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泡だとかぽこだとか。時折ルージュとか。初めての方は「各カテゴリ説明」をお読みください。
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泡ぽこ 15

「と、まあ、そういう感じでね、ファリス神殿に行ったんだよ。着いてからはクレアさんは熱心にお祈りしてたし、パラサさんとスイフリーさんは座って待ってたよ」
「私もクレアさんと一緒にお祈りしました! 熱心なファリス神官さんです。疑う必要はないですよ!」
すっかりクレアを信じるノリスとイリーナに、ヒースは冷めた目を見せる。
「丸め込まれやがりましたな、ガキんちょが。……クレアさんが熱心で疑う必要のないファリス神官っていうのは分かったとしてだ。クレアさんがいい神官さんだからと言って、一緒に居る冒険者がいい冒険者とは限らないぞ? 現にエルフは法皇に一つ貸し、とかいったわけだろ?」
「それは問題発言です」
イリーナが向こうに座るスイフリーに剣呑なまなざしを向ける。
「もしかしたら、クレアさんを全員でだましているかもしれない」
「そう考えると、僕らの報酬24万分の魔晶石もウソだと言うことになるよ」
エキューが言うと、ヒースは暫く考えて
「一緒に行く振りをして、途中で追いはぐか、それは」
「邪悪です」
声とともにイリーナの裏拳がヒースの胸を打つ。ヒースは胸の辺りを押さえて暫くうめいていたが、それでも言葉を続ける。
「本当にクレアさんがだまされていた場合、それは追い剥ぎではなく、だまされている人を救うということになりますまいかね? 俺様そう思うわけ。そして法皇にたてついたエルフを成敗できるぞどーだイリーナ」
「……」
考え込むイリーナにエキューが冷たい瞳を向ける。
「男とは言えエルフさんを疑うなんてどうかしてるよ」
「エルフなら全て善というお前さんもどうかしとるぞ」
ガルガドの冷静な声。エキューはふ、と遠い目をして返事はしなかった。

 

一方、バブリーズの食卓でも話し合いは始まっていた。
「で、どうだった、首尾は」
アーチボルトは全員の顔を見る。
「そういうアーチーはどうだったのだ」
「変わったことは無しだ」
「そうでもないわよ、アレクラスト周遊記とか面白かったじゃない」
フィリスの前には相変わらずの酒瓶の数々が既に転がっている。そのくせ顔色がまったく変わらないのだからたいしたものだ。
「つまり、目新しいことはナシ、と」
「ヒースに昼飯をおごったくらいだな」
「そっちも赤字か」
スイフリーが苦い顔をする。
「そっちも、とは?」
グイズノーが首をかしげる。珍しいことを言うものだ、というくらいの反応かもしれない。
「人情で人を助けるとたいてい赤字だという話だ。まったく迷惑な」
舌打ちせんばかりの表情でスイフリーが言うと、クレアが無言でそのスイフリーを見つめる。無言の抗議だ。少々目が冷たい。スイフリーは頬杖をついてふい、と横を向く。
「イイ一日だったにゅ。ね? 姉ちゃん」
「概ねは」
クレアは暫く抗議のまなざしをスイフリーに向けていたが、やがて諦めたように冷たい目をやめる。
「イリーナの神殿での評価なども分かりましたし」
「明日は街で聞き込みにゅ。オレ明日も大活躍!」
「期待しています、パラサさん」
「まかせときー!」
パラサはVサインをクレアに向ける。クレアは力なく微笑んだ。
「よろしくお願いしますね」
「まあ、それでだ」
アーチボルトが再び全員を見る。
「あちらさんは多分我々を案内という名で監視を続けるつもりだろう。明日以降も乗っていくか? まだ契約関係ではない以上、こちらが断れば彼らがついてくる理由はなくなるわけだが」
「のってやっても問題はないだろう。不利益はない」
「だったら、案内の人間を変えましょうよ。こちらが指定した人がついてきてくれるみたいですし。……今日、わたくしはエキュー君と行動したわけですが、彼はまだまだ子どもなので色々と不都合なのです」
「不都合などこへ行こうとしたのよ」
レジィナが半眼で睨むと、グイズノーは素早くあさっての方向を見る。
「それにはわたしも賛成だ。ノリスという少年は既に丸め込んだ」
「いつの間に」
クレアが呟く。スイフリーは聞こえない振りをした。
「そうねー。もう賢者の学院も見なくていいし。私もヒース以外がいいかな? アーチーと二人でもいいけど」
「冗談じゃない」
「じゃ、ま、のっていくってことで」
パラサはいいながら、漸く運ばれてきた料理に目を向ける。
「食べるにゅ」



