泡だとかぽこだとか。時折ルージュとか。初めての方は「各カテゴリ説明」をお読みください。
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ノームによって地面にとらわれた不審者に、彼らは悠然と近づく。
捕まえられているのは、とりたてて目立ったところもない普通の男で、服装も至って普通の、町ですれ違ったとしたらすれ違った瞬間に顔を忘れてしまいそうな、そんな平凡な男だった。
「何してたにゅ」
「家があったから入ろうかと思っただけです! そしたらいきなり崩れだすでしょう? 怖くなってにげたんですよ!」
取り乱したように言う男に、スイフリーはしゃがみこんで顔を近づける。暫らくじっとその男を見つめた後、ふう、と大きなため息をついた。
「で?」
酷く冷静な声でスイフリーは男に先を促した。が、男のほうは「は?」と間の抜けた声を上げて首を傾げてみせる。いささか顔が引きつっているのは、もしかしたらスイフリーの不機嫌さを読み取ったからかもしれない。
「何があってこんな使われていない間道へ一人できた? 嘘をつくならもっと上手につくのだな」
「あの、道に迷って」
「付近に村や町はない。そんな軽装の冒険者も居ない」
スイフリーは立ち上がると、酷く冷徹な目を男に向けた。
「大方近くに仲間が居て、お前は様子を見に来た斥候というところだろう。わたしとしては正直に教えてくれたら、別にお前が逃げようがどこへ報告へ走ろうが、問題はないのだが」
「何のことだか」
男は困ったように愛想笑いを浮かべてみせる。
漸く、屋敷から脱出したほかのメンバーも彼らのところへやってきた。
「彼は誰なんですか?」
グイズノーが捕まったままの男を見て首をかしげる。
「わかんないけど、屋敷の外に居て逃げたからつかまえたにゅ」
パラサはに、と笑って見せる。
「不審ですね。とはいえ、よく捕まえられましたね」
「はとこが屋敷から出る前から、多分居るから警戒しろって言ってたから。俺は言われたとおり探しただけー」
パラサはにっかり笑ってグイズノーを見上げた。
「あの、どうして『居る』って思ったんですか?」
不思議そうな顔をしてマウナがスイフリーを見る。彼は男から目を離さずに、軽い調子で答えた。
「そもそもここへ来た理由を覚えているか?」
「何か、街道ががけ崩れにあってるって話を聞いたんだよね」
ノリスが軽い声で答える。
「そうだ。そして我々は『多分罠があるだろう』という予想を前提にこの間道へ回り、屋敷を発見し入ってえらい目にあった」
「逃げられてよかったよなー」
深く頷きながらヒースがしみじみと言う。それに数人が同調するかのように頷いた。
「さて、では、この間道にあった罠とはなんだったのか? この屋敷だ」
スイフリーは崩れ去って今はもう瓦礫と化した屋敷をみてから、また男に目を戻す。
「この屋敷はどういう経緯かしらないが、意思を持っていた。我々を、知識目当てに食おうとした」
「それとこの男がどう関係してくるの?」
レジィナはしゃがんで男の顔を覗き込む。全く見覚えがない顔だった。
「この屋敷は、間道に存在する大きな魔物だといって不都合あるまい。いつから存在するのかなんてことには興味はないが、屋敷を捨て、道を捨てないといけない程度には危険な代物だ。しかしこの間道は、普通の旅人には知られていない。事実我々も一度通ったときには見落としたのだからな。この道を使えば、エレミア・オラン方面に気取られず近寄れるという利点がある。……そんな道があるなら、普通つかいたいだろう?」
「そうだな、戦略上かなり有利だ」
アーチボルトが深く頷く。
「しかしこの道には厄介なものがある。そこへ我々というある意味厄介な客がやってきた。しかも、かなり重要な客を引き連れている」
そこでスイフリーは一度イリーナを見ると、視線を男に戻した。その瞳はどこまでも冷たく、冷徹なまでに無表情だ。
「基本的に、オラン以東にはこちらに関わってこないで欲しいらしいしな。西国のオーファンと東国のアノス、それぞれ大きな国が手を結ぶのは避けたいところだろう。オーファンへやったアノスの使者が戻ってこなかったら、アノスはどう考える? そしてアノスへ使者とともに旅立ったはずのオーファンの英雄が戻ってこなかったら、オーファンは? どちらも正しい情報が得られないのだから、憶測は悪いものにしかならない」
「どうして正しい情報が得られないの?」
「どちらの国でもない場所で、しかも普通知られていない場所で、われわれは姿を消すことになるからさ。誰もこんな間道、用もなく来ない」
ノリスの質問にスイフリーは即答で答える。それから男に目線を合わせる。
「つまりはこういうことだろう? 人食いの家に我々とイリーナたちが食われてしまえば、国同士の緊張が高まる。人食いの家が我々に壊されてしまえば、間道が使えるようになり、結果国にとっての利益になる。家と我々が相打ちしてくれたら一番ベターだが、どちらに転んでもフェイルセーフ。損はしないということだ」
「誰が?」
レジィナの能天気な質問に、スイフリーは呆れたような声で返事をした。
「あのお方に決まっているだろう。この男はどちらに転んだのか報告する役って所だろうよ」
「……」
捕まったままの男が、ふ、と諦めたように笑う。
「流石です。しかし分かったところで、ルキアル様が勝ったことには変わりありませんよね?」
「間道が使えると思ってるのか?」
スイフリーは呆れたような顔を男に向けた。
「我々が、ここを黙っているだけの納得できる何かがないかぎり、ここに間道があるのを言いふらすぞ。尾ひれつけて」
「脅しですか?」
「とんでもない。こういうのは話し合いと言うのだ」
「……」
「ただ、こちらには融通の利かないファリス神官が二人も居るから、ほぼ絶望的だと思いたまえ」
■種明かし、まだちょっとだけ続きます。
こんなオチだったのだが、どうですかね?
納得、行きますかね?
