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「と、まあ、そういう感じでね、ファリス神殿に行ったんだよ。着いてからはクレアさんは熱心にお祈りしてたし、パラサさんとスイフリーさんは座って待ってたよ」
「私もクレアさんと一緒にお祈りしました! 熱心なファリス神官さんです。疑う必要はないですよ!」
すっかりクレアを信じるノリスとイリーナに、ヒースは冷めた目を見せる。
「丸め込まれやがりましたな、ガキんちょが。……クレアさんが熱心で疑う必要のないファリス神官っていうのは分かったとしてだ。クレアさんがいい神官さんだからと言って、一緒に居る冒険者がいい冒険者とは限らないぞ? 現にエルフは法皇に一つ貸し、とかいったわけだろ?」
「それは問題発言です」
イリーナが向こうに座るスイフリーに剣呑なまなざしを向ける。
「もしかしたら、クレアさんを全員でだましているかもしれない」
「そう考えると、僕らの報酬24万分の魔晶石もウソだと言うことになるよ」
エキューが言うと、ヒースは暫く考えて
「一緒に行く振りをして、途中で追いはぐか、それは」
「邪悪です」
声とともにイリーナの裏拳がヒースの胸を打つ。ヒースは胸の辺りを押さえて暫くうめいていたが、それでも言葉を続ける。
「本当にクレアさんがだまされていた場合、それは追い剥ぎではなく、だまされている人を救うということになりますまいかね? 俺様そう思うわけ。そして法皇にたてついたエルフを成敗できるぞどーだイリーナ」
「……」
考え込むイリーナにエキューが冷たい瞳を向ける。
「男とは言えエルフさんを疑うなんてどうかしてるよ」
「エルフなら全て善というお前さんもどうかしとるぞ」
ガルガドの冷静な声。エキューはふ、と遠い目をして返事はしなかった。
一方、バブリーズの食卓でも話し合いは始まっていた。
「で、どうだった、首尾は」
アーチボルトは全員の顔を見る。
「そういうアーチーはどうだったのだ」
「変わったことは無しだ」
「そうでもないわよ、アレクラスト周遊記とか面白かったじゃない」
フィリスの前には相変わらずの酒瓶の数々が既に転がっている。そのくせ顔色がまったく変わらないのだからたいしたものだ。
「つまり、目新しいことはナシ、と」
「ヒースに昼飯をおごったくらいだな」
「そっちも赤字か」
スイフリーが苦い顔をする。
「そっちも、とは?」
グイズノーが首をかしげる。珍しいことを言うものだ、というくらいの反応かもしれない。
「人情で人を助けるとたいてい赤字だという話だ。まったく迷惑な」
舌打ちせんばかりの表情でスイフリーが言うと、クレアが無言でそのスイフリーを見つめる。無言の抗議だ。少々目が冷たい。スイフリーは頬杖をついてふい、と横を向く。
「イイ一日だったにゅ。ね? 姉ちゃん」
「概ねは」
クレアは暫く抗議のまなざしをスイフリーに向けていたが、やがて諦めたように冷たい目をやめる。
「イリーナの神殿での評価なども分かりましたし」
「明日は街で聞き込みにゅ。オレ明日も大活躍!」
「期待しています、パラサさん」
「まかせときー!」
パラサはVサインをクレアに向ける。クレアは力なく微笑んだ。
「よろしくお願いしますね」
「まあ、それでだ」
アーチボルトが再び全員を見る。
「あちらさんは多分我々を案内という名で監視を続けるつもりだろう。明日以降も乗っていくか? まだ契約関係ではない以上、こちらが断れば彼らがついてくる理由はなくなるわけだが」
「のってやっても問題はないだろう。不利益はない」
「だったら、案内の人間を変えましょうよ。こちらが指定した人がついてきてくれるみたいですし。……今日、わたくしはエキュー君と行動したわけですが、彼はまだまだ子どもなので色々と不都合なのです」
「不都合などこへ行こうとしたのよ」
レジィナが半眼で睨むと、グイズノーは素早くあさっての方向を見る。
「それにはわたしも賛成だ。ノリスという少年は既に丸め込んだ」
「いつの間に」
クレアが呟く。スイフリーは聞こえない振りをした。
「そうねー。もう賢者の学院も見なくていいし。私もヒース以外がいいかな? アーチーと二人でもいいけど」
「冗談じゃない」
「じゃ、ま、のっていくってことで」
パラサはいいながら、漸く運ばれてきた料理に目を向ける。
「食べるにゅ」
■「ノリス」とパソで打つときに二割くらいの確率で「ノシル」と打ってしまいます。
いい加減、学習したいです。未だに直りません。
2007/08/07