱の中のネックレスを見る。ピアスを何度か買ったことがあるから、装飾品が安くないのは知っている。それに確か、宝石は何の加工もしてなかった。ここにあるのはネックレスであるから、あの宝石をわざわざ加工したことになる。
しかも今回は宝石自体まず珍しいものであるから「高くない」というのは明らかにウソだろう。尤も、彼らにとっては高くないのかもしれないが。

ともかく、自分の働きが、これに見合っていたとは思えない。

「やはり受け取れません。私はこれを頂くような働きはしていません。無理についていったのですし」
「んー、でも、貰ってもらわないと困るにゅ」
「どうしてですか?」
「んー」
パラサさんはそこで暫く黙った。眉を寄せて、どうやって言えばいいかなあ、などとぼそぼそ独り言を言う。
「もう加工しちゃったから、売っても半額になるだけだし、誰も使わないから、最初の予定通り姉ちゃんが持ってるのがいいにゅ」
「使いませんか?」
「フィリス姉ちゃんはもっと派手なのが好きにゅ。レジィナ姉ちゃんはその石で別のネックレス作ったにゅ。で、オレやはとこやグイズノーやアーチーがソレ持ってたら気持ち悪いっしょ?」
言われて想像してみる。確かにフィリスさんはもっと派手なのがお好みだろうし、レジィナさんが同じようなものを2個も3個も持ちたがらないのも分かる。男性陣が嬉々としてこのデザインのネックレスを使用するとは思えない。
「ええ、まあ、そうですね」
「じゃあ、姉ちゃん使ってね」
「……」
「ホントに高くないから気にしなくていいにゅ。全員納得してるし。……あ、デザインが嫌い?」
「いえ。そういうことは……」
「じゃあ、姉ちゃん使ってね」
「本当に皆さん納得しているのですか?」
「うん。報酬交渉役のはとこが提案したから誰も何にも言わなかったっていうか、フィリス姉ちゃんが大喜びしてたにゅ」
「スイフリーさんが? それになぜフィリスさんが大喜びを?」
不思議なことを言うパラサさんに首を傾げて見せたら、彼は同じように首を傾げて見せた。
「変?」
「別に変とかでは……」
「姉ちゃんがはとこを殺そうってしたのも、監視してたのもホントだけど、でも魔法使って一緒に戦ってくれたのもホントだから気にしないでいいにゅ。はとこも言ってた。『もしあの女がぐだぐだ何やら抜かすようであったら、少々固い頭を柔らかくしたらどうだ、世の中には「それはそれ、これはこれ」という言葉もあるのだ、とか何とかいってやれ』って。そのネックレス分がはとこからの評価分なんだと思うにゅ。はっきりって安すぎだし値切りすぎだし不当だと思うにゅ。姉ちゃんはもっと貰ってもいいはずにゅ」
「はあ」
口を尖らせるパラサさんをまじまじとみて、それからネックレスをもう一度見る。彼ら冒険者の正当評価というのがどういう値段になるのか全く見当つかないが、波風を立たせないためにも貰っておくのがよさそうだ。
「では、遠慮なくいただきます。皆さんに、ありがとうございますと伝えてください」
「わかったにゅ! じゃあ、姉ちゃんまたね! 皆待ってるんにゅ。今からちょっとお城見に行って来るにゅ。また会いに来るにゅ」
最後のほうは物凄い早口で言うと、パラサさんは走っていってしまった。あっという間に見えなくなる。
何処かにこれからまた出かけるらしい。
「皆さんどうかご無事で」
背に呟き、私は仕事に戻る。

 

後日、このネックレスがかなり高価であることが判明して青ざめるのはまた別の話。



■おまけ・一方その頃■
F 「アンタも素直じゃないわねー。クレアに贈り物したいなら普通に渡せばいいじゃない」
S 「アレは報酬だ、何でわたしがあの女に贈り物せにゃならんのだ」
G 「その割りに真面目にデザインしてたじゃありませんか」
S 「ああいうタイプは宝石のまま貰ったって途方にくれるだけだろうが」
G 「良く見てますよねえ、デザインのときも派手すぎず地味すぎずとか言ってましたし、性格まで。あなたの愛がいつそこまで発展したのか、わたくしとしたことが全く気付きませんでしたよ」
S 「……正当報酬渡して何が悪いんだ」
F 「悪いなんて言ってないわよぅ、ただ良く見てるわねえ、好きなのねえって言ってるだけじゃない」
G 「いつそんなに観察してたんですか。わたくし、あなたの彼女への熱視線に全く気付きませんでした。ああ、勿体無いことをしました」
S 「解呪の時暇だっただけだ!」
G 「そんな前から!」
F 「あんた愛が深いタイプだったのねえ」
S 「……だから!」
A 「スイフリー、口を開くたびに墓穴掘ってるぞ」