■「ノリス」とパソで打つときに二割くらいの確率で「ノシル」と打ってしまいます。
いい加減、学習したいです。未だに直りません。


2007/08/07

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泡ぽこ 14

ロープの端を持って、穴の中に降りる。子どもには確かに上れないだろうという深さだったが、盗賊であるノリスには問題が無い。すぐに穴の底に下りる事が出来た。穴の中はかなり狭くて、三人もいるとかなり息苦しい。
「先にでてるにゅ」
パラサはそういうと、するするとロープを伝って穴から出て行った。
「多分、後ちょっとで助かるからね」
ノリスはとりあえず子どもに言う。子どもはこくんと頷いた。
「おい」
穴の上からスイフリーの声がして、ノリスは顔をそちらに向ける。穴の底にいるのに、聞こえる声が全く反響してないところから見て、多分彼はウインドボイスで話しているのだろう。
「ロープはしっかり持ったか? 子どもは拾ったか?」
「大丈夫だよー。ロープは体に巻きつけたし、子どもはしっかりおんぶしてくよー」
「よろしい。では引っ張ることにするから、そちらも登ってくれ」
スイフリーの顔が引っ込むと、とたんにロープが引っ張られている感覚がした。ぐずぐずはしていられない。子どもを背負って、しっかりと捕まっているように言ってから壁を登り始める。
危なげなく穴の壁をのぼって外に出ると、少し太陽が眩しかった。
ロープの端は、クレアとスイフリー、パラサ、それから見ず知らずの男が3人ばかり握っていた。ノリスが出てくるのを見ると、スイフリーはさっさとロープから手を離し、見ず知らずの男たちに何かを手渡していた。
「怪我はありませんか?」
クレアが近寄ってきて、ノリスと子どもに尋ねる。
「ボクは無いけど、子どもは怪我してるよ」
「見せてください」
クレアはすぐに子どもの側にしゃがんで、それから治癒の魔法を使う。それから子どもの頭を何度かなでて、「良く頑張りました」というような事を言って笑った。少し冷たそうな人だと思っていたけど、笑うと結構優しそうだと思う。
同じファリス神官でも、イリーナとは随分違うな、なんて思った。
「あのね、お姉ちゃん。ありがとう」
子どもがクレアに言うと、クレアは笑って「いいんですよ」とだけ答える。
「神官様に、魔法を使ってもらうのって、お金が要るんでしょう? ボク、お金持っていないの」
「心配しなくて良いのですよ。私が自分の信仰に従ってした行動ですから。どうしても貴方がそれでは納得できないというのであれば、ファリス神殿に行ってお祈りをしてくださいね」
クレアは言うと立ち上がる。そしてもう一度子どもの頭を撫でてから、こちらを振り返った。
「お待たせしました」
「姉ちゃんは優しいにゅ」
「では行こう。時間をロスした」
「……はとこ、邪悪」
「失礼な。無報酬どころか出費しつつ作戦を立てただろうが。ああ、働いたなぁ」
スイフリーはわざとらしくため息をついてから首をこきりと鳴らした。
「では、ノリスさんお願いしますね」
クレアの言葉で、全員また歩き出す。
「ねえ」
ノリスはパラサに声をかける。
「にゅ?」
「クレアさんって、優しいね」
「あったりまえにゅ!」
にぱっと笑って返事をした後、パラサははっとしたような顔をしてから、鋭い目をノリスに向けた。
「姉ちゃんはわたさないにゅ」
「狙ってないよ!」
一瞬殺気のようなものを感じて、ノリスは首がちぎれるんじゃないだろうかというくらいの勢いで首を横に振った。
「じゃ、いい」
パラサはぴょんぴょん飛び跳ねるように歩いて、少し前を背をピンと張って歩くクレアに追いつく。
「あ、ねえ」
気になって、今度は少し後ろを歩くスイフリーに声をかける。
「なんだ」
「さっき、男の人たちに渡してたの、報酬?」
「そうだ」
「僕らを雇うことになったら、また出費するわけだよね? イリーナの護衛って、そんなに報酬でてるの?」
「クレアには神殿から出てるだろうが、額はしらん。今回は無報酬だ」
「え?」
絶句する。
「魔晶石を24万ガメル分も、ぽんと出しておいて、無報酬?」
「今はな。……帰ったらぜったい収支は合わせてみせる。すくなくとも、現在既に法皇に一個貸しだ。どうとでもできる」
小声で言ったあと、にやりと笑ったスイフリーを見て、ノリスはこのエルフだけは敵にまわすまい、と寒気を感じながらおもった。

