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泡だとかぽこだとか。時折ルージュとか。初めての方は「各カテゴリ説明」をお読みください。
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4回戦
「王様はどなたですか?」
「わたしだな」
アーチーが棒を見せる。
「いつの間にかちゃんと参加してるにゅ」
「そういう素直じゃないところがアーチーの可愛いところじゃない」
「可愛いなどというな! さて、何を言っても良いのだったな。ではそうだな、1番。隠し事をキリキリ吐け!」
「……」
スイフリーが棒をテーブルに投げる。そこには1番と書かれていた。
「なんかわたしが当たる回数高くないか?」
「きのせいですよ。もしくは運がないのです」
「日ごろの行いが悪いからにゅ」
「やかましい。そうだなあ、隠し事……」
スイフリーは暫らく考えてから、おもむろに口を開く。
「昨日、テーブルにおいてあったクッキー食べたの、わたしだ」
「お前かー!!!」
アーチーが思わず勢い良く立ち上がる。
「アレはわたしのだったんだぞ!」
「おきっぱなしにするからいけないんだ」
「わたしがお前に聞いたとき、全然知らないと答えたではないか」
「あんなに鬼気迫って聞かれたらそう答えるしかないじゃないか。クッキー数枚で大げさな」
「アレは! オランからわざわざ取り寄せたわたしのお気に入りのクッキーで最後の数枚だったんだぞ!」
「ますますおきっぱなしにするなよ、そんなの」
叫ぶアーチー、返事をするのも疲れ始めたスイフリー。
「勝手に食べるのは良くないよ」
「しかも嘘をついたのですね?」
レジィナとクレアがそれぞれ冷たい目でスイフリーを見る。
「クッキーでここまで怒るあたりも可愛いわよね」
「フィリス姉ちゃん、今ならクッキーでアーチーが競り落とせるかもしんないにゅ」
「そうねー、クッキー焼こうかしら」
「アレは特別だと言っているだろうが!」
「しゃあないなあ」
スイフリーは大げさにため息をつく。
「今度取り寄せてやるから、泣くな」
「泣いてない!」
「どっちが王様かわかんないですよ、さっきから。次行きましょう、次」


5回戦
「王様私ー。漸く回ってきたって感じ」
レジィナが手を挙げた。
「さっきのでぎくしゃくしたから、ちょっと和めそうなお題にしよう」
レジィナはそういうと、全員の顔をぐるりと見回した。アーチーはまだ不機嫌そうだし、原因であるスイフリーはどこ吹く風だ。いつもどおりといえばいつもどおりかもしれない。
「じゃ、2番は歌を歌って」
スイフリーがテーブルに突っ伏した。
「もしかして、またはとこ?」
「皆わたしの番号を知っていて集中攻撃でもしてるんじゃないか?」
「全然番号なんて知らないって。分かってたらスイフリーを指名しないよ。歌なのに。……歌える?」
「バード技能なんてないぞ」
「なくても、歌くらい歌えるっしょ」
「お前は誰の味方なんだ」
パラサにスイフリーは不機嫌な声を飛ばす。「ん? 俺は俺とクレア姉ちゃんの味方―」などとパラサは能天気な返事をした。
仕方なく、スイフリーはぼそぼそと歌を歌う。あまり歌うのは好きではなかったから、ともかく小声だ。
「何歌ってんのかわかんない」
「エルフの言葉ですねー。節回しが独特です」
グイズノーが感心したように頷きながら聞く。
「どうせならもっと楽しそうに歌ってよ」
「無茶いうな! これで精一杯だ!」
歌い終わったレジィナに、スイフリーが反論する。顔どころか、尖った耳の先まで赤い。
「何歌ってたのかさっぱりわかんなかった」
フィリスの言葉に、クレアやアーチーが頷く。
「それが驚きの恋の歌ですよ」
「嘘教えるな! 嘘を! 収穫祭の歌だ!」
「いやあ、実りだとか豊穣だとかいう言葉が出てきたので、すごい比喩なのかと」
「お前なんかラーダから破門されてしまえ」


