忍者ブログ
泡だとかぽこだとか。時折ルージュとか。初めての方は「各カテゴリ説明」をお読みください。
[32]  [31]  [30]  [29]  [26]  [25]  [24]  [23]  [22]  [21]  [20
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

泡ぽこ 19

そうこうしているうちに、そもそもの約束だった一週間の期限がやってきた。
ヒースたちから言えば、結局つかんだ事実は彼らが自分たちの前に現れる3日も前からファンの街に居たことと、ずっと同じ名前を名乗っていることくらいだった。バスの言葉を信じるならば、彼らが名乗っているのは有名人の名前だ。有名な分、実入りも大きいだろうが、リスクも大きい。従って、わざわざ有名人を騙るのはあまり得策といえない。もちろん、オーファンはアノスから随分離れているから、ばれる可能性は低いかもしれない。しかし、顔を知っている人間というのは、居ないとも限らない。つまり本物と考えてもいいだろう、というのが最近のヒースの感想である。考えるのが面倒くさくなった、とも言う。
アーチボルトたちから言えば、そもそもイリーナだけを護衛していく仕事である。彼女の仲間たちが一緒に行くことになったのはさして問題はない。彼らも実力があるのは調査したことでわかっているから、自分たちを付けねらうダークエルフなどが出てきても慌てることにはならないだろう。彼らを丸め込もうだとか言っていたのも、単なる暇つぶしのようなものであったし、実際信頼してくれるようになれば実入りはある。ファンの街での滞在を伸ばしたことは結果的には良かったといえるだろう。まあ、もっともマウナは半分以上こちらの金遣いに圧倒されているだけだといえるし、ノリスやイリーナは基本的にそう他人を疑わないだけだったのかもしれないが。ヒースやガルガド、エキューあたりは警戒心を持ったかもしれないが、そもそも自分たちは現在裏がとりにくい依頼人といえるわけで、そういう相手を疑えるような冒険者なら、一流といってもいいだろう。つまり、まあ、心配は要らない。最後のところで大雑把なのは自分たちの悪い癖かもしれないと思いつつもアーチボルトは
安心していた。
第三者的な立場でいえば、結局腹の探りあいが中途半端で終わったともいえるが、双方その辺りは気づかない振りをしている。


再び青い小鳩亭のVIPルームで彼らは顔を合わしている。
相変わらず、依頼人側にはイリーナが座り、請け負う冒険者側にはアーチボルトたちが座っている。総資産では絶対逆だ、とマウナはいつまでたっても慣れないふわふわのソファで落ち着かない気持ちで相手を見ていた。
「では、もう一度簡単に説明させていただきます」
クレアが地図を取り出しながらイリーナに説明を始める。
「申し訳ないのですが、アノスまでは徒歩移動となります。街道の最短ルートを行きますので、途中ファンドリア、ロマール、オランなどを経由することになります」
「ふぁんどりあ……」
イリーナの目に剣呑な光が浮かびかけたのに気づいてヒースはその後頭部を軽くはたいておいた。
「私もファンドリアには個人的に思うところは色々あるので、イリーナの気持ちは分かりますが、今回はアノスへの無事到着を考えて自重してください」
ぴしゃりとクレアに言われて、イリーナは罰の悪そうな顔をする。
「あと、少々こちらの状況の関係上、ロマール、それからオランとアノスの国境あたりでは警戒をおこたらないでくれ」
アーチボルトの声にヒースが眉を寄せて見せると、アーチボルトは苦笑した。
「少々、恨みを買っている。ロマールでは表立っては何もないだろうが、あのお方が見逃してくれるとは思えない。アノス方面ではいろいろあってダークエルフと全面対決中だ。我々と見れば襲い掛かってくる可能性はある」
「ロマールはよくわかりませんが、ダークエルフは邪悪です! 殲滅しましょう!」
「……ファリス神官として正しい台詞だ」
「はとこ、そこで嫌な顔しちゃだめにゅ」
「そうですよ、いくらお仲間といえど」
「仲間じゃない」
背後で始まったスイフリーとパラサ、グイズノーの話を咳払いでやめさせるとクレアは続けた。
「アノスでは準備が整うまで神殿付近の宿で宿泊していただきます。準備が整い次第法皇様との謁見になります。わたしたちは、イリーナのアノス出国までを護衛させていただきます」
「ということは、帰りは俺様たちだけでなんとかしろ、ってことか。片道4ヶ月かかる道を、片道だけ護衛っていうのは少々問題ないか?」
ヒースは不満な顔をクレアに向ける。
「何を言うんですかヒース兄さん。法皇様にお会いできるだけでも十分光栄じゃないですか! 帰りの4ヶ月は邪悪を退治しながら戻ってきましょう!」
「お前だけでやれ、そんなこと。大体、俺様たちの報酬は24万分の魔晶石、拘束期間ほぼ1年じゃ割に合わんぞ、今気づいたが」
「今気づいたの……?」
エキューが呆れた声を出す。
「それについては、言ったような気もしないでもないが、帰り道については考えがあるのだ。ファーズから1週間ほど行った田舎にわたしの城があるのだが、そこにテレポートのスクロールがある。それを使いたまえ」
「アーチーの城じゃないにゅ」
「みんなの城です」
後ろからの突込みを全て無視してアーチボルトは続ける。
「まあ、スクロールを売り払って自力で歩いてかえることについて我々は何も言わないが」
「でもそんな便利なものがあるなら、どうしてファンからファーズまで一気に飛ばないんですか?」
マウナの質問に、フィリスが答える。
「今、スクロールの手持ちが1本しかないのよ。イリーナをアノスから無事にオーファンに帰すために、帰り道に使ってもらおうと思ったわけ。当初はイリーナ一人を連れて行く予定だったから」
なるほど、とマウナは頷く。
「他に質問はあるかね? なければ明日にでも出発しよう。スイフリー、彼らの報酬を前払いしたまえ」
「なぜアーチーのに命令されているんだ?」
言いながらもスイフリーは約束どおりの魔晶石をごろごろとテーブルにばら撒いた。
「あ、質問なんだけど」
ノリスが手を挙げる。
「さっき言ってた、ロマールのあのお方って、誰? 僕が聞いてなかっただけ?」
スイフリーとアーチボルトが目を見合わせた。そして
「ああ、言ってなかったか。軍師だよ。ルキアルだ。ちょっかいかけてこない限り、こっちからは何もしないから安心していい」


聞きたくなかった。


それがヒースの正直な感想だった。



■この回は書く時間があまりとれず、19-1と19-2として2回に分けて送信した模様です。
ちょうどヒースの声が子安さんだと判明した頃で(5月17日でした)私の脳内では松本保典さんだったよー、とか書いてありました。
あと、アーチーは大塚さんだそうです。
過去は過去として、まあ、うん、今もそうかも。

明日はお休みします。
ちょっと出かけるので。


2007/08/14

拍手[0回]

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
忍者ブログ / [PR]

photo by 7s
カレンダー
04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
ブログ内検索
カウンター
WEB拍手
2007.12.24変更
メルフォ。
プロフィール
HN:
こーき
性別:
非公開
最新コメント
最新トラックバック
バーコード
忍者・1人目
忍者・2人目