忍者ブログ
泡だとかぽこだとか。時折ルージュとか。初めての方は「各カテゴリ説明」をお読みください。
[83]  [82]  [81]  [80]  [79]  [78]  [77]  [75]  [74]  [73]  [72
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

泡ぽこ 48
ノームによって地面にとらわれた不審者に、彼らは悠然と近づく。
捕まえられているのは、とりたてて目立ったところもない普通の男で、服装も至って普通の、町ですれ違ったとしたらすれ違った瞬間に顔を忘れてしまいそうな、そんな平凡な男だった。
「何してたにゅ」
「家があったから入ろうかと思っただけです! そしたらいきなり崩れだすでしょう? 怖くなってにげたんですよ!」
取り乱したように言う男に、スイフリーはしゃがみこんで顔を近づける。暫らくじっとその男を見つめた後、ふう、と大きなため息をついた。
「で?」
酷く冷静な声でスイフリーは男に先を促した。が、男のほうは「は?」と間の抜けた声を上げて首を傾げてみせる。いささか顔が引きつっているのは、もしかしたらスイフリーの不機嫌さを読み取ったからかもしれない。
「何があってこんな使われていない間道へ一人できた? 嘘をつくならもっと上手につくのだな」
「あの、道に迷って」
「付近に村や町はない。そんな軽装の冒険者も居ない」
スイフリーは立ち上がると、酷く冷徹な目を男に向けた。
「大方近くに仲間が居て、お前は様子を見に来た斥候というところだろう。わたしとしては正直に教えてくれたら、別にお前が逃げようがどこへ報告へ走ろうが、問題はないのだが」
「何のことだか」
男は困ったように愛想笑いを浮かべてみせる。
漸く、屋敷から脱出したほかのメンバーも彼らのところへやってきた。
「彼は誰なんですか?」
グイズノーが捕まったままの男を見て首をかしげる。
「わかんないけど、屋敷の外に居て逃げたからつかまえたにゅ」
パラサはに、と笑って見せる。
「不審ですね。とはいえ、よく捕まえられましたね」
「はとこが屋敷から出る前から、多分居るから警戒しろって言ってたから。俺は言われたとおり探しただけー」
パラサはにっかり笑ってグイズノーを見上げた。
「あの、どうして『居る』って思ったんですか?」
不思議そうな顔をしてマウナがスイフリーを見る。彼は男から目を離さずに、軽い調子で答えた。
「そもそもここへ来た理由を覚えているか?」
「何か、街道ががけ崩れにあってるって話を聞いたんだよね」
ノリスが軽い声で答える。
「そうだ。そして我々は『多分罠があるだろう』という予想を前提にこの間道へ回り、屋敷を発見し入ってえらい目にあった」
「逃げられてよかったよなー」
深く頷きながらヒースがしみじみと言う。それに数人が同調するかのように頷いた。
「さて、では、この間道にあった罠とはなんだったのか? この屋敷だ」
スイフリーは崩れ去って今はもう瓦礫と化した屋敷をみてから、また男に目を戻す。
「この屋敷はどういう経緯かしらないが、意思を持っていた。我々を、知識目当てに食おうとした」
「それとこの男がどう関係してくるの?」
レジィナはしゃがんで男の顔を覗き込む。全く見覚えがない顔だった。
「この屋敷は、間道に存在する大きな魔物だといって不都合あるまい。いつから存在するのかなんてことには興味はないが、屋敷を捨て、道を捨てないといけない程度には危険な代物だ。しかしこの間道は、普通の旅人には知られていない。事実我々も一度通ったときには見落としたのだからな。この道を使えば、エレミア・オラン方面に気取られず近寄れるという利点がある。……そんな道があるなら、普通つかいたいだろう?」
「そうだな、戦略上かなり有利だ」
アーチボルトが深く頷く。
「しかしこの道には厄介なものがある。そこへ我々というある意味厄介な客がやってきた。しかも、かなり重要な客を引き連れている」
そこでスイフリーは一度イリーナを見ると、視線を男に戻した。その瞳はどこまでも冷たく、冷徹なまでに無表情だ。
「基本的に、オラン以東にはこちらに関わってこないで欲しいらしいしな。西国のオーファンと東国のアノス、それぞれ大きな国が手を結ぶのは避けたいところだろう。オーファンへやったアノスの使者が戻ってこなかったら、アノスはどう考える? そしてアノスへ使者とともに旅立ったはずのオーファンの英雄が戻ってこなかったら、オーファンは? どちらも正しい情報が得られないのだから、憶測は悪いものにしかならない」
「どうして正しい情報が得られないの?」
「どちらの国でもない場所で、しかも普通知られていない場所で、われわれは姿を消すことになるからさ。誰もこんな間道、用もなく来ない」
ノリスの質問にスイフリーは即答で答える。それから男に目線を合わせる。
「つまりはこういうことだろう? 人食いの家に我々とイリーナたちが食われてしまえば、国同士の緊張が高まる。人食いの家が我々に壊されてしまえば、間道が使えるようになり、結果国にとっての利益になる。家と我々が相打ちしてくれたら一番ベターだが、どちらに転んでもフェイルセーフ。損はしないということだ」
「誰が?」
レジィナの能天気な質問に、スイフリーは呆れたような声で返事をした。
「あのお方に決まっているだろう。この男はどちらに転んだのか報告する役って所だろうよ」
「……」
捕まったままの男が、ふ、と諦めたように笑う。
「流石です。しかし分かったところで、ルキアル様が勝ったことには変わりありませんよね?」
「間道が使えると思ってるのか?」
スイフリーは呆れたような顔を男に向けた。
「我々が、ここを黙っているだけの納得できる何かがないかぎり、ここに間道があるのを言いふらすぞ。尾ひれつけて」
「脅しですか?」
「とんでもない。こういうのは話し合いと言うのだ」
「……」
「ただ、こちらには融通の利かないファリス神官が二人も居るから、ほぼ絶望的だと思いたまえ」




■種明かし、まだちょっとだけ続きます。
こんなオチだったのだが、どうですかね?
納得、行きますかね?
それにしてもスイフりゃん、超能力者的に言い当ててますな。うそくせぇ。


拍手[0回]

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
忍者ブログ / [PR]

photo by 7s
カレンダー
04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
ブログ内検索
カウンター
WEB拍手
2007.12.24変更
メルフォ。
プロフィール
HN:
こーき
性別:
非公開
最新コメント
最新トラックバック
バーコード
忍者・1人目
忍者・2人目