2007/07/04

拍手[1回]

この城には時折城主たちがふらりと戻ってくるのは良くある話ではあるのだが、ソレが全員そろってと言うことはまずない。姿の見えない暗殺者に命を狙われていることも手伝って、いつも彼らは少人数で行動している。ゆえに戻ってきても2人のことが多く、今日のように全員がそろうのを見るのは、何ヶ月ぶりだろうか。
それぞれ、いつも適当な土産を持って現れるのだが、そのゲームは北のほうを旅してきたというグイズノーとレジィナの土産に混じりこんでいた。
「チェス、と言うらしいですよ。プリシスでは割と流行っているそうです」
「ルールも一緒に買ってきたんだよ」
言いながらも、彼らは全然それに触ろうとしない。流行っているから思わず買ったが、興味は全くなかった、ということだ。
「どうやって遊ぶん?」
パラサが箱を開けながら尋ねても、グイズノーもレジィナも「さあ?」と答えるにとどまった。
「ソレは二人で遊んで、対戦して遊ぶんだ」
「アーチーやったことあるん?」
「ある。私に似合いの、知的なゲームだ」
「……へぇ」
パラサは何か言いたげに口の端を吊り上げ、しかし相槌のみ打っただけだった。
「やって見せて」
「……だから、二人でやるゲームなんだ。見せるも何も、他にルールを知っている者はおるまい?」
「はとこー、はとこは知らないの?」
「存在は知ってる、ルールは知らない」
興味なさげに窓際のソファに座り込んでいたエルフから、そっけない返事が戻ってくる。半分眠っていたせいか、目が不機嫌そうだ。
「フィリスにでも覚えさせればいいだろう。アーチーと遊べるとなればルールくらいすぐ覚えるぞ」
そういって大あくびをすると、目を閉じる。多分暫くは話しかけても返事はないだろう。
「私が何?」
名前が聞こえたのか、クレアと共に紅茶の用意をしていたはずのフィリスが大広間にやってきて尋ねる。
「全くなんでもない」
アーチーの返答にフィリスはむっとしたような顔をして、パラサを見る。
「何があったか教えてくれるわよね、パラサ」
「姉ちゃん、チェスって知ってる?」
「なにそれ」
フィリス、即答。
「では話にならん」
「えー、なによぅ、それ」
アーチーの言葉にますますフィリスは不機嫌そうな顔になる。
「ゲームですよ、お姉さん。何でも二人で遊ぶゲームで、ルールを知ってないと遊べないらしいです」
「それで? 私が知ってるかもって話?」
「いいえ。アーチーがスイフリーを誘ったら、スイフリーがフィリスとやればいいじゃないか、と言ったって話です」
レジィナの返答に、フィリスは形の良い唇に笑みを浮かべた。
「なによぅ、スイフリーったら、いいこというじゃないのよ!」
そしてつかつかと窓辺のソファによっていくと、スイフリーの肩をばーん、と叩く。唐突に叩かれ、しかも結構勢い良かったせいで、スイフリーはソファに横倒しにされる。
「……」
その状態で無言の抗議な目つきをフィリスに向けたが、彼女はどこ吹く風だ。
「いいじゃない起きなさいよついでに。おやつ用意できたから。アンタにはちょっと多めにあげるわよ! いいこといったから!」
「……わたしが寝ている間に何があったんだ?」
「なんか色々にゅ」


全員そろってのおやつが終わり、アーチーとフィリスがテーブルに向かい合って座る。一方は目をキラキラと輝かせ、もう一方は苦虫を噛み潰したような顔をしているが。
「いいか? まずこの駒が……」
説明は長かった。
やたら長かった。
すぐにグイズノーが脱落し、ついでレジィナとパラサが脱落した。フィリスも脱落したかったが、アーチーが相手なので何とか耐えた。
「つまり駒を操ってこの王様っていうのを取れば勝ちなのね?」
「そうだ」
「じゃあ、やってみましょ?」