それにしてもスイフりゃん、超能力者的に言い当ててますな。うそくせぇ。
捕まえられているのは、とりたてて目立ったところもない普通の男で、服装も至って普通の、町ですれ違ったとしたらすれ違った瞬間に顔を忘れてしまいそうな、そんな平凡な男だった。
「何してたにゅ」
「家があったから入ろうかと思っただけです! そしたらいきなり崩れだすでしょう? 怖くなってにげたんですよ!」
取り乱したように言う男に、スイフリーはしゃがみこんで顔を近づける。暫らくじっとその男を見つめた後、ふう、と大きなため息をついた。
「で?」
酷く冷静な声でスイフリーは男に先を促した。が、男のほうは「は?」と間の抜けた声を上げて首を傾げてみせる。いささか顔が引きつっているのは、もしかしたらスイフリーの不機嫌さを読み取ったからかもしれない。
「何があってこんな使われていない間道へ一人できた? 嘘をつくならもっと上手につくのだな」
「あの、道に迷って」
「付近に村や町はない。そんな軽装の冒険者も居ない」
スイフリーは立ち上がると、酷く冷徹な目を男に向けた。
「大方近くに仲間が居て、お前は様子を見に来た斥候というところだろう。わたしとしては正直に教えてくれたら、別にお前が逃げようがどこへ報告へ走ろうが、問題はないのだが」
「何のことだか」
男は困ったように愛想笑いを浮かべてみせる。
漸く、屋敷から脱出したほかのメンバーも彼らのところへやってきた。
「彼は誰なんですか?」
グイズノーが捕まったままの男を見て首をかしげる。
「わかんないけど、屋敷の外に居て逃げたからつかまえたにゅ」
パラサはに、と笑って見せる。
「不審ですね。とはいえ、よく捕まえられましたね」
「はとこが屋敷から出る前から、多分居るから警戒しろって言ってたから。俺は言われたとおり探しただけー」
パラサはにっかり笑ってグイズノーを見上げた。
「あの、どうして『居る』って思ったんですか?」
不思議そうな顔をしてマウナがスイフリーを見る。彼は男から目を離さずに、軽い調子で答えた。
「そもそもここへ来た理由を覚えているか?」
「何か、街道ががけ崩れにあってるって話を聞いたんだよね」
ノリスが軽い声で答える。
「そうだ。そして我々は『多分罠があるだろう』という予想を前提にこの間道へ回り、屋敷を発見し入ってえらい目にあった」
「逃げられてよかったよなー」
深く頷きながらヒースがしみじみと言う。それに数人が同調するかのように頷いた。
「さて、では、この間道にあった罠とはなんだったのか? この屋敷だ」
スイフリーは崩れ去って今はもう瓦礫と化した屋敷をみてから、また男に目を戻す。
「この屋敷はどういう経緯かしらないが、意思を持っていた。我々を、知識目当てに食おうとした」
「それとこの男がどう関係してくるの?」
レジィナはしゃがんで男の顔を覗き込む。全く見覚えがない顔だった。
「この屋敷は、間道に存在する大きな魔物だといって不都合あるまい。いつから存在するのかなんてことには興味はないが、屋敷を捨て、道を捨てないといけない程度には危険な代物だ。しかしこの間道は、普通の旅人には知られていない。事実我々も一度通ったときには見落としたのだからな。この道を使えば、エレミア・オラン方面に気取られず近寄れるという利点がある。……そんな道があるなら、普通つかいたいだろう?」
「そうだな、戦略上かなり有利だ」
アーチボルトが深く頷く。
「しかしこの道には厄介なものがある。そこへ我々というある意味厄介な客がやってきた。しかも、かなり重要な客を引き連れている」
そこでスイフリーは一度イリーナを見ると、視線を男に戻した。その瞳はどこまでも冷たく、冷徹なまでに無表情だ。
「基本的に、オラン以東にはこちらに関わってこないで欲しいらしいしな。西国のオーファンと東国のアノス、それぞれ大きな国が手を結ぶのは避けたいところだろう。オーファンへやったアノスの使者が戻ってこなかったら、アノスはどう考える? そしてアノスへ使者とともに旅立ったはずのオーファンの英雄が戻ってこなかったら、オーファンは? どちらも正しい情報が得られないのだから、憶測は悪いものにしかならない」
「どうして正しい情報が得られないの?」
「どちらの国でもない場所で、しかも普通知られていない場所で、われわれは姿を消すことになるからさ。誰もこんな間道、用もなく来ない」
ノリスの質問にスイフリーは即答で答える。それから男に目線を合わせる。
「つまりはこういうことだろう? 人食いの家に我々とイリーナたちが食われてしまえば、国同士の緊張が高まる。人食いの家が我々に壊されてしまえば、間道が使えるようになり、結果国にとっての利益になる。家と我々が相打ちしてくれたら一番ベターだが、どちらに転んでもフェイルセーフ。損はしないということだ」
「誰が?」
レジィナの能天気な質問に、スイフリーは呆れたような声で返事をした。
「あのお方に決まっているだろう。この男はどちらに転んだのか報告する役って所だろうよ」
「……」
捕まったままの男が、ふ、と諦めたように笑う。
「流石です。しかし分かったところで、ルキアル様が勝ったことには変わりありませんよね?」
「間道が使えると思ってるのか?」
スイフリーは呆れたような顔を男に向けた。
「我々が、ここを黙っているだけの納得できる何かがないかぎり、ここに間道があるのを言いふらすぞ。尾ひれつけて」
「脅しですか?」
「とんでもない。こういうのは話し合いと言うのだ」
「……」
「ただ、こちらには融通の利かないファリス神官が二人も居るから、ほぼ絶望的だと思いたまえ」
■種明かし、まだちょっとだけ続きます。
こんなオチだったのだが、どうですかね?
納得、行きますかね?
