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出発は次の朝になった。
ヒースたちが荷馬であるジェイミーを連れてきたことに少々アノスの冒険者たちは面食らったようだったが、結局何も言わなかった。逆にヒースたちから言えば、あまりに身軽そうな彼らの姿に驚いたのだが。
「しかし」
グイズノーは全員を見て福々しい笑顔のまま、嬉しそうに続ける。
「14人も冒険者がこうやってそろうと、圧巻を通り越してちょっと呆れてしまいそうになりますねえ。他人から見れば、多分冒険者には見えませんよ」
「何に見えるというのだ」
「……難民?」
アーチボルトの質問にグイズノーは答えると、ふふ、と笑う。その笑いの意図が分からなくてマウナは眉を寄せたが、アノスの冒険者たちは皆何も言わなかった。慣れているのだろう。
「隊列とか、どうしますか?」
困惑しつつも、マウナはアーチボルトを見上げる。自分たちは実質彼らに雇われたのであり、彼らのリーダーがアーチボルトであるいじょう、彼に聞くのが良いのだろうと判断した。
「イリーナが客人である以上、中央にいてもらうしかない。前後を我々が固める。君たちはスイフリーとフィリスに雇われたのだから、彼らの護衛をしてもらおう。フィリスは戦闘能力がないし、スイフリーは体力がない」
戦闘能力がないわけじゃないんだ、とマウナは少し意外に思いながら離れた位置にいるスイフリーを見る。確かに、エルフだけあってあまり頑丈そうではない。
「えええ!? 私はそれじゃ邪悪と戦えないじゃないですか!」
聞いていたイリーナが驚愕の声をあげる。しかもかなり不満そうに。背中に背負ったグレートソードなど見ていると、まあ、戦いに重きをおいているのだろうとはすぐに分かったが。
「いや、君に傷つかれると困るのだ」
「邪悪には負けません!」
「この鉄の塊がどこをどうしたら怪我をするっていうん……のわぁ!」
言いかけたヒースにイリーナの裏拳が容赦なく飛んでいく。すんでのところで避けて、ヒースはしゃがみこむ。
「なんか、どこかで似たような光景を見たことある気がします」
「気のせいよ、レジィナ」
レジィナに、フィリスは冷静に答える。
「参考までに君たちは普段どうしていたか教えてくれたまえ」
アーチボルトの問いかけに、ガルガドが答える。
「イリーナの強さを盾に、罠感知のためにノリスがイリーナとともに正面に立つ。中央をマウナやヒース、それからエキューだな。しんがりはワシやバスだ」
「大体似たようなものだな」
「イリーナは正面に立たせることを薦めるぞ。あんたらから言えば客人で、怪我をされたら困るのは分かるが、イリーナに魔物と戦いもせずじっとしてろってのは、無理な話だ。いつか鬱憤たまって爆発して暴走する」
「……そうか」
アーチボルトが遠い目を一瞬してイリーナを見た。ヒースは思わず同情しそうになったが、事実しか述べてないあたりがそれを阻む。
「結局、大所帯といえど普通に考えたらいいんじゃないか? 戦闘能力があるものが盗賊とともに前に出る。今からは街道だから、レンジャーとして警戒できるものも重要だろう。後ろも戦えるものが居て、真ん中に魔法使いだろう。特にわたしはひ弱だから、中にしてもらえるとありがたい」
スイフリーが隣から声をかける。
「それしかないだろうな」
ヒースの同意に、他のものもうなずく。
結局全員で話し合い、先頭はイリーナがノリスとパラサとともに歩いている。
「どうしてかしら、あの三人が並んでると物凄く不安なのは」
「心配するなマウナ。全員不安だ」
マウナの呟きに、ヒースはひきつった笑みを浮かべつつ答える。
「すぐ後ろを歩いているエキューとクレアさんに期待だ」
■20回目にして、実はこのタイトルは名づけてもらいました。
海の近くのスタバで、Rちゃんにつけてもらったのでした。
「バブリーズさんの泡と、へっぽこのぽこで、泡ぽこ」
以降、それ以上いい感じのタイトルもないため、そのままです。
2007/08/16