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クレアとスイフリー、パラサの三人をファリス神殿まで案内することになったノリスは、まず「青い小鳩亭」で、大体の地図を描きながらファリス神殿までの道を伝えることにした。三人ともがはぐれるということはまずないだろうとは思ったが、念には念を入れたほうがいい。何せこの三人は、お金持ちなのだ。バスの話ではアノスの有名人だ。歩き方とか見ているとパラサのほうが随分シーフとして強そうな気がするけど、現在自分は案内役であり護衛みたいなものなのだ。まだ雇われてないけど。もしかしたら雇われるかもしれなくて、そしてそのときは高額契約になる。今から自分を売り込んでも、まあ、損はない。
「では、ファリス神殿はそれほど遠くはないわけですね」
地図を見ながらクレアが言う。そうだよ、とノリスはうなずいた。
「イリーナが働いているところを見るの?」
ノリスが疑問に思っていたことを聞くと、クレアは苦笑してから首を横に振った。
「いいえ。彼女が真面目なファリス神官であることは間違いないでしょう。そうでなければ、アノスまで噂は届かないでしょうから。私は、私の信仰のために神殿に向かうのです」
「真面目さだけでアノスまで噂がくるか?」
スイフリーが眉を寄せる。どうも疑っているみたいだ。確かにイリーナは真面目だ。だからクレアが言うことは間違っていない。けど、真面目「だけ」で有名なわけでもないと思う。だから、スイフリーの言うことも間違ってない。そうは思うけど、とりあえず言わないでおいた。イリーナは大事な友達だ。
「どっちでもいいよ~オレは姉ちゃんについていくだけ~」
パラサはふらふらとした足取りでクレアに近寄っていく。あんな歩き方なのに足音は相変わらずしない。詐欺じゃないだろうか。
「ともかく、案内をよろしくおねがいしますね」
クレアは、くっついてこようとするパラサと、ソレを阻止しようとするスイフリーの様子を見て少し困ったようにため息をついてから、ノリスに頭を下げた。その様子を見ていて、ノリスはクレアに尋ねる。
「仲、悪いの?」
「いえ、良いんだと思います」
道中は比較的穏やかだった。時折パラサが屋台の匂いにつられてフラフラと歩いて行くだとか、スイフリーが不機嫌そうなのだとかを気にしないなら、ほぼ問題のない道中だった。
ただ、ハプニングに巻き込まれたのを除いたら。
ハプニングというのは、唐突に起こるから、ハプニングという。
オーファンは地下道の工事が現在急ピッチで進められている。下水道だという話だけど、本当のところは良く分からない。一度は工事の護衛も仕事としてやったことはあるけど、仕事として地下道を掘ったことは今のところないから、実際の仕事はどういう感じなのか良く分からないのがノリスの正直な感想だ。
そういうわけだから、工事現場というのをあちこちに見ることができる。大体は、工事現場には自分たちがやったことのあるように護衛兼見張りが居るし、囲いだってある。だから、ほぼ安全。
けど、そうではない場所もある。
「どうしたんでしょう、アレ」
クレアの視線の先には結構な人が集まっていた。口々に何か言っている。見た感じ、野次馬という表現が一番正しそうだ。
「何か緊迫してるな」
スイフリーが口を歪めて呟く。何かとても嫌そうだ。
「ちょっと見てくるにゅ」
言ったと思ったときには、もうパラサはそこに居ない。クレアとスイフリーが立ち止まってパラサを待つようだったから、ノリスも立ち止まった。たいした時間もかけず、すぐにパラサは戻ってくる。
「工事現場の細い隙間に、子どもが落っこちてたにゅ」
クレアは無言でその現場に歩き出す。パラサもすぐにそれに従った。スイフリーはため息をついて「これ以上人情で動いたら赤字じゃ済まん」と呟いてから、舌打ちとともに二人の後を追う。ノリスにはそれを止める権限がないから、後についていく。もしかしたら面白いものが見れるかもしれない。
思っていたより、状況は深刻なようだった。
子どもが落ちたのは地下道工事の穴だと思うが、かなり深い。落ちたときに子どもは怪我をしたらしく、びーびー泣いている。スイフリーがかなり不機嫌そうな顔をした。それを見て、パラサがすかさず言う。
「なきやむんだ、とか言わないでよはとこ」
「ほかにどう言うというのだ」
「子どもはそれじゃなきやめないんだってば」
「それよりどうしたらいいでしょう?」
クレアが割ってはいる。
「はとこの子がロープを持って降りる、……抱えられないか。何でグラスランナーなんだ、はとこの子よ」
「いやそんなこと言われても」
「落下制御、筋力増加、飛行……どれもソーサラーだ、何でフィリスはココに居ないんだ!」
「オレがロープ持って降りるんじゃ駄目?」
「ロープで引っ張りあげるのはありだ。が、はとこの子では抱えられない。かといってそのまま引きずりあげると、穴の側面の岩で子どもが怪我を増やす。方法は他にあるとすれば、櫓を組んで滑車を使う方法だが、時間も材料もココにはない」
「でもオレ、とりあえずロープもって降りる。きっと一人で不安にしてるにゅ」
言うや否や、パラサはロープの端とともに穴の中へ消えていく。
「私が降りましょうか? 多分このくらいの穴なら大丈夫です」
クレアの言葉に、スイフリーは眉を寄せる。
「で? その二人の体重を、誰が持ち上げるんだ? ここにいるのは非力なわたしだぞ?」
「見てる人に手伝ってもらえば?」
ノリスの声に、スイフリーが振り返る。にやりと口元に笑みが浮かんでいた。
「人間の少年よ、盗賊の心得があったな?」
「え? うん、あるよ」
呼び方が名前じゃなくなっていることにノリスは不安を覚えながらもうなずく。
「彼に降りてもらおう。クレアと私、あとそこらで見ている力の強そうなのを手伝わせれば何とかなるだろう。子どもが出てきたら治癒の一つもしてやれ」
みるみるまに話が決まり、ノリスが返事をする暇もないうちに、スイフリーは穴の中に向かってパラサに戻るように指示をしていた。
■この回はちょっと記念の回なのです。
なぜって、この回から、メール(友人には携帯メールでおくってます・笑)にタイトルとして通し番号が付くようになりました。
「泡ぽこ」というタイトルはまだついてない頃です。
ちなみにそれまでは「こんなかんじでどう?」とか「つづき」とか「題名募集中」とか「バブリーズさんとへっぽこさん」とかつけてました。
現在、戦闘に突入し、「そういえばSWのルールってどんなんだっけよ?」とルールブックを持っている友人に聞いている最中です(笑)
そのうちサイコロふるぜ。
平行してダブルクロスのキャラメイクもしていたり(苦笑)
2007/08/01