6回戦
「漸く王様だわ。ほほほ、前から何を言うか決めていたのよ」
フィリスが勝ち誇ったような顔で棒をびしっとアーチーに見せる。
「なぜわたしにわざわざ見せるのだ」
アーチーは疲れたような声で言うと、大げさにため息をつく。
「そりゃ、アンタに関係あるからよ!」
フィリスは胸を張ると、ふふん、と笑う。
「じゃ、王様、命令をどうぞ、にゅ」
「アーチーは王様にキスすること!」
「ちょっと待てー!!!」
アーチーは再び勢い良く立ち上がる。さっきよりも更に勢いが良かったらしく、椅子がガタンと大きな音を立てて倒れた。
「番号だろう? 番号だったはずだろう!? 命令は番号で指定だろう!?」
「あー、言い忘れてましたけど、このゲーム、名指しもオッケーです。今決めました」
「貴様―!!」
けろりと答えるグイズノーに、アーチーが叫ぶ。
「いいじゃないかアーチー、減るもんじゃないし。挨拶みたいなものだ」
「スイフリー、貴様他人事だと思って」
「ばっちり他人事にゅ」
パラサの絶妙なタイミングの言葉に、アーチーは「ぐ」と声を詰まらせる。
コレまでで一番周りが盛り上がっているのを肌で感じながら、アーチーはなんとか、どうにかこの場面を切り抜ける方法を考えた。
そして、ふとひらめく。
「フィリス」
何とか落ち着いた声が出せた。
「なぁに?」
余裕綽々の声が返ってくるのが非常に癪に障るが、しかしこの女はいつだってそうだ。
だからこそ、なるべく自分のペースを崩さないために、話をあわさず聞かないようにしているのだから。
「手を出せ」
「え? 何?」
手のひらを上にして出したその手をとり、裏返す。
爪先まで丁寧に手入れをしているその手はしっとりと美しい。
息を吸い込む。
一瞬だ。
一瞬だ。
心の中で「冷静冷静」と呟き、頭の中では「一瞬一瞬」と言い聞かせ、その甲に軽く唇を寄せる。
そしてすぐに手ごとはなした。
「えーーーーー」
不満そうな声がフィリス本人だけでなく、周りからも漏れる。
「どこへ、といわなかったのが敗因だな」
頬杖をついてその様子を見守っていたスイフリーがぼそりと呟いた。
「ありがとうスイフリー、君が挨拶だと言ってくれなかったらわたしは切り抜けられなかっただろう」
はっはっは、と柄にもなく朗らかな声でアーチーがいい、その言葉を聞いてフィリスが「ギ」とスイフリーとアーチーを交互ににらみつける。
すぐさまスイフリーもアーチーも目をそらしたが。
「さて、アーチーのへたれ弱虫っぷりを堪能したところで次に行きますか」
「待てこら、誰が弱虫へたれだ」
ふー、と息を吐きながら棒を回収するグイズノーにアーチーが低い声を上げるが、彼は気にしたことなくずずい、と全員の前に手を出した。
「7回戦ですよ」


7回戦
「あ、王様でした」
クレアが棒を全員に見せる。
「じゃあ、クレア姉ちゃん、命令をどうぞ、にゅ」
パラサがわくわくしたまなざしをクレアに向ける。クレアは棒を握り締めた手を見つめたまま、動かない。
「困りました、何も思いつきません」
「こんなの、罪のない遊びなんだから、適当でいいのよぅ」
フィリスが猫なで声を上げる。
「本当に罪のない遊びか?」
アーチーはいまだ非難めいた声を上げるが、フィリスは完全にその声を聞こえないふりをする。
「ええ、それは……わかっているのですが」
なるべく罪のない、笑って済ますことができる軽い命令にしたい。
とはいえ、もう大体の命令は出てしまって、なかなか言うことが思いつかない。
「あ、スイフリーにちゅーでもしてもらう?」
「お前は何を言ってるのだ」
「何を言うかスイフリー、挨拶みたいなものではないか」
「そんなこと、俺の目の黒いうちはさせないにゅ」
「あなたの目は茶色でしょう」
フィリスの提案に、スイフリーが半眼になって呆れた声をだし、アーチーは先ほどの恨みを込めてその言葉に突っ込みをいれ、パラサが低い声を上げるとその内容にグイズノーが反応する。
言われた当のクレアは耳まで赤くなってうつむくばかりだ。
「ええ、と」
何か言わなければ、どんどん流されて変な命令をする羽目になる。
長く彼らと付き合ってきたのだ、そのくらいの危機感くらいはさすがに持ち合わせるようになった。
しかし何も考え付かないのもまた事実。
「あ、今日、夜寝るとき、ファリス様に感謝をしてから寝てください、というのは」
「無理」
あっさりと神を信じることのない種族であるパラサとスイフリー、それから異教徒であるグイズノーから却下され、クレアはまた黙り込む。
「何でだろう、王様なのにクレアさんがかわいそう」
レジィナから同情の声が寄せられる。
クレアががくり、と疲れたようにうつむいた。
「もう、これでこのゲームはおしまい、ということで」
「え?」
「ですから、王の命令として、このゲームはこの瞬間を持っておしまい、ということにします」
「えーー、クレア、何も命令しないの?」
「ですから、ゲームの終わりを命じます」
「何にも思いつかなかったのね」
フィリスの言葉に、クレアがこくりとうなずく。
「欲がないわねー」
「お前が欲望まみれすぎるだけだ」
しみじみというフィリスに、アーチーが呆れた声を出す。
「そうかな? 私たち全員、欲は似たり寄ったりだと思うけど」
フィリスは口を尖らせるが、誰からも賛同は得られなかった。