それにしてもスイフりゃん、超能力者的に言い当ててますな。うそくせぇ。
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全員が一直線に階段に向かって走り出す。意思を失った建物は、その形を維持できなくなりつつあるのか、地震のように何度もその床を揺らす。
床だけではない。壁も天井も揺れているのだろう。まだ何かが降ってくるだとかはないが、ずっとこの状態が保たれているとは思えない。
スイフリーとパラサは先頭を走りつつ、先を見据える。
道に迷いはしない。何せ一本道だったのだ。しかし、その分屋敷の中を何度か折れ曲がる細く長い通路。距離だけはある。
「にゅう、結構出口遠い」
走りながらも、パラサは口を尖らせる。今のところ揺れに足を取られたりしないが、もしかしたら後続では誰かこけてるかもしれない。振り返ったりしないが。
「はとこの子よ、この通路の出口は正面玄関すぐだったな」
「そうにゅ」
「出たら即座に入り口を戦乙女の槍でぶち抜く。そうしたらすぐに外に出て、あたりを確認してくれ」
「? なんで?」
「わたしの勘があたれば、誰かが見張ってる」
「何人?」
「そこまでは分からんが……多分少数。とりあえず、足止めしてくれ」
「にゅう、俺に筋力勝負を頼むの!?」
「最悪追跡することになったら、わたしよりお前のほうが率が高い。……居ないに越したことはないんだが」
「保険保険」
「そういうことだ」
走りながらの会話はそこで終わる。互いの口元は、何かをたくらむような楽しげな笑みが浮かんでいた。
一行は、細い通路を順番に走る。歴然とした足の速さの差が出始めたが、どうすることもできない。屋敷は時折大きな揺れを起こす上に、絶えず小さく揺れている。本格的に屋敷が崩れるまで、大して時間はかからないだろう。
「うおお、俺様こんなところで死にたくないぞ! まだまだ輝ける人生が! 未来が! 俺様にはあるはずだー!」
「誰だってこんなところで死にたくないわよ!」
走りながら叫ぶヒースに、マウナはたまらず突っ込みを入れる。
とはいえ、その叫びが全員の気持ちを代弁していたことに間違いはない。
「大丈夫だ、必ずここから出られる!」
列の後ろのほうでアーチボルトが断言するように叫ぶ。
「そんな断言、どうしてできるんですか!?」
悲鳴めいた叫びがグイズノーから上がる。仲間に真っ先にこういうことを聞かれては、安心させるための断言も無意味というものだ。
「何でもいいからわたしを信じろ!」
「アーチーを信じてよかった事ってありましたっけ!?」
「あったようななかったような!」
「何でもいいから走れ!」
ついに屋敷の崩壊が背後から起こり始める。がらがらと大きな音を立てて崩れ始めた通路を背後に感じながら、冒険者たちはともかく走った。
先頭を行くスイフリーとパラサが、ついに隠し階段を駆け上がり正面玄関前に出る。
屋敷は何度も大きく揺れ、二階からは物が落ちてくる状況になっている。地下がつぶれ始めているのだから、あまり猶予は無い。正面玄関を覆っていた石の壁は、侵入者を食らうという意識が無くなったからか、もう今は消えてなくなっている。
「予想通りだ。準備はいいな? はとこの子よ」
「いつでもオッケーにゅ」
スイフリーは片手を複雑に動かしながら、パラサには絶対に理解できない言語を呟く。すぐにキラキラとしたものが現れ、槍の形となった。
「行くぞ」
「にゅ」
スイフリーから戦乙女の槍が玄関に向かって放たれる。純粋にして膨大なエネルギーをもつ槍は、轟音とともに玄関に穴を開けた。ソレを確認すると、パラサはその穴から一目散に外に向かって走り抜ける。
「脱出口を開いてくれたんですね!」
エキューの感激の声を軽く無視して、スイフリーも外に走り出る。外の雨はやみ、明るい日が差してきていた。
「はとこ!」
パラサの声が左手側からした。見れば何かを追っている。
「上出来だ、はとこの子よ」
スイフリーは口を吊り上げるようにして笑うと、すぐにノームにこう告げた。
「ちょっと逃げるやつを捕まえてくれないか」
■次回は種明かし的な何かを予定。
ソレが終われば、あとはアノス編。
床だけではない。壁も天井も揺れているのだろう。まだ何かが降ってくるだとかはないが、ずっとこの状態が保たれているとは思えない。
スイフリーとパラサは先頭を走りつつ、先を見据える。
道に迷いはしない。何せ一本道だったのだ。しかし、その分屋敷の中を何度か折れ曲がる細く長い通路。距離だけはある。
「にゅう、結構出口遠い」
走りながらも、パラサは口を尖らせる。今のところ揺れに足を取られたりしないが、もしかしたら後続では誰かこけてるかもしれない。振り返ったりしないが。
「はとこの子よ、この通路の出口は正面玄関すぐだったな」
「そうにゅ」
「出たら即座に入り口を戦乙女の槍でぶち抜く。そうしたらすぐに外に出て、あたりを確認してくれ」
「? なんで?」
「わたしの勘があたれば、誰かが見張ってる」
「何人?」
「そこまでは分からんが……多分少数。とりあえず、足止めしてくれ」
「にゅう、俺に筋力勝負を頼むの!?」
「最悪追跡することになったら、わたしよりお前のほうが率が高い。……居ないに越したことはないんだが」
「保険保険」
「そういうことだ」
走りながらの会話はそこで終わる。互いの口元は、何かをたくらむような楽しげな笑みが浮かんでいた。
一行は、細い通路を順番に走る。歴然とした足の速さの差が出始めたが、どうすることもできない。屋敷は時折大きな揺れを起こす上に、絶えず小さく揺れている。本格的に屋敷が崩れるまで、大して時間はかからないだろう。
「うおお、俺様こんなところで死にたくないぞ! まだまだ輝ける人生が! 未来が! 俺様にはあるはずだー!」
「誰だってこんなところで死にたくないわよ!」
走りながら叫ぶヒースに、マウナはたまらず突っ込みを入れる。
とはいえ、その叫びが全員の気持ちを代弁していたことに間違いはない。
「大丈夫だ、必ずここから出られる!」
列の後ろのほうでアーチボルトが断言するように叫ぶ。
「そんな断言、どうしてできるんですか!?」
悲鳴めいた叫びがグイズノーから上がる。仲間に真っ先にこういうことを聞かれては、安心させるための断言も無意味というものだ。
「何でもいいからわたしを信じろ!」
