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泡だとかぽこだとか。時折ルージュとか。初めての方は「各カテゴリ説明」をお読みください。
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泡ぽこ 13

クレアとスイフリー、パラサの三人をファリス神殿まで案内することになったノリスは、まず「青い小鳩亭」で、大体の地図を描きながらファリス神殿までの道を伝えることにした。三人ともがはぐれるということはまずないだろうとは思ったが、念には念を入れたほうがいい。何せこの三人は、お金持ちなのだ。バスの話ではアノスの有名人だ。歩き方とか見ているとパラサのほうが随分シーフとして強そうな気がするけど、現在自分は案内役であり護衛みたいなものなのだ。まだ雇われてないけど。もしかしたら雇われるかもしれなくて、そしてそのときは高額契約になる。今から自分を売り込んでも、まあ、損はない。
「では、ファリス神殿はそれほど遠くはないわけですね」
地図を見ながらクレアが言う。そうだよ、とノリスはうなずいた。
「イリーナが働いているところを見るの?」
ノリスが疑問に思っていたことを聞くと、クレアは苦笑してから首を横に振った。
「いいえ。彼女が真面目なファリス神官であることは間違いないでしょう。そうでなければ、アノスまで噂は届かないでしょうから。私は、私の信仰のために神殿に向かうのです」
「真面目さだけでアノスまで噂がくるか?」
スイフリーが眉を寄せる。どうも疑っているみたいだ。確かにイリーナは真面目だ。だからクレアが言うことは間違っていない。けど、真面目「だけ」で有名なわけでもないと思う。だから、スイフリーの言うことも間違ってない。そうは思うけど、とりあえず言わないでおいた。イリーナは大事な友達だ。
「どっちでもいいよ~オレは姉ちゃんについていくだけ~」
パラサはふらふらとした足取りでクレアに近寄っていく。あんな歩き方なのに足音は相変わらずしない。詐欺じゃないだろうか。
「ともかく、案内をよろしくおねがいしますね」
クレアは、くっついてこようとするパラサと、ソレを阻止しようとするスイフリーの様子を見て少し困ったようにため息をついてから、ノリスに頭を下げた。その様子を見ていて、ノリスはクレアに尋ねる。
「仲、悪いの?」
「いえ、良いんだと思います」


道中は比較的穏やかだった。時折パラサが屋台の匂いにつられてフラフラと歩いて行くだとか、スイフリーが不機嫌そうなのだとかを気にしないなら、ほぼ問題のない道中だった。
ただ、ハプニングに巻き込まれたのを除いたら。
ハプニングというのは、唐突に起こるから、ハプニングという。
オーファンは地下道の工事が現在急ピッチで進められている。下水道だという話だけど、本当のところは良く分からない。一度は工事の護衛も仕事としてやったことはあるけど、仕事として地下道を掘ったことは今のところないから、実際の仕事はどういう感じなのか良く分からないのがノリスの正直な感想だ。
そういうわけだから、工事現場というのをあちこちに見ることができる。大体は、工事現場には自分たちがやったことのあるように護衛兼見張りが居るし、囲いだってある。だから、ほぼ安全。
けど、そうではない場所もある。
「どうしたんでしょう、アレ」
クレアの視線の先には結構な人が集まっていた。口々に何か言っている。見た感じ、野次馬という表現が一番正しそうだ。
「何か緊迫してるな」
スイフリーが口を歪めて呟く。何かとても嫌そうだ。
「ちょっと見てくるにゅ」
言ったと思ったときには、もうパラサはそこに居ない。クレアとスイフリーが立ち止まってパラサを待つようだったから、ノリスも立ち止まった。たいした時間もかけず、すぐにパラサは戻ってくる。
「工事現場の細い隙間に、子どもが落っこちてたにゅ」
クレアは無言でその現場に歩き出す。パラサもすぐにそれに従った。スイフリーはため息をついて「これ以上人情で動いたら赤字じゃ済まん」と呟いてから、舌打ちとともに二人の後を追う。ノリスにはそれを止める権限がないから、後についていく。もしかしたら面白いものが見れるかもしれない。


