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光の色

クレアが麓の村で買い物をして戻ると、いつ帰ってきたのか大広間でスイフリーとパラサがカードゲームをしていた。
「あ、姉ちゃん、おかえりにゅう」
パラサは余裕の笑顔でひらりと手を振る。それに対してスイフリーはカードを睨んで苦い顔をしている。多分負けているんだろう。グラスランナーとカードで勝負するなんて、最初から負けるためのゲームのようなものだ。何を思って彼はカードゲームなどしたのだろう、とクレアは思ったが、口にはしない。
「すみませんでした」
代わりに、二人を見て最初にでた言葉はコレだった。
「何を謝る?」
パラサがカードからクレアに興味の対象を移したのを感じて、スイフリーは机にカードを放り出すと尋ねる。
「……名代なのに城をあけてしまいました」
「高々半日だろう? しかも今城主が三分の一とはいえここにいるのだから、なんの問題もない」
「そうにゅ、姉ちゃんもたまには息抜きしないとね!」
パラサは椅子から飛び降りるとクレアの許に走り寄り、彼女を見上げた。
「何買ってきたん?」
クレアが紙の袋をしっかりと抱いているのを見て、パラサは首をかたんと傾けた。
「……これは……その、……なんでもないです」
思わず後ろに袋を隠す。
「えー、秘密なのにゅ?」
「はとこの子よ、クレアとて人に言えない疚しいものを買うことくらいあるだろう。追求してやらないのが人情というもの」
「オレら、グラスランナーとエルフ……」
「でははとこの子的に言ってグラ情とエル情」
昔パラサが言った言葉をスイフリーが引き合いに出していると、そんなことにされてはたまらない、といった感でクレアが叫ぶ。
「そんな疚しいものは買っていません!」
「では何だ?」
今まで澄ました顔で言っていたスイフリーの口元がにやりとつりあがる。

……ひっかけられた!

クレアはスイフリーをみて眉を寄せた。スイフリーは机に頬杖をつくような格好をして、クレアの顔を下から覗き込むような視線を送る。
「……それは……つまり……」
余裕の目つきで見上げてくるスイフリーと、興味津々の視線をおくるパラサに、クレアは内心途方にくれる。

決して疚しいものではない。なんならファリス神に誓ったっていい。
しかし、なぜか買ったものをスイフリーに知られるのが嫌なのだ。

「やはり疚しいもののようだぞ、はとこの子よ」
「そっかー、じゃ、追求しないにゅ!」
「違います!」
パラサが「じゃあなあに?」と言わんばかりに首を傾げて、クレアの顔を覗き込む。いくらクレアが顔を伏せても、そもそも腰のあたりまでの高さしかないパラサが相手では簡単に表情を覗き込まれてしまう。
「……その……髪の脱色剤を……」
小さな声でぼそぼそと答えると、
「なんだ、つまらん」
などと言ってスイフリーは椅子にぐったりともたれこんだ。パラサは不思議そうな顔つきでクレアを見る。
「何で隠そうとしたにゅ? 珍しいものでもないのに」
「なんとなく……こういうのはお嫌いかと」
「誰が?」
「スイフリーさんが」
「わたしが? 何故?」
意外にも自分の名が飛び出てきて、スイフリーは流石に不思議そうな目を向ける。
「エルフの方は自然に反したことがお嫌いだと聞いたことがあったので」
「姉ちゃん、心配要らないにゅ。はとこは普通のエルフじゃないにゅ。そんなことで怒らなきゃいけないなら、いまごろはとこは自分で首をくくんなきゃ」
「……」
パラサが背を向ける方向に座っているスイフリーが物凄い目つきでパラサを見ていて、クレアは自分の顔が引きつるのが分かった。コレはパラサを止めないと。
しかしパラサの言葉は続く。
「だってはとこはお金と策略と拡大魔法が大好きな付け耳エルフにゅ!」
「はとこの子のひ孫ー!!!」
叫び声とともに椅子ががたんと大きな音を立てて倒れる。スイフリーが勢い良く立ち上がったせいだろう。パラサはにやりと笑うと物凄い勢いで部屋から走り出ていった。もちろんスイフリーも追いかけて走っていく。
二人の足の速さをクレアは知っているので、追いかけることはやめておいた。どうせ追いつかない。
彼らがあんなことを言い合っても仲が良いのは分かっているし、どちらかが致命傷を負うような馬鹿なことをしないのも分かっている。そもそも、最後まで言わせてるあたり、仲が良い証拠だろう。

程なくして、舌打ちしつつスイフリーが戻ってきた。不機嫌そうに顔を引きつらせている。倒れたままになっていた椅子を起こすと、そこへ不機嫌を継続したまま座る。
「……何だ」
クレアがじっと見ていることに気づき、スイフリーは多少はバツが悪そうな顔をした。
「いえ、別に」
「話は戻るが」
スイフリーは淡々と話し始める。
「別に髪を脱色することはたいしたことではないと思う」
「そうですか」
「確かに、自然をゆがめるようなことをエルフは嫌うが」
「……」
「クレアの中で脱色するのが自然なのならば、別に自然をゆがめていることにはなるまい」
「……そうですか」
「だから別にそんなに緊張することはない。大体、眉が黒いから脱色していることくらい誰だって知っている」
「……それもそうですね」
「それから」
スイフリーは立ち上がると、広間から出るドアへ向かう。
「その髪は光の色だ、似合ってるから問題ない」

 

 


 

■だから……なんでスイフリーとクレアの話で甘くなるんだ私!(セルフ突っ込み)

個人的に、スイフリーもクレアも、自分の、相手への感情を理解してないといいなあ、とか思っていたりする。無自覚にラブ。その無自覚さ加減がスイフリーの方がひどければひどいほどいい。

2007/03/02

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