泡だとかぽこだとか。時折ルージュとか。初めての方は「各カテゴリ説明」をお読みください。
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全員が一直線に階段に向かって走り出す。意思を失った建物は、その形を維持できなくなりつつあるのか、地震のように何度もその床を揺らす。
床だけではない。壁も天井も揺れているのだろう。まだ何かが降ってくるだとかはないが、ずっとこの状態が保たれているとは思えない。
スイフリーとパラサは先頭を走りつつ、先を見据える。
道に迷いはしない。何せ一本道だったのだ。しかし、その分屋敷の中を何度か折れ曲がる細く長い通路。距離だけはある。
「にゅう、結構出口遠い」
走りながらも、パラサは口を尖らせる。今のところ揺れに足を取られたりしないが、もしかしたら後続では誰かこけてるかもしれない。振り返ったりしないが。
「はとこの子よ、この通路の出口は正面玄関すぐだったな」
「そうにゅ」
「出たら即座に入り口を戦乙女の槍でぶち抜く。そうしたらすぐに外に出て、あたりを確認してくれ」
「? なんで?」
「わたしの勘があたれば、誰かが見張ってる」
「何人?」
「そこまでは分からんが……多分少数。とりあえず、足止めしてくれ」
「にゅう、俺に筋力勝負を頼むの!?」
「最悪追跡することになったら、わたしよりお前のほうが率が高い。……居ないに越したことはないんだが」
「保険保険」
「そういうことだ」
走りながらの会話はそこで終わる。互いの口元は、何かをたくらむような楽しげな笑みが浮かんでいた。
一行は、細い通路を順番に走る。歴然とした足の速さの差が出始めたが、どうすることもできない。屋敷は時折大きな揺れを起こす上に、絶えず小さく揺れている。本格的に屋敷が崩れるまで、大して時間はかからないだろう。
「うおお、俺様こんなところで死にたくないぞ! まだまだ輝ける人生が! 未来が! 俺様にはあるはずだー!」
「誰だってこんなところで死にたくないわよ!」
走りながら叫ぶヒースに、マウナはたまらず突っ込みを入れる。
とはいえ、その叫びが全員の気持ちを代弁していたことに間違いはない。
「大丈夫だ、必ずここから出られる!」
列の後ろのほうでアーチボルトが断言するように叫ぶ。
「そんな断言、どうしてできるんですか!?」
悲鳴めいた叫びがグイズノーから上がる。仲間に真っ先にこういうことを聞かれては、安心させるための断言も無意味というものだ。
「何でもいいからわたしを信じろ!」
「アーチーを信じてよかった事ってありましたっけ!?」
「あったようななかったような!」
「何でもいいから走れ!」
ついに屋敷の崩壊が背後から起こり始める。がらがらと大きな音を立てて崩れ始めた通路を背後に感じながら、冒険者たちはともかく走った。
先頭を行くスイフリーとパラサが、ついに隠し階段を駆け上がり正面玄関前に出る。
屋敷は何度も大きく揺れ、二階からは物が落ちてくる状況になっている。地下がつぶれ始めているのだから、あまり猶予は無い。正面玄関を覆っていた石の壁は、侵入者を食らうという意識が無くなったからか、もう今は消えてなくなっている。
「予想通りだ。準備はいいな? はとこの子よ」
「いつでもオッケーにゅ」
スイフリーは片手を複雑に動かしながら、パラサには絶対に理解できない言語を呟く。すぐにキラキラとしたものが現れ、槍の形となった。
「行くぞ」
「にゅ」
スイフリーから戦乙女の槍が玄関に向かって放たれる。純粋にして膨大なエネルギーをもつ槍は、轟音とともに玄関に穴を開けた。ソレを確認すると、パラサはその穴から一目散に外に向かって走り抜ける。
「脱出口を開いてくれたんですね!」
エキューの感激の声を軽く無視して、スイフリーも外に走り出る。外の雨はやみ、明るい日が差してきていた。
「はとこ!」
パラサの声が左手側からした。見れば何かを追っている。
「上出来だ、はとこの子よ」
スイフリーは口を吊り上げるようにして笑うと、すぐにノームにこう告げた。