思っていたより、状況は深刻なようだった。
子どもが落ちたのは地下道工事の穴だと思うが、かなり深い。落ちたときに子どもは怪我をしたらしく、びーびー泣いている。スイフリーがかなり不機嫌そうな顔をした。それを見て、パラサがすかさず言う。
「なきやむんだ、とか言わないでよはとこ」
「ほかにどう言うというのだ」
「子どもはそれじゃなきやめないんだってば」
「それよりどうしたらいいでしょう?」
クレアが割ってはいる。
「はとこの子がロープを持って降りる、……抱えられないか。何でグラスランナーなんだ、はとこの子よ」
「いやそんなこと言われても」
「落下制御、筋力増加、飛行……どれもソーサラーだ、何でフィリスはココに居ないんだ!」
「オレがロープ持って降りるんじゃ駄目?」
「ロープで引っ張りあげるのはありだ。が、はとこの子では抱えられない。かといってそのまま引きずりあげると、穴の側面の岩で子どもが怪我を増やす。方法は他にあるとすれば、櫓を組んで滑車を使う方法だが、時間も材料もココにはない」
「でもオレ、とりあえずロープもって降りる。きっと一人で不安にしてるにゅ」
言うや否や、パラサはロープの端とともに穴の中へ消えていく。
「私が降りましょうか? 多分このくらいの穴なら大丈夫です」
クレアの言葉に、スイフリーは眉を寄せる。
「で? その二人の体重を、誰が持ち上げるんだ? ここにいるのは非力なわたしだぞ?」
「見てる人に手伝ってもらえば?」
ノリスの声に、スイフリーが振り返る。にやりと口元に笑みが浮かんでいた。
「人間の少年よ、盗賊の心得があったな?」
「え? うん、あるよ」
呼び方が名前じゃなくなっていることにノリスは不安を覚えながらもうなずく。
「彼に降りてもらおう。クレアと私、あとそこらで見ている力の強そうなのを手伝わせれば何とかなるだろう。子どもが出てきたら治癒の一つもしてやれ」
みるみるまに話が決まり、ノリスが返事をする暇もないうちに、スイフリーは穴の中に向かってパラサに戻るように指示をしていた。




■この回はちょっと記念の回なのです。
なぜって、この回から、メール(友人には携帯メールでおくってます・笑)にタイトルとして通し番号が付くようになりました。
「泡ぽこ」というタイトルはまだついてない頃です。
ちなみにそれまでは「こんなかんじでどう?」とか「つづき」とか「題名募集中」とか「バブリーズさんとへっぽこさん」とかつけてました。

 


現在、戦闘に突入し、「そういえばSWのルールってどんなんだっけよ?」とルールブックを持っている友人に聞いている最中です(笑)
そのうちサイコロふるぜ。
平行してダブルクロスのキャラメイクもしていたり(苦笑)


