泡だとかぽこだとか。時折ルージュとか。初めての方は「各カテゴリ説明」をお読みください。
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小部屋からは一本の細い通路が延びている。相変わらず赤黒い壁と、その壁や床を這い回る同じ色の管の景色は変わらない。壁や床はうっすらと濡れていて、ライトに照らされててらてらと光っている。通路は本当に細く、並んで歩くことは出来なかった。
「なーんか、気味がわるいにゅ」
言いながらも軽い足取りでパラサは先頭を歩く。すぐ後ろにいるのはイリーナで、鎧の重い音が今は心強い。
「邪悪の巣窟って感じです!」
「何も居てくれないほうがありがたいんだがなあ」
邪悪を討ちたいのであろう声に、スイフリーはため息混じりに呟く。一切の悪を許さないという感情に、随分慣れたつもりではあるが、わざわざ波風立てる勢いで悪に立ち向かわなくてもいいじゃないか、とも思う。戦わずして勝てたらそれに越したことはない。まあ、もっとも、それはそれで謀略といって眉をひそめるのだろうが。
通路は暫く行ったところで左に曲がった。すぐ先にまたもや左への曲がり角が見える。角から角への間にはドアがある。
「にゅ? どうする?」
パラサが仲間を振り返る。
「どこに何があるかわからないから、開けていけ。これだけ妙な建物だ、屋敷の真ん中に出口がないとは言い切れん」
アーチーの言葉にパラサは頷くと、ドアにささっと近づいて様子を見る。
「罠なしー、鍵なしー、開けるにゅ」
ドアはあっけなくあいた。中は奥に細長い部屋で、ざっと見たところ何もなかった。
「何にもなさそうにゅ」
「では無視だ。奥まで行って何もなければ、戻ってきて探ってみよう」
アーチボルトの返答に、パラサは頷く。
「探さないんですか?」
意外に思ってマウナはアーチボルトを見上げる。
「他にもっと手がかりのある部屋があるかもしれない。そこで時間を使ったほうが良いだろう。時間は有効に使ったほうがいい」
角を曲がって、先に進む。相変わらず通路は細く、陰鬱な赤黒さが続いている。しばらく進むと、再び曲がり角が見えてきた。今度は右折になっている。
「一本道だっていうのが気に入らないな。罠に向かって歩いているみたいだ。こっちへ来いって感じだな」
ヒースはため息と共に肩をすくめる。
「でも、他に道がないのも事実でしょ? 奥まで行って何にもなかったら、もう仕方ないから上へ戻って壁の一つも壊せばいいのよ」
「どんどん大雑把になっていくな」
フィリスの答えに、ヒースは苦笑する。作戦を立てるときは慎重にああでもないこうでもないと話し合うくせに、いざ実行に移すとかなり力押しなのが、アノスの冒険者たちの特徴だ、と彼は思う。
(力押しが似合うとは思えないんだがなあ。魔晶石の差か?)
普段イリーナの怪力と鉄の塊のようなグレートソードを見ているせいか、彼らのリーダーであるアーチボルトが持っている剣はいまいちぴんと来ない。細いし、軽そうだ。多分自分でも簡単に扱えるだろう。
まあ、戦う姿を見たことがないから、何ともいえないのだが。バスの話では、ローンダミスと同じぐらいの実力らしいが、何せココまで出てきた敵らしい敵といえばゴブリンや野犬程度。大体がスイフリーの出会いがしらの魔法で話は終わってしまう。
「なあ、アーチーって、強いんだよな?」
尋ねると、フィリスが冷たい目でヒースを見た。
「当たり前でしょう」
「……ですよネ? すみませんでしたお姉サマ」
通路はその後、暫く真っ直ぐに伸びていた。右手側に2枚扉があって、角に近いほうの部屋には何もなかった。奥のほうの部屋は、随分広くて、向かい側の壁に出口といっても良いような扉があるのが見える。
奥側の部屋がこれまでと大きく違うのは、右手側の壁にあたる部分が全て鏡でできているということだった。
「どんな道楽かしら……小さな手鏡だって物凄く高価なのに、壁一面鏡張りなんて……」
マウナは恨めしそうな顔で鏡を見る。
「姿見じゃちょっと物足りなかったのよね。こういうの、城に据えない?」
「城のどこにだ」
「エントランスとか」
正反対の感想を述べるフィリス。苦い顔で返答するアーチボルト。
「鏡には何も異変はないか?」
「実害ある罠とかはなさそうにゅ。継ぎ目もないし」
あくまで現実的なスイフリーとパラサ。
「いつ見ても俺様は惚れ惚れするくらいの男前だな」
「兄さん、そういう場合じゃないですよ」
鏡に映った自分を色々な角度からみるヒースと、それを呆れた顔で見るイリーナ。
「イリーナもたまには鏡を見て色々考えたほうがいいぞ」
「色々?」
「強く見えるマッチョなポーズとかだな」
ごす、と鈍い音と共にヒースが後頭部を押さえてうずくまる。
「さあ! 邪悪目指して突き進みましょう!」
