泡だとかぽこだとか。時折ルージュとか。初めての方は「各カテゴリ説明」をお読みください。
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外野の騒ぎなど気にも留めず、二人の戦士の戦いは始まった。
先に動いたのは、相手の若い戦士。アーチボルトが持っているものより、大きな剣を振り上げて切りかかる。アーチボルトは持っている盾で軽く受けると、接近したのをいいことに剣を振るった。軽く振り下ろされた剣は、相手の動きを簡単に捉え、その体を浅く切りさく。血の赤が宙に赤い糸を引く。
(……口だけじゃないか、完全に)
戦う前から、実力に差はあるだろうと思ってはいた。自分の噂がどの程度になって流布しているのか正確には知らないが、この程度の相手に「自分と同等」だと捉えられる程度の噂なのだろうか。それとも、力は武具から来ているとでも思われているのだろうか。確かに、武具についてはかなり恵まれていることは認める。が、どちらにせよ、不名誉だ。
(下手すると、スイフリーより弱いんじゃないか?)
引き合いに出したスイフリーだって、エルフとはいえかなりの剣の実力者である。駆け出しや、少々経験を積んだ程度の冒険者なら、相手にならない。それでも、自分に比べたら随分劣るのである。(もっとも、スイフリーは剣で戦ったりしない。あくまで、生き残るための手段として剣技を学んだだけだ)
再び、相手が剣を振るった。動き自体は悪くない。動きも素早いし、力もある。自分より、随分恵まれた戦士であるのは確かだろう。しかし、技はまだ未熟だ。もう少し経験を積めば、名の通った冒険者にだってなれるだろう。
(適当に切り上げてやらんとなあ)
ここで彼の人生を終わらせるわけには行かない。かといって、なめられっぱなしなのも腹立たしい。
「戦いの最中に考え事をするな!」
浅い傷を負った相手が苛々と叫ぶ。考え事をしているのを見抜かれたのは正直意外だったが、同時にそれだけの観察眼があって、なぜこの戦いをやめないのかとばかばかしくもなる。
もしかしたら、仲間に宣言した以上引っ込みがつかないだけかもしれない。
「そうだな、全力で相手をするか」
こうなったら、短期決戦だろう。思いっきり攻撃してしまおう。刃ではなく、刀身を使って、さらに急所を狙わなければ、多分、大丈夫だろう。骨くらいは折れるかもしれないが、授業料だとすれば安い。刃を使ったら、多分軽く切り落とす。それだけ避ければ、まあ、よかろう。
そう考えを変えて、アーチボルトは不意に相手の死角になる場所から剣を振るう。
彼は気付いたのか、それを盾で受け止めた。
とたん、ごき、と低く嫌な音がした。
「うわ、今の音何?」
「骨折だよ。受けたはいいけど、衝撃にやられたんだ。あれは避けちゃうべきだったね。……骨折で済ませてもらえて、ラッキーじゃん」
鈍い音に、ノリスが身をすくめる。エキューは冷静に淡々と解説をすると再び戦いに目を向ける。
(雰囲気的には神経質で弱そうに見えるけど、やっぱり騎士だけある。強い。イリーナみたいに全部我流ってわけでもないし、武器も防具も一流だし、本気出したらどれだけいくんだろ)
戦いたいとは思わない。能力的には互角か、もしかしたら自分のほうが恵まれているかもしれないが、技量も道具も自分は劣る。実力を見極められないほど、おろかなことはない。そういう意味で、あの相手の戦士は命を落としても仕方ないと思う。
(そういう意味では甘いよな)
エキューは冷めた目でアーチボルトを見ると、ふ、と大きくため息をついた。
(手加減しすぎ。一撃でやれるくせに)
相手は腕を折られて少し怯んだようだった。そこに追い討ちをかけるように、ぐっと剣で相手を押す。いきなりの負荷に、彼はよろけてしりもちをついた。その首筋に剣を突きつける。
「わたしの勝ちだな」
冷静な声で宣言する。若い戦士は、キッとアーチボルトを睨みつけるとすぐさま立ち上がる。
「ま、まだだ!」
「……お前なぁ」
ため息をついて、ガルガドを見る。戦神の神官は大きく頷くと、低い声で宣言した。
「今ので勝負はついた。アーチボルトの勝ちだの。お前さんも、いい戦士になれるだろうから、ここは一度おちついてだな……」
「うるさい! 俺は負けてない!」
再び剣を振るおうとする彼に、アーチボルトはどうしたものかと思案する。その間に、戦士はアーチボルトへ剣を振るおうとして、唐突にこけた。
「?」
振り返ると、向こうでスイフリーが不機嫌そうな顔をして片手をこちらに向けているのが見えた。
「ま、魔法で援護するとは卑怯だぞ!」
「戦いの終わりが宣言された以上、お前とアーチーの試合は終わっているのだ。それ以上何かしようというのなら、わたしもそのルールに従う必要はない」
若い戦士の叫びに、スイフリーは冷たい声で宣言する。
「お前は戦いの場を汚し、恐れ多くも法王直属の騎士に刃を向けたのだ。何の咎めもないままにしてやろうというアーチーの配慮も無視し、まだその命を付けねらう。だとしたら、わたしに容赦する必要もない。次はバルキリーを呼ぶぞ」
■ところで私はとってもとっても戦闘シーンを書くのが苦手なのだが、どうしたものだろう……こんなんでいいのか?
何気にスイフリーさんが正義の人になってしまった(笑)
まあ、そういう要素が全然ない人でもないんだけど。違和感あるよね。
■久しぶりにちょっと読み返してみたら、意外と面白くてびっくりしました(笑)
まあ、自分の好みで書いてるんだから、そりゃ楽しいつぼは自分用だよな。ははは。
あと10回程でこのお話はおしまいになります。
その後このブログで何を更新したものか、今から悩んでます。
いや、アチフィリのLoverslikeはやりますよ?