2007/08/01

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泡ぽこ 12

その日の夜。
既に向こうのテーブルではアノスの冒険者たちの宴会が始まっている。初日同様、テーブルの上には所狭しと料理が並べられ、相変わらず戦士たちとシーフが壮絶な肉の争奪戦を繰り広げ、魔術師は底なしかという早さでワインをかたむけ、エルフはパスタの皿を一人抱え込み、真面目なほうの神官はため息混じりに静かな食事をし、真面目に見えないほうの神官は全員の皿からひょいひょいと好きに物を掻っ攫っている。
「で、どうだった」
そんな様を見ながら、貧しくは無いが豪勢でもない夕食を楽しみながらヒースは全員に尋ねる。なんか顔が引きつっている気がするのは、気のせいだろうか。
「ちなみに俺様のほうは動きなし。ほんとに一日学院の書庫にこもってたぞ。購買と学食を冷やかしたくらいだ。ちなみに昼飯はちょっとした高級店でおごって貰った」
「あ、いいな」
「僕のほうはラーダ神殿を見て、あとは街の散策だね。いいお店がどこにあるのか聞かれたよ」
「いい店?」
「……突っ込まないでくれる?」
きょとんとするノリスに、エキューは苦い顔をして見せた。
「もし明日も観光のお供をするなら、別の人にして欲しい」
「私のほうは、いい一日でしたぞ。レジィナさんはバードとして只者ではありませんな。二人で歌いまして、大勢のお客さんの拍手を浴びました」
一体どんな歌だったのだろう。その場に居たらおひねりをちゃんと管理したのに、とマウナは悔やむ。
「で、クレアさんたちはどうだったの?」
悔やんでも仕方ない、と気持ちを切り替えて、マウナはノリスに視線を送る。
「クレアさんたちはいい人たちだよ! もう疑う必要なんて無いよ!」
「何があったかちゃんと話しをせんか、クソガキ」
ガルガドのため息など、気にもしないのかそれとももう慣れてしまったのか、イリーナも大きくうなずいた。
「クレアさんはとても真面目な方です! 神殿で熱心にお祈りをしてました! 真面目なファリス神官に悪い人は居ません!」
「じゃあ、スイフリーさんとパラサさんはどうだったわけ? エルフもグラスランナーも神様は信じないでしょ?」
エキューはイリーナに尋ねる。視線はずっとマウナを追っているが、みんな今に始まったことではないから誰も気に留めない。
「確かに、エルフもグラスランナーも残念なことにファリス様を信じたりしないそうですけど、お二人はクレアさんがお祈りをしている間、ずっと静かに待っていました。悪くはないです」
それだけで信じられるほど単純であれば、どれだけ楽だろうかと呆れながら、ガルガドはノリスに視線を向けた。
「イリーナの話はわかったとしてだ、クソガキは何があってあの女性神官を信じていいと思ったのだ?」
ノリスは口いっぱいに物を頬張ったままきょとんとした顔をガルガドに向けた。それから十分な時間をとって口の中のものを飲み込むと、その日あったことを話し始めた。

 


■ふと気付いたのだが、バブリーズさんで魔晶石もってるのはパラサとスイフリーとフィリスだけじゃないね。グイズノーとクレアさんを失念してたよ。まあ、クレアさんにはパラサが出させないだろうけどね(笑)


昨日は寝ぶっちしました。
うっかりしておりました。まあ、そんな日もありますよ。そんな日だらけですよ。


2007/07/27

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泡ぽこ 11

次の日の朝。
いつもより少し早起きして、いつもの席に着く。依頼人、と言ってもいいアノスの冒険者たちはまだ起きてきていない、とはマウナの話。小鳩亭自体も、まだ朝食に来ている客も泊まりの冒険者もあまり姿を見せておらず、がらんとしていた。
「とりあえず、自由に動けるのは、俺様、エキュー、バス、ノリスだ。最悪あちらさんが別行動でも、何とか4つまではカバーできるぞ」
「私もなんなら外に出るわよ」
「誰も宿に残らなければ頼む」
そんな話をしていると、アノスの冒険者の一人が起き出して来た。レジィナという若い女だった。
「あ、おはようー。皆早いんだねー」
彼女はヒースたちに笑顔で話しかけると、首をかしげ
「一緒に座っていい?」
と尋ねる。会議と言ってもソレと言ってまだ何も出来ない状況であったし、拒否する理由もない。結果、彼女は同じ席に着いた。
「あ、その朝ごはん美味しそう」
ノリスの食べているちょっと豪華な朝食に目をつけたレジィナは、注文を取りに来たマウナに同じものを注文する。
「結構たべるんですな」
バスが言うと、彼女は頷いた。
「だって、体が資本でしょ? あ、ねえ、今日バスさんは時間ありますか?」
「は?」
名指しされて、バスは間抜けな声をあげる。
「えっとね。私、今日暇なんだよ。アーチーとお姉さんは賢者の学院を見に行くって言っていたし、クレアさんはファリス神殿に行くだろうし。そうなるとパラサとスイフリーもクレアさんについていくと思うんだよね。グイズノーはラーダ神殿を見に行くって言うし、そうなると私一人なのよ。街のこと、良く分からないし。だからバスさんに案内をお願いしようかと思って」
「なんでバスをここで名指し!?」
ノリスの意外そうな声に、彼女は首を傾げてから笑った。
「だって、吟遊詩人なんでしょ? 『ファリスの猛女』、ちゃんと本場のが聞きたいんだよね」
「アノスまで伝わっておるのですか!?」
バスが目を輝かせる。
「アノスはまだわかんない。もう伝わってるかもね。私が聞いたのはオランだったから」
漸く朝食が運ばれてきて、彼女は一気に食事に集中する。暫くは返事がおろそかになるかもしれない。そのうち、アノスの冒険者たちはどんどん起きだしてくる。
「あら、レジィナもう食べてるの? 早いわね」
「あ、お姉さんおはようございます。これ、お勧めですよ、美味しいです」
「そう? じゃあ同じの頼もうかしら……って、ちょっと私には多いわね、もう少し抑え気味のを頼むわ」
苦笑して答えながら、フィリスの視線がヒースに向かう。
「ちょうど良かった、賢者の学院に案内して貰える? アーチーと私。資料閲覧が部外者でも出来るなら、なんだけど」
「書類書けばオッケーだ」
「じゃあ、お願いね」
フィリスはにっこりと微笑むと、別のテーブルに歩いていった。起きてきたアーチボルトに何事か声をかけ、そして邪険にされている。

