泡だとかぽこだとか。時折ルージュとか。初めての方は「各カテゴリ説明」をお読みください。
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「とはいえ、怪しいところは大体探したよな」
ヒースは首を少し傾げて見せる。確かに彼の言うとおり、部屋は一通り見て回ったし、その部屋さえも、ほとんど遺留品などはなく、手がかりは皆無と言えた。
「この屋敷は使われていないと考えて間違いないよな? 直近だけじゃなく、結構長い間」
「そしてこれからも使われる予定は無いと見て間違いないだろう」
ヒースの言葉に、アーチボルトは重々しく頷きながら返答した。
「どうしてそんなことが分かるんですか?」
イリーナが首をかしげる。眉を寄せて、かなり難しそうな顔をしている。
「まず、使われる予定があれば、もっと色々なものが置かれている。主の部屋の本棚にはもっと本があってしかるべきだ。本はステータスだからな。来客に見せるためには本以外にも置物であるとか、そういうものが必要だ」
「そして、そういう大きくて重いものは、気軽に持ち運んだりしない。で、あるから、ここを使う予定がないから移動したということになる。ここは別荘ではなく廃屋だな」
「ああ、なるほど」
ヒースとアーチボルトの説明にイリーナは頷く。ゆっくり説明されれば、分からないわけではない。
「しかし廃屋であれば、これだけ綺麗な理由が分からない。ブラウニーは居ないのだろう?」
「居ない」
「第一、家が捨てられてブラウニーが残っていたら、今頃もっと酷い目にあってるわよ」
精霊使い二人の即答と断言により、綺麗さにも説明がつかなくなる。
「手がかりが全く無いってこと? 困ったわね」
フィリスが長々としたため息をつく。打てる手はすべて打った気がする。アーチボルトやスイフリーだって、手がかりが無い状態では何もできないだろう。
「ねー」
不意に足元から声がかかる。パラサだ。
「あの絵って、あんなんだっけ?」
パラサが指差すのは、エントランスの左側にかかっていた屋敷の絵だった。右側は留守番伝画で、左側が屋敷という統一感の無さに、全員が絵がかかっていたことを覚えていた。
「うーん、確かに言われてみれば違った気がする」
「もっと色合いが明るかったような」
風景画は暗い空をバックに、左右対称の屋敷が描かれている。夜の風景なのか、窓からは光が漏れている。
「……にゅう」
パラサが困ったような声をあげた。
「これ、この屋敷に似てない?」
「言われてみれば」
イリーナが頷いたとき、絵に変化が起こった。
その変化は一瞬で、しかも小さなものだった。
「にゅ? 灯りが消えたにゅ! ……おもろい」
「面白がるな」
スイフリーがパラサの頭を後ろからぺしり、と叩く。
「灯りが消えたんじゃなくて、窓が閉じられたんだ。よく見ろ、あの窓と一緒だ」
スイフリーが指差すのは、実際に壁に閉ざされた窓だった。
「わかってるにゅ。でもおもしろいっしょ」
「絵としては面白いが……」
「そこで認めちゃ意味無いわよ」
フィリスから冷たい声が飛ぶ。
「おふざけは程ほどにしてだ、どう思う?」
「絵が現実と連動している、のだとしてはタイムラグが気になるな」
「あ、また変わったにゅ」
アーチボルトとスイフリーの会話中に、絵はまた動く。今度は屋敷が大きく震えているようだった。
「……今度は地震が来るという予言か?」
「あ、止まった」
絵の中の変化はめまぐるしい。また屋敷が大きく揺れる。
やがて絵の中に朝が来た。
屋敷はしんとしたまま、沈黙を保つ。
「……何にも起こらない?」
「あ、客が来た」
絵の中では、客が家の中に入っていくところだった。自分たちではない。
「中に入る……わたしは今壮絶にいやーな予感がするのだが」
「奇遇だな、わたしもだ」
やがて屋敷に夜が来た。一度目の大きな揺れ。屋敷はやがて窓を閉じ、そして何度か大きく揺れた。
「朝が来るぞ」
「……出てこないな、やっぱり」
そこで重苦しい沈黙が一行を支配する。押し黙ったまま、全員の顔を見つめあう。
「これは、屋敷内で何か起こったということだろうか」
「絵の中のことを間に受けなくても……」
「警戒はしておいて損はない」
「絵の中の屋敷で、何が起こったのだと思う?」
「客同士の殺し合いか、さもなくば主が大量殺人か」
「どちらにせよ、それだと最後の一人は出てこなければおかしい」
「相討ち?」
また全員で、なんとなくお互いの顔を見合う。微妙な空気があたりを支配した。
「いやいやいや、まてまてまて。絵で疑心暗鬼を植えつけ、団体行動させないという罠かもしれない。お互い疑うのは問題有りだ」
アーチボルトが手を大きく広げる。敵意は無いというジェスチャーかも知れない。
「実際、何者かは戦力分断を狙っているのだしな」
すぐにスイフリーが同調する。それから周りの様子を確認するようにゆっくりと首をめぐらせた。
「高司祭が居ないのは痛いが、我々が集まっていたら戦力としては申し分ない。疑いあうのは後だ」
「不戦協定みたいなもんか?」
「そういうことだ。何者かの狙いは同士討ちかも知れん」
■すっかり忘れてたと申しますか(笑)
32話です。
え? もう32!?
