忍者ブログ
泡だとかぽこだとか。時折ルージュとか。初めての方は「各カテゴリ説明」をお読みください。
[10]  [9]  [8]  [7]  [6]  [5]  [4]  [3]  [2]  [1]  [28
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

泡ぽこ 1

■1


「イリーナ・フォウリー?」
初めて聞く名前に、その場に居たほとんどの者が眉を寄せたり首をかしげたりする。
珍しく、ストローウィック城に城主でもある冒険者の6人がそろっているのには単純な理由があった。お互いどこへ行くとも聞きあわないでダークエルフの追撃をかわしながら旅を続けているわけであるが、前回、オランで行われた『バブリー・アドベンチャラーズの帰還』という劇をきっかけに集まり、そのままアノスに戻って来ただけの話である。
戻ってきたら戻ってきたで、名代のクレアが一通の手紙を見せた上で「イリーナ」という聞いたこともない女性の名前を出してきた。
「聞いたこと、あるよ」
けろりとレジィナが言う。
「へえ? どんな人なの?」
「直接は知らないけど……『ファリスの猛女様』でしょ?」
「何か不穏な単語な気がするのだが」
レジィナの答えに、アーチボルトが眉間に指を当てる。
「オランで吟遊詩人が歌ってるのを聞いただけだから、真偽はわかんないけどね、オーファンの英雄みたいだよ? なんかね、素手でデュラハンをひねりつぶして、片手でワイバーンを撃墜して、バンパイアを片っ端から葬り去ったとか」
「……ウソだろう。尾ひれがつきまくって違う話になったんじゃないか?」
一つ一つを指折り説明するレジィナに、アーチボルトが呆れたように言う。
「聞いただけだもん。わりとオランでは流行ってたと思うけど。グイズノーも聞いたでしょ?」
「わたくしは記憶にないですよ」
「あんなに流行ってたのに」
「まあ、その猛女様とやらが本当にそんなとんでもない戦果をあげていようがいまいが、わたしはどうでもいいのだが。その猛女様がどうしたというのだ?」
スイフリーは椅子にもたれて、視線だけをクレアに向ける。
「私も、イリーナがどのような戦果をあげているのか詳しくは知らないのですが、オーファンの英雄であることに間違いはないそうです。オーファンはご存知の通り、マイリー神信仰が盛んな国なのですが、そのなかにおいてファリスの教えを広めた功績がアノスまで伝わってきております。それでアノスへの巡礼など含め、一度こちらへ来ていただけないかという話になっておりまして……」
「法皇が勲章でも授けるのか?」
「勲章とか詳しいことはわかりませんが、法皇様がお会いになるのは間違いなさそうです」
「……」
スイフリーが苦い顔をする。
「オーファンの英雄で、しかも有名なファリス信者を、アノスに連れてくると? そんなの、あのお方にちょっかいかけてくれって言うようなものではないか」
「……そうですか?」
「そうだ」
きょとんとするクレアに、スイフリーは深々とため息をつく。
「それよりアタシが気になるのは、どうしてその話をクレアが知ってるかってことなんだけど」
ワインに夢中になっていたフィリスが漸く口を挟む。テーブルに空になったビンが散乱しているところからみて、多分飲み終わったのだろう。にこにこと上機嫌な顔をクレアに向ける。
「……それが……ここの名代を暫く他の人に任せて、使者としてオーファンに向かってほしいという話が来ているのです」
沈黙が部屋を支配する。
アーチボルトは机に突っ伏し、フィリスは宙に視線をさまよわせる。スイフリーは盛大なため息をつき、グイズノーは乾いた笑い声を上げた。きょとんとしているのはレジィナとクレアの二人で、パラサは気にせず食事を続けている。
「ああ、法皇サイドの思惑が透けて見える……」
「いやあ、これは参りましたねえ」
「どうする? 乗るべきか?」
「なんのはなしにゅ?」
「聞いてなかったのか、はとこの子よ」
「聞いてたけど、聞こえたくなかったかもー」
「あの、どういうことなのでしょう?」
クレアが全員の顔を見る。スイフリーは脱力したように答えた。
「つまりだ。オーファンは遠い。正式な使者を送るにしても、それなりに力のある者が行くしかないだろう。しかし、そのような力があるものは、神殿でもかなりの地位を占める上に、そんなに人数がいるわけでもない。政治だけでのし上がったヤツもかなりの地位にはいるだろうが、今回の任務には向かないからな。しかも、安全が保証された旅でもないから、地位あるものを出向かせるのも少々難しい。さて、クレア。クレアはドロップアウトしたとはいえ、出世コースに乗っていた人材だ。ファリス神官としての知識も礼儀もある。しかも重要な地位にはついていない」
「ドロップアウトははとこのせいにゅ」
「アレはわたしに落ち度はない」
パラサの言葉にスイフリーは鋭い視線を向ける。
「しかも、だ。救国の英雄である我々とクレアは通じている。あのお方がちょっかいかけてくる可能性が高い話にクレアが出向くとなれば、我々が出張るのはほぼ確定。しかも依頼をするわけでもないから、国庫が痛む心配なし。適任だと判断されたのだろう」
クレアは眉を寄せた苦い顔をスイフリーに向ける。
「わたしを睨んでも仕方ないだろう」
「まあ、わたしも大体似たような経緯があったのだろうと思うが。さてどうする?」
アーチボルトが全員を見渡す。
「オレは報酬なんていらないにゅ。姉ちゃんのたびについてく~。皆来なくてもいいにゅ。姉ちゃんと二人旅~」
ほとんど目をハートにしたようなパラサに、クレアは流石に苦笑した。いつまでも怒っていても仕方ないと判断したのかもしれない。
「アタシもいってもいいわよ。オーファンって、新興の国だから見てみたいし。それにラヴェルナとかいう魔術師も見てみたい」
意外に早くフィリスが手を挙げる。
「オーファン……ローンダミスか……悪くないな」
にやりと笑うアーチボルト。
「わたくしは、猛女様を見てみたいですね」
「私も見たい! バードとしては見ておかなきゃ!」
「……なんだ全員か」
「スイフリーも行くの?」
「……行かないなどといったつもりはないが」





■唐突に始まりました、「泡ぽこ」でございます。
もう個人的萌えのみを随所に突っ込み倒して適当に書き散らしております「バブリーズ」と「へっぽこーず」のコラボレーションちっくなお話であります。

着地点は未定!

続きをアップするかどうかは……需要があるかどうかによります。

2007/06/04

拍手[0回]

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
忍者ブログ / [PR]

photo by 7s
カレンダー
04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
ブログ内検索
カウンター
WEB拍手
2007.12.24変更
メルフォ。
プロフィール
HN:
こーき
性別:
非公開
最新コメント
最新トラックバック
バーコード
忍者・1人目
忍者・2人目