それにしても。
こんなに簡単にあっさりと、向こうから街の案内を頼まれるとは思っていなかった。
向こうも何か考えがあるのか、それともただの余裕なのか。
考えるが、全く想像がつかない。

ヒースはアノスの冒険者たちに目を向ける。昨日の夜に比べれば、随分おとなしい朝食が始まっていた。が、テーブルの上に置かれているのは軒並み高級朝食ばかりで、やはり何かが決定的に違うのではないか、と思わせる。
「バスはレジィナさんを、ヒースはフィリスさんとアーチボルトさんを案内するんだよね? ボクも誰か案内したいなあ」
ノリスが口を尖らせる。遊びじゃねえぞ、おい、などとツッコミたいが、同じテーブルにはレジィナがおり、それも叶わない。
「グイズノーか、クレアさんに声かけてみたら?」
レジィナはあっさり言うと、向こうのテーブルで食事をしている神官たちに声をかける。心の準備とかは全く想定に入れていない速さだ。
「どうしましたか? わたくし、食事中なので早くしてくださいね。帰ったらパラサ辺りに平らげられてそうです」
グイズノーが迷惑そうな顔でこちらのテーブルにやってきた。
「ラーダ神殿、案内してくれるって。バスさんとヒースくんは予約済みだよ」
「別に護衛も案内もいらないのですけど。クレアさんと相談してからにしましょう。まあ、彼女にはスイフリーとパラサがついていくでしょうから、それこそ護衛も案内もいらないかもしれませんけどね」
肩をすくめて席に戻るグイズノーを見送ってから、ノリスは同席しているレジィナの顔を見た。
「気になってたんだけどさあ、どうしてクレアさんには必ずスイフリーさんとパラサさんが着いていく、って皆言うの?」
「依頼人にはもっと丁寧な話し方しなよ、ノリス」
エキューの言葉にレジィナは笑う。
「まだ依頼したわけじゃないし、皆を雇うのはスイフリーとお姉さんだから、気にしないでいいよ」
「で?」
ノリスは野次馬根性丸出しの顔を見せる。素直だなあ、とレジィナは内心苦笑しながら答える。
「三人で仲良しだから、だよ」
答えになってない、とその場の全員が思ったが、ソレをいえないまま朝食が終わる。レジィナの食器はとうにからになっていたし、クレアもこちらにやってきたからだ。隣にはパラサがニコニコ顔で立っている。
「街の案内の件ですけど、ノリスさんにお願いする事にしました。私とパラサさんとスイフリーさんをファリス神殿まで案内してください。グイズノーさんはエキューさんにお願いします」
「どうしてそう決まったの?」
レジィナは少し意外に思って尋ねる。朝食中一緒にいて分かったのだが、ノリスよりエキューのほうが常識人だ。向こうで見てたらわからないかもしれないが、何でクレアさんはパラサといいスイフリーといい、苦労しそうな面子を連れて行くのだろう。
「スイフリーさんが、グイズノーにはエキューだろう、と……理由は教えてくれませんでしたが」
大方、グイズノーがはっちゃけてもエキューなら止めるという予想をしたな、と思うが黙っておくことにした。