一度でもやったことがあるアーチーがレクチャーしながらのゲームだったからか、割とあっさりと決着はついた。
「うー、何が面白いのこれ?」
負けたフィリスは眉を寄せて、ポーンをいじりながら上目遣いでアーチーを見る。
「何がって……」
言われても答えに窮する。アーチーとて遊ぶのは2回目であるし、1回目は惨敗で遊んだうちに入らない。
「……」
暫く沈黙。
「なあ、わたしもやってみたい」
ずっと隣で見ていたスイフリーが手を挙げる。
「あんたやりたくなかったんじゃなかったの?」
フィリスが呆れた、といった顔をしてエルフを見る。
「さっきは眠かったんだ」
「ルール説明いるか?」
「見てたから分かる」
「じゃあフィリス、どけ」
アーチーの言葉に、思わずフィリスはテーブルの下でアーチーのスネを蹴り飛ばし、ついでにエルフのスネも蹴り飛ばす。
「もっといいようがあるだろうアーチー……」
椅子に座ってスネをさすりながらスイフリーは抗議の目を彼に向けたが、彼は返事をしなかった。


「夜食です」
クレアの言葉に彼らは顔を上げる。
「熱中するほど面白いですか?」
すとん、と二人がみえる位置の席に座り、彼女はテーブル上の黒と白で統一された盤面を見る。ルールが分からないのでさっぱり意味が分からない。どちらが勝っているのかすら分からなかった。
「まあ、それなりに」
ややあって、スイフリーからの返事がある。が、こちらを見ては居ない。盤上の駒をじっと見据え、腕組みをしたままだ。時折顎や額に手を持っていく。考え事をするときの癖だ。
「少なくともフィリスとしたときよりは楽しい」
「フィリスさんが怒りますよ」
アーチーからの返答にクレアは苦笑する。
「よし、これでどうだ」
「お、そう来たか」
スイフリーが黒の駒を動かす。アーチーが嬉しそうな声を上げた。
「さっぱり分かりません」
クレアは苦笑して、それでも暫く二人のやり取りを見続ける。ルールは分からないが、それなりに白熱しているのだろう。二人とも盤を見つめたまま、夜食に出したパンを頬張っている。行儀が悪いから注意したいが、ここまで熱中しているのを邪魔するのもどうだろうか、とも思う。
「飲み物あったらくれ」
盤を見つめたままスイフリーが言う。用意をしてから声をかけると、手だけが伸ばされた。
「よそ見してるとこぼしますよ」
注意で漸くこちらを見る。とはいっても、ソレはマグカップに注がれる視線であり、別にクレアを見るわけではない。が、考え事をしているときのスイフリーの目が、一瞬見えた。

鋭く、真実をえぐっていく目。
本質だけを見ていく目。
その瞬間には、全も不善もない。
その後それをどう扱うかというのは別の話。
全てに平等に注がれる観察者の目。
クレア自身、妄信的になって硬直していた頭を、その瞳で射抜かれた。
そして気付かされ、引きずり出され。


「こぼすか」
馬鹿らしい、といった口調で彼は言いつつマグカップを受け取る。そしてすぐに盤上に目を戻した。長い髪に隠れて、もうその表情は見えない。尖った鼻先と、同じように鋭角な顎が見えるだけだ。

暫く見ていたが、完全にゲームは膠着状態らしい。二人とも考える時間がとても長いのだ。眠気もあって、流石に見ているのもつらくなる。
「あの、あまり夜更かししないでくださいね」
仕方ないので声をかけて立ち上がった。
「ああ、夜食ありがとう、クレアさん。程ほどにして眠るから、心配は要らない」
アーチーからの返答だけがあったのは、スイフリーが丁度考え込むタイミングだったからだ。
「はい。では、おやすみなさいませ」
ドア前で一度お辞儀をして顔を上げたら、スイフリーが面倒くさそうに手だけを振っているのが見えた。

 

「あんたたち、またやってんの!? すきねー、そういうの!」
呆れたような声を上げるフィリスに、二人は顔を一瞬だけ上げた。
どちらも目が据わっている。少々疲れが出てきた顔だ。
「何回目? もー、馬鹿ねー!」
「また、じゃなくて、まだ、だ」
「は?」
アーチーの不機嫌そうな声に、フィリスは首をかしげる。
「よし、これでどうだ、チェックメイト!」
「がー!」
スイフリーの声にアーチボルトが頭を抱えて叫び声を挙げる。
「もしかして二人とも、あれからずーっと今までやってたのですか?」
グイズノーの言葉に、返事はなかった。