先に動いたのは、相手の若い戦士。アーチボルトが持っているものより、大きな剣を振り上げて切りかかる。アーチボルトは持っている盾で軽く受けると、接近したのをいいことに剣を振るった。軽く振り下ろされた剣は、相手の動きを簡単に捉え、その体を浅く切りさく。血の赤が宙に赤い糸を引く。
(……口だけじゃないか、完全に)
戦う前から、実力に差はあるだろうと思ってはいた。自分の噂がどの程度になって流布しているのか正確には知らないが、この程度の相手に「自分と同等」だと捉えられる程度の噂なのだろうか。それとも、力は武具から来ているとでも思われているのだろうか。確かに、武具についてはかなり恵まれていることは認める。が、どちらにせよ、不名誉だ。
(下手すると、スイフリーより弱いんじゃないか?)
引き合いに出したスイフリーだって、エルフとはいえかなりの剣の実力者である。駆け出しや、少々経験を積んだ程度の冒険者なら、相手にならない。それでも、自分に比べたら随分劣るのである。(もっとも、スイフリーは剣で戦ったりしない。あくまで、生き残るための手段として剣技を学んだだけだ)
再び、相手が剣を振るった。動き自体は悪くない。動きも素早いし、力もある。自分より、随分恵まれた戦士であるのは確かだろう。しかし、技はまだ未熟だ。もう少し経験を積めば、名の通った冒険者にだってなれるだろう。
(適当に切り上げてやらんとなあ)
ここで彼の人生を終わらせるわけには行かない。かといって、なめられっぱなしなのも腹立たしい。
「戦いの最中に考え事をするな!」
浅い傷を負った相手が苛々と叫ぶ。考え事をしているのを見抜かれたのは正直意外だったが、同時にそれだけの観察眼があって、なぜこの戦いをやめないのかとばかばかしくもなる。
もしかしたら、仲間に宣言した以上引っ込みがつかないだけかもしれない。
「そうだな、全力で相手をするか」
こうなったら、短期決戦だろう。思いっきり攻撃してしまおう。刃ではなく、刀身を使って、さらに急所を狙わなければ、多分、大丈夫だろう。骨くらいは折れるかもしれないが、授業料だとすれば安い。刃を使ったら、多分軽く切り落とす。それだけ避ければ、まあ、よかろう。
そう考えを変えて、アーチボルトは不意に相手の死角になる場所から剣を振るう。
彼は気付いたのか、それを盾で受け止めた。
とたん、ごき、と低く嫌な音がした。
「うわ、今の音何?」
「骨折だよ。受けたはいいけど、衝撃にやられたんだ。あれは避けちゃうべきだったね。……骨折で済ませてもらえて、ラッキーじゃん」
鈍い音に、ノリスが身をすくめる。エキューは冷静に淡々と解説をすると再び戦いに目を向ける。
(雰囲気的には神経質で弱そうに見えるけど、やっぱり騎士だけある。強い。イリーナみたいに全部我流ってわけでもないし、武器も防具も一流だし、本気出したらどれだけいくんだろ)
戦いたいとは思わない。能力的には互角か、もしかしたら自分のほうが恵まれているかもしれないが、技量も道具も自分は劣る。実力を見極められないほど、おろかなことはない。そういう意味で、あの相手の戦士は命を落としても仕方ないと思う。
(そういう意味では甘いよな)
エキューは冷めた目でアーチボルトを見ると、ふ、と大きくため息をついた。
(手加減しすぎ。一撃でやれるくせに)
相手は腕を折られて少し怯んだようだった。そこに追い討ちをかけるように、ぐっと剣で相手を押す。いきなりの負荷に、彼はよろけてしりもちをついた。その首筋に剣を突きつける。
「わたしの勝ちだな」
冷静な声で宣言する。若い戦士は、キッとアーチボルトを睨みつけるとすぐさま立ち上がる。
「ま、まだだ!」
「……お前なぁ」
ため息をついて、ガルガドを見る。戦神の神官は大きく頷くと、低い声で宣言した。
「今ので勝負はついた。アーチボルトの勝ちだの。お前さんも、いい戦士になれるだろうから、ここは一度おちついてだな……」
「うるさい! 俺は負けてない!」
再び剣を振るおうとする彼に、アーチボルトはどうしたものかと思案する。その間に、戦士はアーチボルトへ剣を振るおうとして、唐突にこけた。
「?」
振り返ると、向こうでスイフリーが不機嫌そうな顔をして片手をこちらに向けているのが見えた。
「ま、魔法で援護するとは卑怯だぞ!」
「戦いの終わりが宣言された以上、お前とアーチーの試合は終わっているのだ。それ以上何かしようというのなら、わたしもそのルールに従う必要はない」
若い戦士の叫びに、スイフリーは冷たい声で宣言する。
「お前は戦いの場を汚し、恐れ多くも法王直属の騎士に刃を向けたのだ。何の咎めもないままにしてやろうというアーチーの配慮も無視し、まだその命を付けねらう。だとしたら、わたしに容赦する必要もない。次はバルキリーを呼ぶぞ」
■ところで私はとってもとっても戦闘シーンを書くのが苦手なのだが、どうしたものだろう……こんなんでいいのか?
何気にスイフリーさんが正義の人になってしまった(笑)
まあ、そういう要素が全然ない人でもないんだけど。違和感あるよね。
■久しぶりにちょっと読み返してみたら、意外と面白くてびっくりしました(笑)
まあ、自分の好みで書いてるんだから、そりゃ楽しいつぼは自分用だよな。ははは。
あと10回程でこのお話はおしまいになります。
その後このブログで何を更新したものか、今から悩んでます。
いや、アチフィリのLoverslikeはやりますよ?