「では、王様が命じられましたので、今回のゲームは終了、ということで」
おひらき、という口ぶりでグイズノーが宣言すると、アーチーはすかさず、「もう二度とやらんぞ、こんなの」などと言う。
「えー、面白かったにゅ、またやろう」
「そうだよ、実は私とグイズノー、ぜんぜん命令されてないし」
パラサの言葉にレジィナがうなずく。
「おや、命令されたかったですか?」
「どうせなら参加したほうが面白いもん」
「ぜんぜん面白くないぞ」
「それはへそ曲がりのアーチーだけにゅ」
「貴様」
「じゃあ、おやすみー」
本気で怒り始めたアーチーを尻目に、パラサはぶんぶんと手を振ると、ダッシュで部屋の方面へ逃げていく。
それを皮切りに、全員がぞろぞろと大広間から出て行く。
「ねえ」
残ったクレアに、フィリスが声をかける。
「ほんとに何も命令しなくてよかったの? スイフリーになんかしてもらえばよかったのに。私はうまくかわされちゃったけどさ」
にやにや笑うフィリスに、クレアは首を横に振る。
「いえ、別に……わざわざ命令形をとる必要もないですし」
息を吐くような声でクレアは言うと歩き出す。
「へ? え? どういう意味それ!?」




■クレアさんの意味深発言はどういう意味かは各自好き好きに予想してもらうとして(苦笑)
スイフリーが当りまくってるのは、全然操作してません。
コレ、ちゃんと「誰が王様で、誰が何番のくじを引く」という一覧を「さいころ様」を使って作ってから書いてます。

コレが一覧表

      A  F  R  G  S  P  C  命令
1回目  4  2  3   6  5  王  1  1と4、見詰め合う
2回目  3  4  1  王  2  5  6   2が5をおんぶして歩く
3回目  1  6  2  5  王  3  4  4番は飲み物もってこい
4回目  王  6  5  2  1   3  4  1番は隠し事をきりきりはけ
5回目  6  1  王  5  2  4  3  2番、歌を歌え 
6回目  5  王  4  2  1  3  6  アーチーは王様にキスをすること
7回目  3  5  4  1  2  6  王  命令なし