「寝てる」
「阿呆にゅ」
ゲームが終わって二人はテーブルに突っ伏してそのまま眠りにつく。
「とりあえず、額に馬鹿とでも描いておきましょうか」
グイズノーがにまにまと笑う。
「いいわね、それ」
「オレなんて書こうかなー!」

異変に気付いたクレアとレジィナが止めに入るまで、彼らの顔はキャンバスになり続けたとか。なんだとか。



■最初はクレアさんの出てるシーンはもうチョット長くて、某エルフに対する好意がしっかりかかれてたりしたのですが、読み直して「いやそれはないな」と思ったのでやめてみました。

クレアさんがスイのこと好きになる経過をかいてみたいなあと思ったりする今日この頃。
GMがスイクレを狙っていると公言しているんだから、クレアさんの気持ちは(本人の自覚はともかくとして)スイにむいてるのが公式だよね。
そうすると立場はフィリス姉さんと変わらなくなるのだが(片思いという点で)

2007/07/04

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部屋の中は夕日で金色に染まっていた。
辺りは静かで、彼と、ベッドに横たわる彼女しかいない。
随分長い時間が過ぎたのだ、と彼は今更ながらに自覚する。
ベッドに横たわる彼女は、もう随分目を開けていない。
生きているのは分かる。精霊がまだ弱々しくも働いているからだ。
もう何度目になるだろうか、と思う。
彼の中を流れる悠久にも近い時間は、まだ彼にその終わりを見せはしないだろう。
ところがどうだ。
仲間に与えられていた、彼からみたら一瞬のような有限の時は、どんどんその終わりを見せていった。
最初に居なくなったのは、意外にも一番歳若かった仲間だった。
その時初めて、物事は順番どおりには進まないのかも知れないと思った。
一番最近居なくなったのは、最後まで結局神に見放されなかった仲間だった。
いつかは神に見放されると思っていたのだが、結局神は寛容だったらしい。
そして。
ついに彼女も居なくなるのだ。
人間になど、興味を持たなければ良かった。
いや、違う。
興味をもったからこそ、出会ったのだ。
……出会いは不必要だったか?
それもちがうな。
彼は自問自答する。部屋の中はまだ金色。
今は真っ白になってしまった彼女の、出逢った頃の髪の色。
彼女がうっすらと目をあける。
「      」
長い長い空白。
やがてゆるりとつむがれた言葉に、彼はきこちなく頷いた。
それをみて、彼女は嬉しそうに頷いた。
そして、恐ろしいまでの沈黙がやってきた。
もう、呼吸の音さえ聞こえない。

ああ。

自分はまた取り残されたのだ。
……因果なものを愛してしまった。

彼は、もう動かない彼女に口付けて、それから約束を守るために立ち上がる。
仲間と手に入れた居城は、このまま仲間の子孫が守っていけばいい。
もうここへは戻らない。

 

 

「……最悪だ」
起き上がって眉間を押さえる。
多分自分は泣いていたのだろう、と彼は思う。目の辺りを擦りたいが、擦った手の甲に涙などつこうものなら、多分卒倒してしまう。
どうしてあんな夢をみたのだろうか、と少し考える。
漠然と。
本当に漠然とした未来。
その時、自分が皆から取り残される事くらい分かりきっている。
それで泣くことなど、ありえないと思っていたのに。
いや、違う。
取り残されたから泣いたのではないだろう。
夢で死んでしまったのは?
分かりきった答えに、彼は今度こそ気を失いたい気分で大きく息を吐く。

今のところ気づかない振りをして放ったらかしにしてある事象に、そろそろ結論をつける日が近付いたのかもしれない。

が。


「知った事か」


彼は吐き捨てるように言うと、自室を後にした。

 




誰の話か、なんて聞くのはなしですよ(笑)

結局、夢オチにしちゃいましたけど、最初は普通に「彼女」の死に立ち会う「彼」の話でした。
そこには「はとこの子」も居ましたし、「仲間の子孫」も居ましたが。


……挫折したんだ(笑)


基本的に死にネタというのは嫌いなんですけど(なんか安易な悲劇性がイヤ)、なんか思いついちゃったから書いとこうか、という感じで。

2007/04/12

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