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『戦乙女よ、槍もて貫け!』
キラキラと光り輝く槍が7本。鋭さと速さを持ったそれは、飛んでいく軌跡をも美しく、光の尾を引き一気に相手に襲い掛かった。それぞれの体にそれは突き刺さり、偽物たちは次々と姿を保てなくなったのか宙に霧散していく。残ったのはガルガドとバスだけだったが、負けを悟ったのか同じように宙に消えていった。
「上々」
に、とスイフリーは再び笑う。手の中にあったはずの魔晶石はことごとく消えてなくなっている。マウナは本気で意識を失いたい気分になったが、この先まだ何があるか分からない。気を失うのはその後でもいいかもしれない。
「はとこ、コレ」
「後で返す」
「別にいいにゅ」
パラサから魔晶石を受け取り、スイフリーは数を確認してから無造作にそれをポケットにしまう。
「さて、と。偽物を退治したわけだが」
アーチボルトは一度大きく息を吐くとあたりを見渡した。
「手がかりは何も無し、か?」
「そうだなー」
偽物が消えたあたりをヒースは暫らく観察してから立ち上がる。
「何にも残んなかったからな」
「はとこのせい?」
「そうでもないだろ。普通なら死骸が残る」
首をかしげるパラサに、冷静にスイフリーが言う。自分のせいにされたらたまったものではない。
「魔法生物で、なんか特殊な感じのやつだったのかな?」
とりあえず、全員で首をかしげ。
「まあ、考えても仕方あるまい。分からないのだからな。グイズノーが居れば神のご加護で分かったかもしれんが、望めないのだから仕方ない」
アーチボルトは肩をすくめる。
「神のご加護といえば」
フィリスがスイフリーを見た。
「アンタの戦乙女の槍、なんかクレアのだけやたら威力強くなかった?」
「気のせいだろう」
「日ごろの恨み?」
「気のせいだ、と言ってるだろう。大体、なぜ神のご加護とか言う単語でそんな話題になるのだ」
苦い顔をするスイフリーに、フィリスはからかうような笑顔を向ける。
「べぇーつにィ? ただ戦闘前にクレアの名前を騙ったヤツに正義の鉄槌がどうのって言ってたのを思い出しただけよ? アンタって性格270度くらいひねくれねじれあがってるから、どうなのかなー? って」
「暇な女だなぁ」
呆れた顔をするスイフリーに、フィリスはまだまとわりつく。
「で、実際どうなの。日ごろの恨みなの? ねじくれあがった愛なの?」
「……黙秘する」
「つまんないわねー。いいや、好意的に解釈しとこっと」
鼻歌交じりにアーチボルトの元へ歩いていくフィリスを見て、スイフリーは大きくため息をつく。どうして自他関係なく恋愛話がすきなのだろうか。
面倒くさいだけだろうに、そんなの。
「とりあえず、先に進むとするか。まだ先はありそうだ」
部屋の北側の壁には、相変わらずのドアがあった。今回も罠も鍵も無く、あっさりと進むことができた。ドアの先は広い空間の端だったらしく、向かい側の壁が遠くに見える。空気は湿気が酷くなり、すこし息苦しくも感じられた。
どこからとも無く、脈打つような低い音が定期的に響いてくる。
「何だか嫌な感じがする場所ね」
マウナは不安げな顔であたりをうかがった。部屋の中は薄暗いが、見えないことも無い。
部屋は今までのどの部屋よりも広く、一番北の壁には何かがあるようだった。
それは彫像のように見えた。
奇妙な彫像だった。
大きな顔で、体は無い
目は閉じられていて、眠っているような顔をしている。
赤黒い壁と同じ色をしていて、同じ色の管も頭や頬に張り付いていた。
毛という概念は無いのか、管がある以外はつるんとしたつくりだ。
それは見たことのあるアンデットや悪魔などの持っていた禍々しさとは違うが、本能的に近寄りたくない、と感じさせるだけの何かを持っていた。
「嫌な感じ」
再び呟く。
少なくとも、あの彫像を作ったものは、正気ではなかっただろう。
「あ」
パラサが逆側の壁を指差した。あちら側にも扉があったらしく、ぞろぞろと数人の人間が入ってきたのが見えた。全部で7人。間違いない、分断されていた仲間たちだ。