ちゃんとさいころ様に聞いたモン。
そしたら全然グイズノーとレジィナがでなかったんだもん。
……本当だよ。

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外は雨。
時刻は夜。
久しぶりに城に戻って、しかも全員がそろってくつろげるというのは珍しい。
室内を照らすのはろうそくの黄色く揺れる光。
幻想的な夜。
……なのに。
そこでフィリスはため息をつく。
何もなさ過ぎてつまらない。
アーチーはずっとテーブルで本を読んでいるし(つまり誰の相手もするつもりはない)、スイフリーは窓際に置かれたソファで居眠りの真っ最中(起きる気配はほとんどない)、パラサはずっとクレアにまとわりつき話を続け、クレアもそれを真面目に聞いている(適当にしておけばいいのに、真面目に聞いてしまうあたりが彼女らしい)、レジィナは色気のないことに大剣の手入れに熱中してるし(話しかけても聞こえてないのか返事もない)、グイズノーはさっきからずっと棒を使って何かを作っているらしく、こちらも熱中していて話もできなさそうだ。
「ああ! もう! つまんない!」
叫んだところで、グイズノーが顔を上げた。
「ええ、つまりませんね。ということで、わたくしが皆様に遊びを提供いたしましょう」
などと福々しいが全く誠意のない、不思議な笑顔をフィリスに向けた。
「遊び?」
胡散臭そうなフィリスの目つきもどこ吹く風、グイズノーは棒をテーブルに置くと全員を見回した。
「どうです? 皆さんも遊びませんか? レジィナの剣の手入れも終わりでしょう?」
「うん、もう終わる」
レジィナは答えると、きちんと剣をしまってから立ち上がってテーブルにやってきた。
「何するの?」
「俺も遊ぶー! 姉ちゃんも遊ぶ?」
パラサはすぐに立ち上がり、隣にいたクレアに尋ねた。
「そうですね、たまには良いかもしれません」
クレアはふわりと微笑むと、パラサに続いて立ち上がった。
「はとこ、起きるにゅ!」
ぺしん、と容赦なくパラサはスイフリーの頬を張る。かなりいい音がした。
「なにをするんだ、はとこの子の子」
「みんなで遊ぶから、はとこも起きて参加するにゅ」
寝起きなのと叩かれたのと、そのわりにたいした用事でもなかったことで、スイフリーはかなり不機嫌な目をパラサに向けたが、そもそもその程度のことは気にされない。
「これでつまらなかったら蹴倒すぞ、はとこの子の子」
ふらふらした足取りでスイフリーはテーブルに向かう。
「なぜテーブルに集まる!」
最初からそこで読書をしていたアーチーが遂に顔を上げた。そこをすかさずパラサが本を奪い取る。
「これで全員そろったにゅ」
「あ、きさま、何をする」
「皆で遊ぶにゅ」
「どうせ一人取り残されたらそれはそれでへそを曲げるでしょ」
パラサに続いて、フィリスがぴしゃりと言うと、アーチーは黙った。
「ではルールの説明です」
グイズノーは笑うと、棒を全員の見える場所に並べて見せた。
棒は端っこに「王」という文字が書かれたものと、数字が振られたものの二種類があった。数字は1~6が書かれている。
「この棒を、文字が見えないように隠し持ちます。そして、全員でいっせいに引きます。すると、王の人と、数字の人にわかれますよね? 数字は見せてはいけません。王様は、好きなことを数字の人に命令することができるわけです。例えば、今すぐここへワインを持ってきなさい、とか」
「おもしろいのか、それ」
不機嫌そうな声でスイフリーが言う。
「ハプニング性がおもしろいんですよ」
「できそうにないことは命令しないというルールを付け足してくれ」
「そんな保守的なゲームはおもしろくないですよ。何でも有りだからいいんじゃないですか」
「ではお前、ドラゴンを一人で退治に行けといわれても行くのか」
「行きませんよ。そんなあからさまに無理な話はしないのが前提なんです」
スイフリーとグイズノーの平行線の会話に、フィリスは笑顔を向ける。
「まあ、ともかくやってみましょうよ。私はもう何を言うか決めたわ」


