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泡だとかぽこだとか。時折ルージュとか。初めての方は「各カテゴリ説明」をお読みください。
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泡ぽこ 3

■2


そろそろ町が夕闇に包まれようかという時間帯。
今日も『青い小鳩亭』には有名な冒険者一行が顔を合わせていた。とはいえ、時間の関係上まだ全員がそろっているわけではない。そこにいるのは、そもそもここに住んでいるマウナ、仕事がなければ町をぶらぶらしているだけのノリスとエキュー、それから「研究が早く終わった」というヒース。バスは先ほどから朗々と歌を歌っている。
それぞれ、少し早い夕食に手をつけ始めているところだ。勿論、マウナはウェイトレスとして彼方此方せわしなく動いており、食事などしてはいない。
いつもどおりの夕方、ともいえる。
「そろそろ仕事しないとお財布が軽いんだよねー」
ノリスは他の面子より高く豪華な料理をつつきながら、説得力のないことを言う。
「そういうこと言うなら、もっと安い飯を食えよ」
エキューが冷たい目をしても、ノリスは「そうかなあ?」などと気のない返事を送る。
「しかし、仕事をしないとヤバいのは俺様としても同じだ。どっかに簡単かつ高収入のらくらくな仕事がないものか」
「僕らくらい高レベルになっちゃうと、そんなに気軽な依頼は来ないよ」
「僕たちは高レベルになっても気さくな町の何でも屋さんに限りなく近いと思うけどなあ」
エキューの突っ込みにノリスが答える。どちらもとりあえずは正論だ。
「とりあえず、俺様にできることといえば、マウナの仕事を増やすくらいだ。というわけだからマウナ、冷たい水を持ってきてくれなさい」
「あんたなんか生温い水でも飲んでればいいわよ」
かん、とけたたましい音を立てて水の入ったグラスが置かれる。そんな態度に臆することなく、ヒースは続けた。
「レアな焼き鳥も……」
「黙りなさい」
マウナがお盆でヒースの後頭部を叩く。まあ、いつもの夕方だ。ただ、いつもと違ったのは、そんな騒々しくも暖かな青い小鳩亭に、見慣れぬ冒険者がやってきたことだろう。

