泡だとかぽこだとか。時折ルージュとか。初めての方は「各カテゴリ説明」をお読みください。
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ストローウィック城へは、ファーズから一週間ほどかかる。
道は大して険しくなく、小さいとはいえ村が点在する地域なので、細いものではあるが街道もある。周囲は草原、もしくは小さな林に囲まれていて、景色は美しい。総じて歩きやすい道であり、旅は快適、と言えた。
「どんなお城なんですか?」
お城、という響きに少々舞い上がったような声でマウナが尋ねる。
「もともとは、財務大臣が狩りのときに使ってたものなの。そんなに大掛かりなものじゃないわ。もちろん、一応お城だから頑丈な城壁はあるし、見張りようの塔もあるし、犬舎や厩舎もあるわよ。周りはちょっと沼地で、小高い丘に建ってるの」
「守りやすく攻めにくい、リザードマンに無力な城」
フィリスとスイフリーがそのように答える。
「大きさは?」
「城壁は周囲3キロくらい。建物は少々古いが、手直ししたから問題は無い。部屋数はいくつだ? わたしは数えたことが無い」
アーチボルトの言葉に、クレアがすぐに部屋の数を答える。その数にマウナが目を輝かせた。
「ステキ」
「その城、ぽーんと貰ったのか?」
ヒースの質問に、アーチボルトは鷹揚に頷く。
「そうだ。我々の働きを評価してな」
心なしか頬が紅潮している。得意げな顔に、レジィナはそっとため息をつく。
「一体どういうことをすれば、お城をぽーんと貰えちゃうわけ? アノスってすごいねー。ボクもほしいなあ」
ノリスの言葉に、とりあえずガルガドは冷たい目線を送った後大きくため息をついた。どうせ視線くらいでは伝わるまい。
「城自体は財務大臣の依頼を全うして報酬としてもらった。実際に使えるようになって、領地や領民や騎士資格を貰ったのはアノスを揺るがす事件を解決したからだ」
「どんな事件だったのですか?」
バスの目が輝く。どんな話題も聞き漏らすまい、という意気込みが感じられる。
「秘密だ」
スイフリーがバスの質問を一蹴した。
「秘密ですか」
「少々込み入った話になるからな、吟遊詩人に歌って伝えられると問題が有るのだ」
「そんな酷い話だったのか? 法王のスキャンダルとかか!?」
別の意味でヒースが目を輝かせる。
「この話が漏れると、もれなく魔術師が白い目で見られる」
「う」
スイフリーの冷たい声に、ヒースが言葉を詰まらせる。それ以上の発言がないあたりに、その真実味が含まれているとみて間違いなさそうだ、と彼は思った。
「いいところだよ。のんびりしてるし、皆真面目だし」
レジィナはにこにこ笑ってマウナにつたえる。現在、一番城に到着するのを楽しみにしているのは、実のところ彼女だろう。
「なんにせよ、早く見てみたいわー」
「ほんとです! きっとファリス様の栄光が満ち溢れた素敵なお城なんでしょうね!」
「それじゃはとこは住めないにゅ」
マウナとイリーナの言葉に、パラサは苦笑して呟き、きっちりエルフの蹴りを避けて見せた。
ファーズを出て数時間。
道はまだ真っ直ぐに続いている。景色は相変わらずよく、天気も崩れることなく穏やかだ。数週間前に騎士団がこのあたりの魔物を掃討したらしく、迷い出てくる魔物すら居ない。のんびりした旅路である。
「アーチー」
一行の後ろのほうを歩いていたアーチボルトに、先頭をスイフリーと歩いていたはずのパラサが近寄って小さな声で話しかける。
「なんだ」
「前見たまま聞いてほしいにゅ」
「どうした」
小声になりながら、言われたとおり前をみつつ訪ねる。グラスランナーは嫌いだが、こういうときのパラサの話は聞いて損はない。
「つけられてる」
「何?」
「最初は同じ方向へ行く冒険者かな、とも思ったんやけど。距離が縮まりも離れもしない。さっき森の方面へ入って、でも方向は一緒。数は5人、けど黒エルフじゃないにゅ」
すすす、とスイフリーが逆側に近寄ってきた。
「どうする、先制するか? 我々、恨みだけは確実に相当数買ってるし、逆恨みまで考えたら星の数だぞ」
「とりあえず、様子を見よう」
■今日から「アーチーを活躍させようの会会長に捧ぐ・アーチー大活躍の章」です(嘘・誇張含む)
と、いうわけで、正体不明の何者かとの戦い、スタート。
道は大して険しくなく、小さいとはいえ村が点在する地域なので、細いものではあるが街道もある。周囲は草原、もしくは小さな林に囲まれていて、景色は美しい。総じて歩きやすい道であり、旅は快適、と言えた。
「どんなお城なんですか?」
お城、という響きに少々舞い上がったような声でマウナが尋ねる。
「もともとは、財務大臣が狩りのときに使ってたものなの。そんなに大掛かりなものじゃないわ。もちろん、一応お城だから頑丈な城壁はあるし、見張りようの塔もあるし、犬舎や厩舎もあるわよ。周りはちょっと沼地で、小高い丘に建ってるの」
「守りやすく攻めにくい、リザードマンに無力な城」
フィリスとスイフリーがそのように答える。
「大きさは?」
「城壁は周囲3キロくらい。建物は少々古いが、手直ししたから問題は無い。部屋数はいくつだ? わたしは数えたことが無い」
アーチボルトの言葉に、クレアがすぐに部屋の数を答える。その数にマウナが目を輝かせた。
「ステキ」
「その城、ぽーんと貰ったのか?」
ヒースの質問に、アーチボルトは鷹揚に頷く。
「そうだ。我々の働きを評価してな」
心なしか頬が紅潮している。得意げな顔に、レジィナはそっとため息をつく。
「一体どういうことをすれば、お城をぽーんと貰えちゃうわけ? アノスってすごいねー。ボクもほしいなあ」
ノリスの言葉に、とりあえずガルガドは冷たい目線を送った後大きくため息をついた。どうせ視線くらいでは伝わるまい。
「城自体は財務大臣の依頼を全うして報酬としてもらった。実際に使えるようになって、領地や領民や騎士資格を貰ったのはアノスを揺るがす事件を解決したからだ」
「どんな事件だったのですか?」
バスの目が輝く。どんな話題も聞き漏らすまい、という意気込みが感じられる。
「秘密だ」
スイフリーがバスの質問を一蹴した。
「秘密ですか」
「少々込み入った話になるからな、吟遊詩人に歌って伝えられると問題が有るのだ」
「そんな酷い話だったのか? 法王のスキャンダルとかか!?」
別の意味でヒースが目を輝かせる。