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「ルール?」
相手の戦士は少し戸惑ったようだった。何も考えていなかったのだろうな、とアーチボルトは思うが、手助けしてやる必要も無いだろう。
「ルールか……」
戦士は黙ると、腕組みをして暫らく動きを止める。どうやら考え出したらしい。
とはいえ、一対一の真剣勝負と言っていたのだから、たどりつくルールといえば、仲間からの援護なしだとか、攻撃禁止部位の決定だとか、どういう状況になれば勝利、位の話だろう。
そう考えながらアーチボルトは相手が口を開くのを辛抱強く待つ。
戦士は随分長い間動きを止めていたが、やがて大きく息を吐くと、アーチボルトを見た。
「決めさせてやろう」
「……決められなかったのか?」
微妙に相手のことが心配になってきた。
まあ、冒険者としてやっていくならば、仲間に賢い者が居ればいいし、重要なのは運だから、大丈夫なのかもしれない。大丈夫じゃなくても、知らないが。
「第三者に決めてもらおう。わたしがルールを決めてお前に卑怯だといわれては適わんからな」
アーチボルトは仲間を振り返る。最初にスイフリーと目が合った。彼は酷く面倒くさそうな表情を浮かべてから大げさにため息をつき、それから諦めたような口調で話し始める。
「ここに居る人間は第三者であることはできないのではないか? わたしたちはアーチーの仲間だし、向こうに居るのはその戦士の仲間だろう? ヒースたちはわたしたちが護衛している対象だから、やはりカウントとしてはわたしたち陣営ということになる。あとくされの無いのはそっちの戦士の仲間に決めさせる方法か、もしくはガルガドに決めてもらうんだな。マイリーってのはそういうのが得意なんだろう?」
ほとんど投げやりな回答が返ってくる。当事者でもなければ、利益があるわけでもない状況で、これだけ助言してくれたのは多分仲間だからだろう。そう思いたい。
「……聞いてのとおりだから、君の仲間に決めてもらいたまえ」
結局、戦士の仲間から、大体考えていたようなルールが提案された。追加されたのは、とりあえず、とどめは刺さない方向で、と非常にシンプルなものだ。武器や防具はそのままと決まった時点で間違いなくアーチボルトは勝ったわけなのだが、戦士はその辺気にしていないらしかったし、彼の仲間たちはどうやら一回くらい負けて目を覚ませ、くらいの気持ちらしかった。
(分からないでもないな……)
内心彼の仲間たちに同情しながらアーチボルトは思う。自分たちも慢心した時期はあったし(傍目から見たら今でも慢心してるのだが、その辺は知らないふりをしておく)まあ、多少実力がついてきた彼がそういう状況になるのも分からないではない。自信をなくしてしまうのは厄介かもしれないが、慢心して命をなくすよりはずっといいだろう。
「では、立会いはワシがつとめるの」
戦神の神官であるガルガドが、二人の間に立つ。
「勝負は一回。降参するか、戦闘不能になるまで。とどめは刺さないが、不慮の事故は仕方なし。怪我はワシが責任をもって治すから、お互い全力で、正々堂々とやること」
「……全力でやったら、あの子死んじゃうんじゃないの?」
マウナが首をかしげる。
「そうなっても仕方ないですよ。実力を見極められないで喧嘩をふっかけたほうが馬鹿なんです」
エキューは冷たい目で戦士を見ながら、声だけは優しくマウナに話しかける。
「でも、アーチボルトさんがちゃんと戦うのを見るのは初めてです! ちょっとわくわくします!」
イリーナが拳を握り締めてキラキラとした目つきをする。
「確かに、ここまでの旅でアーチーがちゃんと戦ってたのはほとんど見てないな。はぐれモンスターはいうまでもなく、あの屋敷でもお前が先にとどめさしちまって、アーチー何にもしてないからな。鏡の間でちょっと剣振っただけだったよな」
「楽しみですねえ」
ヒースの答えも聞いているのかいないのか、イリーナはわくわくとした声をあげ、戦いが始まるのを今や遅しと待つ。
「本当にやるのか?」
外野の声に既に疲れてきているアーチボルトは、最後の問いかけで再び戦士に声をかける。
「無論だ! 怖気づいたか!」
「……」
「仕方がないな」
ずんばらりん、としてしまわないようにだけは気をつけよう、と思いながら剣をぬく。
せめてプロテクションくらいは、相手にかけさせておくべきだったかもしれない。
早くも後悔。
相手も剣をぬいた。魔法剣ではなさそうだが、きちんと手入れした綺麗な剣だ。
「では、はじめ」
抜かれたアーチボルトの剣に、マウナが最初に反応した。
「何か金色! 何か金色よ!」
「いや、金色だったらいいって話じゃあないだろう。ちょっと趣味悪くないか?」
ヒースはへらっと笑いながら言う。
「剣は色じゃありませんよ! 強さです! あんな軽そうな剣で大丈夫なんでしょうか? 爪楊枝以下ですよ!?」
「あんな爪楊枝ないよ」
イリーナの的外れな心配に、呆れた声をだすエキュー。
「この際だからオレらもなんか悪口言っとく?」
「今さらでしょう、彼の趣味の悪さは」
パラサとグイズノーの会話に、フィリスが絶対零度の視線を向ける。二人は即座に黙った。
「ああ、心配だわぁ、アーチー、大丈夫かしら?」
「大丈夫ですよ、お姉さん」
「ダメですよレジィナ、フィリスは浸りたいだけなんですから、言わせてあげないと。アーチーが負けるなんてこれっぽっちも考えてないんですから」
「分かってるなら黙れ」
「とりあえず、外野は黙っとれの。試合中だからの」
■この回を書いてた頃、友人がクレアさんのイラストをくれました。
非常にテンションがあがりました。
