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次の日。
裏を取ろうにもアノスが遠すぎるのが問題だ、とヒースは思いながら本をめくる。
今日はアノスの冒険者たちは全員連れ立って街の観光に出て行ってしまった。今日の案内人はそういうわけでエキューとノリスが二人で着いていった。相手は7人だが、全員が本当におのぼりさん状態で歩くだけという話だ。
街をよく徘徊しているがいかんせんおつむの回転がよろしくないノリスと、常識人ではあるが基本的部分で冷めたエキューの二人でも何とかなるだろう。
しかし、これ以上打つ手はないのだろうか。
街の中の人間であれば、簡単に裏は取れる。盗賊ギルドが口を濁す場合もあるが、そういうのも大体は相手も保護を受けているからであって、ギルドに不利益を与えなければ裏は何とか取れるものだ。
しかしいかんせん、今回は相手が遠いところから来ている分厄介だ。
「どうしたのかね、浮かない顔をして」
遂にはハーフェンに声をかけられる。
「別に? 俺様いつも絶好調だぞ」
「それならいいんだけどね。さっきから本のページがおんなじだよ」
「……なあ、ハーフェン」
「なんだい」
「アノスの魔術師ギルドと連絡って簡単に取れたりしないのか?」
「あんまり横連帯ないからねえ。そんなに簡単には取れないよ。アノスは遠いしね。何かアノスに関連した困ったことがあるのかい?」
「イリーナがいつかアノスへ巡礼に行きたいなんて抜かしやがってくれましたので、現在情報がわかったらいいんじゃないかなーとか思わないでもないわけだ」
「まあ、彼女はファリス神官だし、巡礼したい気持ちは分からないでもないなあ。んー、アノスねえ。……噂はこの前聞いたかな」
「どんな!?」
思わず背筋が伸びる。
「もともと、アノスはファリス信仰の国だしね、魔術師ギルドはあんまり権限ないんだけど、結構前に魔術師がらみの嫌な事件があって今はますます肩身が狭いらしいよ」
「何があったんだ?」
「さあ?」
「あーもうつかえねえなあハーフェン!」
「ごめんごめん。ヒースはいつも元気がいいなあ」
ハーフェンがニコニコ笑っているのを見ていると、気恥ずかしくなってくる。ああ、もう、と内心毒づいたところで急にひらめいたものがあった。
「ハーフェン俺様ちょっと出てくる。今日は戻らん」
「そうかいそうかい。気をつけていってくるんだよ」
学院を出て、いつもバスが歌っている広場へ向かう。相変わらず人だかりができていて、結構な額を稼いでいる。
まだまだ歌は続くらしいから、手だけ振って青い小鳩亭へ向かう。
「いらっしゃいませー……ってヒースか」
「最後まで気合入れて仕事しろ赤貧ハーフエルフ。ところでアノスの冒険者たちは?」
「全員観光よ。わたしも何かしたいわ」
「俺様今からちょっくら調べごとしに行くんだが、お前も参加しないか?」
「何を調べるの?」
「入国記録だ。アノスからきたって言うんだから南のほうの門だとは思うんだが、他にも北とかあるからな。手分けしたほうが早い」
「入国記録?」
「奴らがいつ入ったのか。ちゃんと一致する名前があるか。だな」
「今名乗ってるのが偽名だとして、入国のときから偽名だったら分からないわよ」
「だとしても、いつ入国したか分かる。俺様たちのところに一直線に来たかどうかだな。もし、どこにも名前がなければ、非合法な入国してきたことになるだろう。そうすれば何者かって締め上げられるぞ」
「……24万もぽんと出してくれて、毎日物凄い量のお金をだしてくれる人だったら悪人でもいい気がする」
「落ち着けマウナ。死んだら金はもう貯められないんだぞ」
「うるさいわよ分かってるわよそんなこと」
ぱこん、とヒースの後頭部でお盆がいい音を立てた。
小鳩亭を出たところで、こちらに向かってきていたバスと合流することができた。合流はしたが、すぐに手分けすることになったからあまり意味はなかったかもしれないが、全体的な労力は少し減ったともいえる。お互い主要な門の入国記録を調べて落ち合うことにして分かれた。
結果、分かったことといえば彼らは光と闇の街道を通ってファンドリア方面からやってきていた。名前は現在名乗っているものと一致している。堂々と本名を名乗っているのか、常日頃偽名生活なのかはさておき、アノスからは最短距離の街道を来たのだろう。ファンドリアは暗黒的な国だが、通過するだけならできる国だ。永住や定住には向かないが。ふれこみが正しければ、彼らは腕に覚えもあるだろうし、あの金のつかいっぷりから、ファンドリア国内では安全を金で買っていた可能性もある。ファリス神官であるクレアをどう納得させたのかはかなり謎だが、謎だらけである現在、もうその程度の謎は瑣末な問題な気がしてきた。
ただ、問題は、彼らは自分たちの前に姿を現す3日も前からオーファンに来ていた。コレはどういう意味なのだろう。
「こりゃまた盗賊ギルドかな。あんまり情報くれなさそうだが」
「そうでしょうな」
「というわけだからノリスが帰ってき次第、バスとノリスで行ってきてくれ」
■ハーフェン導師が大好きだ。でも口調がまったくわからん(笑)
すげーうそくさくなった。反省。
2007/08/08