「この話が漏れると、もれなく魔術師が白い目で見られる」
「う」
スイフリーの冷たい声に、ヒースが言葉を詰まらせる。それ以上の発言がないあたりに、その真実味が含まれているとみて間違いなさそうだ、と彼は思った。
「いいところだよ。のんびりしてるし、皆真面目だし」
レジィナはにこにこ笑ってマウナにつたえる。現在、一番城に到着するのを楽しみにしているのは、実のところ彼女だろう。
「なんにせよ、早く見てみたいわー」
「ほんとです! きっとファリス様の栄光が満ち溢れた素敵なお城なんでしょうね!」
「それじゃはとこは住めないにゅ」
マウナとイリーナの言葉に、パラサは苦笑して呟き、きっちりエルフの蹴りを避けて見せた。
ファーズを出て数時間。
道はまだ真っ直ぐに続いている。景色は相変わらずよく、天気も崩れることなく穏やかだ。数週間前に騎士団がこのあたりの魔物を掃討したらしく、迷い出てくる魔物すら居ない。のんびりした旅路である。
「アーチー」
一行の後ろのほうを歩いていたアーチボルトに、先頭をスイフリーと歩いていたはずのパラサが近寄って小さな声で話しかける。
「なんだ」
「前見たまま聞いてほしいにゅ」
「どうした」
小声になりながら、言われたとおり前をみつつ訪ねる。グラスランナーは嫌いだが、こういうときのパラサの話は聞いて損はない。
「つけられてる」
「何?」
「最初は同じ方向へ行く冒険者かな、とも思ったんやけど。距離が縮まりも離れもしない。さっき森の方面へ入って、でも方向は一緒。数は5人、けど黒エルフじゃないにゅ」
すすす、とスイフリーが逆側に近寄ってきた。
「どうする、先制するか? 我々、恨みだけは確実に相当数買ってるし、逆恨みまで考えたら星の数だぞ」
「とりあえず、様子を見よう」
■今日から「アーチーを活躍させようの会会長に捧ぐ・アーチー大活躍の章」です(嘘・誇張含む)
と、いうわけで、正体不明の何者かとの戦い、スタート。
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宿に戻ると、彼らは気が抜けたように椅子に座りこみ、テーブルに突っ伏す。
「き、緊張しました~」
「妙に疲れた」
イリーナが呆然とした声で呟き、エキューが疲れきった声を出す。ほぼ全員が放心状態で、平気な顔をしているのはヒースくらいなものだった。とはいえ、彼も本当は疲れきっているのだが。
「お疲れ様」
フィリスが苦笑しながらその様を見る。別の神を信仰しているドワーフたちが、緊張するのは仕方ないだろうし、主賓でありファリス神官のイリーナがそれより更に緊張するのも分かる。マウナは多分荘厳さにやられたのだろうし、エキューやノリスもいつもとは全く違う雰囲気に少し飲まれたのだろう。ヒースもそれなりに疲れているみたいだし、緊張は極限だったんだろう、と彼女は考えた。
「けどー、4ヶ月もかけてこっちへ来たのに、割とあっけなかったね」
一番立ち直りが早かったのはノリスだった。
「どんな話したの?」
レジィナの質問にイリーナが顔を上げる。
「とても光栄な感じでした」
答えに、意味が分からないという顔をしてみせると、ヒースが大きく息を吐く。
「法王が出てくるだろ?」
「兄さん、法王『様』です」
「まー、それで椅子に座るわけだ。俺様たちはその前に立ちっぱなしな」
「でしょうねえ」
グイズノーはさして珍しいことでもない、と先を促す。
「で、一言。『遠いオーファンでの貴女の活躍は聞き及んでおる。かの地で一層修練に励み、ファリスの教えを世に知らしめてほしい』以上だ! 以上だぞ!? 4ヶ月っつー長い時間かけて、ついでに時々命なんかもかけたりしつつやってきて、こんだけだー!」
途中で疲れが怒りに摩り替わったのか、ヒースが両腕を突き上げつつ叫ぶ。
「兄さん!」
イリーナの少し怒気を含んだ声にヒースは明後日の方向に素早く目を向ける。
「それだけ言ってくれたらいいほうなんじゃない?」
フィリスがかたん、と首を倒して見せる。自分たちが謁見を許されたときも、そんなに大差ない感じだった。
「後は記念に書状と勲章をいただきました!」
「それは記念なのか?」
アーチボルトが少し呆れた顔をする。もっと別の呼び方があるのではないかと思うが、まあ、本人が記念だと思っているのなら、記念でもいいか、と相手にするのをやめることにした。
「でも、疲れたのは本当。リジャール様に謁見したときも疲れたけど、今回はそれ以上だった。緊張感が尋常じゃないんだもん」
ため息混じりにマウナが言うと、エキューが心配そうな顔を向ける。
「しかし、有意義な時間をすごせたのも確かです。今日のことをまた歌にしないといけませんな。続・ファリスの猛女というタイトルはどうでしょう」
「バスさん、猛女から離れてください」
「しかも安直」
バスの言葉にイリーナが抗議し、エキューが突っ込む。
「まあ、なんにせよ問題なくすんでよかった。コレで我々の仕事もほぼ終わりといってもいいな」
「あとは城に戻ってテレポートのスクロール一発だ」
アーチボルトの言葉に、スイフリーは答えて頷く。
「今日はゆっくり休んでね。明日からまた移動だから」
フィリスがにっこりと笑って見せる。
「ほぼ一年ぶりくらいですね。こんなに長く帰らなかったのは初めてかも。リズ元気かな?」
フィリスに続けてレジィナは呟くように言うと、懐かしそうな目を窓の外に向けた。
「名代の代理が真面目に仕事してるといいな」
「カルプラスのおっちゃんのご指名で、ファリス神官が派遣されたんやし、大丈夫っしょ」
パラサがかくん、と首を傾げて見せる。
「名代の時点で城主の代理で、さらにその代理だろ? モチベーション低そうだな。チェックはしっかりしたほうがいいかも知れん」
スイフリーが眉を寄せる。
「そんなの、行って調べなきゃ分からないんですから、今からぐだぐだ考えても仕方ないですよ。重要なのはついてからです。と、言うわけで今日は無事謁見が終わったことを祝して宴会でもしましょう」
「いつも宴会みたいな夕飯食べてるのに」
グイズノーの提案に、ノリスが少し引きつった笑みを浮かべる。マウナなど未知の世界といった顔つきをした。
「宴会っていっても、この街で騒ごうって考えは間違いだと思うがなあ」
いつまでたっても慣れない、といった風にスイフリーは大きなため息をついて見せた。
■今日でアノス/ファーズ篇はおしまい!
