泡だとかぽこだとか。時折ルージュとか。初めての方は「各カテゴリ説明」をお読みください。
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イリーナは宿のベッドにうつぶせに寝転がり、むう、と頬を膨らます。
「ファリス様に誓って、絶対に振り回したりしないのに……」
予告されていたとはいえ、大好きなグレートソードを宿預かりにされ、彼女は少し……かなり不満を感じていた。
宿の人間一人では、彼女の剣はもちろん動かすどころか持ち上げることすら困難だ。だから、せめて自分で保管庫まで運ぶといってみたのだが、それも防犯上の理由できっぱりと断られ(やんわりと断るわけではないあたりに、ファリスらしさを感じる)悲しみ倍増、といった感じだ。
「大丈夫やって、盗られたり無くされたりせんって」
パラサが運ばれていくグレートソードを泣きそうな顔をして見送るイリーナに声をかけていたのだって、多分聞こえていなかっただろう。
「そんなに心配しなくても、ちゃんと返してくれるわよ」
「わかってます、わかってます、そんなの」
悲嘆にくれている、といっても過言ではない様子のイリーナに、マウナは半ば呆れたように声をかける。
「ファリス様の御許で、そんなことをされるわけがありません」
「じゃあ、そんなに心配しなくてもいいじゃない」
「それとコレとは話が別なんです」
小さく鼻をすすり、イリーナはベッドに突っ伏した。
「なんか、ちょっと中毒?」
「恋人と離れ離れになるって、こういう気分でしょうか。マウナ、クラウスさんと離れているのはどういう感じですか?」
「別にクラウスさんとはまだそこまで深い仲じゃないし、イリーナが今感じてる感覚がどういう感じか私には分からないし、比較はできないんじゃないかしら」
マウナのもっともな言い分に、イリーナは盛大なため息をついた。
と、部屋にドアをノックする音が響く。
「誰かしら?」
はーい、と返事をしてマウナがドアを開ける。ノックの主はクレアで、彼女はベッドに突っ伏すイリーナを見てぎょっとしたような顔をした。
「イリーナはどうしたんですか? 何処か具合が悪いのですか?」
「まあ、悪いと言えば……悪いような」
マウナは歯切れの悪い返答をする。
「大変。何か魔法を」
「そういうのじゃ治らないっていうか……グレートソード欠乏症です」
慌てた声のクレアに、マウナは最後のほうは恥ずかしそうに俯きつつ、小声の早口で説明する。
クレアのほうはそれで理解したのか、一つ頷いてから、いつもの真面目で硬質な声に戻し、マウナを見る。
「これからの予定が決まりましたので、ご説明します。少し大きい部屋を用意しましたので、そちらにお集まりいただきたいのです」
「分かりました。ほら、イリーナ! 元気を出して!」
「ふぁい……」
「おそーい! 俺様待ちくたびれちまったぞ! ペナルティだ! 何かおごれ」
「うるさいわよ」
部屋には既に他の全員が集まっていて、遅れてきたイリーナとマウナに早速ヒースが文句を飛ばす。元気に(というかいつもどおりに)文句を返したのはマウナだけで、イリーナは心ここにあらず、と言う顔でふらふらと歩くと、椅子にぺたん、と座り込んだ。
「あれー? イリーナどうしたの? 元気ないじゃん」
ノリスの声に、イリーナはのろのろと視線をそちらに向け、大きくため息をついてみせる。
「本当に調子が悪そうだぞ? 大丈夫か?」
ガルガドも本当に心配そうな視線を送る。イリーナはいつも元気、病気など風邪すらひかない、というイメージが先行するせいか、ここまで元気がないと流石に心配だ。
イリーナはごつん、と音を立てて机に突っ伏す。
「イリーナ姉ちゃん、大丈夫か?」
眉をよせ、パラサは立ち上がりかける。
と。
「ああ、ファリス様。私は知らない間に何かしたのでしょうか。グレートソードを持ち歩くことは罪だったのでしょうか。確かに私はグレートソードを手に入れるためにちょーっと欲深だったかもしれません。だからって取り上げるなんてあんまりです」
抑揚の無い声でぼそぼそと呟く。
「彼女は何を言っているのだ?」
不可解、といった顔でスイフリーは答えを求めるようにその場にいた全員の顔を見渡す。
「単純に言って、グレートソード欠乏症だな。愛しい愛しいグレートソード、初恋の君グレートソード。夢にまで見て手に入れた最新の業物、それを取り上げられて悲嘆にくれているのだ」
ヒースが呆れたような声で返事をする。
「兄さんには私のこの、張り裂けそうな胸のうちなんてわからないんです」
「もともと張り裂ける胸なんてないじゃないか」
「明日の朝グレートソードが帰ってきたら、真っ先に兄さんを真っ二つにします」
「すみませんごめんなさい俺様が悪かったです許してください」
■祝日だったので、うっかり24日が月曜日だったのをわすれていました。