「姉ちゃん!」
走ろうとするパラサの首根っこを今回もスイフリーが捕まえる。
「前例を忘れたか、はとこの子よ」
「向こうもおんなじこと思ってるみたいにゅ」
向こうにいる人間たちは武器に手をかけ、近寄るか否か思案中のようだった。
「どうにかして本物かどうか確認が取りたいところだな」
「マウナ、エキューに『好きよ』って言ってみてくれなさい」
「本物だったとき、あとどうしてくれるのよ、それ」
ヒースの提案に、マウナが冷たい声をあげる。
「やっぱりほくろ大作戦よ。ホントにクレアの秘密のほくろとか知らないの?」
「いい加減そういう思考から離れろ」
フィリスの宣言に、スイフリーはぐったりした声をあげる。
「そんなにほくろ大作戦がしたいなら、フィリスがレジィナを見てくればいいだろう」
「そんなの誰も楽しくないわよ」
「知らないわけじゃないのか」
「グイズノーあたりなら喜ぶかも知んないにゅ」
「あの破壊坊主を喜ばせてもねえ」
ぼそぼそと会話を続けていると、アーチボルトが咳払いをする。
「真面目に考えんかお前ら」
「真面目なのに」
「なお悪い」
口を尖らせたフィリスを、アーチボルトはぎろりと睨む。
「前と同じ設問でいいじゃない。ヒースが言ったやつ」
仕方ないから言いました、というような口調でフィリスが言う。
「じゃ、そうしてみるとするか」
ヒースは相手に声をかけるべく、大きく息を吸った。
■水曜日はラブシックの日、でーすーが。今日は泡ぽこです。
以下、言い訳。
毎回、ラブシックは話をアップしてから次の話を書き始めます(自転車操業的)
まあ、大体この辺でこの人たちにこういうことを話し合わせよう、くらいの指針に合わせて書いてるわけなんですけど、今回、1週間格闘しましたが、かけませんでした。
Aパターンで書き始めて、3回書き直しても気に食わず、仕方ないなあ、ということでBパターンに変更して書いてみたものの、唐突に増やした話だったのでどうも浮いている感が否めず。
こりゃだめだ、と。
というわけで、水曜更新は無理と判断、急遽泡ぽこにしました。
泡ぽこはねえ、まだまだストックがあるから大丈夫です。
友人たちには69話まで送信済みです(これも2日休んでラブシック考えてみたんだけどなあ……)
まあ、そういうことで今日はラブシックお休みということで。
杖を構えなおしてヒースが小声で言う。
「相手の正体が何かいまいち分からんにせよ、モンスターだよな? ということは、神聖魔法は使えないんじゃないか? あの記憶までコピーするドッペルちゃんでも神聖魔法は使えないんだぞ? 左右反転してくるような間抜けモンスターがそんな高度なことをしてくるとは俺様思わん」
「なるほど、一理ある。しかし言い切れるかどうかは別だな。わたしはやはりミュートだ。念には念を」
スイフリーは無造作に魔晶石をいくつか握り締める。これからどの程度の魔法が飛んでいくのか。いくつ魔晶石は残るのか、と考えるとマウナは軽いめまいを感じるが、命と比べれば安い。使わないで生きていけたらそれに越したことは、ないんだけど。
「わたしとパラサとイリーナで盾になろう。後方から魔法で援護してくれ」
その言葉と共にアーチボルトは剣を構えて前に出る。イリーナとパラサもそれに続いた。
「何で俺、アーチーに指図されてるにゅ?」
「深く考えるな」
「じゃあ、わたしは予定通り全員にミュートだ。黙らせちゃる。じゃ、始めるぞ」
言葉と共にスイフリーは片手を複雑に動かし、何事かの言葉を呟いた。
それは多分力ある言葉なのだろうが、その場に居るものには、ほぼその意味は分からない。唯一マウナだけがその言葉を理解できた。意外に優しい言葉でシルフに頼むんだな、というのがその感想だったが、別に口にしない。
「よーし、手ごたえありだ」
にやりとスイフリーが笑う。手の中の魔晶石は壊れるまでは行かなかったが、随分輝きが失せたようだった。相手の人数が人数だから仕方ないかもしれない。
「カンタマ~」
