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泡だとかぽこだとか。時折ルージュとか。初めての方は「各カテゴリ説明」をお読みください。
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泡ぽこ 20

出発は次の朝になった。
ヒースたちが荷馬であるジェイミーを連れてきたことに少々アノスの冒険者たちは面食らったようだったが、結局何も言わなかった。逆にヒースたちから言えば、あまりに身軽そうな彼らの姿に驚いたのだが。
「しかし」
グイズノーは全員を見て福々しい笑顔のまま、嬉しそうに続ける。
「14人も冒険者がこうやってそろうと、圧巻を通り越してちょっと呆れてしまいそうになりますねえ。他人から見れば、多分冒険者には見えませんよ」
「何に見えるというのだ」
「……難民?」
アーチボルトの質問にグイズノーは答えると、ふふ、と笑う。その笑いの意図が分からなくてマウナは眉を寄せたが、アノスの冒険者たちは皆何も言わなかった。慣れているのだろう。
「隊列とか、どうしますか?」
困惑しつつも、マウナはアーチボルトを見上げる。自分たちは実質彼らに雇われたのであり、彼らのリーダーがアーチボルトであるいじょう、彼に聞くのが良いのだろうと判断した。
「イリーナが客人である以上、中央にいてもらうしかない。前後を我々が固める。君たちはスイフリーとフィリスに雇われたのだから、彼らの護衛をしてもらおう。フィリスは戦闘能力がないし、スイフリーは体力がない」
戦闘能力がないわけじゃないんだ、とマウナは少し意外に思いながら離れた位置にいるスイフリーを見る。確かに、エルフだけあってあまり頑丈そうではない。
「えええ!? 私はそれじゃ邪悪と戦えないじゃないですか!」
聞いていたイリーナが驚愕の声をあげる。しかもかなり不満そうに。背中に背負ったグレートソードなど見ていると、まあ、戦いに重きをおいているのだろうとはすぐに分かったが。
「いや、君に傷つかれると困るのだ」
「邪悪には負けません!」
「この鉄の塊がどこをどうしたら怪我をするっていうん……のわぁ!」
言いかけたヒースにイリーナの裏拳が容赦なく飛んでいく。すんでのところで避けて、ヒースはしゃがみこむ。
「なんか、どこかで似たような光景を見たことある気がします」
「気のせいよ、レジィナ」
レジィナに、フィリスは冷静に答える。
「参考までに君たちは普段どうしていたか教えてくれたまえ」
アーチボルトの問いかけに、ガルガドが答える。
「イリーナの強さを盾に、罠感知のためにノリスがイリーナとともに正面に立つ。中央をマウナやヒース、それからエキューだな。しんがりはワシやバスだ」
「大体似たようなものだな」
「イリーナは正面に立たせることを薦めるぞ。あんたらから言えば客人で、怪我をされたら困るのは分かるが、イリーナに魔物と戦いもせずじっとしてろってのは、無理な話だ。いつか鬱憤たまって爆発して暴走する」
「……そうか」
アーチボルトが遠い目を一瞬してイリーナを見た。ヒースは思わず同情しそうになったが、事実しか述べてないあたりがそれを阻む。
「結局、大所帯といえど普通に考えたらいいんじゃないか? 戦闘能力があるものが盗賊とともに前に出る。今からは街道だから、レンジャーとして警戒できるものも重要だろう。後ろも戦えるものが居て、真ん中に魔法使いだろう。特にわたしはひ弱だから、中にしてもらえるとありがたい」
スイフリーが隣から声をかける。
「それしかないだろうな」
ヒースの同意に、他のものもうなずく。
結局全員で話し合い、先頭はイリーナがノリスとパラサとともに歩いている。
「どうしてかしら、あの三人が並んでると物凄く不安なのは」
「心配するなマウナ。全員不安だ」
マウナの呟きに、ヒースはひきつった笑みを浮かべつつ答える。
「すぐ後ろを歩いているエキューとクレアさんに期待だ」



■20回目にして、実はこのタイトルは名づけてもらいました。
海の近くのスタバで、Rちゃんにつけてもらったのでした。
「バブリーズさんの泡と、へっぽこのぽこで、泡ぽこ」
以降、それ以上いい感じのタイトルもないため、そのままです。