現在本編は47-1。
……ストックがなくなってきてるじゃん!
続きは……週末に書き溜めるかあ。
ヒースは首を少し傾げて見せる。確かに彼の言うとおり、部屋は一通り見て回ったし、その部屋さえも、ほとんど遺留品などはなく、手がかりは皆無と言えた。
「この屋敷は使われていないと考えて間違いないよな? 直近だけじゃなく、結構長い間」
「そしてこれからも使われる予定は無いと見て間違いないだろう」
ヒースの言葉に、アーチボルトは重々しく頷きながら返答した。
「どうしてそんなことが分かるんですか?」
イリーナが首をかしげる。眉を寄せて、かなり難しそうな顔をしている。
「まず、使われる予定があれば、もっと色々なものが置かれている。主の部屋の本棚にはもっと本があってしかるべきだ。本はステータスだからな。来客に見せるためには本以外にも置物であるとか、そういうものが必要だ」
「そして、そういう大きくて重いものは、気軽に持ち運んだりしない。で、あるから、ここを使う予定がないから移動したということになる。ここは別荘ではなく廃屋だな」
「ああ、なるほど」
ヒースとアーチボルトの説明にイリーナは頷く。ゆっくり説明されれば、分からないわけではない。
「しかし廃屋であれば、これだけ綺麗な理由が分からない。ブラウニーは居ないのだろう?」
「居ない」
「第一、家が捨てられてブラウニーが残っていたら、今頃もっと酷い目にあってるわよ」
精霊使い二人の即答と断言により、綺麗さにも説明がつかなくなる。
「手がかりが全く無いってこと? 困ったわね」
フィリスが長々としたため息をつく。打てる手はすべて打った気がする。アーチボルトやスイフリーだって、手がかりが無い状態では何もできないだろう。
「ねー」
不意に足元から声がかかる。パラサだ。
「あの絵って、あんなんだっけ?」
パラサが指差すのは、エントランスの左側にかかっていた屋敷の絵だった。右側は留守番伝画で、左側が屋敷という統一感の無さに、全員が絵がかかっていたことを覚えていた。
「うーん、確かに言われてみれば違った気がする」
「もっと色合いが明るかったような」
風景画は暗い空をバックに、左右対称の屋敷が描かれている。夜の風景なのか、窓からは光が漏れている。
「……にゅう」
パラサが困ったような声をあげた。
「これ、この屋敷に似てない?」
「言われてみれば」
イリーナが頷いたとき、絵に変化が起こった。
その変化は一瞬で、しかも小さなものだった。
「にゅ? 灯りが消えたにゅ! ……おもろい」
「面白がるな」
スイフリーがパラサの頭を後ろからぺしり、と叩く。
「灯りが消えたんじゃなくて、窓が閉じられたんだ。よく見ろ、あの窓と一緒だ」
スイフリーが指差すのは、実際に壁に閉ざされた窓だった。
「わかってるにゅ。でもおもしろいっしょ」
「絵としては面白いが……」
「そこで認めちゃ意味無いわよ」
フィリスから冷たい声が飛ぶ。
「おふざけは程ほどにしてだ、どう思う?」
「絵が現実と連動している、のだとしてはタイムラグが気になるな」
「あ、また変わったにゅ」
アーチボルトとスイフリーの会話中に、絵はまた動く。今度は屋敷が大きく震えているようだった。
「……今度は地震が来るという予言か?」
「あ、止まった」
絵の中の変化はめまぐるしい。また屋敷が大きく揺れる。
やがて絵の中に朝が来た。
屋敷はしんとしたまま、沈黙を保つ。
「……何にも起こらない?」
「あ、客が来た」
絵の中では、客が家の中に入っていくところだった。自分たちではない。
「中に入る……わたしは今壮絶にいやーな予感がするのだが」
「奇遇だな、わたしもだ」
やがて屋敷に夜が来た。一度目の大きな揺れ。屋敷はやがて窓を閉じ、そして何度か大きく揺れた。
「朝が来るぞ」
「……出てこないな、やっぱり」
そこで重苦しい沈黙が一行を支配する。押し黙ったまま、全員の顔を見つめあう。
「これは、屋敷内で何か起こったということだろうか」
「絵の中のことを間に受けなくても……」
「警戒はしておいて損はない」
「絵の中の屋敷で、何が起こったのだと思う?」
「客同士の殺し合いか、さもなくば主が大量殺人か」
「どちらにせよ、それだと最後の一人は出てこなければおかしい」
「相討ち?」
また全員で、なんとなくお互いの顔を見合う。微妙な空気があたりを支配した。
「いやいやいや、まてまてまて。絵で疑心暗鬼を植えつけ、団体行動させないという罠かもしれない。お互い疑うのは問題有りだ」
アーチボルトが手を大きく広げる。敵意は無いというジェスチャーかも知れない。
「実際、何者かは戦力分断を狙っているのだしな」
すぐにスイフリーが同調する。それから周りの様子を確認するようにゆっくりと首をめぐらせた。
「高司祭が居ないのは痛いが、我々が集まっていたら戦力としては申し分ない。疑いあうのは後だ」
「不戦協定みたいなもんか?」
「そういうことだ。何者かの狙いは同士討ちかも知れん」
■すっかり忘れてたと申しますか(笑)
32話です。
え? もう32!?
現在本編は47-1。
……ストックがなくなってきてるじゃん!
続きは……週末に書き溜めるかあ。
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