「だから居ないほうが良いと言うのに」
拳を振り上げ力説するイリーナの後ろで、スイフリーがぼそりと呟いた。
■気を抜くとフィリスとマウナが喋りません。
……バスほどじゃないけど。
「なーんか、気味がわるいにゅ」
言いながらも軽い足取りでパラサは先頭を歩く。すぐ後ろにいるのはイリーナで、鎧の重い音が今は心強い。
「邪悪の巣窟って感じです!」
「何も居てくれないほうがありがたいんだがなあ」
邪悪を討ちたいのであろう声に、スイフリーはため息混じりに呟く。一切の悪を許さないという感情に、随分慣れたつもりではあるが、わざわざ波風立てる勢いで悪に立ち向かわなくてもいいじゃないか、とも思う。戦わずして勝てたらそれに越したことはない。まあ、もっとも、それはそれで謀略といって眉をひそめるのだろうが。
通路は暫く行ったところで左に曲がった。すぐ先にまたもや左への曲がり角が見える。角から角への間にはドアがある。
「にゅ? どうする?」
パラサが仲間を振り返る。
「どこに何があるかわからないから、開けていけ。これだけ妙な建物だ、屋敷の真ん中に出口がないとは言い切れん」
アーチーの言葉にパラサは頷くと、ドアにささっと近づいて様子を見る。
「罠なしー、鍵なしー、開けるにゅ」
ドアはあっけなくあいた。中は奥に細長い部屋で、ざっと見たところ何もなかった。
「何にもなさそうにゅ」
「では無視だ。奥まで行って何もなければ、戻ってきて探ってみよう」
アーチボルトの返答に、パラサは頷く。
「探さないんですか?」
意外に思ってマウナはアーチボルトを見上げる。
「他にもっと手がかりのある部屋があるかもしれない。そこで時間を使ったほうが良いだろう。時間は有効に使ったほうがいい」
角を曲がって、先に進む。相変わらず通路は細く、陰鬱な赤黒さが続いている。しばらく進むと、再び曲がり角が見えてきた。今度は右折になっている。
「一本道だっていうのが気に入らないな。罠に向かって歩いているみたいだ。こっちへ来いって感じだな」
ヒースはため息と共に肩をすくめる。
「でも、他に道がないのも事実でしょ? 奥まで行って何にもなかったら、もう仕方ないから上へ戻って壁の一つも壊せばいいのよ」
「どんどん大雑把になっていくな」
フィリスの答えに、ヒースは苦笑する。作戦を立てるときは慎重にああでもないこうでもないと話し合うくせに、いざ実行に移すとかなり力押しなのが、アノスの冒険者たちの特徴だ、と彼は思う。
(力押しが似合うとは思えないんだがなあ。魔晶石の差か?)
普段イリーナの怪力と鉄の塊のようなグレートソードを見ているせいか、彼らのリーダーであるアーチボルトが持っている剣はいまいちぴんと来ない。細いし、軽そうだ。多分自分でも簡単に扱えるだろう。
まあ、戦う姿を見たことがないから、何ともいえないのだが。バスの話では、ローンダミスと同じぐらいの実力らしいが、何せココまで出てきた敵らしい敵といえばゴブリンや野犬程度。大体がスイフリーの出会いがしらの魔法で話は終わってしまう。
「なあ、アーチーって、強いんだよな?」
尋ねると、フィリスが冷たい目でヒースを見た。
「当たり前でしょう」
「……ですよネ? すみませんでしたお姉サマ」
通路はその後、暫く真っ直ぐに伸びていた。右手側に2枚扉があって、角に近いほうの部屋には何もなかった。奥のほうの部屋は、随分広くて、向かい側の壁に出口といっても良いような扉があるのが見える。
奥側の部屋がこれまでと大きく違うのは、右手側の壁にあたる部分が全て鏡でできているということだった。
「どんな道楽かしら……小さな手鏡だって物凄く高価なのに、壁一面鏡張りなんて……」
マウナは恨めしそうな顔で鏡を見る。
「姿見じゃちょっと物足りなかったのよね。こういうの、城に据えない?」
「城のどこにだ」
「エントランスとか」
正反対の感想を述べるフィリス。苦い顔で返答するアーチボルト。
「鏡には何も異変はないか?」
「実害ある罠とかはなさそうにゅ。継ぎ目もないし」
あくまで現実的なスイフリーとパラサ。
「いつ見ても俺様は惚れ惚れするくらいの男前だな」
「兄さん、そういう場合じゃないですよ」
鏡に映った自分を色々な角度からみるヒースと、それを呆れた顔で見るイリーナ。
「イリーナもたまには鏡を見て色々考えたほうがいいぞ」
「色々?」
「強く見えるマッチョなポーズとかだな」
ごす、と鈍い音と共にヒースが後頭部を押さえてうずくまる。
「さあ! 邪悪目指して突き進みましょう!」
「だから居ないほうが良いと言うのに」
拳を振り上げ力説するイリーナの後ろで、スイフリーがぼそりと呟いた。
■気を抜くとフィリスとマウナが喋りません。
……バスほどじゃないけど。
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