2007/08/16

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泡ぽこ 19

そうこうしているうちに、そもそもの約束だった一週間の期限がやってきた。
ヒースたちから言えば、結局つかんだ事実は彼らが自分たちの前に現れる3日も前からファンの街に居たことと、ずっと同じ名前を名乗っていることくらいだった。バスの言葉を信じるならば、彼らが名乗っているのは有名人の名前だ。有名な分、実入りも大きいだろうが、リスクも大きい。従って、わざわざ有名人を騙るのはあまり得策といえない。もちろん、オーファンはアノスから随分離れているから、ばれる可能性は低いかもしれない。しかし、顔を知っている人間というのは、居ないとも限らない。つまり本物と考えてもいいだろう、というのが最近のヒースの感想である。考えるのが面倒くさくなった、とも言う。
アーチボルトたちから言えば、そもそもイリーナだけを護衛していく仕事である。彼女の仲間たちが一緒に行くことになったのはさして問題はない。彼らも実力があるのは調査したことでわかっているから、自分たちを付けねらうダークエルフなどが出てきても慌てることにはならないだろう。彼らを丸め込もうだとか言っていたのも、単なる暇つぶしのようなものであったし、実際信頼してくれるようになれば実入りはある。ファンの街での滞在を伸ばしたことは結果的には良かったといえるだろう。まあ、もっともマウナは半分以上こちらの金遣いに圧倒されているだけだといえるし、ノリスやイリーナは基本的にそう他人を疑わないだけだったのかもしれないが。ヒースやガルガド、エキューあたりは警戒心を持ったかもしれないが、そもそも自分たちは現在裏がとりにくい依頼人といえるわけで、そういう相手を疑えるような冒険者なら、一流といってもいいだろう。つまり、まあ、心配は要らない。最後のところで大雑把なのは自分たちの悪い癖かもしれないと思いつつもアーチボルトは
安心していた。
第三者的な立場でいえば、結局腹の探りあいが中途半端で終わったともいえるが、双方その辺りは気づかない振りをしている。


再び青い小鳩亭のVIPルームで彼らは顔を合わしている。
相変わらず、依頼人側にはイリーナが座り、請け負う冒険者側にはアーチボルトたちが座っている。総資産では絶対逆だ、とマウナはいつまでたっても慣れないふわふわのソファで落ち着かない気持ちで相手を見ていた。
「では、もう一度簡単に説明させていただきます」
クレアが地図を取り出しながらイリーナに説明を始める。
「申し訳ないのですが、アノスまでは徒歩移動となります。街道の最短ルートを行きますので、途中ファンドリア、ロマール、オランなどを経由することになります」
「ふぁんどりあ……」
イリーナの目に剣呑な光が浮かびかけたのに気づいてヒースはその後頭部を軽くはたいておいた。
「私もファンドリアには個人的に思うところは色々あるので、イリーナの気持ちは分かりますが、今回はアノスへの無事到着を考えて自重してください」
ぴしゃりとクレアに言われて、イリーナは罰の悪そうな顔をする。
「あと、少々こちらの状況の関係上、ロマール、それからオランとアノスの国境あたりでは警戒をおこたらないでくれ」
アーチボルトの声にヒースが眉を寄せて見せると、アーチボルトは苦笑した。
「少々、恨みを買っている。ロマールでは表立っては何もないだろうが、あのお方が見逃してくれるとは思えない。アノス方面ではいろいろあってダークエルフと全面対決中だ。我々と見れば襲い掛かってくる可能性はある」
「ロマールはよくわかりませんが、ダークエルフは邪悪です! 殲滅しましょう!」
「……ファリス神官として正しい台詞だ」
「はとこ、そこで嫌な顔しちゃだめにゅ」
「そうですよ、いくらお仲間といえど」
「仲間じゃない」
背後で始まったスイフリーとパラサ、グイズノーの話を咳払いでやめさせるとクレアは続けた。
「アノスでは準備が整うまで神殿付近の宿で宿泊していただきます。準備が整い次第法皇様との謁見になります。わたしたちは、イリーナのアノス出国までを護衛させていただきます」
「ということは、帰りは俺様たちだけでなんとかしろ、ってことか。片道4ヶ月かかる道を、片道だけ護衛っていうのは少々問題ないか?」
ヒースは不満な顔をクレアに向ける。
「何を言うんですかヒース兄さん。法皇様にお会いできるだけでも十分光栄じゃないですか! 帰りの4ヶ月は邪悪を退治しながら戻ってきましょう!」
「お前だけでやれ、そんなこと。大体、俺様たちの報酬は24万分の魔晶石、拘束期間ほぼ1年じゃ割に合わんぞ、今気づいたが」
「今気づいたの……?」
エキューが呆れた声を出す。
「それについては、言ったような気もしないでもないが、帰り道については考えがあるのだ。ファーズから1週間ほど行った田舎にわたしの城があるのだが、そこにテレポートのスクロールがある。それを使いたまえ」
「アーチーの城じゃないにゅ」
「みんなの城です」
後ろからの突込みを全て無視してアーチボルトは続ける。
「まあ、スクロールを売り払って自力で歩いてかえることについて我々は何も言わないが」
「でもそんな便利なものがあるなら、どうしてファンからファーズまで一気に飛ばないんですか?」
マウナの質問に、フィリスが答える。
「今、スクロールの手持ちが1本しかないのよ。イリーナをアノスから無事にオーファンに帰すために、帰り道に使ってもらおうと思ったわけ。当初はイリーナ一人を連れて行く予定だったから」
なるほど、とマウナは頷く。
「他に質問はあるかね? なければ明日にでも出発しよう。スイフリー、彼らの報酬を前払いしたまえ」
「なぜアーチーのに命令されているんだ?」
言いながらもスイフリーは約束どおりの魔晶石をごろごろとテーブルにばら撒いた。
「あ、質問なんだけど」
ノリスが手を挙げる。
「さっき言ってた、ロマールのあのお方って、誰? 僕が聞いてなかっただけ?」
スイフリーとアーチボルトが目を見合わせた。そして
「ああ、言ってなかったか。軍師だよ。ルキアルだ。ちょっかいかけてこない限り、こっちからは何もしないから安心していい」