短い? こんな何があるのか不明瞭な街で、長く書けなんて無茶だよ!(笑)
次回から、泡さんたちの本拠地・ストローウィック城を目指します。
友人の希望でアーチーに見せ場を作ったので、アーチーファンは期待せず、お待ちください。
「き、緊張しました~」
「妙に疲れた」
イリーナが呆然とした声で呟き、エキューが疲れきった声を出す。ほぼ全員が放心状態で、平気な顔をしているのはヒースくらいなものだった。とはいえ、彼も本当は疲れきっているのだが。
「お疲れ様」
フィリスが苦笑しながらその様を見る。別の神を信仰しているドワーフたちが、緊張するのは仕方ないだろうし、主賓でありファリス神官のイリーナがそれより更に緊張するのも分かる。マウナは多分荘厳さにやられたのだろうし、エキューやノリスもいつもとは全く違う雰囲気に少し飲まれたのだろう。ヒースもそれなりに疲れているみたいだし、緊張は極限だったんだろう、と彼女は考えた。
「けどー、4ヶ月もかけてこっちへ来たのに、割とあっけなかったね」
一番立ち直りが早かったのはノリスだった。
「どんな話したの?」
レジィナの質問にイリーナが顔を上げる。
「とても光栄な感じでした」
答えに、意味が分からないという顔をしてみせると、ヒースが大きく息を吐く。
「法王が出てくるだろ?」
「兄さん、法王『様』です」
「まー、それで椅子に座るわけだ。俺様たちはその前に立ちっぱなしな」
「でしょうねえ」
グイズノーはさして珍しいことでもない、と先を促す。
「で、一言。『遠いオーファンでの貴女の活躍は聞き及んでおる。かの地で一層修練に励み、ファリスの教えを世に知らしめてほしい』以上だ! 以上だぞ!? 4ヶ月っつー長い時間かけて、ついでに時々命なんかもかけたりしつつやってきて、こんだけだー!」
途中で疲れが怒りに摩り替わったのか、ヒースが両腕を突き上げつつ叫ぶ。
「兄さん!」
イリーナの少し怒気を含んだ声にヒースは明後日の方向に素早く目を向ける。
「それだけ言ってくれたらいいほうなんじゃない?」
フィリスがかたん、と首を倒して見せる。自分たちが謁見を許されたときも、そんなに大差ない感じだった。
「後は記念に書状と勲章をいただきました!」
「それは記念なのか?」
アーチボルトが少し呆れた顔をする。もっと別の呼び方があるのではないかと思うが、まあ、本人が記念だと思っているのなら、記念でもいいか、と相手にするのをやめることにした。
「でも、疲れたのは本当。リジャール様に謁見したときも疲れたけど、今回はそれ以上だった。緊張感が尋常じゃないんだもん」
ため息混じりにマウナが言うと、エキューが心配そうな顔を向ける。
「しかし、有意義な時間をすごせたのも確かです。今日のことをまた歌にしないといけませんな。続・ファリスの猛女というタイトルはどうでしょう」
「バスさん、猛女から離れてください」
「しかも安直」
バスの言葉にイリーナが抗議し、エキューが突っ込む。
「まあ、なんにせよ問題なくすんでよかった。コレで我々の仕事もほぼ終わりといってもいいな」
「あとは城に戻ってテレポートのスクロール一発だ」
アーチボルトの言葉に、スイフリーは答えて頷く。
「今日はゆっくり休んでね。明日からまた移動だから」
フィリスがにっこりと笑って見せる。
「ほぼ一年ぶりくらいですね。こんなに長く帰らなかったのは初めてかも。リズ元気かな?」
フィリスに続けてレジィナは呟くように言うと、懐かしそうな目を窓の外に向けた。
「名代の代理が真面目に仕事してるといいな」
「カルプラスのおっちゃんのご指名で、ファリス神官が派遣されたんやし、大丈夫っしょ」
パラサがかくん、と首を傾げて見せる。
「名代の時点で城主の代理で、さらにその代理だろ? モチベーション低そうだな。チェックはしっかりしたほうがいいかも知れん」
スイフリーが眉を寄せる。
「そんなの、行って調べなきゃ分からないんですから、今からぐだぐだ考えても仕方ないですよ。重要なのはついてからです。と、言うわけで今日は無事謁見が終わったことを祝して宴会でもしましょう」
「いつも宴会みたいな夕飯食べてるのに」
グイズノーの提案に、ノリスが少し引きつった笑みを浮かべる。マウナなど未知の世界といった顔つきをした。
「宴会っていっても、この街で騒ごうって考えは間違いだと思うがなあ」
いつまでたっても慣れない、といった風にスイフリーは大きなため息をついて見せた。
■今日でアノス/ファーズ篇はおしまい!