「アーチーを信じてよかった事ってありましたっけ!?」
「あったようななかったような!」
「何でもいいから走れ!」
ついに屋敷の崩壊が背後から起こり始める。がらがらと大きな音を立てて崩れ始めた通路を背後に感じながら、冒険者たちはともかく走った。
先頭を行くスイフリーとパラサが、ついに隠し階段を駆け上がり正面玄関前に出る。
屋敷は何度も大きく揺れ、二階からは物が落ちてくる状況になっている。地下がつぶれ始めているのだから、あまり猶予は無い。正面玄関を覆っていた石の壁は、侵入者を食らうという意識が無くなったからか、もう今は消えてなくなっている。
「予想通りだ。準備はいいな? はとこの子よ」
「いつでもオッケーにゅ」
スイフリーは片手を複雑に動かしながら、パラサには絶対に理解できない言語を呟く。すぐにキラキラとしたものが現れ、槍の形となった。
「行くぞ」
「にゅ」
スイフリーから戦乙女の槍が玄関に向かって放たれる。純粋にして膨大なエネルギーをもつ槍は、轟音とともに玄関に穴を開けた。ソレを確認すると、パラサはその穴から一目散に外に向かって走り抜ける。
「脱出口を開いてくれたんですね!」
エキューの感激の声を軽く無視して、スイフリーも外に走り出る。外の雨はやみ、明るい日が差してきていた。
「はとこ!」
パラサの声が左手側からした。見れば何かを追っている。
「上出来だ、はとこの子よ」
スイフリーは口を吊り上げるようにして笑うと、すぐにノームにこう告げた。
「ちょっと逃げるやつを捕まえてくれないか」
■次回は種明かし的な何かを予定。
ソレが終われば、あとはアノス編。
はっきりと見開かれた目は、確実に敵意を持ってこちらを見ていた。
顔の横から突き出た腕は、どちらも不思議な動きをしており、少なくとも関節という概念が人とは明らかに違うものであると認識できた。
「うわ、きっもちわるー」
ノリスがうえぇ、という声を出す。
「何者ですか!? 何だかとっても邪悪っぽいですけど!」
イリーナは壁の像を指差しつつ、ヒースを見上げる。
『喰わせろ』
彫像が呟く。
それは独特の響きを持った下位古代語。
「兄さん、今なんか彫像が喋りました! なんていったんですか!?」
「食わせろ、だとよ」
「邪悪ですね邪悪なんですね」
「今更邪悪じゃないってこたぁないだろうが……」
「攻撃されてるし」
マウナの声に、イリーナは深く頷く。
「汝は邪悪なりィっ!」
びしり、と彫像を指差し、イリーナは宣言する。
「はとこ、打ちひしがれちゃだめにゅ?」
「打ちひしがれるか!」
スイフリーは苦々しい顔をしつつ、彫像を見る。
「喰わせろっていうのは、やっぱりわたしたちなのだろうな」
『喰わせろ 喰わせろぉ! その知識を喰わせろぉ!!!』
彫像は再び叫ぶ。
「兄さんアレはなんなんですか!?」
「ホラを吹きたいところをぐっとこらえて答えてやろう。俺様のすっばらしい知識の泉から検索した結果、奴は変種のハウスイミテーターだ! 腕は部屋を自由自在に動き回るが、魔法はないだろう! なぜなら発動体がないから!」
「何か嘘くさいです」
「ヒースが分かっているなら、インスピレーションは必要ありませんね。あれはクラッチョペレペレですよ」
「まて、腕は自由に動くのか!?」
グイズノーの言葉など聞きもせず、スイフリーが悲鳴めいた声を上げる。
「部屋中動くぞー!」
「なぜ勝ち誇る」
どこか嬉しそうな、楽しそうな声でやけくそ気味に答えるヒースに、ガルガドは突っ込みつつも戦斧を構える。
「あかん、あんなのに捕まったらわたし死んでしまう。わたしは消えるからな」
スイフリーは宣言するとすぐに姿を隠す。
「にゅう、じゃあ、鎧の薄い人にコモンルーンでプロテクション、にゅ」
パラサが合言葉を唱えると、数人の体をぼんやりと魔法の光が包み込む。
「サーンキュー! とはいえ、ボクは前にでるより、ここに居てマウナさんたちを守るほうがいいよね。遠距離からジャベリン飛ばせるし」
エキューが腕を動かしながら何事か唱えると、頭上にキラキラとした槍を持った戦乙女が現れる。それは一直線に彫像へ向かって飛ぶと、そのまま炸裂した。
「手ごたえあんまりないなあ。結構硬い」
エキューは舌打ちしそうな口調で言う。
「さて、わたくしは待機です。怪我をしたら言ってくださいねー」
グイズノーはいつの間にかちゃっかり全員の一番内側に移動してそんなことを言う。
「俺様格好良く魔法攻撃!」
「スリープクラウドはダメですよ」
「そんなはなから効かない魔法は使わない! あ! コレはあくまであのイミテーターに効かないという意味であって俺様がだめってことじゃないからな!」
「さっさとする!」
イリーナとマウナにそれぞれ言われて、微妙に部屋の隅でのの字を書きたい気分に駆られたが、そこはぐっとこらえて。
「ライトニング!」
杖からほとばしった雷は一直線に光と轟音を撒き散らしながら彫像にぶつかる。
「やっぱりあんまり効いてなさそうです!」
「硬い、硬いぞイミテーター! ジャベリンもライトニングもそんなに効き目なしかよ!」
悲鳴めいた声をあげ、ヒースは彫像を見る。
動きが遅いのだけが救いだが、まだ相手の力はほとんど分からない。スイフリーじゃないが、あんな腕の攻撃が何度も来たら、無事な人間はそうでないかもしれない。
「何か弱点とかないのかなあ」
マウナは眉をよせ、彫像を見る。
「弱点とか関係ありません! 斬るのみです!」
イリーナがその大きな剣を構え、据わった目で彫像を睨む。
そのまま、彫像に突進。
「あ! 馬鹿! そんな無防備な!」
「汝はああああ邪悪なりぃいいい!!!」
叫び声とともに振り下ろされたグレートソードは、深々と彫像に突き刺さり、そのまま重力に従うように下に振り下ろされる。その刃は、まるで素振りをしたかのように、何の障害も無くそれを二つに切り裂いた。
「全然出番がなかった」
「いいことじゃない」
呆然とするアーチボルトに、フィリスが肩をすくめて見せたとき。
「あ!」
叫び声とともに、スイフリーが姿を現す。
今や彫像は見事に真っ二つになり、腕は力なく床に倒れ付している。
「どーしたの?」
ノリスの声にスイフリーが彼を見る。
「アレはつまりハウスイミテーターだったんだろう? ということは、ここはどこだ」
「え? 体の中じゃない?」
「つまり、意思を持ちここを維持してたものがなくなったらどうなる!」