■この回のメール件名は「書くのに飽きてきた」でした。
よく続いてるよなあ、と自分でも思います。
ちなみに送信は4月27日だったようです。
おう、ほぼ3ヶ月前。
なのにまだ終わってないってどういうこと?(笑)

一本が短いからかな。
まあいいや。

2007/07/25

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泡ぽこ 10

一方、VIP室からは退席して、いつものテーブルに戻ったヒースたちもまた、顔を寄せて対策会議の真っ最中であった。イリーナが受け取った封書には厳重に封がしてあった。封蝋にはファリスの聖印が記されている。内容はほとんどクレアが言ったことの追確認で、アノスの法皇が直接イリーナに言葉をかけることであるとか、旅の間の待遇であるとか、その費用がアノスから出ることであるとかが書かれていた。
「護衛のことは書かれてないな」
ヒースはざっと文面を読んで眉を寄せる。
「ファリス様の聖印を持っているクレアさんがウソをついているとでも言うんですか?」
イリーナの抗議の声に、ヒースはため息をつく。
「あのな、イリーナを信じこませるために、意思をひんまげてファリスの聖印を首からかけてるだけかも知れんだろ? 信じてなくても、聖印は首からさげられる。アクセサリー程度の気分かもしれん」
「でも、私たちをだまして、何か得があるかしら?」
マウナは首をかしげる。
「別にお金持ってるわけでもないし。名誉はあるかも、だけど、本当にアーチボルトさんたちがアノスの騎士なら、私たちを倒して名誉をどうの、って考えないよね?」
「むしろそんなことしたら国家レベルの話になるぞ?」
「なんにせよ、クソガキたちがシーフギルドで何かつかんでこないと話しにならん」
「……ノリスとバスじゃ期待薄だぜ、おやっさん」
そこで全員がため息をついた。


「ただいまー」
暫くしてノリスとバスが帰ってくる。二人はテーブルにつくと全員を見渡してから軽い声で言った。
「全然駄目だったよー」
「……やっぱり」
ヒースがぼそりといい、ガルガドが苦い顔をする。
「どう駄目だったのか、聞き方にもよるぞ」
「似顔絵もっていったし、お金も出したんだけどね。とりあえず、本人だろうっていう話までだね。一緒に仕事するのか? って言われちゃったよ」
「やめておけ、といった口ぶりでしたな」
ノリスが出してきた似顔絵は、全員良く似ていた。コレで「本人だろう」という程度にしか話を聞かせてくれないのか、とヒースは内心口をゆがめる。
「先回りされたのかもしれんの。自分たちについて聞きに来ても答えるな、と。バスの言う噂が本当なら、パラサというグラスランナーは高レベルだろう。……高レベルのシーフか……」
「おやっさん、みなまで言うな。コレは俺様のおごりだから飲んでくれ」
遠い目をするガルガドの肩をぽん、と叩きながらヒースはエールを差し出す。ガルガドはソレを飲み干すと、ふう、と大きくため息をついた。
「一週間返事に猶予があるんだから、あの人たちを遊ばせておくっていうのは? 観光するって言っていたんだし、案内するよって言って動向を探る」
「ソレがいいかもしれんなあ」
エキューの提案にヒースは頷く。
「クレアさんを疑うなんて、どうかしてますよ」
「だからな、イリーナ。本当のファリス信者かどうかなんて、まだ分からんだろうが」
ヒースはため息交じりに言うが、イリーナの返事は芳しくない。「うーん」などといううなり声にも似たような返事だけが返ってきた。
「まあ、イリーナがファリス神官として、同じファリス神官を疑いたくない気持ちはわからんでもない。しかしアノスは遠い上に拘束期間も長い。途中にはワシらに目をつけているファンドリアもある。用心するに越したことはない。これは分かるか?」
ガルガドの言葉に、イリーナはうなずく。
「依頼人の裏を取っておくのは、冒険者の基本だ。気分はよくないだろうが、コレも分かるな」
「……分かります」
「返事は期間ぎりぎり粘ろう。その間に、集められるだけの情報を集めるぞ」
ヒースの決定に、全員がうなずいた。
「とりあえず、イリーナやガルガドはいつもどおり神殿でお仕事しててくれなさい。受け持ち仕事の割り振りもあるだろうしな。俺様もハーフェンにちょっくら事情を説明して外出の処理をしとく。ノリスとバスは引き続きシーフギルドとか町の噂とか拾っとけ。毎日ここで落ち合って情報交換だ。各自旅の準備なども進めておかんといけないな、貰いモンの魔晶石だけじゃ旅はできん」
「例えばランタンを複数買っておく、とかね」
一気に俯いて机にのの字を書き始めるヒースを無視して、エキューは続ける。
「とりあえず、僕とノリスとガルガドは情報あつめつつ、あの人たちが街の観光に出かけるとき案内と称して付いていったほうがいいね。街で何かするつもりがあるかもしれない。目を光らせておくのに越したことはないよ」
「私はどうしようか」
マウナは首をかしげる。今のところ課せられた仕事はない。
「出かけないメンバーもいるかもしれん。そっちの見張りだ」