続いてパラサが指輪を掲げて間の抜けた声で言う。もう少し発動のためのいいキーワードはなかったのだろうか。じゃらじゃらと指にはまっている指輪がことごとくコモンルーンなのだとしたら、一つずつに気合入れたキーワードを考える暇がなかったのかもしれないが。……こういうことに頓着しないからこそお金持ちなのだろうか。
色々腑に落ちない。
無言のエキューがパラサに向けて槍を繰り出したが、パラサは軽い身のこなしでそれを避けた。ニカニカと笑っていることから、余裕だったのだろう。エキューはかなり腕が立つはずだから、パラサがすごいのか、偽物の精度が低いのか、そのどちらもなのか、いずれかの理由だろう。
その戦いを見つつ、グイズノーが後ずさって下がっていく。確かに、魔法が使えなければやることは無いだろう。
「結構混戦だな。俺様もう一回スリープクラウド! 何かいけそうな気がする!」
そう叫び、古代語とともに複雑な動きを再び。今度も白い雲が相手をうまく覆っていく。
ぎりぎり味方を範囲に入れていない辺り、コントロールは悪くないのだ。
雲が晴れると、レジィナが床に突っ伏していた。
「うおぉ!? 俺様久しぶりに成功! コレはもう勝ったも同然だ! どーんと行ってくれなさい!」
「寝てないほうが多いですよ」
「何気に一番強いレジィナを倒してるあたりワケが分からん」
「レジィナさんに化けたやつが気を抜いてたんじゃないの?」
「ふはははは! 今はそんな冷たい言葉も気にならんぜ!」
ふんぞり返るヒースを尻目に、イリーナがガルガドに斬りかかる。
「ガルガドさんの名を騙るなんて邪悪です!」
言葉とともに振り下ろされた剣は、ガルガドが避けたことも重なって空を切り、大きな音とともに床に突き刺さった。かなり深く。
「敵じゃなくて良かった。わたし一撃で死んでしまうわ」
スイフリーが大げさに肩をすくる。何気に青ざめている辺り、本気で恐ろしかったらしい。
「私、今できることなさそうだから、下がっておくわね」
マウナはそーっと全員の後ろに移動する。回復要員はほぼ彼女だけといえるから、コレは仕方の無い話だろう。
「混戦だけど、とりあえず」
フィリスは全員に向けてエネルギー・ボルトを使ったらしい。ちまちま削っていくつもりなのかもしれなかったが、意外にも偽ガルガドが苦しそうな顔をした。相手が気を抜いていたのか、それともフィリスの気合がすごかったのか、ともかくダメージがかなり抜けたのは間違いなさそうだった。
アーチボルトは対峙していたクレアに剣を振り下ろす。黄金の輝きをもった剣は、確実にクレアを捕らえ、きちんとダメージを与えたようだった。すこし苦痛に顔をゆがめる辺り、偽物も動揺を誘うために必死なのかもしれない。なんとなく苦い感覚。
ワイトのときとはまた違う罪悪感。
「しかし斬ることしかできんのだよ……」
言い訳を心で呟き、彼は反撃に備えることにする。前衛になっていた人間の死角を突くようにして、白い人影が走り出す。ノリスだ。彼は一直線にスイフリーめがけて走っていた。移動攻撃まではできないだろうが、次は確実に攻撃を繰り出してくるだろう。
「ごめーん、はとこ、自分で何とかするにゅー!」
「冗談じゃないぞー!!」
半笑いのような表情でスイフリーは思わず槍を構えなおした。戦士としての腕は悪くは無いが、持久力はほぼない。相手はかなりの腕前の盗賊、真面目に相手はしたくない。
その間に、ガルガドのイリーナに対する攻撃は空を切り、バスがレジィナを揺り起こした。レジィナは不機嫌そうな目でヒースを睨んでいる。
「うお!? 俺様うらまれてる!?」
「そりゃそうでしょうよ」
「ロックオンされるとかなりヤバイのですけれどもー!?」
ヒースもマウナも、接近戦の心得は無い。レジィナの攻撃を防げる自信など全くなかった。
「前衛ー! 何とかしろー!」
「やってますー!」
イリーナの答えに、かぶる金属音。それはアーチボルトがクレアの攻撃を防いだ音だった。
■戦闘描写はやっぱり苦手だわー。
淡々としててごめんなさいね。
人間多すぎ!!!