まだまだ募集中です。
何枚あってもじゃまにはなりません。
むしろテンションあがる。
ぎぶみークレアさん。
とか、欲望に従ったことをたまに呟いてみる。
相手の戦士は少し戸惑ったようだった。何も考えていなかったのだろうな、とアーチボルトは思うが、手助けしてやる必要も無いだろう。
「ルールか……」
戦士は黙ると、腕組みをして暫らく動きを止める。どうやら考え出したらしい。
とはいえ、一対一の真剣勝負と言っていたのだから、たどりつくルールといえば、仲間からの援護なしだとか、攻撃禁止部位の決定だとか、どういう状況になれば勝利、位の話だろう。
そう考えながらアーチボルトは相手が口を開くのを辛抱強く待つ。
戦士は随分長い間動きを止めていたが、やがて大きく息を吐くと、アーチボルトを見た。
「決めさせてやろう」
「……決められなかったのか?」
微妙に相手のことが心配になってきた。
まあ、冒険者としてやっていくならば、仲間に賢い者が居ればいいし、重要なのは運だから、大丈夫なのかもしれない。大丈夫じゃなくても、知らないが。
「第三者に決めてもらおう。わたしがルールを決めてお前に卑怯だといわれては適わんからな」
アーチボルトは仲間を振り返る。最初にスイフリーと目が合った。彼は酷く面倒くさそうな表情を浮かべてから大げさにため息をつき、それから諦めたような口調で話し始める。
「ここに居る人間は第三者であることはできないのではないか? わたしたちはアーチーの仲間だし、向こうに居るのはその戦士の仲間だろう? ヒースたちはわたしたちが護衛している対象だから、やはりカウントとしてはわたしたち陣営ということになる。あとくされの無いのはそっちの戦士の仲間に決めさせる方法か、もしくはガルガドに決めてもらうんだな。マイリーってのはそういうのが得意なんだろう?」
ほとんど投げやりな回答が返ってくる。当事者でもなければ、利益があるわけでもない状況で、これだけ助言してくれたのは多分仲間だからだろう。そう思いたい。
「……聞いてのとおりだから、君の仲間に決めてもらいたまえ」
結局、戦士の仲間から、大体考えていたようなルールが提案された。追加されたのは、とりあえず、とどめは刺さない方向で、と非常にシンプルなものだ。武器や防具はそのままと決まった時点で間違いなくアーチボルトは勝ったわけなのだが、戦士はその辺気にしていないらしかったし、彼の仲間たちはどうやら一回くらい負けて目を覚ませ、くらいの気持ちらしかった。
(分からないでもないな……)
内心彼の仲間たちに同情しながらアーチボルトは思う。自分たちも慢心した時期はあったし(傍目から見たら今でも慢心してるのだが、その辺は知らないふりをしておく)まあ、多少実力がついてきた彼がそういう状況になるのも分からないではない。自信をなくしてしまうのは厄介かもしれないが、慢心して命をなくすよりはずっといいだろう。
「では、立会いはワシがつとめるの」
戦神の神官であるガルガドが、二人の間に立つ。
「勝負は一回。降参するか、戦闘不能になるまで。とどめは刺さないが、不慮の事故は仕方なし。怪我はワシが責任をもって治すから、お互い全力で、正々堂々とやること」
「……全力でやったら、あの子死んじゃうんじゃないの?」
マウナが首をかしげる。
「そうなっても仕方ないですよ。実力を見極められないで喧嘩をふっかけたほうが馬鹿なんです」
エキューは冷たい目で戦士を見ながら、声だけは優しくマウナに話しかける。
「でも、アーチボルトさんがちゃんと戦うのを見るのは初めてです! ちょっとわくわくします!」
イリーナが拳を握り締めてキラキラとした目つきをする。
「確かに、ここまでの旅でアーチーがちゃんと戦ってたのはほとんど見てないな。はぐれモンスターはいうまでもなく、あの屋敷でもお前が先にとどめさしちまって、アーチー何にもしてないからな。鏡の間でちょっと剣振っただけだったよな」
「楽しみですねえ」
ヒースの答えも聞いているのかいないのか、イリーナはわくわくとした声をあげ、戦いが始まるのを今や遅しと待つ。
「本当にやるのか?」
外野の声に既に疲れてきているアーチボルトは、最後の問いかけで再び戦士に声をかける。
「無論だ! 怖気づいたか!」
「……」
「仕方がないな」
ずんばらりん、としてしまわないようにだけは気をつけよう、と思いながら剣をぬく。
せめてプロテクションくらいは、相手にかけさせておくべきだったかもしれない。
早くも後悔。
相手も剣をぬいた。魔法剣ではなさそうだが、きちんと手入れした綺麗な剣だ。
「では、はじめ」
抜かれたアーチボルトの剣に、マウナが最初に反応した。
「何か金色! 何か金色よ!」
「いや、金色だったらいいって話じゃあないだろう。ちょっと趣味悪くないか?」
ヒースはへらっと笑いながら言う。
「剣は色じゃありませんよ! 強さです! あんな軽そうな剣で大丈夫なんでしょうか? 爪楊枝以下ですよ!?」
「あんな爪楊枝ないよ」
イリーナの的外れな心配に、呆れた声をだすエキュー。
「この際だからオレらもなんか悪口言っとく?」
「今さらでしょう、彼の趣味の悪さは」
パラサとグイズノーの会話に、フィリスが絶対零度の視線を向ける。二人は即座に黙った。
「ああ、心配だわぁ、アーチー、大丈夫かしら?」
「大丈夫ですよ、お姉さん」
「ダメですよレジィナ、フィリスは浸りたいだけなんですから、言わせてあげないと。アーチーが負けるなんてこれっぽっちも考えてないんですから」
「分かってるなら黙れ」
「とりあえず、外野は黙っとれの。試合中だからの」
■この回を書いてた頃、友人がクレアさんのイラストをくれました。