「ちょっと逃げるやつを捕まえてくれないか」
■次回は種明かし的な何かを予定。
ソレが終われば、あとはアノス編。
床だけではない。壁も天井も揺れているのだろう。まだ何かが降ってくるだとかはないが、ずっとこの状態が保たれているとは思えない。
スイフリーとパラサは先頭を走りつつ、先を見据える。
道に迷いはしない。何せ一本道だったのだ。しかし、その分屋敷の中を何度か折れ曲がる細く長い通路。距離だけはある。
「にゅう、結構出口遠い」
走りながらも、パラサは口を尖らせる。今のところ揺れに足を取られたりしないが、もしかしたら後続では誰かこけてるかもしれない。振り返ったりしないが。
「はとこの子よ、この通路の出口は正面玄関すぐだったな」
「そうにゅ」
「出たら即座に入り口を戦乙女の槍でぶち抜く。そうしたらすぐに外に出て、あたりを確認してくれ」
「? なんで?」
「わたしの勘があたれば、誰かが見張ってる」
「何人?」
「そこまでは分からんが……多分少数。とりあえず、足止めしてくれ」
「にゅう、俺に筋力勝負を頼むの!?」
「最悪追跡することになったら、わたしよりお前のほうが率が高い。……居ないに越したことはないんだが」
「保険保険」
「そういうことだ」
走りながらの会話はそこで終わる。互いの口元は、何かをたくらむような楽しげな笑みが浮かんでいた。
一行は、細い通路を順番に走る。歴然とした足の速さの差が出始めたが、どうすることもできない。屋敷は時折大きな揺れを起こす上に、絶えず小さく揺れている。本格的に屋敷が崩れるまで、大して時間はかからないだろう。
「うおお、俺様こんなところで死にたくないぞ! まだまだ輝ける人生が! 未来が! 俺様にはあるはずだー!」
「誰だってこんなところで死にたくないわよ!」
走りながら叫ぶヒースに、マウナはたまらず突っ込みを入れる。
とはいえ、その叫びが全員の気持ちを代弁していたことに間違いはない。
「大丈夫だ、必ずここから出られる!」
列の後ろのほうでアーチボルトが断言するように叫ぶ。
「そんな断言、どうしてできるんですか!?」
悲鳴めいた叫びがグイズノーから上がる。仲間に真っ先にこういうことを聞かれては、安心させるための断言も無意味というものだ。
「何でもいいからわたしを信じろ!」
「アーチーを信じてよかった事ってありましたっけ!?」
「あったようななかったような!」
「何でもいいから走れ!」
ついに屋敷の崩壊が背後から起こり始める。がらがらと大きな音を立てて崩れ始めた通路を背後に感じながら、冒険者たちはともかく走った。
先頭を行くスイフリーとパラサが、ついに隠し階段を駆け上がり正面玄関前に出る。
屋敷は何度も大きく揺れ、二階からは物が落ちてくる状況になっている。地下がつぶれ始めているのだから、あまり猶予は無い。正面玄関を覆っていた石の壁は、侵入者を食らうという意識が無くなったからか、もう今は消えてなくなっている。
「予想通りだ。準備はいいな? はとこの子よ」
「いつでもオッケーにゅ」
スイフリーは片手を複雑に動かしながら、パラサには絶対に理解できない言語を呟く。すぐにキラキラとしたものが現れ、槍の形となった。
「行くぞ」
「にゅ」
スイフリーから戦乙女の槍が玄関に向かって放たれる。純粋にして膨大なエネルギーをもつ槍は、轟音とともに玄関に穴を開けた。ソレを確認すると、パラサはその穴から一目散に外に向かって走り抜ける。
「脱出口を開いてくれたんですね!」
エキューの感激の声を軽く無視して、スイフリーも外に走り出る。外の雨はやみ、明るい日が差してきていた。
「はとこ!」
パラサの声が左手側からした。見れば何かを追っている。
「上出来だ、はとこの子よ」
スイフリーは口を吊り上げるようにして笑うと、すぐにノームにこう告げた。
「ちょっと逃げるやつを捕まえてくれないか」
■次回は種明かし的な何かを予定。
ソレが終われば、あとはアノス編。
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