おくれましたが、53話。
めりーくりすまーす。
「ファリス様に誓って、絶対に振り回したりしないのに……」
予告されていたとはいえ、大好きなグレートソードを宿預かりにされ、彼女は少し……かなり不満を感じていた。
宿の人間一人では、彼女の剣はもちろん動かすどころか持ち上げることすら困難だ。だから、せめて自分で保管庫まで運ぶといってみたのだが、それも防犯上の理由できっぱりと断られ(やんわりと断るわけではないあたりに、ファリスらしさを感じる)悲しみ倍増、といった感じだ。
「大丈夫やって、盗られたり無くされたりせんって」
パラサが運ばれていくグレートソードを泣きそうな顔をして見送るイリーナに声をかけていたのだって、多分聞こえていなかっただろう。
「そんなに心配しなくても、ちゃんと返してくれるわよ」
「わかってます、わかってます、そんなの」
悲嘆にくれている、といっても過言ではない様子のイリーナに、マウナは半ば呆れたように声をかける。
「ファリス様の御許で、そんなことをされるわけがありません」
「じゃあ、そんなに心配しなくてもいいじゃない」
「それとコレとは話が別なんです」
小さく鼻をすすり、イリーナはベッドに突っ伏した。
「なんか、ちょっと中毒?」
「恋人と離れ離れになるって、こういう気分でしょうか。マウナ、クラウスさんと離れているのはどういう感じですか?」
「別にクラウスさんとはまだそこまで深い仲じゃないし、イリーナが今感じてる感覚がどういう感じか私には分からないし、比較はできないんじゃないかしら」
マウナのもっともな言い分に、イリーナは盛大なため息をついた。
と、部屋にドアをノックする音が響く。
「誰かしら?」
はーい、と返事をしてマウナがドアを開ける。ノックの主はクレアで、彼女はベッドに突っ伏すイリーナを見てぎょっとしたような顔をした。
「イリーナはどうしたんですか? 何処か具合が悪いのですか?」
「まあ、悪いと言えば……悪いような」
マウナは歯切れの悪い返答をする。
「大変。何か魔法を」
「そういうのじゃ治らないっていうか……グレートソード欠乏症です」
慌てた声のクレアに、マウナは最後のほうは恥ずかしそうに俯きつつ、小声の早口で説明する。
クレアのほうはそれで理解したのか、一つ頷いてから、いつもの真面目で硬質な声に戻し、マウナを見る。
「これからの予定が決まりましたので、ご説明します。少し大きい部屋を用意しましたので、そちらにお集まりいただきたいのです」
「分かりました。ほら、イリーナ! 元気を出して!」
「ふぁい……」
「おそーい! 俺様待ちくたびれちまったぞ! ペナルティだ! 何かおごれ」
「うるさいわよ」
部屋には既に他の全員が集まっていて、遅れてきたイリーナとマウナに早速ヒースが文句を飛ばす。元気に(というかいつもどおりに)文句を返したのはマウナだけで、イリーナは心ここにあらず、と言う顔でふらふらと歩くと、椅子にぺたん、と座り込んだ。
「あれー? イリーナどうしたの? 元気ないじゃん」
ノリスの声に、イリーナはのろのろと視線をそちらに向け、大きくため息をついてみせる。
「本当に調子が悪そうだぞ? 大丈夫か?」
ガルガドも本当に心配そうな視線を送る。イリーナはいつも元気、病気など風邪すらひかない、というイメージが先行するせいか、ここまで元気がないと流石に心配だ。
イリーナはごつん、と音を立てて机に突っ伏す。
「イリーナ姉ちゃん、大丈夫か?」
眉をよせ、パラサは立ち上がりかける。
と。
「ああ、ファリス様。私は知らない間に何かしたのでしょうか。グレートソードを持ち歩くことは罪だったのでしょうか。確かに私はグレートソードを手に入れるためにちょーっと欲深だったかもしれません。だからって取り上げるなんてあんまりです」
抑揚の無い声でぼそぼそと呟く。
「彼女は何を言っているのだ?」
不可解、といった顔でスイフリーは答えを求めるようにその場にいた全員の顔を見渡す。
「単純に言って、グレートソード欠乏症だな。愛しい愛しいグレートソード、初恋の君グレートソード。夢にまで見て手に入れた最新の業物、それを取り上げられて悲嘆にくれているのだ」
ヒースが呆れたような声で返事をする。
「兄さんには私のこの、張り裂けそうな胸のうちなんてわからないんです」
「もともと張り裂ける胸なんてないじゃないか」
「明日の朝グレートソードが帰ってきたら、真っ先に兄さんを真っ二つにします」
「すみませんごめんなさい俺様が悪かったです許してください」
■祝日だったので、うっかり24日が月曜日だったのをわすれていました。
おくれましたが、53話。
めりーくりすまーす。
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