1回戦。
「ではスタートです」
全員がグイズノーの手から棒を引く。が、一本あまった。
「ちゃんとアーチーも引くにゅ」
「ばかばかしい」
「ほら、コレがあまりですよ」
グイズノーはあまりの棒をアーチーに渡した。
「王様誰ですか?」
「俺! 俺王様!」
レジィナの質問に、パラサは棒をびしっと見せた。棒の端には「王」が刻まれている。
「じゃあじゃあ、命令にゅ。どうしよっかなー」
パラサは数字を予想しているかのようにじっくりと全員の顔を見た。
「じゃあ、1番と4番は5分間見詰め合う! 笑ったらやり直しにゅ」
「それは本当におもしろいのか?」
未だに半信半疑なスイフリーから声が飛ぶが、パラサは気にせず続けた。
「1番誰にゅ」
「あ、私ですね」
クレアが小さく手を挙げた。
「えええええー! じゃあ姉ちゃんと見詰め合えるうらやましい人は誰!? 4番!」
暫らく返事はない。
「誰も返事をしないってことは」
レジィナは目の前のアーチーの棒を見る。
「やっぱり! 返事くらいしなよ!」
「ちょっとー! パラサの馬鹿―! アーチーとクレアが見詰め合って、恋が芽生えたらどうしてくれるのよ!!!」
「俺だって泣きたいにゅ……」
「クレア、こんな馬鹿げたことはしなくても良いぞ」
アーチーは最後の抵抗とばかりに、クレアに言う。
「ルールですから」
規律を旨とするファリスの神官は、あっさりと答えるとアーチーの前に移動する。
「では、時間を計ってくださいね」
「姉ちゃん、俺のこともあとで見つめたってね」
パラサは泣きそうな声とともにため息をついた。
アーチーとクレアは無言で見つめあう。
クレアのほうは淡々としたものだが、アーチーのほうは途中から息苦しいものを感じ始めていた。理由はフィリスとパラサからの重圧と、クレアの目のせいだろう。ファリス神官の、不正は一切許しませんという目が自分を見据えているというのは、なかなか恐ろしいものかもしれない。いくら後ろ暗いことがほとんどなくても、だ。
内心少々スイフリーに同情する。もしかしたら彼らの間には恋とか愛とかあるのかもしれないが(本当のところは全然分からないが)、あったとしてもこの目はかなりきついのではないだろうか。特にスイフリーには。
「はい、5分」
不機嫌なパラサの声で、解放される。
「ね、おもしろいでしょう?」
「どこが」
グイズノーの言葉に、フィリスとパラサ、アーチーの声が一斉に反論したが、彼はその全てを黙殺した。
「はい、二回戦二回戦」


2回戦
「おや、王様はわたくしでした」
グイズノーが棒を見せて笑う。
「では、2番は5番をおぶって、部屋を一周してください」
「それっておもしろいの?」
「パラサが下になったらどうするのだ」
レジィナとアーチーが一斉に口を出す。
「パラサが下だったら、番号を変更します」
「それって、パラサは絶対に下にならなくてお得じゃない」
返答に今度はフィリスが突っ込みを入れたが、彼は取り合わず全員を見た。
「で? 2番と5番は誰です?」
パラサとスイフリーが手を挙げた。
「わたしが5番だ、何が悲しゅうてはとこの子の子をおぶって部屋を一周せにゃならんのだ。しかもこの部屋、城で一番広いじゃないか」
「はとこ、ゲームゲーム」
おんぶ、と言いながら手を広げるパラサの額に、一度チョップを入れてから、スイフリーはパラサを背負う。
「うひょー、いつもより視点が高いにゅ。はとこ、右、右。右からー」
「あとで覚えとけよ」
足をぶらつかせ、ご機嫌な声で方向を指示するパラサに、低い声でスイフリーは返事をすると、それでも歩き出す。非力なエルフといえ、背負っているのは更に非力かつ小さなグラスランナー。それといってハプニングも起こらず無事に部屋を一周してテーブルに戻ってくる。
「これはちょっとおもしろかった」
「ね、ハプニング性でしょ?」
にやにやするフィリスに、同じくにやりと笑ってグイズノーが答える。テーブルの下でスイフリーはグイズノーのスネを蹴ろうとしたが、ちょっと遠かったから断念した。


3回戦。
「では三回目ですよ。王様はどなたですか?」
「わたしだ」
スイフリーが棒をテーブルに放り投げた。
「言うことは決めてある。寝起きでノドが乾いてるんだ。さっき無駄に部屋も歩かされたしな」
舌打ちするとスイフリーは全員を見る。
「4番、水持ってきてくれ。飲む」
返事もなく、すくっとクレアが立ち上がる。
「姉ちゃん、どうした?」
「4番なので」
「ついでに菓子かなんかもほしい」
「夜遅いですから、食べないほうがいいですよ」
追加注文したスイフリーに、クレアは答えると部屋を出て行く。暫らくして戻ってくると、それでもトレイの上には飲み物のほかにラスクが数枚載せられていた。
テーブルに戻ってくると、飲み物をスイフリーの前に置く。
「コレでよかったですか?」
「ああ」
渡された水を飲み、スイフリーは椅子にだらしなくもたれかかる。
「何かすごーく詰まんないにゅ」
「そうね、コレは詰まんなかったわね。もっとドラマチックなことしなさいよ、二人とも」
「そうは言われましても」
困惑しながら、クレアは席に戻る。
「他に何も言われてませんし」
「あーん、詰まんない! 次行こう次!」