短い? こんな何があるのか不明瞭な街で、長く書けなんて無茶だよ!(笑)
次回から、泡さんたちの本拠地・ストローウィック城を目指します。
友人の希望でアーチーに見せ場を作ったので、アーチーファンは期待せず、お待ちください。
「特に何事もなし、と」
帰って来た面々に、アーチボルトは深く頷く。
「綺麗だけど、冒険者は住みにくい街だね。傭兵とかも」
エキューの率直な感想に、全員が深く頷く。ファリス神官のイリーナでさえ、小さく頷いている。街のあちこちで、大剣を背負って歩くイリーナは奇異の目でみられ、流石に少々恥ずかしかったのだ。ファンの街では名物と化していて誰も気に留めないし、ここまでの街では他にも大剣持ちの女性冒険者はたくさん見かけたので目立たなかったため、このような体験はしなかったのだ。
「何だか、私が知っているファリス様の教えと、ちょーっと違った気がするのよね」
マウナが苦笑する。
「ファンのファリス神殿はなんとなく、力万歳! ってかんじだもんね。イリーナのせいで」
ノリスが能天気に返答する。イリーナは「力も必要ですよ!」などと力説して応戦した。
「この街の利点といえば、とりあえず約束が違えられないことくらいだ」
スイフリーが苦い声で呟く。つまり彼にはその程度しか魅力が無い、という意味でもある。
「そうそう、音楽堂、ちょっと前にお化け騒ぎがあったらしいよ」
「何それ」
レジィナの言葉に、フィリスは視線をレジィナに向ける。
「バスさんと音楽堂へ行ってきたんだけど、そのときに噂を聞いてきたんだ。音楽堂にお化けが出るって話があったんだって。もう解決してたけど」
「ほう」
アーチボルトがレジィナに興味の目を向ける。
「詳しく聞きたいな、それは」
「なんかね、音楽堂に決まった時間にお化けが出るって話でね。冒険者が退治したんだって」
「ざっくりしすぎですよ、その説明」
グイズノーが呆れた顔をする。
「俺その話しってるにゅ。随分前とちゃう? はとこと二人で劇団追いかけてるときにはもう解決してた」
「へえ、そうなの?」
「解決したのは結果的に我々を騙った冒険者たちだ。その頃はまだ騙ってなかったが」
スイフリーはさほど興味なくそこまでいうと黙る。
「設計ミスが原因にゅ」
「エライセンもついてないわねー、音楽堂、災難続きじゃない」
パラサのあっけない結論に、フィリスは思わずエライセンに同情の言葉を寄せる。
「上手くまとめれば、歌になりますよ」
「その通りですな」
レジィナの言葉にバスが大きく頷く。新しい曲、という言葉にマウナの目が一瞬きらりと輝いた。歌のレパートリーが増えるということは、新しい客層が開発される可能性があり、その人たちが小鳩亭へ歌を聴きに来るようになれば、売上に繋がるからだ。
「たまには恋愛の歌とかにしませんか? そのほうが儲かりますよ」
「興味なーい」
グイズノーの発言はざっくりとレジィナに切り捨てられる。
「大して話が盛り上がらなかったな」
アーチボルトが軽いため息をついたとき、宿のドアが開き、見慣れた姿が入ってきた。
「クレア姉ちゃん!」
パラサの顔がぱっと明るくなり、その言葉に導かれるようにクレアがこちらに歩いてくる。
「おそろいのようで何よりです」
クレアは真面目な顔でいうと、パラサの勧めた彼の隣の席に着く。
「明日のことですが、大体の時間が決まりました。朝早くには神殿に来ていてください。法王様の朝のお祈りが済み次第謁見とのことですから」
「昼の祈りまでに済ますということか」
「まあ、そうです」
クレアは頷くと、小さなメダルをイリーナたち全員に手渡した。
「コレを神殿の誰かに見せてもらえば、待合の部屋まで案内してもらえますから、どうぞ。私が朝から迎えに来れるかどうか分からないので」
「分からないとはどういうことだ?」
「予定では、この宿から神殿までは私が案内しまして、王城までは使者の方が案内するんですけど」
クレアはそこまでいうと一度黙る。
「どうせ神殿のくだらない面子だとかそういうもんが絡む話だろう?」
スイフリーは無感動にいうと肩をすくめて見せた。クレアは答えなかったが、その苦笑から、多分その通りなのだろうと全員が判断した。
「ともかく、明日その謁見を終わらせて、明後日にはここを発とう。我々の城まではここから一週間はある」
「あ、結構遠いんだ」
「末端領主だからにゅ」
ノリスの言葉に、パラサは笑って見せた。
■次は法王様、それからストローウィック城。
あ、その前に、アーチーを活躍させようの会、があった。
乞うご期待!
というわけで今年もよろしくおねがいします。
今月はいつを更新日にするかまだ未定です。
泡ぽこも終りが近づいてきたし、そろそろこの先どうするか考えないとなー。
……ラバーズライクまじめに考えよう……。
あと、ラブシックの番外編とか。
ところで最近、あんまり反応が無くてちょっと寂しいです(←正直者)
■どうでもいい話。
WEB拍手、友人に「ぞめく」の意味を説明したほうがいいんじゃないかといわれたので、注をいれておきました。
帰って来た面々に、アーチボルトは深く頷く。
「綺麗だけど、冒険者は住みにくい街だね。傭兵とかも」
エキューの率直な感想に、全員が深く頷く。ファリス神官のイリーナでさえ、小さく頷いている。街のあちこちで、大剣を背負って歩くイリーナは奇異の目でみられ、流石に少々恥ずかしかったのだ。ファンの街では名物と化していて誰も気に留めないし、ここまでの街では他にも大剣持ちの女性冒険者はたくさん見かけたので目立たなかったため、このような体験はしなかったのだ。
「何だか、私が知っているファリス様の教えと、ちょーっと違った気がするのよね」
マウナが苦笑する。
「ファンのファリス神殿はなんとなく、力万歳! ってかんじだもんね。イリーナのせいで」
ノリスが能天気に返答する。イリーナは「力も必要ですよ!」などと力説して応戦した。
「この街の利点といえば、とりあえず約束が違えられないことくらいだ」
スイフリーが苦い声で呟く。つまり彼にはその程度しか魅力が無い、という意味でもある。
「そうそう、音楽堂、ちょっと前にお化け騒ぎがあったらしいよ」
「何それ」
レジィナの言葉に、フィリスは視線をレジィナに向ける。