青い小鳥亭は、国が建て直しの資金を捻出したことや、中身はどうあれ英雄である一行の定宿であることから、オーファン国内に数多くある冒険者の宿のなかでは有名な部類だ。
であるから、見慣れない冒険者が来ること自体はそれほど珍しいことではない。
駆け出しの冒険者が来ることもあるだろうし、旅の途中で立ち寄ることもあるだろう。ただ今回やってきた冒険者は、旅なれた様子から言って新米ではなさそうだし、かといって旅の途中という雰囲気でもない。かといって、有名であるヒースたち一行を見に来た感じでもない。
彼らは、7人組みだった。結構大所帯だ、とヒースは自分たちのことを棚にあげて思う。
大柄な男と、若い女はいでたちから言って、多分ファイターだろう。若い女が持っているのはグレートソードだが、イリーナのものを見慣れている身としては、少々小さくも見えた。目の錯覚なのは重々承知している。小太りの男と、金髪の女はそれぞれラーダとファリスの聖印を首から提げている。間違いなくプリーストだ。背の高い、髪の長い女はかなり太ったぶち猫を連れている。指にはいくつか指輪がはまっており、その一つは自ら光っているようだった。自分と同業だろう。あとはエルフとグラスランナー。この二人は、それぞれシャーマンとシーフでまず間違いない。全員がそれなりに自信にあふれた表情をしている。堂々としたその振る舞いは、ちょっと見習いたいかもしれない。気のせいかもしれない。
「なんか、凄い装備だね」
エキューがぽつり小声で言う。武器は鞘に収められているからよくわからないが、それでも鎧であるとか指輪だとかはかなり高価そうに見える。
「あのグラスランナー、もしかしたら物凄いシーフかも。何でスキップしてて足音しないわけ?」
ノリスも小声で言う。確かに、グラスランナーは金髪の女性の近くをスキップしているのだが、言われたとおり足音はしない。
彼らは周りの視線を気にすることなく、窓際の、ヒースたちの席からさほど遠くない4人がけのテーブルを勝手に動かして8人がけにしてテーブルに付いた。金髪の女性だけがまっすぐにカウンターへ歩いていく。丁度近くを通っていくから、視線だけむけてみたが、彼女は意志の強そうなまなざしをまっすぐカウンターだけに向けていて、こちらを気にした様子は全くなかった。
「いらっしゃいませー」
マウナが声をかけているのが聞こえる。
「ご注文は?」
見るとはなしに見ていると、グラスランナーお品書きを受け取って、ざっと目を通して注文をしはじめる。
「肉料理のー、ここからここまでとー。魚料理の、こっからここまでー。あと、姉ちゃんが好きだから、サラダをここからここまで持って来てほしいにゅ。あ、パスタもここからここまで持ってきてー。はとこが抱え込んじゃうからー」
「そんなに食べない」
「でも放っておくと二人分くらい食べちゃうっしょ?」
「ねえ、お酒見せてよ」
言い合うグラスランナーとエルフに、髪の長い女性がいうと、グラスランナーは「ほい」と言いながら品書きを渡す。女性はざっと目を通して、「上から順番に、2本ずつ。何よりも急いで持ってきて?」というと品書きを隣に座った若い女に渡す。
「私は特に足すものはないなあ、皆は?」
「とりあえず、頼んだものが足りなかったときに考えればいいのですよ」
「じゃあ、そういうことで」
「ええと、じゃあ、ご注文をくりかえし……」
マウナが言いかけたのを、大柄な男が止めた。
「くり返しはいらない。パラサが何を頼んだのか我々は知らないのだからな。それより早く持ってきてもらえるかね?」
マウナはうなずくと、心持ち青い顔でふらふらとした足取りでカウンターのほうまで歩いていく。それをすかさずヒースがとめた。
「何? ヒース。追加注文?」
「いや……あいつら、何頼んだんだ?」
「高いのから順番に。食べ物がなんなのかは、どうでもよさそうだったわよ。仕事の邪魔しないでくれる?」
マウナがカウンターに行くのを見送ってから、再び冒険者たちに視線を向ける。彼らは先に出てきた酒を飲んでいるようだった。遠目でも、高そうなビンなのが分かる。
ふとカウンターに目をやると、丁度店の親父が金髪の女性に自分たちを指し示していた。
「ぼくらに依頼かな?」
「わからん」
女性は親父にお辞儀をすると、仲間のほうへ歩いていく。背筋をぴんとのばして、結構早足だ。
「キレイな人だよね」
「美人なのは認める。が、冒険者だ。お金持ちじゃなさそうだから俺様パス」
「耳も尖ってないような女に興味ねえよ」
「奴ら、エルフも居るぞ?」
「エルフには心惹かれるけど、男じゃないか」
そんな話をしている間に、女性は席につく。周りを見て、少々ため息をついていた。いくつかそろい始めた料理を、彼らは女性を待たずに食べ始めていたからかもしれない。
「ファリス様にお祈りをしましたか?」
「エルフは神を信じない」
「ごめーん、姉ちゃん、次からお祈りするー」
女性の質問に、エルフとグラスランナーが答えていた。女性は苦笑してから祈りをささげている。
「変な人たち」
「お前も十分変だ」
料理を持っていって、再びカウンターに戻るところだったマウナをまた捕まえる。
「追加注文?」
「質問だ」
「なによ」
「カウンターで、あの金髪のお姉ちゃんは俺様たちのことを紹介されていたみたいだったが、何だ? そのわりにこっちに来ないし」
「ああ、おとうさんの話だと、イリーナを尋ねてきたんだって。なんとVIP室も押さえて行ったわ。イリーナと話をするんですって」




■あら、今日はながいですな。

相変わらず誰に需要があるのかわからない作品ですが、めげずにアップです。
しいて言えば、わたしに需要がある、というかんじで。

2007/06/23

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