「そりゃ、家は壊れるよね」
ノリスの答えに、一瞬あたりは沈黙に包まれた。
「逃げるにゅ」
「逃げるってどこへ! 家は出口ナシなんだぞ!?」
「ともかく上だ!」
■クリティカルっぽさが出てないな(笑)
イリーナはね、クリティカルだったんですよ。
顔の横から突き出た腕は、どちらも不思議な動きをしており、少なくとも関節という概念が人とは明らかに違うものであると認識できた。
「うわ、きっもちわるー」
ノリスがうえぇ、という声を出す。
「何者ですか!? 何だかとっても邪悪っぽいですけど!」
イリーナは壁の像を指差しつつ、ヒースを見上げる。
『喰わせろ』
彫像が呟く。
それは独特の響きを持った下位古代語。
「兄さん、今なんか彫像が喋りました! なんていったんですか!?」
「食わせろ、だとよ」
「邪悪ですね邪悪なんですね」
「今更邪悪じゃないってこたぁないだろうが……」
「攻撃されてるし」
マウナの声に、イリーナは深く頷く。
「汝は邪悪なりィっ!」
びしり、と彫像を指差し、イリーナは宣言する。
「はとこ、打ちひしがれちゃだめにゅ?」
「打ちひしがれるか!」
スイフリーは苦々しい顔をしつつ、彫像を見る。
「喰わせろっていうのは、やっぱりわたしたちなのだろうな」
『喰わせろ 喰わせろぉ! その知識を喰わせろぉ!!!』
彫像は再び叫ぶ。
「兄さんアレはなんなんですか!?」
「ホラを吹きたいところをぐっとこらえて答えてやろう。俺様のすっばらしい知識の泉から検索した結果、奴は変種のハウスイミテーターだ! 腕は部屋を自由自在に動き回るが、魔法はないだろう! なぜなら発動体がないから!」
「何か嘘くさいです」
「ヒースが分かっているなら、インスピレーションは必要ありませんね。あれはクラッチョペレペレですよ」
「まて、腕は自由に動くのか!?」
グイズノーの言葉など聞きもせず、スイフリーが悲鳴めいた声を上げる。
「部屋中動くぞー!」
「なぜ勝ち誇る」
どこか嬉しそうな、楽しそうな声でやけくそ気味に答えるヒースに、ガルガドは突っ込みつつも戦斧を構える。
「あかん、あんなのに捕まったらわたし死んでしまう。わたしは消えるからな」
スイフリーは宣言するとすぐに姿を隠す。
「にゅう、じゃあ、鎧の薄い人にコモンルーンでプロテクション、にゅ」
パラサが合言葉を唱えると、数人の体をぼんやりと魔法の光が包み込む。
「サーンキュー! とはいえ、ボクは前にでるより、ここに居てマウナさんたちを守るほうがいいよね。遠距離からジャベリン飛ばせるし」
エキューが腕を動かしながら何事か唱えると、頭上にキラキラとした槍を持った戦乙女が現れる。それは一直線に彫像へ向かって飛ぶと、そのまま炸裂した。
「手ごたえあんまりないなあ。結構硬い」
エキューは舌打ちしそうな口調で言う。
「さて、わたくしは待機です。怪我をしたら言ってくださいねー」
グイズノーはいつの間にかちゃっかり全員の一番内側に移動してそんなことを言う。
「俺様格好良く魔法攻撃!」
「スリープクラウドはダメですよ」
「そんなはなから効かない魔法は使わない! あ! コレはあくまであのイミテーターに効かないという意味であって俺様がだめってことじゃないからな!」
「さっさとする!」
イリーナとマウナにそれぞれ言われて、微妙に部屋の隅でのの字を書きたい気分に駆られたが、そこはぐっとこらえて。
「ライトニング!」
杖からほとばしった雷は一直線に光と轟音を撒き散らしながら彫像にぶつかる。
「やっぱりあんまり効いてなさそうです!」
「硬い、硬いぞイミテーター! ジャベリンもライトニングもそんなに効き目なしかよ!」
悲鳴めいた声をあげ、ヒースは彫像を見る。
動きが遅いのだけが救いだが、まだ相手の力はほとんど分からない。スイフリーじゃないが、あんな腕の攻撃が何度も来たら、無事な人間はそうでないかもしれない。
「何か弱点とかないのかなあ」
マウナは眉をよせ、彫像を見る。
「弱点とか関係ありません! 斬るのみです!」
イリーナがその大きな剣を構え、据わった目で彫像を睨む。
そのまま、彫像に突進。
「あ! 馬鹿! そんな無防備な!」
「汝はああああ邪悪なりぃいいい!!!」
叫び声とともに振り下ろされたグレートソードは、深々と彫像に突き刺さり、そのまま重力に従うように下に振り下ろされる。その刃は、まるで素振りをしたかのように、何の障害も無くそれを二つに切り裂いた。
「全然出番がなかった」
「いいことじゃない」
呆然とするアーチボルトに、フィリスが肩をすくめて見せたとき。
「あ!」
叫び声とともに、スイフリーが姿を現す。
今や彫像は見事に真っ二つになり、腕は力なく床に倒れ付している。
「どーしたの?」
ノリスの声にスイフリーが彼を見る。
「アレはつまりハウスイミテーターだったんだろう? ということは、ここはどこだ」
「え? 体の中じゃない?」
「つまり、意思を持ちここを維持してたものがなくなったらどうなる!」
「そりゃ、家は壊れるよね」
ノリスの答えに、一瞬あたりは沈黙に包まれた。
「逃げるにゅ」
「逃げるってどこへ! 家は出口ナシなんだぞ!?」
「ともかく上だ!」
■クリティカルっぽさが出てないな(笑)
イリーナはね、クリティカルだったんですよ。
「何って、ピアスにゅ」
パラサがこともなげに答える間に、スイフリーが立ち上がる。それを見て、もうしゃがんでいる必要は無いと判断したのか、クレアも立ち上がった。
「このピアス、俺があげたのにゅ。ちょっと変わったデザインなん。裏っかわにも飾りがあるにゅ」
「わたしはそれを知っていただけだ」
「何で知ってんの?」
レジィナの問いかけに、スイフリーは肩をすくめた。
「買い物につきあわされ、延々悩むはとこの子に何度か蹴りを入れたから」
「蹴ったんですか」
「注目すべきはそこではないな」
じとっとした目つきでスイフリーを見たクレアに、彼は反省した様子もなく言い放つ。
「さて、我々を本物だと思ってくれるなら話は早いのだが。我々もあちらの面子とは一度も別行動をしなかった。全員本物だとわたしとはとこの子が保障してもいい」
「うん、してもいいにゅ」
「が、それでも不安なら、あちらに居るイリーナにでもセンス・イービルをかければいいだろう。ファのつく神の神官だ、信用するに足りるだろ?」
「ファラリスもファのつく神ですよ」