「バスさんと音楽堂へ行ってきたんだけど、そのときに噂を聞いてきたんだ。音楽堂にお化けが出るって話があったんだって。もう解決してたけど」
「ほう」
アーチボルトがレジィナに興味の目を向ける。
「詳しく聞きたいな、それは」
「なんかね、音楽堂に決まった時間にお化けが出るって話でね。冒険者が退治したんだって」
「ざっくりしすぎですよ、その説明」
グイズノーが呆れた顔をする。
「俺その話しってるにゅ。随分前とちゃう? はとこと二人で劇団追いかけてるときにはもう解決してた」
「へえ、そうなの?」
「解決したのは結果的に我々を騙った冒険者たちだ。その頃はまだ騙ってなかったが」
スイフリーはさほど興味なくそこまでいうと黙る。
「設計ミスが原因にゅ」
「エライセンもついてないわねー、音楽堂、災難続きじゃない」
パラサのあっけない結論に、フィリスは思わずエライセンに同情の言葉を寄せる。
「上手くまとめれば、歌になりますよ」
「その通りですな」
レジィナの言葉にバスが大きく頷く。新しい曲、という言葉にマウナの目が一瞬きらりと輝いた。歌のレパートリーが増えるということは、新しい客層が開発される可能性があり、その人たちが小鳩亭へ歌を聴きに来るようになれば、売上に繋がるからだ。
「たまには恋愛の歌とかにしませんか? そのほうが儲かりますよ」
「興味なーい」
グイズノーの発言はざっくりとレジィナに切り捨てられる。
「大して話が盛り上がらなかったな」
アーチボルトが軽いため息をついたとき、宿のドアが開き、見慣れた姿が入ってきた。
「クレア姉ちゃん!」
パラサの顔がぱっと明るくなり、その言葉に導かれるようにクレアがこちらに歩いてくる。
「おそろいのようで何よりです」
クレアは真面目な顔でいうと、パラサの勧めた彼の隣の席に着く。
「明日のことですが、大体の時間が決まりました。朝早くには神殿に来ていてください。法王様の朝のお祈りが済み次第謁見とのことですから」
「昼の祈りまでに済ますということか」
「まあ、そうです」
クレアは頷くと、小さなメダルをイリーナたち全員に手渡した。
「コレを神殿の誰かに見せてもらえば、待合の部屋まで案内してもらえますから、どうぞ。私が朝から迎えに来れるかどうか分からないので」
「分からないとはどういうことだ?」
「予定では、この宿から神殿までは私が案内しまして、王城までは使者の方が案内するんですけど」
クレアはそこまでいうと一度黙る。
「どうせ神殿のくだらない面子だとかそういうもんが絡む話だろう?」
スイフリーは無感動にいうと肩をすくめて見せた。クレアは答えなかったが、その苦笑から、多分その通りなのだろうと全員が判断した。
「ともかく、明日その謁見を終わらせて、明後日にはここを発とう。我々の城まではここから一週間はある」
「あ、結構遠いんだ」
「末端領主だからにゅ」
ノリスの言葉に、パラサは笑って見せた。
■次は法王様、それからストローウィック城。
あ、その前に、アーチーを活躍させようの会、があった。
乞うご期待!
というわけで今年もよろしくおねがいします。
今月はいつを更新日にするかまだ未定です。
泡ぽこも終りが近づいてきたし、そろそろこの先どうするか考えないとなー。
……ラバーズライクまじめに考えよう……。
あと、ラブシックの番外編とか。
ところで最近、あんまり反応が無くてちょっと寂しいです(←正直者)
■どうでもいい話。
WEB拍手、友人に「ぞめく」の意味を説明したほうがいいんじゃないかといわれたので、注をいれておきました。
次の朝。
空は綺麗に晴れ、柔らかく吹いていく風は心地よい。
透明感のある青い空に、刷毛で塗ったような薄い雲。
光が溢れ、薄汚れたところが少ない町並みは、とても神々しかった。
「すばらしいです」
昨夜から一転、グレートソードを背負うイリーナの顔はいい感じに輝いている。見るもの全てにファリス様の栄光を感じ取り、背中には愛しいグレートソード。彼女は今、ともかく幸福感に満ち溢れていた。
「このすばらしさを、どう表現したらいいのか、全然思いつきません!」
「心に留めておけばいいのよ」
少し落ち着け、といわんばかりにマウナがイリーナの肩を軽く叩きながらため息をつく。
「でも、綺麗な街だよねー。工事とかしてないし」
ノリスがきょろきょろとあちこち見回す。
「落ち着いた良い町なんですがねー、ちょっと堅苦しいのが玉に瑕です」
案内役のグイズノーが苦笑し、パラサが大きく頷く。
「それより、ヒースがギルドで馬鹿やってないといいんだけど。いつものつもりでいったら大変よ」
マウナが魔術師ギルドのほうを見やる。
「いくら兄さんが態度の大きい、不遜な魔術師でも、そこまで馬鹿じゃないでしょう」
本人が居ないからとはいえ、なかなかに酷い。いつもどおりなのかもしれない。
「大丈夫にゅ。フィリス姉ちゃんが居るし……あのギルドで大騒ぎできたら、それはそれで大物にゅ」
「聖なる魔術師ギルドですからねー」
パラサとグイズノーの不思議な説明に、一行は首を傾げるしかない。
「バスはまあ、大丈夫だよね。レジィナさんも一緒に行ってくれてるし」
「いくら稼いでくるかしら」
「歌いに行ったわけじゃないよ」
「冒険譚より、賛美歌とかのほうが好まれる町ですから、苦戦するんじゃないですかねー」
グイズノーは今度は音楽堂のほうへ首をめぐらせる。まあ、レジィナとの二人組ならあちらは大丈夫だろう。ヒースとフィリスも大丈夫だろう。騒ぎ出したとしても、フィリスのあの迫力に、ヒースが勝てるとは思えない。一番問題なのは、多分自分たちだ、と彼は他人事のように理解した。スイフリーとアーチーは宿で待機だから、そういう意味ではまだ安全側だ、という判断もある。
「にゅ。じゃあ、俺らも行くにゅ。どっからいく?」
「そうですねー、音楽堂もギルドも、まあ、有名ですから外からちらっと見る感じで、町の主だったところをぐるーっと回ればいいんじゃないですかね? あとは皆さんが気になったところを見るとか。……パラサ、あなたはクレアさんからどこかお薦めとか伺ってないんですか? もしくは、彼女のお気に入りの場所とか」
「姉ちゃんがよく行ってた公園なら知ってるけど、それは俺と姉ちゃんの秘密にゅ。後は姉ちゃん、基本的に神殿と仕事場の往復だったからー」
「ああ、まあ、クレアさんならそうでしょうね」