次は二ターン目です。
「だ、な。答えが返ってこなかったら確定だ」
アーチボルトの提案にスイフリーが頷く。
「答えられなかったら、すかさず遠慮なしにスリープ・クラウドを叩き込め」
「それ、ヒース兄さんに言ってるんですか?」
不思議そうにイリーナはスイフリーに尋ねる。彼は当たり前じゃないか、という顔で頷いた。
「ヒースはフィリスより先に行動できるのだから、当然だろう?」
「でもスリープクラウドは遺失魔法ですよ?」
「は?」
今度はスイフリーが首をかしげる。
「何を言っているのだ?」
「煙しかでないですよ?」
ますます不可解、という顔をするスイフリーと、床にのの字を書き始めるヒース。
「あたしもスリープクラウドは微妙に苦手だけど……」
フィリスが苦笑する。
「だよな!? スリープクラウド難しいよな!?」
しゅた、と立ち上がり元気を取り戻すヒースに、フィリスは曖昧に笑って見せる。前は結構失敗もしたが、最近は使わないから今も苦手かどうか、よく分からない。
「そちらだけで盛り上がらず、情報交換でもしようじゃありませんか」
グイズノーがのんびりした声をあげた。
「それもそうだな」
アーチボルトは重々しく頷いて見せた。
「ところでグイズノー」
「何ですか?」
「花いろいろ亭には今も行くのか?」
「何ですやぶからぼうに。今でも行きますよ? 見聞を広めに」
「アーチー、それ設問ミスだにゅ」
パラサがため息をつく。
「一体どうしたと言うのだヒース」
「おやっさん、何でも無いんだ。気にせんでくれなさい」
ヒースはかくかく、と手を振って見せた。
「もしかしてぼくらのこと疑ってるの?」
ノリスがかく、と首をかしげる。
「そんなこと有りません! 汝疑うこと無かれ、です! 疑ったりしません! ただ確かめてるだけです!」
「それ、疑ってるって言うよ」
レジィナが苦笑する。
「はとこが他人を見たら疑ってかかれって言ったにゅ」
パラサが笑って言うが、全員なんだか納得したようにスイフリーを見ただけだった。
「お前たちのわたしに対する評価はよーく分かった。後で覚えておけよ」
スイフリーが舌打ちをする。
「姉ちゃん?」
パラサはクレアを見た。
「怒んないにゅ?」
「なぜですか?」
「姉ちゃんははとこがあんなこと言ったら怒るにゅ」
パラサの目がす、と細くなった。
「お前誰、にゅ?」
言うや否や、パラサが武器を構える。
その言葉と動作が引き金となって、全員が戦闘態勢に入った。慌てて見せるのは最初から部屋に居た7人のほうである。
「ど、どうしたんですか? 仲間じゃないですか」
「仲間だったら答えてくれなさい。俺様の使い魔のBB1号は今どこにいるのかを」
「外に居るんじゃないの?」
ノリスの答えにヒースは口を吊り上げる。
「だから仲間じゃないというんだ、見てろ俺様渾身の一撃! スリープ・クラウドだ!」
「結局唱えるんだ」
「魔晶石つぶしていけよ」
「黙ってろ外野! 『万物の根源たるマナよ、眠りをいざなう雲となって、奴らに眠りを! スリープ・クラウド!』」
ヒースの振りかざした杖に、魔力が集まっていく。それはやがて形をとり、白い雲となって相手を包み込んだ。
「は! ぷすん! とか言わない!」
「後で覚えとけよイリーナ」
雲が晴れると、その場には依然全員が立っていた。ただし、全員が武器を構えている。その姿は、鏡に映したようにいつもと逆の構えになっている。
「効いてないじゃない、ホラ吹き魔術師!」
