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泡だとかぽこだとか。時折ルージュとか。初めての方は「各カテゴリ説明」をお読みください。
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泡ぽこ 68
「生死に関わるほどまでやらないから。手加減をお互いすれば、結構いい勝負だと思うんだ」
レジィナは食い下がる。
「なぜそこまで試合にこだわるのだ、人間の少女よ」
スイフリーは呆れたように言うと、さらにわざとらしくため息までついて見せた。
「こういう機会がめったにないからだよ。アーチーとじゃ、試合しようとは思わないし、同じくらいの実力の人ってそうそう会えないから」
「そうです! 試合なんて、そう滅多にあるチャンスじゃないですから!」
レジィナの主張に、イリーナも握りこぶしで続ける。
「別に、本人同士がやってもいいって言ってるんだから、いいんじゃない? あんたに利益が無くても、レジィナとイリーナにはあるんだし。まさか二試合もしなくていいでしょ、イリーナも」
「本当はお二人ともと戦いたいですが、欲張りません!」
十分欲張ってると言いたかったが、フィリスが笑顔で脅しているのでスイフリーは口を閉じる。表情はかなり納得していないが、反論するのにも疲れたのだろう。
「ここまで無報酬だったんでしょ? ついででいいじゃん」
ノリスの言葉に、マウナは凄い勢いでノリスを見る。
「無報酬って何!?」
「まだオーファンに居た頃聞いたんだけど、今回の旅、皆無報酬だったんだってー」
「えええええ!?」
悲鳴を上げるマウナに、パラサは笑ってみせる。
「まるっきり無報酬ってワケでもないにゅ」
「そそそそそうですよね!? 魔晶石をあれだけ使って、私たちに報酬までだして、半年以上拘束されて挙句無報酬なんてありえないですよね!?」
「収入は無いにゅ」
あっさりとした返答に、マウナはテーブルに突っ伏したまま暫く起き上がれないでいる。
「よくそれで旅なんてしようと思ったね」
エキューは呆れた顔をする。現実的な彼としてはかなり不可解な話である。アノスの冒険者たちはもっと、現実的だと思っていたが気のせいだったんだろうか、とまで考えた。
「そこはほら、愛にゅ」
げたげたと笑いながらパラサは答えたが、勿論それで納得などできるものではない。もしかしたら、パラサ自身は本当にクレアに対する愛情で無報酬でも平気だったのかもしれないが、他の面子までそうだとは思えない。
「あー、つまりだ」
アーチボルトは眉間を押さえてため息をつくと、そこにいた名代代理に席をはずすように促した。そして彼女が部屋を出たのを確認してから口を開く。
「オーファンまでクレアさんの護衛、オーファンからイリーナたちの護衛、その様々な経費全部、と我々は二連発で無料奉仕した上に赤字で大出費。しかも一年の大半をこれに費やした。見た目では我々には何の利益も無いわけだが……コレで漸くトントンか一個貸しくらいになったと思うぞ。末端の者とは違い、上層部はこの意味合いが分かるはず」
「何のこと?」
首を傾げたのはオーファンの冒険者以外ではレジィナだけだった。
「我々を騙った冒険者の女ドワーフがいたという話を前にしたろ?」
「ああ、うん」
アーチボルトの言葉を引継ぎ、スイフリーが説明する。彼の言葉に、アーチボルトが頷き、クレアがふと視線をそらした。
「あれな。確かに蘇生代金はキチンと支払われてるんだが、それでも法王の仕事を一日休ませ、さらに信者を相当数動員してのかなり大掛かりな儀式を執り行わなければいけないくらいのもんだったらしい」
「え、待ってくださいよスイフリー。それだけの儀式となると、結構な代金になりませんか?」
少し引きつった顔でグイズノーが尋ねる。蘇生の代金については、彼も結構痛い目を見たことがないわけではない。あの頃はまだ駆け出しだった事もあるが。
「48万ほどだ。確かにまあまあの額だな」
48万、の後に続くのは間違いなく「ガメル」だ。その額をまあまあと言い切った彼に、マウナは軽いめまいを覚える。
「が、まあ、別に我々に領収書がまわってきたわけではないから、そんなことはどうでもいい。問題は、法王と信者の時間を拘束したことにある。執務も確実に滞っただろうからな。いいか、コレが我々のせい、になってたんだぞ?」
「あー」
ヒースが低い声でうなる。理解したのだろう。
「理解したか? 我々、この国に多大なる迷惑をかけたことになってるのだ。向こうとしては国の英雄の仲間だから、恩返しにしておこうという思惑があるかもしれんが。こちらに非はなくとも、表向きには我々の仲間の起こした問題だ。我々はこの埋め合わせをしておく必要があったのだ。まあ、今回のことを補填に当てて、どうにかこうにかトントン、か一個貸しくらいだろう」
「そうだな、そのくらいにしかならんな」
「仲間じゃ有りません、っていえばいいんじゃないの?」
「それをいったら色んな人間の面子が丸つぶれだ」
レジィナの質問にアーチボルトが即答する。
「わたしはこの城を将来的に手放さないで済む方法に向けて奮闘しているわけだ。このまま行ったらあと50年ほどで追い出されてしまうからな」
「なんで」
「アーチーに貰ったモンだからだ。アーチーはまだ一代騎士、アーチーが死ねばこの城に住む権利が無くなる。わたしはあと800年は生きられる。どんな手を使ってでもアーチーを永久に騎士資格ありにしてみせるからな」
「でもアーチーが死んだら一緒じゃないの?」
スイフリーにフィリスが尋ねると、「だからそうならないようにしてるんだ」とだけ彼は答えた。
「とまあ、今回の事は決して損はしていない。が、レジィナとイリーナの試合には実がない。だからわたしは反対なのだが、本人同士が納得ならもうどうでもいい」
スイフリーはそういうと、話は終わったとばかりに食事に集中する事にした。




■はい、また変な方向に話が向き始めました。
ちなみに今回の話は、57話あたりで書こうと思って止めた話を再利用したものでした。
実際、やつらが無報酬で働くわけが無いのでした。愛で働く事もあるけど。今回は愛と投資で。

お知らせ。
泡ぽこはあと5話でおしまいです。
今のところ、次に何を書くかは決まっておりません(友人たちに送るお話は現在オリジナルをやっております)
……ラバーズライクを頑張れという話ですな。あはははは……。

何か「こーいうの読みたい」とか聞かせてもらえると、発想のきっかけになるかもしれません。
ちなみに私は勿論泡ファンです。スイフリーとクレアさんとパラサが大好きです。

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