期待は最初からしていないから、ダメージはほとんど無い。
「ではまあ、適当に歩きましょうか」
「でも変な感じにゅ。シーフの俺と、ラーダのグイズノーが、ファーズの案内……」
「そういう時は、考え方を変えるのですよ」
「にゅ?」
「スイフリーじゃなくて良かった」
「それはいえてるにゅ」
一方。
「すげ」
その建物にヒースは思わず呟く。ファンの見慣れた魔術師ギルドと比べて、随分趣の違う建物がそこにはあった。出かける前にパラサが「聖なる魔術師ギルド」などと、少し笑っていたのを思い出し、アレは確かに正しいことだったのだ、と大きく頷く。建物はそれほど華美というわけではない。が、やはり白を基調としたどっしりとした建物には、どことない威厳が有る。内部に入ってみると、利用する魔術師たちも、同じローブのはずなのにどこか折り目正しい格好をし、真面目な顔をして歩いている。掃除が行き届かない場所はなく、ステンドグラスから入ってくる光がこの上なく美しい。魔術師が神を信じることがあれば、普通それは知識の神ラーダである。が、ここではファリスを信じる以外の選択肢は考えられないのだろう、と直感的に理解する。自分の信仰は(まあ、かなりアバウトになっているとはいえ)ファンではやはり少々珍しい部類だったが、ここではスタンダード。何だか不思議な気分になる。まあもっとも、ここに居るものたちにいわせればきっと自分の信仰など、信仰
していないに等しい扱いだろうが。
「なるほど、あの宿でも規律に甘いほうだって意味が分かった」
「でしょ」
フィリスは少し苦笑する。彼女も多分、ここの空気は苦手なのだろう、とヒースは理解する。ただ、自分よりは多少なれているからまだ平気な顔をしているのだ。
「じゃあ、ちょっとあちこち見て回ってくる」
「あたしはここに居るから、終わったら声をかけてね」
フィリスはにっこりと笑うと、受付に近いテーブルに腰掛け、魔術書を開いた。
■次回はバス組。
ファーズよう知らんので、大体は妄想です。適当に流してもらえると嬉しいです。
今年の更新はこれがラストです。
来年は、どういう日取りで更新するか、まだ未定です。
とりあえず、泡ぽこは続きます。
へっぽこを書きたいです。
アチフィリも書きたいなあ。
ルージュを読み直して書くのとかもいいなあ。
まあ、希望言うだけは簡単ですから。
今年はおせわになりました。
来年も適当によろしくしたってください。
空は綺麗に晴れ、柔らかく吹いていく風は心地よい。
透明感のある青い空に、刷毛で塗ったような薄い雲。
光が溢れ、薄汚れたところが少ない町並みは、とても神々しかった。
「すばらしいです」
昨夜から一転、グレートソードを背負うイリーナの顔はいい感じに輝いている。見るもの全てにファリス様の栄光を感じ取り、背中には愛しいグレートソード。彼女は今、ともかく幸福感に満ち溢れていた。
「このすばらしさを、どう表現したらいいのか、全然思いつきません!」
「心に留めておけばいいのよ」
少し落ち着け、といわんばかりにマウナがイリーナの肩を軽く叩きながらため息をつく。
「でも、綺麗な街だよねー。工事とかしてないし」
ノリスがきょろきょろとあちこち見回す。
「落ち着いた良い町なんですがねー、ちょっと堅苦しいのが玉に瑕です」
案内役のグイズノーが苦笑し、パラサが大きく頷く。
「それより、ヒースがギルドで馬鹿やってないといいんだけど。いつものつもりでいったら大変よ」
マウナが魔術師ギルドのほうを見やる。
「いくら兄さんが態度の大きい、不遜な魔術師でも、そこまで馬鹿じゃないでしょう」
本人が居ないからとはいえ、なかなかに酷い。いつもどおりなのかもしれない。
「大丈夫にゅ。フィリス姉ちゃんが居るし……あのギルドで大騒ぎできたら、それはそれで大物にゅ」
「聖なる魔術師ギルドですからねー」
パラサとグイズノーの不思議な説明に、一行は首を傾げるしかない。
「バスはまあ、大丈夫だよね。レジィナさんも一緒に行ってくれてるし」
「いくら稼いでくるかしら」
「歌いに行ったわけじゃないよ」
「冒険譚より、賛美歌とかのほうが好まれる町ですから、苦戦するんじゃないですかねー」
グイズノーは今度は音楽堂のほうへ首をめぐらせる。まあ、レジィナとの二人組ならあちらは大丈夫だろう。ヒースとフィリスも大丈夫だろう。騒ぎ出したとしても、フィリスのあの迫力に、ヒースが勝てるとは思えない。一番問題なのは、多分自分たちだ、と彼は他人事のように理解した。スイフリーとアーチーは宿で待機だから、そういう意味ではまだ安全側だ、という判断もある。
「にゅ。じゃあ、俺らも行くにゅ。どっからいく?」
「そうですねー、音楽堂もギルドも、まあ、有名ですから外からちらっと見る感じで、町の主だったところをぐるーっと回ればいいんじゃないですかね? あとは皆さんが気になったところを見るとか。……パラサ、あなたはクレアさんからどこかお薦めとか伺ってないんですか? もしくは、彼女のお気に入りの場所とか」
「姉ちゃんがよく行ってた公園なら知ってるけど、それは俺と姉ちゃんの秘密にゅ。後は姉ちゃん、基本的に神殿と仕事場の往復だったからー」
「ああ、まあ、クレアさんならそうでしょうね」
期待は最初からしていないから、ダメージはほとんど無い。
「ではまあ、適当に歩きましょうか」
「でも変な感じにゅ。シーフの俺と、ラーダのグイズノーが、ファーズの案内……」
「そういう時は、考え方を変えるのですよ」
「にゅ?」
「スイフリーじゃなくて良かった」
「それはいえてるにゅ」
一方。
「すげ」
その建物にヒースは思わず呟く。ファンの見慣れた魔術師ギルドと比べて、随分趣の違う建物がそこにはあった。出かける前にパラサが「聖なる魔術師ギルド」などと、少し笑っていたのを思い出し、アレは確かに正しいことだったのだ、と大きく頷く。建物はそれほど華美というわけではない。が、やはり白を基調としたどっしりとした建物には、どことない威厳が有る。内部に入ってみると、利用する魔術師たちも、同じローブのはずなのにどこか折り目正しい格好をし、真面目な顔をして歩いている。掃除が行き届かない場所はなく、ステンドグラスから入ってくる光がこの上なく美しい。魔術師が神を信じることがあれば、普通それは知識の神ラーダである。が、ここではファリスを信じる以外の選択肢は考えられないのだろう、と直感的に理解する。自分の信仰は(まあ、かなりアバウトになっているとはいえ)ファンではやはり少々珍しい部類だったが、ここではスタンダード。何だか不思議な気分になる。まあもっとも、ここに居るものたちにいわせればきっと自分の信仰など、信仰