「スリープクラウドは難しいって言ってるだろう! 遺失魔法なんだぞ! 煙を出すだけでたいしたもんなんだからな!」
「まだそんなこというんですね」
「さて、と。本気で敵対だな、どうする」
「俺、偽物でもクレア姉ちゃんを殴るの嫌にゅう」
パラサが力ない声をだす。
「しかし偽クレアが本物程度の力を持ってるとかなりやばいぞ。レジィナなんか最悪だ」
「レジィナの相手はわたしかイリーナがするしかないだろうな」
アーチボルトがレジィナから目を離さずに言う。
「本当に戦っていいんですか?」
ためらうイリーナにスイフリーは笑う。
「本物をかたる悪を成敗するのだ、ファリスの少女よ。遠慮なく行け。プリーストからつぶしていこう。回復が厄介だ」
「こっちの二人しかいない回復役のうちの一人がイリーナなんだが」
「知ってたかスイフリー、戦士の能力としては、こちらでは君が三番手に強いんだぞ」
ヒースとアーチボルトの言葉に、スイフリーは素っ頓狂な声をあげる。
「はぁ!? 冗談じゃないぞ! わたしは前には出ないからな!」
「期待してないにゅ。俺、エキューの足止めする。カンタマとかいる?」
「イリーナと俺様は必要だな、俺様とりあえずもう一回スリープ・クラウドいってみる」
「じゃ、俺はカンタマ」
「では私はとりあえずミュートを唱えよう。レジィナ以外……6人か。魔晶石使いつぶしだな……赤字が雪だるま式じゃないか。まったく……どこに請求してやろうか。あとはシェイドでつぶしていくか、ジャベリンか。ともかく遠くからやる。何ならクレアをつぶす役はわたしがしてもいい」
「はとこ……日ごろの恨み?」
「なにを言うかはとこの子よ。コレはわたしの愛だ」
「はとこの何だって?」
低い声で言うパラサに、スイフリーはクレアから目を離さずに言う。
「クレアの名をかたる馬鹿者に、鉄槌を食らわしてやるのだ」
「でもなんとなく、やっぱり日ごろの恨みっぽいわよね」
フィリスは笑うと敵を見据える。
「向こうにアーチーがいなくてよかったわ」
■戦闘って苦手です。
戦略はたてられないし、描写は苦手で上手くないし、遊んだら遊んだでサイコロ運ないし(笑)
というわけで、うだうだ戦闘開始です。
あまり期待せずにどうぞ。
そういえば、思いついたので、へっぽこさんたち(というか、イリーナとヒースの小話)を書いてみました。
とてもじゃないけど、アップできないレベルのつまんない話になりました。
中々難しいです。
ではまた来週。
ドアの先にはまた細い通路が伸びていた。相変わらず赤黒い壁や床の色、這い回る管の様子は変わらない。通路は右手側にまっすぐ伸びていて、付近の壁には扉などはなかった。
「ずーっとまっすぐ、にゅ」
軽い足取りで歩きながらパラサは呟く。
「なんか、変な感じー」
「遺跡だとしても家だとしても妙なのは間違いないな」
スイフリーが背後から答える。少々尖った声であることから、多分イラついているのだろう、とパラサは判断した。からかうと面白いかもしれないが、今はそういう時ではないだろう。残念だ。
「それにしても、だ」
アーチボルトがため息交じりの声を出す。
「一体、これはいつまで続くのだろうな」
「出口があるといいですけど」
マウナの疲れた声。先が見えないことは随分心細い。
これが遺跡であれば、先が分からないのは普通であるから気にならない。しかしここは正体不明の屋敷、しかも自分たちは生贄であるかもしれないのだ。憂鬱にもなる。
「ドアはっけーん、にゅ」