■えー、友人に送っている本編(コレは再放送・笑)のほうが、40話に達しました。
まだ先が見えません。いつ終わるんだ。終わるのか。
ここへきて行き詰ってます。

……スイフリーのバルキリージャベリンが、クレアさんに炸裂しそうです(どんな話だ)


2007/07/24

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泡ぽこ 9

■3

「それにしてもスイフリーの提案は意外でした。何かあるのですか?」
とりあえず、全員の部屋を取った上でアーチボルトの部屋に全員が集まっている。グイズノーはVIPルームに居るときからずっと不思議だったことを、当のエルフに聞いてみた。
「そうか?」
「そうですよ。口先で言いくるめて無料で付き添わせるのだと思っていました」
「何を言うか。お金はあるときに必要に応じて使うのが基本だぞ」
「それにしてもねえ?」
フィリスが苦笑する。
「私もちょっと意外だった」
「いいか?」
スイフリーは指を立てながら説明する。
「第一に、彼らはこの国の英雄だ。どうも貧乏くさかったがな。そんな彼らを正式なアノス使者である我々が能力を買い叩いたと分かったら信用問題に拘わるだろう。多少過大評価なみに金を払うのは当然だ。……まあ、正当報酬より多少多い程度で彼らは目の色かえていたがな。第二に、冒険者相手であれば、口先で言いくるめるより報酬を払ったほうが丸く収まる。無用な争いをする必要はない。第三に、我々の目標はあくまでイリーナが無事にアノスに到着することだ。金で安全を強化できるなら、それに越したことはない。話が正しければ、彼らは有能だからな。第四に、ここで彼らに恩を売っておけば、今後オーファン方面で困ったことになったときに使えるかもしれん。金づるにはならんかもしれんが、コネの一部にはなるだろう。ヒースという魔術師はここのギルドのエライさんの弟子だしな。これらのことが、高々魔晶石6個で買えたら安いもんだろう」
「ああよかった、悪いものを食べたわけではありませんでしたね」
ほっとするグイズノーの後頭部を、とりあえずスイフリーはひっぱたいてから全員を見た。
「さて、どうする? 多分彼らはわたしたちと来るだろう。彼らの帰りについては予定通りの手段を使うとして、やはりまっすぐ歩いてアノスに向かうか? 今のところあのお方は何もしてきていないわけだが」
スイフリーの答えに、アーチボルトがうなずく。
「ロマールでダークエルフに襲われた程度だな。あのお方としてはぬるい。あれは偶発的な遭遇だろう。何か、策をたくらんでいるだろうな」
「でもその襲撃でうっかりスイフリー死に掛けたよ?」
「ファイア・ボルトがクリティカルしたら仕方ないですよ、エルフは」
「アレは偶発的な事故みたいなものだ」
レジィナとグイズノーの会話に、スイフリーは苦い顔をする。
「策にわざわざ乗ってあげる必要ないんじゃない?」
「甘いぞレジィナ! 相手はあのお方だぞ? 策を持って対抗せんでどうする」
「甘い甘くないなんてどうでもいいよ。安全ならそれに越したことないじゃない。別に策を持って対抗しなくても」
「仕方ないわよ、レジィナ。それが趣味なんだから、そこの男共は」
フィリスは諦めたような顔をして、どこから調達してきたのかワイングラスを傾ける。
「イリーナ姉ちゃんたち、すぐ返事してくるかな?」
「さあ? それは分からない」
「じゃあ、姉ちゃん。明日から一緒に観光しよう~。ファリス神殿見に行くにゅう」
「……」
返事に困るクレアに、アーチボルトはうなずく。
