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ロープの端を持って、穴の中に降りる。子どもには確かに上れないだろうという深さだったが、盗賊であるノリスには問題が無い。すぐに穴の底に下りる事が出来た。穴の中はかなり狭くて、三人もいるとかなり息苦しい。
「先にでてるにゅ」
パラサはそういうと、するするとロープを伝って穴から出て行った。
「多分、後ちょっとで助かるからね」
ノリスはとりあえず子どもに言う。子どもはこくんと頷いた。
「おい」
穴の上からスイフリーの声がして、ノリスは顔をそちらに向ける。穴の底にいるのに、聞こえる声が全く反響してないところから見て、多分彼はウインドボイスで話しているのだろう。
「ロープはしっかり持ったか? 子どもは拾ったか?」
「大丈夫だよー。ロープは体に巻きつけたし、子どもはしっかりおんぶしてくよー」
「よろしい。では引っ張ることにするから、そちらも登ってくれ」
スイフリーの顔が引っ込むと、とたんにロープが引っ張られている感覚がした。ぐずぐずはしていられない。子どもを背負って、しっかりと捕まっているように言ってから壁を登り始める。
危なげなく穴の壁をのぼって外に出ると、少し太陽が眩しかった。
ロープの端は、クレアとスイフリー、パラサ、それから見ず知らずの男が3人ばかり握っていた。ノリスが出てくるのを見ると、スイフリーはさっさとロープから手を離し、見ず知らずの男たちに何かを手渡していた。
「怪我はありませんか?」
クレアが近寄ってきて、ノリスと子どもに尋ねる。
「ボクは無いけど、子どもは怪我してるよ」
「見せてください」
クレアはすぐに子どもの側にしゃがんで、それから治癒の魔法を使う。それから子どもの頭を何度かなでて、「良く頑張りました」というような事を言って笑った。少し冷たそうな人だと思っていたけど、笑うと結構優しそうだと思う。
同じファリス神官でも、イリーナとは随分違うな、なんて思った。
「あのね、お姉ちゃん。ありがとう」
子どもがクレアに言うと、クレアは笑って「いいんですよ」とだけ答える。
「神官様に、魔法を使ってもらうのって、お金が要るんでしょう? ボク、お金持っていないの」
「心配しなくて良いのですよ。私が自分の信仰に従ってした行動ですから。どうしても貴方がそれでは納得できないというのであれば、ファリス神殿に行ってお祈りをしてくださいね」
クレアは言うと立ち上がる。そしてもう一度子どもの頭を撫でてから、こちらを振り返った。
「お待たせしました」
「姉ちゃんは優しいにゅ」
「では行こう。時間をロスした」
「……はとこ、邪悪」
「失礼な。無報酬どころか出費しつつ作戦を立てただろうが。ああ、働いたなぁ」
スイフリーはわざとらしくため息をついてから首をこきりと鳴らした。
「では、ノリスさんお願いしますね」
クレアの言葉で、全員また歩き出す。
「ねえ」
ノリスはパラサに声をかける。
「にゅ?」
「クレアさんって、優しいね」
「あったりまえにゅ!」
にぱっと笑って返事をした後、パラサははっとしたような顔をしてから、鋭い目をノリスに向けた。
「姉ちゃんはわたさないにゅ」
「狙ってないよ!」
一瞬殺気のようなものを感じて、ノリスは首がちぎれるんじゃないだろうかというくらいの勢いで首を横に振った。
「じゃ、いい」
パラサはぴょんぴょん飛び跳ねるように歩いて、少し前を背をピンと張って歩くクレアに追いつく。
「あ、ねえ」
気になって、今度は少し後ろを歩くスイフリーに声をかける。
「なんだ」
「さっき、男の人たちに渡してたの、報酬?」
「そうだ」
「僕らを雇うことになったら、また出費するわけだよね? イリーナの護衛って、そんなに報酬でてるの?」
「クレアには神殿から出てるだろうが、額はしらん。今回は無報酬だ」
「え?」
絶句する。
「魔晶石を24万ガメル分も、ぽんと出しておいて、無報酬?」
「今はな。……帰ったらぜったい収支は合わせてみせる。すくなくとも、現在既に法皇に一個貸しだ。どうとでもできる」
小声で言ったあと、にやりと笑ったスイフリーを見て、ノリスはこのエルフだけは敵にまわすまい、と寒気を感じながらおもった。
■先週は体調が思わしくなかったので、毎日更新なんて言いつつあまりアップできませんでした。
今週は、元気だといいなあ。
あいかわらず、戦闘のためのダイスは振れてません。
敏捷度27とか、楽しそうだから振ってみたいのに。
2007/08/06