先頭でパラサの声がした。見てみると、通路の行き止まりに近い左手側の壁に、ドアが一つだけあるのが見えた。相変わらず、赤黒くまがまがしい造りになっている。パラサはそういうデザインはあまり気にしないのか、すぐにドア近くにしゃがみこむ。しばらくいろいろドアを探り、最終的に「罠なし、かぎなし」という結論に達した事を伝えると、ドアを開けた。
中はだだっ広い。
今まで歩いてきた通路分、すべてが部屋の横幅になっているようだった。奥行きも結構ある。相変わらず床や天井が赤黒く、管が走っていることを別にすれば、開放感がなくもない。
「にゅ? 人がいる」
部屋には先客がいた。
いるのは7人。
背が低いがっしりしたのが2人、ほっそりした少年が2人、ずんぐりした男性1人、女性2人。
「姉ちゃん! グイズノーやレジィナ姉ちゃんもいるにゅ!」
走りよろうとしたパラサの首根っこをスイフリーが掴んだ。
「何するにゅ、はとこ」
スイフリーの目は、抗議の声をあげる近くのグラスランナーではなく、部屋の向こう側にいる仲間たちに向けられている。その瞳はあくまで鋭く、仲間を見るいつもの目とは違っていた。
何かをたくらんでいる時の目に似ている、とパラサは思う。
「良かった、みんな無事だったんだ」
「ノリスとバスしかいないのに……おやっさん胃に穴あいてないといいんだが」
イリーナやヒースがほっとした声を上げる。
「どう思う、アーチー」
スイフリーは向こうにいる仲間たちに目を向けたまま、近くにいるアーチボルトに声を掛けた。
「どう、とは?」
「あいつら、なぜここにいる? 屋敷は分断されてるんではないのか?」
「つながってたのかもしれませんよ?」
イリーナがスイフリーの声に首をかしげる。
「だとしたら、出口はないことになるぞ」
スイフリーはそこで声を張り上げる。
「どこからきた?」
問いかけに答えたのはグイズノーだった。
「どこって、それはあちら側からですよ」
グイズノーは左手を屋敷の向こう側に向ける。
「つながっているのか?」
「そうですよ、ふふ」
いつもどおりの、得体の知れない笑顔。
「だとしたら、出口はないのか?」
スイフリーの声は少しずつ低く、そして棘を持ち始める。
「そうですよ。もう出られないのですよ」
「そんな!」
グイズノーの返答にイリーナが思わず声を上げる。
スイフリーはそこで少し黙った。
そして視線を動かして、じっとレジィナとクレアを見る。
「何? スイフリー、何でじっと見てるの?」
レジィナが首を傾げて見せた。グレーとソードの柄が、右肩越しに見えた。
「どうしたのですか?」
クレアも不思議そうな顔をする。剣が右腰に下げられている。
「アーチー」
スイフリーの小声の呼びかけに、アーチーが視線だけスイフリーに向けた。
「右利きは、剣をどちら側に下げる?」
「そりゃ左だ」
「だよな」
「何の話?」
フィリスが会話に入る。
「レジィナもクレアも右利きだ。しかし、あそこにいる二人は剣を左利き用に下げている」
「にゅ? じゃあ?」
「アレは偽者、の可能性が高い。屋敷は一階も二階も、ほぼシンメトリーに造られていた。とすれば、あっちを歩いている本物たちも、わたしたちと同じように鏡の間を通った可能性がある。そこで姿を真似られたのかも知れん。あちらにも今頃、わたしたちの偽者があらわれているかも知れんな」
「姿を真似られたって、誰に?」
「そんなの知るか。記憶まで盗られているかどうかが分からないのが困りものだ。どうにかして本物か偽者か、確定できる事項はないものか」
「スイフリーはクレアの何か特別なこと知らないの?」