■そもそもは、自分の絵板http://www10.oekakibbs.com/bbs/magumagu/oekakibbs.cgiに落書きした、パラサをおんぶするスイフリー、というのものに端を発するしょーもない話です。
友人が「王様ゲーム?」と言うてくれて、それが面白そうだったから採用しただけです。
したらば、思わぬ長さに。
というわけで、後半に続く。

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泡ぽこ 28
「おや、ソレは良くありませんね。魔法を使って差し上げましょうか?」
スイフリーにグイズノーが微笑む。
「いや、いい。病気ではない」
「どういうことだ」
眉を寄せるスイフリーに、アーチボルトが尋ねる。
「あっちの精霊使いにも聞いてみたらいい。何か精霊の働きが変な感じなのだ」

実際尋ねてみると、マウナやエキュー、ノリスは首を縦に振った。
「気のせいじゃなかったのね」
マウナは眉間に指を当ててため息をつく。どうやら妙な感覚を気のせいで済ませたかったらしい。
「まあ、仕方ないな。お互い重ならないように精霊をつれてきたことだし、まあ、大丈夫だろう」
スイフリーはため息混じりに言う。
「ソレよりアーチー、さっきの答えだが。気に食わないのはわたしもおなじだ。あまりにおあつらえむきすぎる。広間の規模から大勢の招待客を呼ぶ施設のようだが、ソレにしたって部屋数がなあ」
「でも、わたくしたちが脇道を通るまでは誘導できても、この屋敷に入るのは誘導ではないでしょう? 偶然ですよ」
グイズノーは笑う。のんびりした口調は、警戒していない副産物だ。
「真にココを目的地にしたいのであれば、そのように誘導してくるさ。いくらでも方法があるからな。まあ、いい。こうなったらとことん策に乗ってやろうじゃないか。一人一部屋使って、警戒だけはしておこう」
「いつもどおり見張りも立てるわけだな」
「そういうことだ」


話し合いの結果、お互いの部屋を決める。
階段から最も近い左右の部屋を、それぞれパラサとノリスが使うことにした。コレは階段から誰かが上ってきてもすぐに分かるようにという配慮の元だ。その隣の部屋はそれぞれアーチーとレジィナが使っている。コレも直接戦えるものが前に居たほうがいいからだ。
エントランスの吹き抜け前の両側にはそれぞれスイフリーとエキュー。コレも階段から上ってくる相手に、ジャベリンが個別に飛ばせるからである。階段前の部屋にはイリーナとガルガド。その奥側にマウナとグイズノー。左の廊下突き当たりにヒース、その前がフィリス。右側は突き当たりにクレア、その前がバスということになった。クレアから遠く離れたパラサから文句が出た以外は、部屋割りはすんなりと決まる。
見張りはいつもどおり三交代制で、1直目にパラサとレジィナ、2直目にノリスとアーチー、3直目にマウナとクレアが当たることになった。


現在は2直目である。
アーチーはノリスと組んだことを早くも後悔し始めていた。これではグラスランナーと居るのとそう変わらない。
戦力的には期待できそうだが、コレではプラスマイナスでマイナスだ。
「なーんにも起こらないねー」
「起こってたまるか」
階段に座って足をぶらつかせるノリスにアーチボルトはため息混じりに答える。こういう態度はどうかと思うが、実際何も起こらず時間は過ぎていきそうだ。
(考えすぎだったか)
自分の深読み具合に少々内心苦笑したとき。


屋敷が唐突に大きく揺れた。



■なんかちょっと文章が淡々としすぎたかも。
まあ、いいや。

現在、最終に向けて、友人にラスボスの能力値を発注しました。
それが完成したら友人たちとさいころ振りです。
今度こそそれに参加して、ぜひともアーチーかパラサがやりたいです。
すごいらしいですよ。