聞きたくなかった。


それがヒースの正直な感想だった。



■この回は書く時間があまりとれず、19-1と19-2として2回に分けて送信した模様です。
ちょうどヒースの声が子安さんだと判明した頃で(5月17日でした)私の脳内では松本保典さんだったよー、とか書いてありました。
あと、アーチーは大塚さんだそうです。
過去は過去として、まあ、うん、今もそうかも。

明日はお休みします。
ちょっと出かけるので。


2007/08/14

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泡ぽこ 18

暫くしてイリーナが騒々しくもやってくる。いつものテーブルに近づき、何事かをマウナに言われ、マウナと二人で連れ立ってフィリスの元にやってきた。
「フィリスさん、今日はお土産をありがとうございました!」
「本当にありがとうございます。あのお店、憧れだったんですよー!」
イリーナもマウナも目を輝かせてフィリスに頭を下げる。
「いいのよぉ、女の子ですもん。皆ケーキが好きで当然よー。また一緒に行きましょうねー」
フィリスは組んだ手に顎を乗せて、にっこりと微笑んでみせる。年長者の余裕の笑み。頼れるお姉さまといった風情だ。
「ステキです、ステキすぎますフィリスお姉さま!」
「いいのよぉ、気にしないでねぇ?」
隣で引きつって笑うレジィナ、向かいで複雑な顔をするクレア。対して、全く気に留めず食事を続ける男性陣。
「なんなら、明日女の子だけでケーキ屋さんをめぐってみる?」
と、フィリスが提案する。マウナとイリーナの目が輝いた。しかし、二人とも何かに思い当たったように困った顔をする。
「でも私、ここでお仕事が」
「私も神殿に……」
「マウナは一日お休みを貰うくらいできるでしょう? イリーナもね。イリーナはもちろんのこと、もしかしたらマウナも、あたしたちとアノスまで同行してもらうことになるでしょう? それまでにお互いのことを知っておくのは重要だと思うの」
「そ、そうですね!」
「フィリスお姉さまの言うとおりです!」
「じゃあ、明日は皆でケーキ屋さんをめぐりましょう? レジィナもクレアも来るでしょ?」
「……うん、行くよ」
「……はい」
レジィナもクレアも微妙に返事に歯切れがなかったが、ともかくうなずいた。それを見届けて、マウナとイリーナはいつもの位置に戻る。
「ざっとこんなもんでどう?」
ふふん、とフィリスは笑って全員を見る。
「流石だ、フィリス」
「演技力の勝利ですね」
「姉ちゃん、それをどうしてアーチーに使えないにゅ」
「あ、貴様私をアーチーと呼んだな!」
「今更何にゅ?」
「彼は照れているんですよ、パラサ」
「誰が何に照れたというのだ!」
「フォークを振り回すな。それからそのパスタはわたしのものだ」
いつもの食事風景に戻ったことで、クレアは少しため息をついてからスイフリーを見た。
「あの、私はいつノリスさんをだますようなことになったのですか?」
「心配しなくてもだましては居ない」
「気になります」
スイフリーは抱え込んでいたパスタ皿から顔を離して暫くクレアを見て何事か考えているようだった。
「だからそれはつまり……」
そこまで言ったところで眉をよせ
「なぜわたしが説明せにゃならんのだ。はとこの子にでも聞け」