非常にテンションがあがりました。
まだまだ募集中です。
何枚あってもじゃまにはなりません。
むしろテンションあがる。
ぎぶみークレアさん。
とか、欲望に従ったことをたまに呟いてみる。
全員に情報がいきわたったのを確認して、アーチボルトは歩みを止める。それに従って、皆もその場で立ち止まった。
「いつまでこそこそと付け回るつもりだ、我々は逃げも隠れもしない、出てきたらどうかね」
森に向かってびしりと指をさし、アーチボルトが宣言する。少し自分によっている感じがしないでもないが、今に始まったことでもないので、誰も何も言わない。
がさり、と下草を踏み分ける音がしたかと思うと、若い冒険者たちが5人、森から出てきた。そこそこ年季が入った装備品であるとか、旅慣れた感じから、それほど駆け出しという感じはしない。
武器や鎧を見る限り、戦士も盗賊も神官もいる。魔術師や精霊使いはよく分からない。鎧を脱いだら使える、というようなパーティーも居るからだ。
戦士の一人が、きつい目つきでアーチボルトを見据えている。他の四人は、少々その戦士にむけて呆れたような目つきであったりもする。
「何の用かね?」
アーチボルトは他のものより一歩前へ出て尋ねる。
「アーチボルトっていうのはお前か!」
戦士が口を開いた。まだ若い男で、多分アーチボルトの半分くらいの歳でしかないだろう。
「不躾な奴だ」
アーチボルトが顔を顰めてため息をついて見せると、戦士は更に鋭い声を発する。
「勝負しろ!」
「は?」
思わず間抜けな声を出したアーチボルトを気にすることなく、戦士は続ける。
「お前はどう見たって俺より弱そうだ! なのに騎士として叙勲されるなんておかしいじゃないか! 何か不正をしてるにちがいない!」
びしり、と戦士は指を突きつける。多分彼はファリス信者でもあるのだろうな、とアーチボルトはぼんやり考えながら相手の行動を見る。
「まあ、アーチーは筋力的にはひ弱ですよね。あちらのほうが強そうです」
グイズノーがぼそりという。確かに、相手の戦士はかなり体格に恵まれていてがっしりした印象を与える。対するアーチボルトは、上背こそあるが、どちらかというとひょろっとした感じで筋力的には恵まれていない体つきだ。
「まあ、わたくしに言えた話じゃないんですけどね」
ぎろりと睨まれ、グイズノーは笑いながら続ける。確かに彼はアーチボルトより更にひ弱なからだをしている。体格については、彼らのパーティは本当にあまり恵まれていない。
そういう体格的な見た目や持ち物が、彼らに対するやっかみや逆恨みを余計に助長させているともいえる。
「不正もしてるにゅ。アーチーブレードも鎧も、ちょっと反則っぽいにゅ」
「アーチブレイド!」
「今は俺が喋ってるんだから外野と会話するな!」
わざと間違って言ってみせたパラサに対し、アーチボルトはいつもどおりしっかりと訂正をいれる。その様子が頭にきたのか、戦士が声を荒げた。
「ちゃんと調べたんだぞ! お前たちパーティーは作戦立案してるエルフが居て、魔法をばんばん飛ばして勝つんだろう! ということは、お前はお飾りだ! エルフが居なければきっと俺とお前の実力は五分と五分! それなのに騎士だなんて許せん!」
「わたしだけが作戦立ててるわけではないんだがなあ」
「リサーチ不足よね。アーチーとスイフリーの二人で話をややこしくしてるのに」
「あれ、逆恨みですよね」
「ああいうのは、逆恨みではなくやっかみというのだ。第一、わたしはアーチーに支援魔法など使ったことがないから、わたしが居ても居なくてもアーチーの戦闘能力にはまったく関係しないんだが」
「どっちかっていうと俺にゅ」
「参っちゃいますね」
「だから外野は茶々を入れるな!」
スイフリーたちの会話に、また戦士が怒りをあらわにする。
「結局君は何が言いたいのかね」
ため息混じりにアーチボルトは戦士を見る。
「言っただろ! 俺と勝負しろ!」
「そのわりに、君の仲間は興味がなさそうに見えるのだが」
「勝負するのは俺とお前だ! 正々堂々、一対一で勝負だ!」
「……」
アーチボルトは呆れたような疲れたような目で戦士を見たあと、助けを求めるように仲間を見た。
「じゃあ頑張れアーチー」
「きっと勝てるわよぅ、アーチー強いものぉ」
しれっと無関係を決め込む仲間。
「正々堂々、一対一! ファリス様もそれならお許しくださいます!」
大きく頷くイリーナ。
「どちらかというと、それはマイリーの教えなんじゃないか?」
「そうだの。見届け人でもするかの?」
すっかり観客モードのヒースに、やる気に満ちた戦神の神官。
「お前ら……」
急に悲しい気分に陥りつつ、アーチボルトは戦士に向き直る。
「どうしてもか?」
「当たり前だ! 怖気づいたか!」
勢いに乗った戦士を止める手立てはなさそうだ。彼の仲間が諦めた様子で見つめているのは、つまりはそういうことだろう。自分たちを追ってきたのは、彼一人の主張であって、仲間たちは巻き込まれたのだろう。
こっちも巻き込まれたわけだが。
「あ、そうだアーチー、ルールと勝ったときの報奨は先に決めておけよ」
「正々堂々の勝負に、賞品など必要ないですよ」
スイフリーの言葉と、それをたしなめるクレアの声。
誰も止めないのかコレ。
アーチボルトはがっくりとした気分で、戦士に向き直る。
「ルールはそちらが決めたまえ」
■ちゃんと「アーチーを活躍させようの会・会長」と話し合って、敵を決めました。
そうしたら、こんな感じになりました。
なんか、無礼レベルが足りなかった気がする(笑)
しかし、会長はお褒めの言葉を下さいました。
アーチーがとてもイイカンジだったそうです。