笑いながら言うグイズノーの足を思いっきりふんずけて、スイフリーはクレアを見上げる。
「いえ、唱えるまでもないでしょう。そういうことを言うあなたが偽物だとはおもえませんし」
「あはははは、偽物のスイフリー、気持ち悪かったもんね!」
能天気にノリスが笑う。
「一体そっちの偽物のわたしは何を言ったのだ」
「知らないほうがいいですよ」
ふふふ、と含み笑いをするグイズノーを、スイフリーは暫らく睨んでいたが、やがて諦めたように息を吐いた。
「さて、だが問題がある」
「そうだの」
ガルガドが頷いた。
「つまり出口がないということだ」
「え?」
ガルガドの言葉に、ノリスがぽかんとした顔をする。
「ずっと一本道を歩いてきたからな。そちらも似たようなものだろう?」
「多分造りはシンメトリだな」
全員が集まって、途方にくれる。
「どうしたもんだ? やっぱり上に戻ってイリーナあたりに壁をガツンと壊してもらうか?」
「ヒース兄さんたちが魔法で壊すほうが早くないですか?」
「俺様弁償する金がない」
「私だってそうですよ」
肩をすくめて見せるヒースに、イリーナも思わずため息をつく。
「支払い義務が出るかどうかだよな」
「ばれなきゃ出ない」
「そこを思わず名乗り出ちゃうのがイリーナよ」
払う気などさらさらない、というスイフリーの発言に、マウナは思わず答える。この人たちの経済観念と自分の経済観念がかみ合うことは一生ないだろう、と思う。ハーフエルフの一生は長いが、絶対にかみ合わない。
「?」
ふと、アーチボルトは視線を感じたような気がして振り返る。同じようにパラサとヒースも同じ方向を見ていた。
「どうしたの?」
「いや、何か……視線を感じたような」
「気持ち悪いこといわないでよね」
そちらの壁には、あの不気味な彫像以外何もない。眉を寄せ、フィリスはヒースを見る。
その目はあくまでも抗議の色をしている。
「俺も感じたにゅ」
パラサがフィリスを見上げたのと同時に、アーチボルトが叫んだ。
「伏せろ!」
「え!?」
不意に叫ばれたとしても、そこは長い間生き残ってきた冒険者。全員が上手く伏せる。その上を、強烈な空気の刃が切りさいていく。
「何今の?」
「何だか分からんがともかく敵だ」
身を起こして最初に見えたもの。
それは目を開いた不気味な彫像の姿。
いつの間にか、巨大な手が顔の横から二本、突き出している。
「総大将のお出まし、か」
■もう月曜ですかー。速いですなー。
これを送信した日も世界陸上だったようです。
世界陸上みてるかー!!
今日も言うぞ(笑)
今日は男子200の決勝があるぞ!
男子棒高飛びもあるぞ!
見れ!
だ、そうです。楽しかったなあ、世界陸上。
そして話には全く関係ないのであった。
■今週はラブシック大丈夫です。かけました。
パラサがこともなげに答える間に、スイフリーが立ち上がる。それを見て、もうしゃがんでいる必要は無いと判断したのか、クレアも立ち上がった。
「このピアス、俺があげたのにゅ。ちょっと変わったデザインなん。裏っかわにも飾りがあるにゅ」
「わたしはそれを知っていただけだ」
「何で知ってんの?」
レジィナの問いかけに、スイフリーは肩をすくめた。
「買い物につきあわされ、延々悩むはとこの子に何度か蹴りを入れたから」
「蹴ったんですか」
「注目すべきはそこではないな」
じとっとした目つきでスイフリーを見たクレアに、彼は反省した様子もなく言い放つ。
「さて、我々を本物だと思ってくれるなら話は早いのだが。我々もあちらの面子とは一度も別行動をしなかった。全員本物だとわたしとはとこの子が保障してもいい」
「うん、してもいいにゅ」
「が、それでも不安なら、あちらに居るイリーナにでもセンス・イービルをかければいいだろう。ファのつく神の神官だ、信用するに足りるだろ?」
「ファラリスもファのつく神ですよ」
笑いながら言うグイズノーの足を思いっきりふんずけて、スイフリーはクレアを見上げる。
「いえ、唱えるまでもないでしょう。そういうことを言うあなたが偽物だとはおもえませんし」
「あはははは、偽物のスイフリー、気持ち悪かったもんね!」
能天気にノリスが笑う。
「一体そっちの偽物のわたしは何を言ったのだ」
「知らないほうがいいですよ」
ふふふ、と含み笑いをするグイズノーを、スイフリーは暫らく睨んでいたが、やがて諦めたように息を吐いた。
「さて、だが問題がある」
「そうだの」
ガルガドが頷いた。
「つまり出口がないということだ」
「え?」
ガルガドの言葉に、ノリスがぽかんとした顔をする。
「ずっと一本道を歩いてきたからな。そちらも似たようなものだろう?」
「多分造りはシンメトリだな」
全員が集まって、途方にくれる。
「どうしたもんだ? やっぱり上に戻ってイリーナあたりに壁をガツンと壊してもらうか?」
「ヒース兄さんたちが魔法で壊すほうが早くないですか?」
「俺様弁償する金がない」
「私だってそうですよ」
肩をすくめて見せるヒースに、イリーナも思わずため息をつく。
「支払い義務が出るかどうかだよな」
「ばれなきゃ出ない」
「そこを思わず名乗り出ちゃうのがイリーナよ」
払う気などさらさらない、というスイフリーの発言に、マウナは思わず答える。この人たちの経済観念と自分の経済観念がかみ合うことは一生ないだろう、と思う。ハーフエルフの一生は長いが、絶対にかみ合わない。
「?」
ふと、アーチボルトは視線を感じたような気がして振り返る。同じようにパラサとヒースも同じ方向を見ていた。
「どうしたの?」
「いや、何か……視線を感じたような」
「気持ち悪いこといわないでよね」
そちらの壁には、あの不気味な彫像以外何もない。眉を寄せ、フィリスはヒースを見る。
その目はあくまでも抗議の色をしている。
「俺も感じたにゅ」
パラサがフィリスを見上げたのと同時に、アーチボルトが叫んだ。
「伏せろ!」
「え!?」
不意に叫ばれたとしても、そこは長い間生き残ってきた冒険者。全員が上手く伏せる。その上を、強烈な空気の刃が切りさいていく。
「何今の?」
「何だか分からんがともかく敵だ」
身を起こして最初に見えたもの。
それは目を開いた不気味な彫像の姿。
いつの間にか、巨大な手が顔の横から二本、突き出している。
「総大将のお出まし、か」
■もう月曜ですかー。速いですなー。
これを送信した日も世界陸上だったようです。
世界陸上みてるかー!!