フィリスがにまりとした笑顔を向ける。
「特別?」
「服に隠れて見えないほくろの位置とか」
「……こういうときでも恋愛話ができる姉ちゃんは大物だと思うにゅ」
「エキューやノリスのことででも良いぞ、知らんのか?」
「そういわれても、俺様エキューやノリスの裸に興味の持ちようがないぞ」
「私も知りません……ヒース兄さんのなら知ってるんですけど」
「何? あんたたち、そういう仲なの?」
「子どものころ、着替えを見たとかそういう話です」
「つまんなーい」
「一体何をごちゃごちゃ話しているんですか?」
クレアが不思議そうな声を上げる。
「気にするな」
返事をして、全員目配せをする。
「さて、どうする?」
■とりあえず、1週間に複数回アップをしたらどういう感じか、確かめるために今週は「火曜日のラブシック、金曜日の泡ぽこ」の原則を変更してみました。
今週は月水金に泡ぽことラブシックをアップしてみます。
それでももう40回ですか。うだうだやってますな。
ところで、話はがらりと変わって。
友人たちには「私は話を送るから、クレアさんを描いてくれ」という約束とともに、この話を書いているはずなのですが、65回話を書いたのに(もう65話なのに、この話はまだ続いています。流石に終わりそうですが)1枚しかクレアさんはもらえていません。読み手が6人も居るのにね……。リクエストに答えてストーリーは寄り道してるのにね……。
そういう状況で、流石にクレアさん分(脳内萌えの原料)が足りなくなってきました。
友人達にはそれでも会うたびに、そしてメールを出すたびに「クレアさんを描け、目の色は茶色だ」と呪文のように言っているのですが、私はいつクレアさんを描いてもらえるのでしょう。
高月はひろくクレアさんを募集しています(笑)もう友人は頼れない。頼っても無駄だ(笑)
絵板にでも書いてやってください。
餌の一つもちらつかせなきゃ、動物は芸しませんって。
うう、クレアさん……。
最近落書きするとクレアさんばかり描いている高月より。
一方、屋敷の右側を行く一行も細い通路を歩いていく。赤黒い壁や床には、同じ色の管が這い回り、その表面はてらてらと濡れて光っている。
「不気味だよねー」
先頭を行くノリスはため息交じりに歩く。濡れた床に足を取られないよう、随分慎重な足取りだ。
「なんか、家っていうよりは遺跡に近くて、でも遺跡って言うより、生き物みたいだよね」
「生き物?」
ノリスの言葉に、レジィナが聞き返す。
「なんとなくね」
そんな会話が終わる頃には、右に折れる角が見えてくる。角の先はすぐにまた曲がり角になっていて、また右に折れているのが見えた。その角までの間、右手側に扉がある。扉もまた、壁や床と同じような色合いで、不気味なことこの上ない。
「あけてみる?」
エキューが振り返ってガルガドに尋ねる。
「そうだの。何がヒントになるか分からん、手がかりになりそうなものがあるかも知れんし、あけてみよう」
「じゃあ、罠とか見るね」
ノリスが扉の前にしゃがみこむ。
「うう、不気味だなあ」
呟きながら一通りチェックし、それから振り返る。
「罠はなさそう、鍵もかかってないと思う。……あける?」
「あけるという話でチェックしたんでしょう? あけてくださいね」
グイズノーが首をかたん、と傾けて見せた。
「触るの? やだなあ」
ノリスは口を尖らせたが、これも仕事と諦めたのかドアを開ける。
中は奥に長く、横幅のない細長い部屋で、がらんとしていて何もない。
「何にもなさそうだね」