 


 

■先週は体調が思わしくなかったので、毎日更新なんて言いつつあまりアップできませんでした。
今週は、元気だといいなあ。

あいかわらず、戦闘のためのダイスは振れてません。
敏捷度27とか、楽しそうだから振ってみたいのに。


2007/08/06

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泡ぽこ 13

クレアとスイフリー、パラサの三人をファリス神殿まで案内することになったノリスは、まず「青い小鳩亭」で、大体の地図を描きながらファリス神殿までの道を伝えることにした。三人ともがはぐれるということはまずないだろうとは思ったが、念には念を入れたほうがいい。何せこの三人は、お金持ちなのだ。バスの話ではアノスの有名人だ。歩き方とか見ているとパラサのほうが随分シーフとして強そうな気がするけど、現在自分は案内役であり護衛みたいなものなのだ。まだ雇われてないけど。もしかしたら雇われるかもしれなくて、そしてそのときは高額契約になる。今から自分を売り込んでも、まあ、損はない。
「では、ファリス神殿はそれほど遠くはないわけですね」
地図を見ながらクレアが言う。そうだよ、とノリスはうなずいた。
「イリーナが働いているところを見るの?」
ノリスが疑問に思っていたことを聞くと、クレアは苦笑してから首を横に振った。
「いいえ。彼女が真面目なファリス神官であることは間違いないでしょう。そうでなければ、アノスまで噂は届かないでしょうから。私は、私の信仰のために神殿に向かうのです」
「真面目さだけでアノスまで噂がくるか?」
スイフリーが眉を寄せる。どうも疑っているみたいだ。確かにイリーナは真面目だ。だからクレアが言うことは間違っていない。けど、真面目「だけ」で有名なわけでもないと思う。だから、スイフリーの言うことも間違ってない。そうは思うけど、とりあえず言わないでおいた。イリーナは大事な友達だ。
「どっちでもいいよ~オレは姉ちゃんについていくだけ~」
パラサはふらふらとした足取りでクレアに近寄っていく。あんな歩き方なのに足音は相変わらずしない。詐欺じゃないだろうか。
「ともかく、案内をよろしくおねがいしますね」
クレアは、くっついてこようとするパラサと、ソレを阻止しようとするスイフリーの様子を見て少し困ったようにため息をついてから、ノリスに頭を下げた。その様子を見ていて、ノリスはクレアに尋ねる。
「仲、悪いの?」
「いえ、良いんだと思います」


道中は比較的穏やかだった。時折パラサが屋台の匂いにつられてフラフラと歩いて行くだとか、スイフリーが不機嫌そうなのだとかを気にしないなら、ほぼ問題のない道中だった。
ただ、ハプニングに巻き込まれたのを除いたら。
ハプニングというのは、唐突に起こるから、ハプニングという。
オーファンは地下道の工事が現在急ピッチで進められている。下水道だという話だけど、本当のところは良く分からない。一度は工事の護衛も仕事としてやったことはあるけど、仕事として地下道を掘ったことは今のところないから、実際の仕事はどういう感じなのか良く分からないのがノリスの正直な感想だ。
そういうわけだから、工事現場というのをあちこちに見ることができる。大体は、工事現場には自分たちがやったことのあるように護衛兼見張りが居るし、囲いだってある。だから、ほぼ安全。
けど、そうではない場所もある。
「どうしたんでしょう、アレ」
クレアの視線の先には結構な人が集まっていた。口々に何か言っている。見た感じ、野次馬という表現が一番正しそうだ。
「何か緊迫してるな」
スイフリーが口を歪めて呟く。何かとても嫌そうだ。
「ちょっと見てくるにゅ」
言ったと思ったときには、もうパラサはそこに居ない。クレアとスイフリーが立ち止まってパラサを待つようだったから、ノリスも立ち止まった。たいした時間もかけず、すぐにパラサは戻ってくる。
「工事現場の細い隙間に、子どもが落っこちてたにゅ」
クレアは無言でその現場に歩き出す。パラサもすぐにそれに従った。スイフリーはため息をついて「これ以上人情で動いたら赤字じゃ済まん」と呟いてから、舌打ちとともに二人の後を追う。ノリスにはそれを止める権限がないから、後についていく。もしかしたら面白いものが見れるかもしれない。