していないに等しい扱いだろうが。
「なるほど、あの宿でも規律に甘いほうだって意味が分かった」
「でしょ」
フィリスは少し苦笑する。彼女も多分、ここの空気は苦手なのだろう、とヒースは理解する。ただ、自分よりは多少なれているからまだ平気な顔をしているのだ。
「じゃあ、ちょっとあちこち見て回ってくる」
「あたしはここに居るから、終わったら声をかけてね」
フィリスはにっこりと笑うと、受付に近いテーブルに腰掛け、魔術書を開いた。
■次回はバス組。
ファーズよう知らんので、大体は妄想です。適当に流してもらえると嬉しいです。
今年の更新はこれがラストです。
来年は、どういう日取りで更新するか、まだ未定です。
とりあえず、泡ぽこは続きます。
へっぽこを書きたいです。
アチフィリも書きたいなあ。
ルージュを読み直して書くのとかもいいなあ。
まあ、希望言うだけは簡単ですから。
今年はおせわになりました。
来年も適当によろしくしたってください。
「説明を始めてよろしいですか?」
暫らく様子を見守っていたクレアが、どうやら事態は好転したりしないと感じ取って声をかける。
「いいともいいとも、進めてくれたまえ」
「えらっそーに」
まるで自分が招待されたかのようにヒースはふんぞり返ってクレアに先を促す。それに対してぼそりと感想を述べたのはエキュー。呆れてしまっている、というのが実際だ。
そんな二人の様子に動じることもなく、クレアは淡々と説明を始めた。
「法皇様なのですが、明日はご予定があるとのことで、面会は2日後となりました。当日はファリス神殿で王城からの使者を待ちます。当初はイリーナだけという予定でしたが、一緒に戦ったものも是非、とのことなので、皆さんも一緒に王城へ向かってください」
急展開に、オーファンの冒険者たちはどよめく。
「いいのかしら」
「向こうがいいっていうんだから、いいんじゃない?」
両頬に手をあてうろたえるマウナに、ノリスは軽い声で頷いてみせる。こういう状況でも自然体で居られる、というのはもしかしたら大物なのかもしれない。何も考えてないだけかもしれない。
「ワシはマイリー神官なのだが、いいんじゃろうか?」
「わたくしもラーダ神官ですけど、お会いしたことありますし、大丈夫でしょう」
流石のことに、ガルガドですら動揺した。グイズノーはそれを珍しい、と感じつつ、別に心配は要らないとつたえる。事実、問題は無かった。
確かにこの国はファリス以外の神官は暮らしにくいと言えなくもないが、だからといって被害をこうむることなども無い。
「新たなサーガを作れますな」
「できたら是非聞かせてください」
バスがニコニコと笑い、レジィナが嬉しそうな顔をする。
「さて、それで詳しい話は終わりか? そんなことはないだろう?」
スイフリーに先を促され、クレアは頷いてから続きを話す。
「王城へは私やアーチボルトさんたちは今回ついていけませんので、当日は使者の方々の指示にしたがってください。謁見はそう長い時間にはならないと思います。お言葉を賜ったら、再びファリス神殿へ戻ってきていただきます。それでおしまいです」
「割とあっけないもんなんだな」
「会えるだけですごいことなんだから、そんなこと言わないの!」
マウナはヒースの後頭部に、いつもどおり突込みを入れる。
「イリーナ、分かったか?」
未だ机に突っ伏したままのイリーナに、ヒースは呆れたような顔をしつつも確認のため声をかける。
「聞いてました。わかりました」
「グレートソードとファリスの一番偉い人と比べて、グレートソードのほうがえらいの?」
いつまでたっても浮上してこないイリーナに、ノリスは不思議そうに首をかくんと傾けて見せた。
「どっちも大切です」
「わりと欲張りにゅ」
へらりとパラサは笑う。
「パラサはそういう感じの二択ならどうなの?」
フィリスがにまっと笑う。
「どんな感じにゅ?」
「クレアと友愛団の一番偉い人なら、どっち?」
「そんなん、クレア姉ちゃんにゅ」
「お前、だから友愛団探せないんじゃないか?」
即答したパラサに、スイフリーは呆れた顔をする。
「いいんにゅ。だって俺、オラン所属だし」
「オランもアノスも、グラスランナーの移籍は気にしてられんのじゃないか? 事実、徴収に来ない」
「何の話ですか?」
「クレア姉ちゃんは知らなくていいんにゅ」
にぱりとパラサは笑って見せる。クレアは首を傾げたが、それ以上追求しなかった。追求してもかわされるのがオチだ。
「と、なると。明日は一日全員がフリーと言うことになるな。我々は2日後までかっきり何もなし。宿で待機か」
アーチボルトが強引に話を元に戻す。別に話が脱線するのは嫌いではないが、先にまとめることはまとめておいたほうがいい。
「じゃあ、明日は一日遊べるんだ。ファーズの観光だね!」
「浮かれるな、クソガキ」
「しかし、今度いつこちらへ来るか分からないのもまた事実。来るのに4ヶ月はかかりますからな。この際色々見ておくのは良いことです」
バスが大きく頷く。芸術家を自称する彼にとって、新しい街がどれだけ魅力的に見えるかなど、聞かなくても分かる。
「ファーズ観光ねえ」
スイフリーが不思議そうな顔をする。一体この街のどこに、見るべき価値が存在するのだろう。
「どこかお勧めとかありますか?」
マウナの質問に、一同は暫く考える。
「ファリス神殿は放っておいても見れるわけだし。王城にいたっては中に入れるのだし。……どこかな?」
「エライセンのおっちゃんの音楽堂は?」
「何か出し物があれば開いてるかも知れないが……基本的に外観見るだけにならないか?」
「やっぱりお饅頭屋さんじゃない?」
口々に述べていくが、そもそもファーズ在住というわけでもないので、基本的に自分たちが行く場所くらいしか知らない、というのが現状だ。
「音楽堂へは是非行ってみたいものですな」
バスが大きく頷く。
「アーティストとして、行かないわけにはいきません」