「いつまでこそこそと付け回るつもりだ、我々は逃げも隠れもしない、出てきたらどうかね」
森に向かってびしりと指をさし、アーチボルトが宣言する。少し自分によっている感じがしないでもないが、今に始まったことでもないので、誰も何も言わない。
がさり、と下草を踏み分ける音がしたかと思うと、若い冒険者たちが5人、森から出てきた。そこそこ年季が入った装備品であるとか、旅慣れた感じから、それほど駆け出しという感じはしない。
武器や鎧を見る限り、戦士も盗賊も神官もいる。魔術師や精霊使いはよく分からない。鎧を脱いだら使える、というようなパーティーも居るからだ。
戦士の一人が、きつい目つきでアーチボルトを見据えている。他の四人は、少々その戦士にむけて呆れたような目つきであったりもする。
「何の用かね?」
アーチボルトは他のものより一歩前へ出て尋ねる。
「アーチボルトっていうのはお前か!」
戦士が口を開いた。まだ若い男で、多分アーチボルトの半分くらいの歳でしかないだろう。
「不躾な奴だ」
アーチボルトが顔を顰めてため息をついて見せると、戦士は更に鋭い声を発する。
「勝負しろ!」
「は?」
思わず間抜けな声を出したアーチボルトを気にすることなく、戦士は続ける。
「お前はどう見たって俺より弱そうだ! なのに騎士として叙勲されるなんておかしいじゃないか! 何か不正をしてるにちがいない!」
びしり、と戦士は指を突きつける。多分彼はファリス信者でもあるのだろうな、とアーチボルトはぼんやり考えながら相手の行動を見る。
「まあ、アーチーは筋力的にはひ弱ですよね。あちらのほうが強そうです」
グイズノーがぼそりという。確かに、相手の戦士はかなり体格に恵まれていてがっしりした印象を与える。対するアーチボルトは、上背こそあるが、どちらかというとひょろっとした感じで筋力的には恵まれていない体つきだ。
「まあ、わたくしに言えた話じゃないんですけどね」
ぎろりと睨まれ、グイズノーは笑いながら続ける。確かに彼はアーチボルトより更にひ弱なからだをしている。体格については、彼らのパーティは本当にあまり恵まれていない。
そういう体格的な見た目や持ち物が、彼らに対するやっかみや逆恨みを余計に助長させているともいえる。
「不正もしてるにゅ。アーチーブレードも鎧も、ちょっと反則っぽいにゅ」
「アーチブレイド!」
「今は俺が喋ってるんだから外野と会話するな!」
わざと間違って言ってみせたパラサに対し、アーチボルトはいつもどおりしっかりと訂正をいれる。その様子が頭にきたのか、戦士が声を荒げた。
「ちゃんと調べたんだぞ! お前たちパーティーは作戦立案してるエルフが居て、魔法をばんばん飛ばして勝つんだろう! ということは、お前はお飾りだ! エルフが居なければきっと俺とお前の実力は五分と五分! それなのに騎士だなんて許せん!」
「わたしだけが作戦立ててるわけではないんだがなあ」
「リサーチ不足よね。アーチーとスイフリーの二人で話をややこしくしてるのに」
「あれ、逆恨みですよね」
「ああいうのは、逆恨みではなくやっかみというのだ。第一、わたしはアーチーに支援魔法など使ったことがないから、わたしが居ても居なくてもアーチーの戦闘能力にはまったく関係しないんだが」
「どっちかっていうと俺にゅ」
「参っちゃいますね」
「だから外野は茶々を入れるな!」
スイフリーたちの会話に、また戦士が怒りをあらわにする。
「結局君は何が言いたいのかね」
ため息混じりにアーチボルトは戦士を見る。
「言っただろ! 俺と勝負しろ!」
「そのわりに、君の仲間は興味がなさそうに見えるのだが」
「勝負するのは俺とお前だ! 正々堂々、一対一で勝負だ!」
「……」
アーチボルトは呆れたような疲れたような目で戦士を見たあと、助けを求めるように仲間を見た。
「じゃあ頑張れアーチー」
「きっと勝てるわよぅ、アーチー強いものぉ」
しれっと無関係を決め込む仲間。
「正々堂々、一対一! ファリス様もそれならお許しくださいます!」
大きく頷くイリーナ。
「どちらかというと、それはマイリーの教えなんじゃないか?」
「そうだの。見届け人でもするかの?」
すっかり観客モードのヒースに、やる気に満ちた戦神の神官。
「お前ら……」
急に悲しい気分に陥りつつ、アーチボルトは戦士に向き直る。
「どうしてもか?」
「当たり前だ! 怖気づいたか!」
勢いに乗った戦士を止める手立てはなさそうだ。彼の仲間が諦めた様子で見つめているのは、つまりはそういうことだろう。自分たちを追ってきたのは、彼一人の主張であって、仲間たちは巻き込まれたのだろう。
こっちも巻き込まれたわけだが。
「あ、そうだアーチー、ルールと勝ったときの報奨は先に決めておけよ」
「正々堂々の勝負に、賞品など必要ないですよ」
スイフリーの言葉と、それをたしなめるクレアの声。
誰も止めないのかコレ。
アーチボルトはがっくりとした気分で、戦士に向き直る。
「ルールはそちらが決めたまえ」
■ちゃんと「アーチーを活躍させようの会・会長」と話し合って、敵を決めました。
そうしたら、こんな感じになりました。
なんか、無礼レベルが足りなかった気がする(笑)
しかし、会長はお褒めの言葉を下さいました。
アーチーがとてもイイカンジだったそうです。
追っ手に気付いているのは、まだ数人しか居ないようだった。アノスの冒険者たちは、パラサとスイフリー、それからアーチボルト。フィリスもどうやら気付いているらしい。オーファンの冒険者では、ヒースとマウナ。それからガルガドも話を聞いたらしかった。
「あまりぴりぴりしていると、こっちが気付いたのがばれるぞ」