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泡ぽこ 27
現在居るのはエントランス。多少古ぼけてはいるがかなり豪華な絨毯が敷かれている。左右にはドアがあり、正面には二階にあがる大きな階段があった。階段の両側は壁になっていて、左側には風景画が、右側には女性の人物画がかけられている。エントランスにあるのはその程度で、装飾品は一切無い。
「殺風景だねえ」
ひょこひょこと奥に向かって歩いていこうとするノリスの首根っこをガルガドが捕まえた。
「ちょっとは警戒心ってものを持て! このクソガキが!」
「えー、だって誰も居ないんでしょ? 大丈夫だよー」
「まだ誰も居らんとは確定しとらんわ!」
「……」
アノス側の冒険者たちの呆然としたような視線を浴びながら、ヒースは内心ため息をついた。コレまでは大きな戦闘が無かったからノリスの戦闘での性能はアピールできてないし、探索はしていないから何とかそっちの性能をばらさずに済んでいたが、遂にばれてしまった。
「アー、ま、なんだ。ノリスのお茶目は置いておくとして、これからどうする?」
「お茶目?」
エキューの冷たい声は、この際無視だ。
「実際問題、奥に屋敷関係者がいたり、先客が居たらいやだな」
「いないっしょ。雨で不確定だけど、足跡はなさそうだったし、鍵もかかってたし。第一、誰か居てオレらに敵対心がなかったら、こんだけ騒いでたら出てくるって」
「出てこないのは、居ないかこちらを警戒しているだけだと?」
パラサの答えにグイズノーが問いかける。パラサは頷いた。
「後はアンデットとか?」
「黄色い感じはしないぞ、今のところ」
「先客は全員石にされて広間とかに居たりして。居るのは臆病なメデューサ、屋敷の主、なーんて」
「よかったねえアーチー、大好きなファンタジーだにゅ」
「そういうのはホラーというのだ」
「というか、なぜこの会話で固まるのだヒース」
スイフリーたちの会話に思わずヒースは固まる。すぐにそれを指摘されたが、彼はあいまいに笑っただけだった。
「まあ何にせよ、雨がやむまで暇だし、探検しよう。屋敷のものを盗らなければ、問題ないだろう」


屋敷をざっと見て回る。
エントランスにある両側の扉はそれぞれが廊下に繋がっていた。屋敷の右手側には広間があって、大きなテーブルと暖炉、それから窓際にソファのセットがあった。どうやらこちらはパーティーなどをする部屋らしい。屋敷の端から端までを使ったかなりの大広間である。
左手側には、主の書斎と遊興室があった。書斎は本棚であったのだろう棚とテーブルがあるだけの殺風景なもので、何も他には無い。遊興室にはチェスやカード、ボードゲームなどが残されていた。が、目立つようなものは無い。
エントランスの絵にも問題はなく、普通の風景画だった。人物画のほうは「留守番伝画」だったが、変わったメッセージは残されていなかった。もちろん、壊していない。
一階の奥には、大広間のためにか台所と倉庫があったが、そこにも何も残されていなかった。階段の下に当たる部分に、質素な部屋があったのは使用人のためかもしれない。
二階には部屋が14あった。それぞれ、左右に5部屋、それから階段前からおくに向けてのスペースに4部屋。どれも窓付きで(階段前の2部屋のみ、天窓だったが)小さなテーブルと一人分のベッドが用意されていた。

確認を終えてエントランスに戻る。
「気に入らん」
アーチボルトは開口一番そういった。
「なぜですか? 丁度皆に一部屋ずつ当たって、いいじゃないですか」
イリーナの返事にアーチボルトは苦い顔をする。
「だから嫌なのだ。我々は14人、部屋も14。この謀ったような一致は何だ!」
「考えすぎですよー」
「放っておきなさいな、アーチーは考えるのが趣味なんだから」
「それで深みにはまるんですよ、お姉さん」
「どう思う、スイフリー」
フィリスやレジィナの声など聞かず、アーチボルトはエルフに声をかける。こういう考え事は、スイフリーとしかできないというのが彼の持論だ。
「……気分が悪い」
返答は予想外のものだった。