指名を受けたパラサが顔を上げる。頬までソースがついていたので、思わずクレアはそれをナプキンでぬぐってあげた。
「うん、つまりそんな感じにゅ」
「え?」
「ああ、なるほど」
隣で見ていたアーチボルトが納得した声をあげた。他の全員も大きくうなずいている。分かっていないのは自分だけらしい。
「え?」
「どこでも無意識に親切をばら撒きすぎだという話だ」
スイフリーの苦い顔。
「はとこには死んでもできない芸当にゅ」
にま、と笑うパラサ。すかさずスイフリーの右ストレートがパラサの顔面めがけて飛んでいったが、そもそもそういうものは彼には当たらない。軽く避けられ、スイフリーは舌打ちすると、パラサを殴るために浮かせた腰を椅子に戻す。
「まあ、とりあえずあちらさんのペースに乗った振りをしつつ、丸め込んでいくという作戦でいいんじゃないか」
「それがいいだろうな。自分たちのペースだと思っていたらこちらの思う壺、いーい作戦じゃないか」
アーチボルトが満足そうににやりと口を吊り上げる。
そんな二人の様子を見て、どうしてもっと素直に普通にできないんだろうか、と思っている人間が二人ほど居たが、その声は発せられることなくため息へとかわっていった。



■次回から旅立ちます!
さようならオーファン!

2007/08/13

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泡ぽこ 17

夕方に近い時刻になって、冒険者たちは帰って来た。そのままもう定位置になりかけているテーブルについて、マウナから手渡されたメニューを見、今日もまた適当に上から順番に何かを頼んでいたようだった。

「で、どうだった?」
「普通の観光だよ。お城みて、マイリー神殿みて、賢者の学院みて、ファリス神殿見て、ラーダ神殿見て、フランツさんのお店とか有名スポット見て、って感じ」
ノリスはいつものセットを注文してから答える。
「マウナさん、コレお土産です」
エキューは持っていた小さな紙の箱をマウナに差し出す。
「何コレ、すっごく有名なお店のケーキじゃない!」
「おいしい店を紹介しろって言われてね、どうせなら普段入れないような高級なお店を言ってみたらぽんと入って、ここで頼むみたいに適当に料理注文して、皆でばーっと食べたんだよ」
「え、てことは二人ともおごってもらったの!?」
「そだよ」
ノリスの説明とあまりにもあっけらかんとした肯定に、マウナはめまいを感じたように少しよろけて見せた。エキューがそれをすかさず支える。
「それで、仕事でついてこれないマウナがかわいそうだねーって言ったら、じゃあ何かテイクアウトしなさいな、ってフィリスさんが。それでケーキをエキューと二人で選んだんだよー。イリーナの分も入ってるから、あとで二人で食べればいいよ」
「ステキ! ステキよ! フィリスお姉さま! 悪い人じゃないって言った通りじゃない!」
「あ、くそう、また篭絡されたぞ、丸め込まれたぞ、赤貧ハーフエルフが!」
「自分の分がないのが悔しいんだねヒース」
エキューが冷たい視線をヒースに向ける。
「まあ、それはともかくだ。ノリス、バスとともにギルドへ行って来い。何調べるかはバスに道々聞け」
「えー、ご飯食べてない」
「食ってからでいい」