「相手の意図が分からないうちに、先制しちゃうのはどうなの? いいことなのかな?」
「不意をうたれるほうが悪いぞ、冒険者なんだから」
ヒースとマウナが小声で話し合う。もちろん、追っ手にばれないように、というのもあるが、それよりも少し前を行くイリーナに聞こえないように、という配慮でもある。折角追跡に気付いて、しかもそれが向こうに知られていないのに、イリーナが口上を述べつつ突進したら何もかもが台無しだ。
相手からのアプローチは今のところ無い。
「どういう作戦が練れる?」
アーチボルトがスイフリーに尋ねる。にやり、とお互い笑っていることから、多分楽しいのだろう。
「そうだな、不意打ちをするなら、眠りの雲で眠らせて放っておくか、もしくはいきなり戦乙女の槍だとかファイアボールだろうな。こっちに追跡がばれて、しかもそれに気付いていないのか追跡を継続中、という点から考えて相手は駆け出しの冒険者かもしくはよほどの恨みをわたしたちに抱いているということだろう。駆け出しならば眠りの雲で十分だが、恨まれているなら自衛のためにも攻撃魔法だろうな」
スイフリーの提案にアーチボルトは一つ頷く。
「もしくは」
「他にもあるにゅ?」
続けたスイフリーに、パラサは驚いたような声を上げてその顔を見上げる。スイフリーは悪い笑顔を浮かべていて、とても楽しそうだ。
「いきなりこちらから呼び止めてしまう」
「それに何の利益があるん?」
「一つ不思議なのだが」
スイフリーはそれとなく森の方向を見てから、再び視線を前に戻す。暫らくはまだ平坦な道が続いていて、隠れるようなところは無い。相手からは丸見えだろう。
「追っ手のわりに、殺意とか感じられない」
「あー、そういえばそうにゅ」
「わたしがはとこの子に追っ手を聞かされてから結構たつが、距離は全く縮まりも遠ざかりもしないし、殺意も感じない。なんというか」
「……観察されてる?」
「そう、そんな感じだ」
「意図がわからんのが不気味だなあ」
スイフリーとパラサの会話が一通り終わったところでアーチボルトは決断する。
「声をかけるほうにしよう。不意打ちが有利なのは間違いないが……ダークエルフではないのは確定しているのだろう?」
「うん、ファーズから出るときくっついてきて、その時確認したけど、全員人間みたいだった。まあ、はとこみたいにつけ耳で白粉だったらわからんけど」
「あとで覚えとけよ、はとこの子のひ孫め」
「魔物に向かって不意打ちであるとかならいいんだが、この国では人相手に不意打ちすると変な噂が立ちそうだ。騎士としては避けねば」
「犬」
パラサがぼそりと呟き、アーチボルトがそれをぎろりと睨む。
「あとはタイミングだな。とりあえず仲間全員に伝えよう。伝えるとき注意するべきはイリーナとノリスとクレアだ。ノリスは声を上げて相手にバラす結果を引き当てないとは限らないし、神官たちは一斉に相手をみるだろうからな」
「イリーナは俺様が伝える。対処法を一番わかってるだろうからな」
ヒースの申し出に「頼む」とアーチボルトは頷いた。
「ではわたしはクレアに言おう」
スイフリーはため息混じりに言う。
「えー。俺も姉ちゃんがいい」
「クレアがあっちを向きそうになったとき、お前なんとかできるのか? 身長が足りないだろ? わたしもあれより低いが、お前よりはマシだ」
「にゅう」
傍目には分からない程度の鞘当をしつつ、結局二人で伝えに行くことに落ち着く。
「じゃあ、わたしがノリスに言いに行こう」
アーチボルトがため息をつく。
「では始めるか」
■今日も「アーチー大活躍の巻」ですが、そんなに活躍してません。おかしいなあ。
そんなこんなで、次回は追っ手とのやりとりです。
さて、それはそれとして、アチフィリ予定の「Loverslike」ですが、なんとなく出来そうです。
書き始めてみました。
いける!
と思ったらアップしますねー。
短め、をもくろんでます。
「あまりぴりぴりしていると、こっちが気付いたのがばれるぞ」
「相手の意図が分からないうちに、先制しちゃうのはどうなの? いいことなのかな?」
「不意をうたれるほうが悪いぞ、冒険者なんだから」
ヒースとマウナが小声で話し合う。もちろん、追っ手にばれないように、というのもあるが、それよりも少し前を行くイリーナに聞こえないように、という配慮でもある。折角追跡に気付いて、しかもそれが向こうに知られていないのに、イリーナが口上を述べつつ突進したら何もかもが台無しだ。
相手からのアプローチは今のところ無い。
「どういう作戦が練れる?」
アーチボルトがスイフリーに尋ねる。にやり、とお互い笑っていることから、多分楽しいのだろう。
「そうだな、不意打ちをするなら、眠りの雲で眠らせて放っておくか、もしくはいきなり戦乙女の槍だとかファイアボールだろうな。こっちに追跡がばれて、しかもそれに気付いていないのか追跡を継続中、という点から考えて相手は駆け出しの冒険者かもしくはよほどの恨みをわたしたちに抱いているということだろう。駆け出しならば眠りの雲で十分だが、恨まれているなら自衛のためにも攻撃魔法だろうな」
スイフリーの提案にアーチボルトは一つ頷く。
「もしくは」
「他にもあるにゅ?」
続けたスイフリーに、パラサは驚いたような声を上げてその顔を見上げる。スイフリーは悪い笑顔を浮かべていて、とても楽しそうだ。
「いきなりこちらから呼び止めてしまう」
「それに何の利益があるん?」
「一つ不思議なのだが」
スイフリーはそれとなく森の方向を見てから、再び視線を前に戻す。暫らくはまだ平坦な道が続いていて、隠れるようなところは無い。相手からは丸見えだろう。