「かまわんだろう。むしろ目立つように各自好きに観光して来ようじゃないか。出発をあのお方に知らせてやるのもまた一興」
「無駄に危ないだけでは?」
眉を寄せるグイズノーに、アーチボルトはにやりと笑って見せた。
「あのお方はファンドリアとロマールに強い。ファンドリアと敵対しているオーファンで、我々とイリーナたちを敵に回すより、自陣に連れ込んで戦うほうを選択するだろう。特にオーファンは冒険者の国だ。我々をつぶすだけなら、オーファンみたいに冒険者という不確定要素が沢山絡んでくる国より、自国や同盟国のほうが断然有利だ。何せオーファンであればイリーナたちに地の利がある。アノスやオランなら我々だな。オーファンとアノスが手を組むのは、あのお方としてもかなり厄介だろうから、多分使節でありことごとく策をつぶしてきた我々を今回は狙ってくるだろう。アノスの騎士がついていながら、オーファンの英雄がどうにかなったりしたら国際問題に発展するしな。こうなると、多分策を弄してくるのはファンドリアかロマールだ。イリーナたちはファンドリアに恨まれているらしいから、ファンドリア策が優勢かと思う。なんにせよ、オーファンで派手に動き回っていたら手を出しにくいのは事実だ」
「そうですかねえ?」
いまだ不安そうな顔のグイズノーは、今度はスイフリーを見る。
「まあ、アーチーの云うとおり、手を出してくるならロマールかファンドリアだろう。こっちへ来るとき手を出してこなかったのは、イリーナがわたしたちと一緒に行動しているときに狙ったほうが何かと問題が起こりやすいからだ。まあ、最悪パターンはアノスとオーファンの断絶だな」
「でも魔法テロリストみたいなヤツが出てくるなら、オレらとイリーナ姉ちゃんのレベルの冒険者があつまってるとやりにくくない?」
「アレは対・国家だから意味がある戦法だ。アノスの弱体化を狙った策であって、個別の冒険者などを狙ったものではない。やってくるなら劇団の時のように、わたしたち個人を狙ってきて、アノスの騎士としての醜聞を作るほうに策を練ってくるだろう。更に国家レベルの話を持ってきたら完璧だ」
「劇団のときなら、サンド君?」
「そうなる」
「来るならどんな策ですかね?」
「流石に分からん。手がかりが少ない」
スイフリーは腕組みをとく。
「とりあえず、イリーナ姉ちゃんたちが何か云ってくるまで、遊んでればいいにゅ」
パラサは椅子からぴょん、と飛び降りると大きく伸びをした。話は終わり、といいたいのかもしれない。
それにしても、とクレアは思う。
ルキアルの陰謀だとか嬉々として話しているわりに、緊張感があまり感じられないのはどういうことだろう。騎士叙勲を受けたとはいえ、所詮アノスはよその国という気分なのだろうか。スイフリーなど、アノスは嫌いな国といって憚らない。それとも、陰謀を退けて国を守る自信があるということなのだろうか。
どちらにせよ、大体の話は自分のあずかり知らぬところで動くのだ、と思うとため息が出た。





■児童生徒さんは夏休みだそうですね。
正直、いくら新装版が出ていても、泡さんたちを分かる人たちは多分児童生徒さんじゃないと思うんですけどね。
まあ、世間は夏休みである、ということで。
泡ぽこのアップを早めます。
通常日記で展開中の「今日のDQ3」と同じく、「月‐金」毎日。
まあ、39本(←今日の分が増えた・笑)有るので大丈夫でしょう。
長い短いの差は有るんですけどね。

あ、寝過ごした日のことは大目に見てやってください。
よく寝過ごしますけど。


2007/07/23

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