 

「余裕だ、余裕すぎだぞ、簡単に丸め込める」
スイフリーがマウナの様子を見ていて、口を吊り上げる。クレアの抗議の冷たい目線も気にしていない。
「あたしは別に丸め込むつもりとかなかったんだけどなあ」
フィリスが苦笑するが、それもスイフリーは気にしない。
「それを言うなら、ノリスだって全くその気がなかったクレアが丸め込んだんだぞ」
「え? 私だったんですか?」
「自覚なかったのか」
そうは言いながらも、さして意外そうな顔もせずスイフリーは言う。
「マウナが居ればエキューはまあほぼ問題なしだ。イリーナを丸め込むのも簡単だろう。バスはそもそもイリーナたちの冒険譚を作ることに興味があるんだからさして問題なし。厄介なのはヒースとガルガドだな」
「そもそも、何でそんなに丸め込もうとしてるの? お金で雇うんじゃなかったの?」
顔を寄せ合って策略をめぐらせるアーチボルトとスイフリーに、レジィナは不思議そうな目を向ける。
「そのほうが面白いだろうが!」
と答えたのはアーチボルト。
「金だけならいざという時裏切るかもしれんが、信頼関係は裏切らない」
とはスイフリー。
「丸め込みと信頼は別物にゅ」
「何を言うかはとこの子よ。ノリスはクレアに、マウナはフィリスにそれぞれ憧れを抱いているのだぞ。その相手の言うことなら聞くに決まっている」
「そうかなあ」
レジィナが首をかしげる。
「はとこの子を見ていれば分かるだろう」
「ああ」
「納得されたにゅ!」
がーん、という顔をしつつも、それほどショックは受けてない軽い調子でパラサは言うと笑った。
「イリーナは簡単なの?」
「邪悪を目の前に背を向けるようなファリス神官は居ない。うまくけしかければいいだけだ」
「邪悪です」
クレアの剣呑な目がスイフリーに向けられる。流石にスイフリーは首を縮めた。
「ま、まあ、ともかくだ。その内容が憧れであれ信頼であれ、仲間が増えるのは心強いことではないか」
「んー、まあ、そうだけど。何かだましてるみたいで嫌だなあ」
レジィナの言葉に、クレアが大きくうなずく。
「だましてるわけじゃないわよ。私がケーキをおごったのは本当のことだし、それで慕ってくれただけの話でしょ。クレアがノリスに何をしたのかは知らないけど」
「……何も、してないはずなんですけど。本当に私がノリスさんを?」
「そうだ」
「そうにゅ」
クレアは眉を寄せて暫く首を傾げて考える。
心当たりは全くなかった。
「まあ、心当たりがなくても、クレアさんが悪いことをしたわけがないですよ。気にすることはないのです。それより料理がきましたよ」
同じ神官であるはずのグイズノーから、何の憂いもない言葉が響いた。


■そろそろまた脳内萌え分が減ってきました。
どこかにかーいらしいクレアさんとか凛々しいクレアさんとかいないでしょうか。
……誰かかいてくれませんかね。絵板にでも。