思っていたより、状況は深刻なようだった。
子どもが落ちたのは地下道工事の穴だと思うが、かなり深い。落ちたときに子どもは怪我をしたらしく、びーびー泣いている。スイフリーがかなり不機嫌そうな顔をした。それを見て、パラサがすかさず言う。
「なきやむんだ、とか言わないでよはとこ」
「ほかにどう言うというのだ」
「子どもはそれじゃなきやめないんだってば」
「それよりどうしたらいいでしょう?」
クレアが割ってはいる。
「はとこの子がロープを持って降りる、……抱えられないか。何でグラスランナーなんだ、はとこの子よ」
「いやそんなこと言われても」
「落下制御、筋力増加、飛行……どれもソーサラーだ、何でフィリスはココに居ないんだ!」
「オレがロープ持って降りるんじゃ駄目?」
「ロープで引っ張りあげるのはありだ。が、はとこの子では抱えられない。かといってそのまま引きずりあげると、穴の側面の岩で子どもが怪我を増やす。方法は他にあるとすれば、櫓を組んで滑車を使う方法だが、時間も材料もココにはない」
「でもオレ、とりあえずロープもって降りる。きっと一人で不安にしてるにゅ」
言うや否や、パラサはロープの端とともに穴の中へ消えていく。
「私が降りましょうか? 多分このくらいの穴なら大丈夫です」
クレアの言葉に、スイフリーは眉を寄せる。
「で? その二人の体重を、誰が持ち上げるんだ? ここにいるのは非力なわたしだぞ?」
「見てる人に手伝ってもらえば?」
ノリスの声に、スイフリーが振り返る。にやりと口元に笑みが浮かんでいた。
「人間の少年よ、盗賊の心得があったな?」
「え? うん、あるよ」
呼び方が名前じゃなくなっていることにノリスは不安を覚えながらもうなずく。
「彼に降りてもらおう。クレアと私、あとそこらで見ている力の強そうなのを手伝わせれば何とかなるだろう。子どもが出てきたら治癒の一つもしてやれ」
みるみるまに話が決まり、ノリスが返事をする暇もないうちに、スイフリーは穴の中に向かってパラサに戻るように指示をしていた。




■この回はちょっと記念の回なのです。
なぜって、この回から、メール(友人には携帯メールでおくってます・笑)にタイトルとして通し番号が付くようになりました。
「泡ぽこ」というタイトルはまだついてない頃です。
ちなみにそれまでは「こんなかんじでどう?」とか「つづき」とか「題名募集中」とか「バブリーズさんとへっぽこさん」とかつけてました。

 


現在、戦闘に突入し、「そういえばSWのルールってどんなんだっけよ?」とルールブックを持っている友人に聞いている最中です(笑)
そのうちサイコロふるぜ。
平行してダブルクロスのキャラメイクもしていたり(苦笑)