「追っ手のわりに、殺意とか感じられない」
「あー、そういえばそうにゅ」
「わたしがはとこの子に追っ手を聞かされてから結構たつが、距離は全く縮まりも遠ざかりもしないし、殺意も感じない。なんというか」
「……観察されてる?」
「そう、そんな感じだ」
「意図がわからんのが不気味だなあ」
スイフリーとパラサの会話が一通り終わったところでアーチボルトは決断する。
「声をかけるほうにしよう。不意打ちが有利なのは間違いないが……ダークエルフではないのは確定しているのだろう?」
「うん、ファーズから出るときくっついてきて、その時確認したけど、全員人間みたいだった。まあ、はとこみたいにつけ耳で白粉だったらわからんけど」
「あとで覚えとけよ、はとこの子のひ孫め」
「魔物に向かって不意打ちであるとかならいいんだが、この国では人相手に不意打ちすると変な噂が立ちそうだ。騎士としては避けねば」
「犬」
パラサがぼそりと呟き、アーチボルトがそれをぎろりと睨む。
「あとはタイミングだな。とりあえず仲間全員に伝えよう。伝えるとき注意するべきはイリーナとノリスとクレアだ。ノリスは声を上げて相手にバラす結果を引き当てないとは限らないし、神官たちは一斉に相手をみるだろうからな」
「イリーナは俺様が伝える。対処法を一番わかってるだろうからな」
ヒースの申し出に「頼む」とアーチボルトは頷いた。
「ではわたしはクレアに言おう」
スイフリーはため息混じりに言う。
「えー。俺も姉ちゃんがいい」
「クレアがあっちを向きそうになったとき、お前なんとかできるのか? 身長が足りないだろ? わたしもあれより低いが、お前よりはマシだ」
「にゅう」
傍目には分からない程度の鞘当をしつつ、結局二人で伝えに行くことに落ち着く。
「じゃあ、わたしがノリスに言いに行こう」
アーチボルトがため息をつく。
「では始めるか」
■今日も「アーチー大活躍の巻」ですが、そんなに活躍してません。おかしいなあ。
そんなこんなで、次回は追っ手とのやりとりです。
さて、それはそれとして、アチフィリ予定の「Loverslike」ですが、なんとなく出来そうです。
書き始めてみました。
いける!
と思ったらアップしますねー。
短め、をもくろんでます。
■Lovesick 内容紹介■
スイフリーとクレアがくっつくまでの話。
ごちゃごちゃ遠回り気味。
気付けば裏テーマは「グイズノーの株を何処まで上げられるか選手権」みたいになってます。
つまり、グイズノーがいい人です(苦笑)
あと、パラサが大人です。
なんでそうなったんだ。
2008/01/23完結。
■Lovesick 目次■
01 理想 / 理屈 「やめとけばいいのにな、わたしなんか。変な女だ」
02 幸 / 不幸 「わたしはお前ほどパッショネイトじゃないんだ」
03 一瞬 / 永遠 「かたっぽだけ長生きなのって、残るほうと残すほう、どっちが不幸?」
04 善 / 不善 「クレアさんは? 小さい頃、何になりたかった?」
05 好 / 嫌 「聞かれてませんから」
06 要 / 不要 「ええ、そうですよ。その上で、彼らには究極の命題ですよ」
07 質疑 / 応答 「考えることについて、わたしが止める権利はない」
08 壁 / 時間 「そんな決着の付け方したら、俺ははとこの首を掻っ切る」
09 認 / 不認 「おまえ、それは逆恨みってやつだ」
10 迷 / 着 「え、なぜなんでしょうか?」
11 冷 / 熱 「そんなもん、負わせるわけにはいかない」
12 落ちる / 分かる 「喋ってみたら、結構いろんなことが簡単になるにゅ」
13 裏 / 表 「迷惑だとは言ってないみたいですよ」
14 愛 / 憎 「殺す気か! はとこの子の子の子の玄孫!」
15 理性 / 「貴方は、私を、どうお思いですか?」
16 / 感情 「嫌いではない」
17 最愛 / 永遠 「そっか、それは残念……」
18 ななつ / こころ 「善処する」
スイフリーとクレアがくっつくまでの話。
ごちゃごちゃ遠回り気味。
気付けば裏テーマは「グイズノーの株を何処まで上げられるか選手権」みたいになってます。
つまり、グイズノーがいい人です(苦笑)
あと、パラサが大人です。
なんでそうなったんだ。
2008/01/23完結。
■Lovesick 目次■
01 理想 / 理屈 「やめとけばいいのにな、わたしなんか。変な女だ」
02 幸 / 不幸 「わたしはお前ほどパッショネイトじゃないんだ」
03 一瞬 / 永遠 「かたっぽだけ長生きなのって、残るほうと残すほう、どっちが不幸?」
04 善 / 不善 「クレアさんは? 小さい頃、何になりたかった?」
05 好 / 嫌 「聞かれてませんから」
06 要 / 不要 「ええ、そうですよ。その上で、彼らには究極の命題ですよ」
07 質疑 / 応答 「考えることについて、わたしが止める権利はない」
08 壁 / 時間 「そんな決着の付け方したら、俺ははとこの首を掻っ切る」
09 認 / 不認 「おまえ、それは逆恨みってやつだ」
10 迷 / 着 「え、なぜなんでしょうか?」
11 冷 / 熱 「そんなもん、負わせるわけにはいかない」
12 落ちる / 分かる 「喋ってみたら、結構いろんなことが簡単になるにゅ」
13 裏 / 表 「迷惑だとは言ってないみたいですよ」
14 愛 / 憎 「殺す気か! はとこの子の子の子の玄孫!」
15 理性 / 「貴方は、私を、どうお思いですか?」
16 / 感情 「嫌いではない」
17 最愛 / 永遠 「そっか、それは残念……」
18 ななつ / こころ 「善処する」