2007/08/10

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泡ぽこ 16

次の日。
裏を取ろうにもアノスが遠すぎるのが問題だ、とヒースは思いながら本をめくる。
今日はアノスの冒険者たちは全員連れ立って街の観光に出て行ってしまった。今日の案内人はそういうわけでエキューとノリスが二人で着いていった。相手は7人だが、全員が本当におのぼりさん状態で歩くだけという話だ。
街をよく徘徊しているがいかんせんおつむの回転がよろしくないノリスと、常識人ではあるが基本的部分で冷めたエキューの二人でも何とかなるだろう。
しかし、これ以上打つ手はないのだろうか。
街の中の人間であれば、簡単に裏は取れる。盗賊ギルドが口を濁す場合もあるが、そういうのも大体は相手も保護を受けているからであって、ギルドに不利益を与えなければ裏は何とか取れるものだ。
しかしいかんせん、今回は相手が遠いところから来ている分厄介だ。
「どうしたのかね、浮かない顔をして」
遂にはハーフェンに声をかけられる。
「別に? 俺様いつも絶好調だぞ」
「それならいいんだけどね。さっきから本のページがおんなじだよ」
「……なあ、ハーフェン」
「なんだい」
「アノスの魔術師ギルドと連絡って簡単に取れたりしないのか?」
「あんまり横連帯ないからねえ。そんなに簡単には取れないよ。アノスは遠いしね。何かアノスに関連した困ったことがあるのかい?」
「イリーナがいつかアノスへ巡礼に行きたいなんて抜かしやがってくれましたので、現在情報がわかったらいいんじゃないかなーとか思わないでもないわけだ」
「まあ、彼女はファリス神官だし、巡礼したい気持ちは分からないでもないなあ。んー、アノスねえ。……噂はこの前聞いたかな」
「どんな!?」
思わず背筋が伸びる。
「もともと、アノスはファリス信仰の国だしね、魔術師ギルドはあんまり権限ないんだけど、結構前に魔術師がらみの嫌な事件があって今はますます肩身が狭いらしいよ」
「何があったんだ?」
「さあ?」
「あーもうつかえねえなあハーフェン!」
「ごめんごめん。ヒースはいつも元気がいいなあ」
ハーフェンがニコニコ笑っているのを見ていると、気恥ずかしくなってくる。ああ、もう、と内心毒づいたところで急にひらめいたものがあった。
「ハーフェン俺様ちょっと出てくる。今日は戻らん」
「そうかいそうかい。気をつけていってくるんだよ」


学院を出て、いつもバスが歌っている広場へ向かう。相変わらず人だかりができていて、結構な額を稼いでいる。
まだまだ歌は続くらしいから、手だけ振って青い小鳩亭へ向かう。
「いらっしゃいませー……ってヒースか」
「最後まで気合入れて仕事しろ赤貧ハーフエルフ。ところでアノスの冒険者たちは?」
「全員観光よ。わたしも何かしたいわ」
「俺様今からちょっくら調べごとしに行くんだが、お前も参加しないか?」
「何を調べるの?」
「入国記録だ。アノスからきたって言うんだから南のほうの門だとは思うんだが、他にも北とかあるからな。手分けしたほうが早い」
「入国記録?」
「奴らがいつ入ったのか。ちゃんと一致する名前があるか。だな」
「今名乗ってるのが偽名だとして、入国のときから偽名だったら分からないわよ」
「だとしても、いつ入国したか分かる。俺様たちのところに一直線に来たかどうかだな。もし、どこにも名前がなければ、非合法な入国してきたことになるだろう。そうすれば何者かって締め上げられるぞ」
「……24万もぽんと出してくれて、毎日物凄い量のお金をだしてくれる人だったら悪人でもいい気がする」
「落ち着けマウナ。死んだら金はもう貯められないんだぞ」
「うるさいわよ分かってるわよそんなこと」
ぱこん、とヒースの後頭部でお盆がいい音を立てた。


小鳩亭を出たところで、こちらに向かってきていたバスと合流することができた。合流はしたが、すぐに手分けすることになったからあまり意味はなかったかもしれないが、全体的な労力は少し減ったともいえる。お互い主要な門の入国記録を調べて落ち合うことにして分かれた。
結果、分かったことといえば彼らは光と闇の街道を通ってファンドリア方面からやってきていた。名前は現在名乗っているものと一致している。堂々と本名を名乗っているのか、常日頃偽名生活なのかはさておき、アノスからは最短距離の街道を来たのだろう。ファンドリアは暗黒的な国だが、通過するだけならできる国だ。永住や定住には向かないが。ふれこみが正しければ、彼らは腕に覚えもあるだろうし、あの金のつかいっぷりから、ファンドリア国内では安全を金で買っていた可能性もある。ファリス神官であるクレアをどう納得させたのかはかなり謎だが、謎だらけである現在、もうその程度の謎は瑣末な問題な気がしてきた。
ただ、問題は、彼らは自分たちの前に姿を現す3日も前からオーファンに来ていた。コレはどういう意味なのだろう。
「こりゃまた盗賊ギルドかな。あんまり情報くれなさそうだが」
「そうでしょうな」
「というわけだからノリスが帰ってき次第、バスとノリスで行ってきてくれ」


■ハーフェン導師が大好きだ。でも口調がまったくわからん(笑)
すげーうそくさくなった。反省。


2007/08/08

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