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スイフリーはクレアを見る。
「さて、決まったからにはさっさとファーズに行くとして、だ。我々がモノを補充しているあいだに、クレアは神殿に行って騎士の帯同の許可を取り付けて来い」
「騎士ですか?」
「アーチーの事だ。一応、クレアはドロップアウト済みとはいえ、正式な使者だぞ? しかも、別に相手にはドロップアウトしたかどうかなど分からないのだ。正式な使者が冒険者しか連れていなかったら、法皇の手紙を持っていようが怪しまれるのがオチだ」
「はとこ、ドロップアウトを連呼しすぎにゅ。はとこのせいなのに」
「だからアレは私に落ち度はないと言っているだろう」
言い合いが始まったパラサとスイフリーに割り込むようにアーチボルトは言葉を挟む。
「その理論だと騎士がわたし一人でも怪しいことになるぞ?」
スイフリーはパラサとの言い合いをすぐに切り上げ、アーチボルトのほうに向き直る。
「ファリスの猛女とやらは、一体何をしていたらワイバーンやデュラハンやバンパイアと戦うことになるというのだ。ファリスの神官戦士なのだろう? オーファンはマイリー信仰の国だ、アノスのようにファリス神官が国を守っているとは思えない。そうなると、そんな活躍をするのは冒険者である可能性が高い」
「だったら、どうだというのです?」
「それだけの活躍をしていたら、冒険者が興した国だ。どの程度かは予想できないが、国からなんらかのアプローチを受けているだろう。我々のように騎士叙勲を受けたり城を貰っているかもしれない。そういう人間であれば、冒険者が騎士になり、その仲間を連れてきたという話をすんなり信じてもらえる可能性はある。何せ冒険者が王になる国だぞ? その国で冒険者をしていて、なりあがることを夢見てないはずがない」
「でもスイフリー」
グイズノーは苦笑しながらスイフリーを見ると続ける。
「相手はファリス神官ですよ?」
「……」
暫く沈黙が続いた。気にせずマイペースなのは再び食事をしていたパラサだけであり、基本的に全員頭を抱えている。
「ファリス神官であればどうだというのです?」
クレアの、少々厳しい声がグイズノーに飛ぶ。声の冷たさに彼は首をすくめた。
「ええと、つまり、猛女様はそういう所謂成り上がることなどには全く興味なく、目の前の邪悪を成敗していらっしゃるだけかも知れませんよと、まあ、そういうことです」
グイズノーはぼそぼそと答える。
「スイフリーの苦手なタイプです」
「そうなのですか?」
答えないスイフリーに代わって、他の全員が大きくうなずく。
「しかしまあ、冒険者であれば他の面子が判断するだろう。そういうファリス神官であれば親書の真偽など気にしないかもしれない。偽者を語るものは邪悪なり、だ」
「邪悪だと判断されてひねりつぶされないように気をつけないといけないにゅ、はとこ」
「……」
無言で睨んだところで効き目はないだろうが、それでもスイフリーはパラサをぎろりと睨んだ。もちろん、効き目などなかったが。
「で? 行くのは決まったからあとは準備よね? クレアには私たちの身分を保証するような何かをアノス側に出させるように動いてもらうとして。私たちの準備も急がないとね」
「お金、どうしましょうか? あまり沢山は持ち歩けませんよ? 重いですし。宝石にするとか? 目減りはこの際気にしないことにして」
「宝石は駄目だ。アノス国内の宝石を国外放出することになる」
「アノスの犬として駄目、と」
「パラサ、ずんばらりんされたいのか」
「うひゅう」
ぎろりと睨むアーチボルトに、パラサは形だけ怖がって見せた。本当に斬られたら危ないが、避ければ問題ない。
「結局魔晶石を持ち歩いて、現金に換金しながら旅をするのがいいだろう。魔晶石ならコーラスアスの巣穴から持ってきたのが山のようにある。……人情で動くと大赤字だな」
「人情?」
「ここは聞き返さないのが優しさですよ、レジィナ」
■誰も期待してないだろうけど、二回目とかアップ。
2007/06/13