「俺様としてはやはり魔術師ギルドははずせまい!」
ヒースは「この溢れんばかりの知識がどこでも通用することを証明するのだー」などと言いながら深く何度も頷く。
「あちこち見て回りたいのは確かかも。お母さんたちにお土産買って行きたいし」
「マウナさんが行くなら、僕も行きます!」
エキューが素早く挙手する。
「では音楽堂班と魔術師ギルド班、それと散策班にわかれて案内すればいいですね」
グイズノーが話をまとめ、その日はそれで解散となった。
■金曜日にアップするのを忘れていました。
いま、ちょっと時間に余裕ができたので、アップしておきます。
気付けば、31日は月曜日なんですね。忘れないようにしないと。
暫らく様子を見守っていたクレアが、どうやら事態は好転したりしないと感じ取って声をかける。
「いいともいいとも、進めてくれたまえ」
「えらっそーに」
まるで自分が招待されたかのようにヒースはふんぞり返ってクレアに先を促す。それに対してぼそりと感想を述べたのはエキュー。呆れてしまっている、というのが実際だ。
そんな二人の様子に動じることもなく、クレアは淡々と説明を始めた。
「法皇様なのですが、明日はご予定があるとのことで、面会は2日後となりました。当日はファリス神殿で王城からの使者を待ちます。当初はイリーナだけという予定でしたが、一緒に戦ったものも是非、とのことなので、皆さんも一緒に王城へ向かってください」
急展開に、オーファンの冒険者たちはどよめく。
「いいのかしら」
「向こうがいいっていうんだから、いいんじゃない?」
両頬に手をあてうろたえるマウナに、ノリスは軽い声で頷いてみせる。こういう状況でも自然体で居られる、というのはもしかしたら大物なのかもしれない。何も考えてないだけかもしれない。
「ワシはマイリー神官なのだが、いいんじゃろうか?」
「わたくしもラーダ神官ですけど、お会いしたことありますし、大丈夫でしょう」
流石のことに、ガルガドですら動揺した。グイズノーはそれを珍しい、と感じつつ、別に心配は要らないとつたえる。事実、問題は無かった。
確かにこの国はファリス以外の神官は暮らしにくいと言えなくもないが、だからといって被害をこうむることなども無い。
「新たなサーガを作れますな」
「できたら是非聞かせてください」
バスがニコニコと笑い、レジィナが嬉しそうな顔をする。
「さて、それで詳しい話は終わりか? そんなことはないだろう?」
スイフリーに先を促され、クレアは頷いてから続きを話す。
「王城へは私やアーチボルトさんたちは今回ついていけませんので、当日は使者の方々の指示にしたがってください。謁見はそう長い時間にはならないと思います。お言葉を賜ったら、再びファリス神殿へ戻ってきていただきます。それでおしまいです」
「割とあっけないもんなんだな」
「会えるだけですごいことなんだから、そんなこと言わないの!」
マウナはヒースの後頭部に、いつもどおり突込みを入れる。
「イリーナ、分かったか?」
未だ机に突っ伏したままのイリーナに、ヒースは呆れたような顔をしつつも確認のため声をかける。
「聞いてました。わかりました」
「グレートソードとファリスの一番偉い人と比べて、グレートソードのほうがえらいの?」
いつまでたっても浮上してこないイリーナに、ノリスは不思議そうに首をかくんと傾けて見せた。
「どっちも大切です」
「わりと欲張りにゅ」
へらりとパラサは笑う。
「パラサはそういう感じの二択ならどうなの?」
フィリスがにまっと笑う。
「どんな感じにゅ?」
「クレアと友愛団の一番偉い人なら、どっち?」
「そんなん、クレア姉ちゃんにゅ」
「お前、だから友愛団探せないんじゃないか?」
即答したパラサに、スイフリーは呆れた顔をする。
「いいんにゅ。だって俺、オラン所属だし」
「オランもアノスも、グラスランナーの移籍は気にしてられんのじゃないか? 事実、徴収に来ない」
「何の話ですか?」
「クレア姉ちゃんは知らなくていいんにゅ」
にぱりとパラサは笑って見せる。クレアは首を傾げたが、それ以上追求しなかった。追求してもかわされるのがオチだ。
「と、なると。明日は一日全員がフリーと言うことになるな。我々は2日後までかっきり何もなし。宿で待機か」
アーチボルトが強引に話を元に戻す。別に話が脱線するのは嫌いではないが、先にまとめることはまとめておいたほうがいい。
「じゃあ、明日は一日遊べるんだ。ファーズの観光だね!」
「浮かれるな、クソガキ」
「しかし、今度いつこちらへ来るか分からないのもまた事実。来るのに4ヶ月はかかりますからな。この際色々見ておくのは良いことです」
バスが大きく頷く。芸術家を自称する彼にとって、新しい街がどれだけ魅力的に見えるかなど、聞かなくても分かる。
「ファーズ観光ねえ」
スイフリーが不思議そうな顔をする。一体この街のどこに、見るべき価値が存在するのだろう。
「どこかお勧めとかありますか?」
マウナの質問に、一同は暫く考える。
「ファリス神殿は放っておいても見れるわけだし。王城にいたっては中に入れるのだし。……どこかな?」
「エライセンのおっちゃんの音楽堂は?」
「何か出し物があれば開いてるかも知れないが……基本的に外観見るだけにならないか?」
「やっぱりお饅頭屋さんじゃない?」
口々に述べていくが、そもそもファーズ在住というわけでもないので、基本的に自分たちが行く場所くらいしか知らない、というのが現状だ。
「音楽堂へは是非行ってみたいものですな」
バスが大きく頷く。
「アーティストとして、行かないわけにはいきません」
「俺様としてはやはり魔術師ギルドははずせまい!」
ヒースは「この溢れんばかりの知識がどこでも通用することを証明するのだー」などと言いながら深く何度も頷く。
「あちこち見て回りたいのは確かかも。お母さんたちにお土産買って行きたいし」
「マウナさんが行くなら、僕も行きます!」
エキューが素早く挙手する。
「では音楽堂班と魔術師ギルド班、それと散策班にわかれて案内すればいいですね」
グイズノーが話をまとめ、その日はそれで解散となった。
■金曜日にアップするのを忘れていました。
いま、ちょっと時間に余裕ができたので、アップしておきます。
気付けば、31日は月曜日なんですね。忘れないようにしないと。