今日も言うぞ(笑)
今日は男子200の決勝があるぞ!
男子棒高飛びもあるぞ!
見れ!
だ、そうです。楽しかったなあ、世界陸上。
そして話には全く関係ないのであった。
■今週はラブシック大丈夫です。かけました。
「お互い何だか疑心暗鬼っぽいから、俺様ていあーん! お互い知ってることをクイズで出し合おう!」
ヒースは向こう側に固まっているガルガドたちに声をかける。
不審そうな目で彼らはこちらを見た。すこしヒースはひるんだが、後には引けない。
「さて問題です! 俺様の可愛い使い魔、BB1号は現在どうしてるでしょう!」
半ば自棄になって声を張り上げる。
「何言ってんのヒース。BB1号は使い魔じゃないだろ?」
かく、とエキューが首を横に傾ける。
「よーし、少なくともエキューは本物と見てよし、だ」
小声でヒースは報告すると、小さくガッツポーズをとる。
「効率悪……」
パラサの呟きは、聞こえない振りをする。
「ていうか、そんな初歩間違うなんて、ヒース実はヒースじゃないでしょ」
ノリスが疑いの眼差しを向ける。
「おーっと、俺様ピンチ?」
「ヒースが疑われたら芋蔓式に私たちも疑われるんじゃないの?」
マウナは困った顔をしてガルガドたちを見る。
疑いたくはない。
本物みたいに見える。
「マウナさんがボクに熱視線を!」
「……エキューは本物だと思って間違いなさそうね」
思わずうんざり。
「まとまってるんだから、もう全員本物でいいんじゃない?」
面倒になってきたのか、フィリスがため息をつく。
「クレアが本物かどうか確かめよう」
不意にスイフリーが口を開く。
「何で?」
「アレは多少マシになったとはいえ、融通の利かない馬鹿正直なあのファのつく神の神官だ」
「姉ちゃんになんてこと言うにゅ!」
「未だファリスと言えんのか」
じと目になるパラサやアーチボルトのことなど気にせず、スイフリーは続ける。
「アレが他のものと別行動をとらなかった、と証言すればそれは信じていいだろう。全員本物だ」
「なるほどな」
アーチボルトが頷く。
「で? 本物かどうか、どうやって見極めるつもり?」
楽しげな目でフィリスがスイフリーを見る。
彼は肩をすくめた。
「ほくろ大作戦ではないが、似たような方法を思いついた。行くぞはとこの子よ。二人で確認する」
「俺も?」
「そうだ。フィリスとヒースは念のためスリープクラウドの準備をしておいてくれ。偽者だと判断したら合図するから、即魔法を叩き込んでくれ」
「わかった」
あっさり頷くフィリスに、マウナは慌てる。
「それって、スイフリーさんとパラサさんにも呪文が」
「俺、よっぽどのことがなかったら魔法怖くないにゅ」
「わたしはクラウド系の魔法は全然怖くない」
に、と二人は笑う。
「では行くぞ、はとこの子よ」
無防備に歩いてきたスイフリーとパラサに、レジィナとグイズノー、クレアははなんとなく二人は本物なのだろう、という感覚を覚えた。が、それをガルガドたちに上手く伝えられないうちに二人はこちらにたどり着いてしまった。
足が速すぎなのだ。
「姉ちゃん! ひさしぶりにゅ」
ニコニコ顔のパラサがクレアにまとわりつく。いつものことだからクレアはあまり気に留めないようだった。
「何だか久しぶりな気がしますね」
グイズノーの挨拶に適当に返事を返しつつ、スイフリーはクレアを見た。
「ちょっとしゃがめ」
「?」
クレアは不思議そうな顔をしたが、すぐにしゃがんだ。スイフリーも同じようにしゃがみ、パラサはクレアの傍に立つ。
「何を始めるの?」
レジィナは不思議そうに、ノリスは興味津々な顔をしてなりゆきを見守る。
「いくつか質問させてくれ」
「何でしょう」
「壁が鏡になった部屋はあったか」
「ありました」
「その時、どうやって映った」
「どう、とは?」
「近くで映ったか、遠目だったか、体のどの辺りを映したか」
「ちょっと遠目でした。全身うつしました。そうですね、鏡に向かって、正面から。自分はこういう姿だったのか、と思いました」
「後ろは映してないか?」
「回ったりはしませんでしたから」
スイフリーは頷いた。
「あっち見ろ」
指で左側を指す。クレアはそちらを見た。
「そのままストップ」
言うと、耳の辺りを覗き込む。
「はとこの子も見ろ」
「あ、なるほど」
「何がですか?」
「クレア、一度でもこのメンバーから離れたか?」
「いえ」
「了解した」
スイフリーは立ち上がると、元居たメンバーのほうを見る。
「本物だと断言していい」
「一体何を見て!?」
■気付けば金曜日でした。
なんだか気分が土曜日なんですよねー。ふー。
というわけで、金曜日は泡ぽこの日ですよ。
今週は泡ぽこばかりでした。来週にはラブシックが書けてたらいいな。と思いながら今週はここまで。
どうでもいいですが、本放送(笑)のほうは、70回を越えました。蛇足ばかりで。
この物語は何処へ流れていくのでしょう。
さらにどうでもいい話。
今回の話は、ちょうど世界陸上が行われている頃に送信したようです。