■今日はここまでー。
ようやくイベント突入ー。


そもそもコレは友人とのTRPGのために作ったシナリオだったのですが、諸々の事情により、プレイしないことにしたシナリオです。
なので、すごーく長い前置きでしたが、実は此処からがメインだったりします。

……今日、45話を友人に送りました。
いまだ終わる気配なしです。何話構成なのこれ。

拍手[0回]

泡ぽこ 26
道はあいかわらず広さは一定で、鬱蒼とした森の中を進んでいく。両側の地面は木の根や草でテントが張れそうな場所は現れない。マントが水を吸って重くなり始めたころ、左手側に屋敷が見えてきた。
「あれかな?」
先頭を行くノリスが振り返る。指差す方向には確かに石造りの立派な建物があった。建物は広い敷地を持っており、周囲を石造りの立派な塀が囲んでいる。随分使われていないのか、庭には草が生えている。屋敷自体も大きく、二階建ての石造りでがっしりとしている。少々古めかしいが、立派な建物だった。
「これは軒先だけじゃなく屋敷ごと借りても文句でなさそうだな」
ヒースがあからさまにがっくりしたような声で呟く。
「別荘だよ? 最初からヒトが居るなんて期待しちゃ駄目だよ」
エキューが呆れた声をあげる。ヒースは聞こえないふりをした。
「パラサ、行ってこい」
スイフリーが屋敷を指差すと、パラサは苦笑してから走り出す。あっという間に屋敷にたどり着き、ひょいひょいと壁に張り付くようにして窓から中を覗き込む。数分そうしていて、すぐに戻ってきた。
「誰もいなさそうにゅ」
「そうか」
アーチボルトは返事をすると、屋敷に歩き出す。全員それに続いた。玄関に着いたと同時にパラサがしゃがみこむ。一呼吸する間に彼は立ち上がると、「開いたにゅ」と笑いながらドアを開ける。ガルガドとヒースが心底うらやましそうな顔をしたが、パラサは首をかしげただけだった。
「鍵はかかっていたのか、いなかったのか?」
スイフリーがパラサを見る。
「あんなのかかってないのと同じにゅ」
「茶化してないで答えてくれ。対応が変わってくる」
「かかってたよ。普通の鍵ね。罠はなし」
「まあ、玄関に罠をかけるような物好きはあんまりいないだろう」
スイフリーは苦笑する。開け放たれたドアからは、広いエントランスが見えている。
「どうします? エントランスだけお借りしますか? それとも屋敷内を探索させていただいて、いいお部屋をお借りしますか?」
グイズノーが相変わらずの真意の分からない笑顔で問いかける。
「庭の手入れ具合からいって、最近使われているとは思えないな。同時に、これから直近に使われることもなさそうだ。遠慮なく部屋を貸してもらおう。ヒトが来たら事情を説明して、賃貸料でも払えば丸く収まるだろう」
スイフリーの返答で全員が中に入る。多少埃っぽいが、悪くない建物だった。
「いいんでしょうか、本当に」
クレアが眉を寄せると、スイフリーは答えた。
「大丈夫だ」
「そうでしょうか」
「宿が無いとか、雨に降り込められて困っている冒険者が城に来た場合、お前はどうする」
「よほどの事情が無い限り、お泊めします」
「そうだろう? 我々は現在雨に降り込められて困っている。もしココに屋敷の主が現れた場合、誠心誠意説明すれば一泊くらい許可されるだろう。主によほど後ろ暗いことでもないかぎりな」
「……そう、ですね」
「無断であることにお前はひっかかるのだろうが、真に困っているのだから仕方あるまい。それとも、雨の中を進めというほど、お前の神は薄情なのか?」
「……わかりました」
「あああ~姉ちゃんがはとこの毒に~」
「黙れ」
スイフリーは頭を抱えるパラサに一発蹴りを食らわせると、屋敷の中に目を向けた。
「さあ、これからどうする?」



■ここのところ、世界陸上を見てその後うっかりねてしまっているので、アップをサボってしまっております。
いいや、へんな時間でも。
ということでアップアップ。


気付けば30日です。
有言不実行な「毎日アップ」も明日までです。


……泡ぽこは本日友人に44回を送りました。
まだ終わりません。大丈夫かコレ。

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