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一方、VIP室からは退席して、いつものテーブルに戻ったヒースたちもまた、顔を寄せて対策会議の真っ最中であった。イリーナが受け取った封書には厳重に封がしてあった。封蝋にはファリスの聖印が記されている。内容はほとんどクレアが言ったことの追確認で、アノスの法皇が直接イリーナに言葉をかけることであるとか、旅の間の待遇であるとか、その費用がアノスから出ることであるとかが書かれていた。
「護衛のことは書かれてないな」
ヒースはざっと文面を読んで眉を寄せる。
「ファリス様の聖印を持っているクレアさんがウソをついているとでも言うんですか?」
イリーナの抗議の声に、ヒースはため息をつく。
「あのな、イリーナを信じこませるために、意思をひんまげてファリスの聖印を首からかけてるだけかも知れんだろ? 信じてなくても、聖印は首からさげられる。アクセサリー程度の気分かもしれん」
「でも、私たちをだまして、何か得があるかしら?」
マウナは首をかしげる。
「別にお金持ってるわけでもないし。名誉はあるかも、だけど、本当にアーチボルトさんたちがアノスの騎士なら、私たちを倒して名誉をどうの、って考えないよね?」
「むしろそんなことしたら国家レベルの話になるぞ?」
「なんにせよ、クソガキたちがシーフギルドで何かつかんでこないと話しにならん」
「……ノリスとバスじゃ期待薄だぜ、おやっさん」
そこで全員がため息をついた。
「ただいまー」
暫くしてノリスとバスが帰ってくる。二人はテーブルにつくと全員を見渡してから軽い声で言った。
「全然駄目だったよー」
「……やっぱり」
ヒースがぼそりといい、ガルガドが苦い顔をする。
「どう駄目だったのか、聞き方にもよるぞ」
「似顔絵もっていったし、お金も出したんだけどね。とりあえず、本人だろうっていう話までだね。一緒に仕事するのか? って言われちゃったよ」
「やめておけ、といった口ぶりでしたな」
ノリスが出してきた似顔絵は、全員良く似ていた。コレで「本人だろう」という程度にしか話を聞かせてくれないのか、とヒースは内心口をゆがめる。
「先回りされたのかもしれんの。自分たちについて聞きに来ても答えるな、と。バスの言う噂が本当なら、パラサというグラスランナーは高レベルだろう。……高レベルのシーフか……」
「おやっさん、みなまで言うな。コレは俺様のおごりだから飲んでくれ」
遠い目をするガルガドの肩をぽん、と叩きながらヒースはエールを差し出す。ガルガドはソレを飲み干すと、ふう、と大きくため息をついた。
「一週間返事に猶予があるんだから、あの人たちを遊ばせておくっていうのは? 観光するって言っていたんだし、案内するよって言って動向を探る」
「ソレがいいかもしれんなあ」
エキューの提案にヒースは頷く。
「クレアさんを疑うなんて、どうかしてますよ」
「だからな、イリーナ。本当のファリス信者かどうかなんて、まだ分からんだろうが」
ヒースはため息交じりに言うが、イリーナの返事は芳しくない。「うーん」などといううなり声にも似たような返事だけが返ってきた。
「まあ、イリーナがファリス神官として、同じファリス神官を疑いたくない気持ちはわからんでもない。しかしアノスは遠い上に拘束期間も長い。途中にはワシらに目をつけているファンドリアもある。用心するに越したことはない。これは分かるか?」
ガルガドの言葉に、イリーナはうなずく。
「依頼人の裏を取っておくのは、冒険者の基本だ。気分はよくないだろうが、コレも分かるな」
「……分かります」
「返事は期間ぎりぎり粘ろう。その間に、集められるだけの情報を集めるぞ」
ヒースの決定に、全員がうなずいた。
「とりあえず、イリーナやガルガドはいつもどおり神殿でお仕事しててくれなさい。受け持ち仕事の割り振りもあるだろうしな。俺様もハーフェンにちょっくら事情を説明して外出の処理をしとく。ノリスとバスは引き続きシーフギルドとか町の噂とか拾っとけ。毎日ここで落ち合って情報交換だ。各自旅の準備なども進めておかんといけないな、貰いモンの魔晶石だけじゃ旅はできん」
「例えばランタンを複数買っておく、とかね」
一気に俯いて机にのの字を書き始めるヒースを無視して、エキューは続ける。
「とりあえず、僕とノリスとガルガドは情報あつめつつ、あの人たちが街の観光に出かけるとき案内と称して付いていったほうがいいね。街で何かするつもりがあるかもしれない。目を光らせておくのに越したことはないよ」
「私はどうしようか」
マウナは首をかしげる。今のところ課せられた仕事はない。
「出かけないメンバーもいるかもしれん。そっちの見張りだ」
■えー、友人に送っている本編(コレは再放送・笑)のほうが、40話に達しました。
まだ先が見えません。いつ終わるんだ。終わるのか。
ここへきて行き詰ってます。
……スイフリーのバルキリージャベリンが、クレアさんに炸裂しそうです(どんな話だ)
2007/07/24