2007/08/01

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泡ぽこ 12

その日の夜。
既に向こうのテーブルではアノスの冒険者たちの宴会が始まっている。初日同様、テーブルの上には所狭しと料理が並べられ、相変わらず戦士たちとシーフが壮絶な肉の争奪戦を繰り広げ、魔術師は底なしかという早さでワインをかたむけ、エルフはパスタの皿を一人抱え込み、真面目なほうの神官はため息混じりに静かな食事をし、真面目に見えないほうの神官は全員の皿からひょいひょいと好きに物を掻っ攫っている。
「で、どうだった」
そんな様を見ながら、貧しくは無いが豪勢でもない夕食を楽しみながらヒースは全員に尋ねる。なんか顔が引きつっている気がするのは、気のせいだろうか。
「ちなみに俺様のほうは動きなし。ほんとに一日学院の書庫にこもってたぞ。購買と学食を冷やかしたくらいだ。ちなみに昼飯はちょっとした高級店でおごって貰った」
「あ、いいな」
「僕のほうはラーダ神殿を見て、あとは街の散策だね。いいお店がどこにあるのか聞かれたよ」
「いい店?」
「……突っ込まないでくれる?」
きょとんとするノリスに、エキューは苦い顔をして見せた。
「もし明日も観光のお供をするなら、別の人にして欲しい」
「私のほうは、いい一日でしたぞ。レジィナさんはバードとして只者ではありませんな。二人で歌いまして、大勢のお客さんの拍手を浴びました」
一体どんな歌だったのだろう。その場に居たらおひねりをちゃんと管理したのに、とマウナは悔やむ。
「で、クレアさんたちはどうだったの?」
悔やんでも仕方ない、と気持ちを切り替えて、マウナはノリスに視線を送る。
「クレアさんたちはいい人たちだよ! もう疑う必要なんて無いよ!」
「何があったかちゃんと話しをせんか、クソガキ」
ガルガドのため息など、気にもしないのかそれとももう慣れてしまったのか、イリーナも大きくうなずいた。
「クレアさんはとても真面目な方です! 神殿で熱心にお祈りをしてました! 真面目なファリス神官に悪い人は居ません!」
「じゃあ、スイフリーさんとパラサさんはどうだったわけ? エルフもグラスランナーも神様は信じないでしょ?」
エキューはイリーナに尋ねる。視線はずっとマウナを追っているが、みんな今に始まったことではないから誰も気に留めない。
「確かに、エルフもグラスランナーも残念なことにファリス様を信じたりしないそうですけど、お二人はクレアさんがお祈りをしている間、ずっと静かに待っていました。悪くはないです」
それだけで信じられるほど単純であれば、どれだけ楽だろうかと呆れながら、ガルガドはノリスに視線を向けた。
「イリーナの話はわかったとしてだ、クソガキは何があってあの女性神官を信じていいと思ったのだ?」
ノリスは口いっぱいに物を頬張ったままきょとんとした顔をガルガドに向けた。それから十分な時間をとって口の中のものを飲み込むと、その日あったことを話し始めた。

 


■ふと気付いたのだが、バブリーズさんで魔晶石もってるのはパラサとスイフリーとフィリスだけじゃないね。グイズノーとクレアさんを失念してたよ。まあ、クレアさんにはパラサが出させないだろうけどね(笑)


昨日は寝ぶっちしました。
うっかりしておりました。まあ、そんな日もありますよ。そんな日だらけですよ。


2007/07/27

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泡ぽこ 11

次の日の朝。
いつもより少し早起きして、いつもの席に着く。依頼人、と言ってもいいアノスの冒険者たちはまだ起きてきていない、とはマウナの話。小鳩亭自体も、まだ朝食に来ている客も泊まりの冒険者もあまり姿を見せておらず、がらんとしていた。
「とりあえず、自由に動けるのは、俺様、エキュー、バス、ノリスだ。最悪あちらさんが別行動でも、何とか4つまではカバーできるぞ」
「私もなんなら外に出るわよ」
「誰も宿に残らなければ頼む」
そんな話をしていると、アノスの冒険者の一人が起き出して来た。レジィナという若い女だった。
「あ、おはようー。皆早いんだねー」
彼女はヒースたちに笑顔で話しかけると、首をかしげ
「一緒に座っていい?」
と尋ねる。会議と言ってもソレと言ってまだ何も出来ない状況であったし、拒否する理由もない。結果、彼女は同じ席に着いた。
「あ、その朝ごはん美味しそう」
ノリスの食べているちょっと豪華な朝食に目をつけたレジィナは、注文を取りに来たマウナに同じものを注文する。
「結構たべるんですな」
バスが言うと、彼女は頷いた。
「だって、体が資本でしょ? あ、ねえ、今日バスさんは時間ありますか?」
「は?」
名指しされて、バスは間抜けな声をあげる。
「えっとね。私、今日暇なんだよ。アーチーとお姉さんは賢者の学院を見に行くって言っていたし、クレアさんはファリス神殿に行くだろうし。そうなるとパラサとスイフリーもクレアさんについていくと思うんだよね。グイズノーはラーダ神殿を見に行くって言うし、そうなると私一人なのよ。街のこと、良く分からないし。だからバスさんに案内をお願いしようかと思って」
「なんでバスをここで名指し!?」
ノリスの意外そうな声に、彼女は首を傾げてから笑った。
「だって、吟遊詩人なんでしょ? 『ファリスの猛女』、ちゃんと本場のが聞きたいんだよね」
「アノスまで伝わっておるのですか!?」
バスが目を輝かせる。
「アノスはまだわかんない。もう伝わってるかもね。私が聞いたのはオランだったから」
漸く朝食が運ばれてきて、彼女は一気に食事に集中する。暫くは返事がおろそかになるかもしれない。そのうち、アノスの冒険者たちはどんどん起きだしてくる。
「あら、レジィナもう食べてるの? 早いわね」
「あ、お姉さんおはようございます。これ、お勧めですよ、美味しいです」
「そう? じゃあ同じの頼もうかしら……って、ちょっと私には多いわね、もう少し抑え気味のを頼むわ」
苦笑して答えながら、フィリスの視線がヒースに向かう。
「ちょうど良かった、賢者の学院に案内して貰える? アーチーと私。資料閲覧が部外者でも出来るなら、なんだけど」
「書類書けばオッケーだ」
「じゃあ、お願いね」
フィリスはにっこりと微笑むと、別のテーブルに歩いていった。起きてきたアーチボルトに何事か声をかけ、そして邪険にされている。