前置きに、「世界陸上みてるかー!! 見てないやつぁ泡ぽこなんてどーでもイイから陸上見とけ! 今日は男子走り高飛びが熱い!」と書かれてました(笑)
ヒースは向こう側に固まっているガルガドたちに声をかける。
不審そうな目で彼らはこちらを見た。すこしヒースはひるんだが、後には引けない。
「さて問題です! 俺様の可愛い使い魔、BB1号は現在どうしてるでしょう!」
半ば自棄になって声を張り上げる。
「何言ってんのヒース。BB1号は使い魔じゃないだろ?」
かく、とエキューが首を横に傾ける。
「よーし、少なくともエキューは本物と見てよし、だ」
小声でヒースは報告すると、小さくガッツポーズをとる。
「効率悪……」
パラサの呟きは、聞こえない振りをする。
「ていうか、そんな初歩間違うなんて、ヒース実はヒースじゃないでしょ」
ノリスが疑いの眼差しを向ける。
「おーっと、俺様ピンチ?」
「ヒースが疑われたら芋蔓式に私たちも疑われるんじゃないの?」
マウナは困った顔をしてガルガドたちを見る。
疑いたくはない。
本物みたいに見える。
「マウナさんがボクに熱視線を!」
「……エキューは本物だと思って間違いなさそうね」
思わずうんざり。
「まとまってるんだから、もう全員本物でいいんじゃない?」
面倒になってきたのか、フィリスがため息をつく。
「クレアが本物かどうか確かめよう」
不意にスイフリーが口を開く。
「何で?」
「アレは多少マシになったとはいえ、融通の利かない馬鹿正直なあのファのつく神の神官だ」
「姉ちゃんになんてこと言うにゅ!」
「未だファリスと言えんのか」
じと目になるパラサやアーチボルトのことなど気にせず、スイフリーは続ける。
「アレが他のものと別行動をとらなかった、と証言すればそれは信じていいだろう。全員本物だ」
「なるほどな」
アーチボルトが頷く。
「で? 本物かどうか、どうやって見極めるつもり?」
楽しげな目でフィリスがスイフリーを見る。
彼は肩をすくめた。
「ほくろ大作戦ではないが、似たような方法を思いついた。行くぞはとこの子よ。二人で確認する」
「俺も?」
「そうだ。フィリスとヒースは念のためスリープクラウドの準備をしておいてくれ。偽者だと判断したら合図するから、即魔法を叩き込んでくれ」
「わかった」
あっさり頷くフィリスに、マウナは慌てる。
「それって、スイフリーさんとパラサさんにも呪文が」
「俺、よっぽどのことがなかったら魔法怖くないにゅ」
「わたしはクラウド系の魔法は全然怖くない」
に、と二人は笑う。
「では行くぞ、はとこの子よ」
無防備に歩いてきたスイフリーとパラサに、レジィナとグイズノー、クレアははなんとなく二人は本物なのだろう、という感覚を覚えた。が、それをガルガドたちに上手く伝えられないうちに二人はこちらにたどり着いてしまった。
足が速すぎなのだ。
「姉ちゃん! ひさしぶりにゅ」
ニコニコ顔のパラサがクレアにまとわりつく。いつものことだからクレアはあまり気に留めないようだった。
「何だか久しぶりな気がしますね」
グイズノーの挨拶に適当に返事を返しつつ、スイフリーはクレアを見た。
「ちょっとしゃがめ」
「?」
クレアは不思議そうな顔をしたが、すぐにしゃがんだ。スイフリーも同じようにしゃがみ、パラサはクレアの傍に立つ。
「何を始めるの?」
レジィナは不思議そうに、ノリスは興味津々な顔をしてなりゆきを見守る。
「いくつか質問させてくれ」
「何でしょう」
「壁が鏡になった部屋はあったか」
「ありました」
「その時、どうやって映った」
「どう、とは?」
「近くで映ったか、遠目だったか、体のどの辺りを映したか」
「ちょっと遠目でした。全身うつしました。そうですね、鏡に向かって、正面から。自分はこういう姿だったのか、と思いました」
「後ろは映してないか?」
「回ったりはしませんでしたから」
スイフリーは頷いた。
「あっち見ろ」
指で左側を指す。クレアはそちらを見た。
「そのままストップ」
言うと、耳の辺りを覗き込む。
「はとこの子も見ろ」
「あ、なるほど」
「何がですか?」
「クレア、一度でもこのメンバーから離れたか?」
「いえ」
「了解した」
スイフリーは立ち上がると、元居たメンバーのほうを見る。
「本物だと断言していい」
「一体何を見て!?」
■気付けば金曜日でした。
なんだか気分が土曜日なんですよねー。ふー。
というわけで、金曜日は泡ぽこの日ですよ。
今週は泡ぽこばかりでした。来週にはラブシックが書けてたらいいな。と思いながら今週はここまで。
どうでもいいですが、本放送(笑)のほうは、70回を越えました。蛇足ばかりで。
この物語は何処へ流れていくのでしょう。
さらにどうでもいい話。
今回の話は、ちょうど世界陸上が行われている頃に送信したようです。
前置きに、「世界陸上みてるかー!! 見てないやつぁ泡ぽこなんてどーでもイイから陸上見とけ! 今日は男子走り高飛びが熱い!」と書かれてました(笑)