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夕方に近い時刻になって、冒険者たちは帰って来た。そのままもう定位置になりかけているテーブルについて、マウナから手渡されたメニューを見、今日もまた適当に上から順番に何かを頼んでいたようだった。
「で、どうだった?」
「普通の観光だよ。お城みて、マイリー神殿みて、賢者の学院みて、ファリス神殿見て、ラーダ神殿見て、フランツさんのお店とか有名スポット見て、って感じ」
ノリスはいつものセットを注文してから答える。
「マウナさん、コレお土産です」
エキューは持っていた小さな紙の箱をマウナに差し出す。
「何コレ、すっごく有名なお店のケーキじゃない!」
「おいしい店を紹介しろって言われてね、どうせなら普段入れないような高級なお店を言ってみたらぽんと入って、ここで頼むみたいに適当に料理注文して、皆でばーっと食べたんだよ」
「え、てことは二人ともおごってもらったの!?」
「そだよ」
ノリスの説明とあまりにもあっけらかんとした肯定に、マウナはめまいを感じたように少しよろけて見せた。エキューがそれをすかさず支える。
「それで、仕事でついてこれないマウナがかわいそうだねーって言ったら、じゃあ何かテイクアウトしなさいな、ってフィリスさんが。それでケーキをエキューと二人で選んだんだよー。イリーナの分も入ってるから、あとで二人で食べればいいよ」
「ステキ! ステキよ! フィリスお姉さま! 悪い人じゃないって言った通りじゃない!」
「あ、くそう、また篭絡されたぞ、丸め込まれたぞ、赤貧ハーフエルフが!」
「自分の分がないのが悔しいんだねヒース」
エキューが冷たい視線をヒースに向ける。
「まあ、それはともかくだ。ノリス、バスとともにギルドへ行って来い。何調べるかはバスに道々聞け」
「えー、ご飯食べてない」
「食ってからでいい」
「余裕だ、余裕すぎだぞ、簡単に丸め込める」
スイフリーがマウナの様子を見ていて、口を吊り上げる。クレアの抗議の冷たい目線も気にしていない。
「あたしは別に丸め込むつもりとかなかったんだけどなあ」
フィリスが苦笑するが、それもスイフリーは気にしない。
「それを言うなら、ノリスだって全くその気がなかったクレアが丸め込んだんだぞ」
「え? 私だったんですか?」
「自覚なかったのか」
そうは言いながらも、さして意外そうな顔もせずスイフリーは言う。
「マウナが居ればエキューはまあほぼ問題なしだ。イリーナを丸め込むのも簡単だろう。バスはそもそもイリーナたちの冒険譚を作ることに興味があるんだからさして問題なし。厄介なのはヒースとガルガドだな」
「そもそも、何でそんなに丸め込もうとしてるの? お金で雇うんじゃなかったの?」
顔を寄せ合って策略をめぐらせるアーチボルトとスイフリーに、レジィナは不思議そうな目を向ける。
「そのほうが面白いだろうが!」
と答えたのはアーチボルト。
「金だけならいざという時裏切るかもしれんが、信頼関係は裏切らない」
とはスイフリー。
「丸め込みと信頼は別物にゅ」
「何を言うかはとこの子よ。ノリスはクレアに、マウナはフィリスにそれぞれ憧れを抱いているのだぞ。その相手の言うことなら聞くに決まっている」
「そうかなあ」
レジィナが首をかしげる。
「はとこの子を見ていれば分かるだろう」
「ああ」
「納得されたにゅ!」
がーん、という顔をしつつも、それほどショックは受けてない軽い調子でパラサは言うと笑った。
「イリーナは簡単なの?」
「邪悪を目の前に背を向けるようなファリス神官は居ない。うまくけしかければいいだけだ」
「邪悪です」
クレアの剣呑な目がスイフリーに向けられる。流石にスイフリーは首を縮めた。
「ま、まあ、ともかくだ。その内容が憧れであれ信頼であれ、仲間が増えるのは心強いことではないか」
「んー、まあ、そうだけど。何かだましてるみたいで嫌だなあ」
レジィナの言葉に、クレアが大きくうなずく。
「だましてるわけじゃないわよ。私がケーキをおごったのは本当のことだし、それで慕ってくれただけの話でしょ。クレアがノリスに何をしたのかは知らないけど」
「……何も、してないはずなんですけど。本当に私がノリスさんを?」
「そうだ」
「そうにゅ」
クレアは眉を寄せて暫く首を傾げて考える。
心当たりは全くなかった。
「まあ、心当たりがなくても、クレアさんが悪いことをしたわけがないですよ。気にすることはないのです。それより料理がきましたよ」
同じ神官であるはずのグイズノーから、何の憂いもない言葉が響いた。
■そろそろまた脳内萌え分が減ってきました。
どこかにかーいらしいクレアさんとか凛々しいクレアさんとかいないでしょうか。
……誰かかいてくれませんかね。絵板にでも。
2007/08/10