それにしても。
こんなに簡単にあっさりと、向こうから街の案内を頼まれるとは思っていなかった。
向こうも何か考えがあるのか、それともただの余裕なのか。
考えるが、全く想像がつかない。

ヒースはアノスの冒険者たちに目を向ける。昨日の夜に比べれば、随分おとなしい朝食が始まっていた。が、テーブルの上に置かれているのは軒並み高級朝食ばかりで、やはり何かが決定的に違うのではないか、と思わせる。
「バスはレジィナさんを、ヒースはフィリスさんとアーチボルトさんを案内するんだよね? ボクも誰か案内したいなあ」
ノリスが口を尖らせる。遊びじゃねえぞ、おい、などとツッコミたいが、同じテーブルにはレジィナがおり、それも叶わない。
「グイズノーか、クレアさんに声かけてみたら?」
レジィナはあっさり言うと、向こうのテーブルで食事をしている神官たちに声をかける。心の準備とかは全く想定に入れていない速さだ。
「どうしましたか? わたくし、食事中なので早くしてくださいね。帰ったらパラサ辺りに平らげられてそうです」
グイズノーが迷惑そうな顔でこちらのテーブルにやってきた。
「ラーダ神殿、案内してくれるって。バスさんとヒースくんは予約済みだよ」
「別に護衛も案内もいらないのですけど。クレアさんと相談してからにしましょう。まあ、彼女にはスイフリーとパラサがついていくでしょうから、それこそ護衛も案内もいらないかもしれませんけどね」
肩をすくめて席に戻るグイズノーを見送ってから、ノリスは同席しているレジィナの顔を見た。
「気になってたんだけどさあ、どうしてクレアさんには必ずスイフリーさんとパラサさんが着いていく、って皆言うの?」
「依頼人にはもっと丁寧な話し方しなよ、ノリス」
エキューの言葉にレジィナは笑う。
「まだ依頼したわけじゃないし、皆を雇うのはスイフリーとお姉さんだから、気にしないでいいよ」
「で?」
ノリスは野次馬根性丸出しの顔を見せる。素直だなあ、とレジィナは内心苦笑しながら答える。
「三人で仲良しだから、だよ」
答えになってない、とその場の全員が思ったが、ソレをいえないまま朝食が終わる。レジィナの食器はとうにからになっていたし、クレアもこちらにやってきたからだ。隣にはパラサがニコニコ顔で立っている。
「街の案内の件ですけど、ノリスさんにお願いする事にしました。私とパラサさんとスイフリーさんをファリス神殿まで案内してください。グイズノーさんはエキューさんにお願いします」
「どうしてそう決まったの?」
レジィナは少し意外に思って尋ねる。朝食中一緒にいて分かったのだが、ノリスよりエキューのほうが常識人だ。向こうで見てたらわからないかもしれないが、何でクレアさんはパラサといいスイフリーといい、苦労しそうな面子を連れて行くのだろう。
「スイフリーさんが、グイズノーにはエキューだろう、と……理由は教えてくれませんでしたが」
大方、グイズノーがはっちゃけてもエキューなら止めるという予想をしたな、と思うが黙っておくことにした。


■この回のメール件名は「書くのに飽きてきた」でした。
よく続いてるよなあ、と自分でも思います。
ちなみに送信は4月27日だったようです。
おう、ほぼ3ヶ月前。
なのにまだ終わってないってどういうこと?(笑)

一本が短いからかな。
まあいいや。

2007/07/25

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