「一応チェックしてみますかな」
バスとノリスだけが部屋に入って、ざっと中を確認する。
「何にもなさそう。隠し扉とかも」
「見落としはナイと思いますぞ」
二人の言葉に、ガルガドはいまいち信用置けなそうな顔をしたが、一つため息をつくと気を取り直したように頷いた。
「分かった、では先に進むとするかの」
見えていた角を右に曲がり、しばらく歩いていくと今度は左に曲がる角があった。一本道なので仕方なく道なりに曲がると、随分長い通路になった。相変わらず幅は狭いし、赤黒い壁の色は変わらないが、道が長い分、少しだけ開放感があった。
通路の左手側の壁には、手前と奥の二箇所にドアがある。チェックしてから二つとも中を確認する。両方大きな部屋になっていた。手前の部屋は何もないただ広いだけの空間であったが、奥側の部屋は、入って左手側が一面大きな鏡になっていて、向かい側の壁にドアがあるのがあるのが見える。
「あのドアが奥に続いてたらいいけど、続いてなかったら何か見落としたってことだよね」
レジィナが首をかしげる。
「そうでしょうね。しかし、わたくしたちはバスとノリスの証言を信じるしかないですよ」
「うん、まあ、そうだね」
話しながら、レジィナは壁一面の鏡を見る。
「大きいねー。お姉さんがこの前買ってた姿見も随分大きな鏡だったけど、そんなの比べ物にならない感じだね、見せてあげたかったかも」
「そうですね、フィリスなら持ち帰りたいとか言うかも知れませんね」
グイズノーが頷く。
「マウナだったら割ってでも持って帰ろうとするかもねー」
「そんな勿体無いこと、しないんじゃないかな?」
ノリスの感想に、エキューは首をかしげる。鏡は傷一つなく、継ぎ目もない。滑らかな表面に映る自分たちの姿は、どこまでもはっきりとしている。
「何か変わったところはないか?」
「無いと思いますが」
ガルガドは冷静にバスに尋ねてみる。バスは笑顔で首を傾げて見せた。その表情にガルガドは内心ため息をつく。どうしてこちら側には有能なシーフが居ないのだろう。いや、「こちら」どころの騒ぎではない。自分の冒険には、ずっと有能なシーフなど居ない。
「多少はマシになったのだがの……」
呟くと、鏡越しにクレアと眼が合った。彼女は不思議そうな顔で鏡を見ている。
「何か変わったことがあったかの?」
「いえ」
クレアは冷静な声で返答する。
「鏡で顔を見たことはありますけど、全身を見る機会はそうありませんから。……単純に、自分はこういう姿だったのか、と」
「そうか」
ガルガドにとって、人間は自分の好みとはずれる。その美醜の基準もよくわからない。しかし、どういう容貌が美しいとされるのかは分かる。その判断で言えば、彼女は美しいはずだ。その本人が、この様子ではさぞ周りのものは大変だっただろう、と推測するが口にはしない。
「この部屋も何もないね。先に進もう。通路があるだけ、どんどん行ってみよう」
「そうですね、それがいいでしょう」
エキューの言葉にグイズノーが頷く。
一行は再び進み始めた。
■バスがしゃべった!(笑)
さて、とりあえず今週は予定通り金曜日の泡ぽこ、ということにしてみました。
来週からはちょっと複数回アップにして、様子を見てみようかなと思ってます。
曜日などはまだ未定です。ラブシックがいつまでにかけるかにかかってます(笑)
昨日は発作的にARRをアップしてみました。まだまだ練習作ですけど。
業務連絡も含め、今週は毎日なにかしらアップしてました。びっくり。そういうこともあるよね。